第52話 精霊たちの邂逅
「ロゼッタさん、凄かったよね!」
「オレ、あんな魔法初めて見たよ」
「何というか、同じ生徒なのにケタが違うって感じだったよな」
ロゼッタが講師を務める授業が終わり、Fクラスの生徒たちは散り散りになっていく。
その中で生徒たちは先程目にしたロゼッタの上級魔法を思い出し語り合っていた。
「でも意外だったよね。ロゼッタさんが昔は上手く魔法を扱えなかっただなんて」
「それな。しかし誰なんだ? あのロゼッタさんが師匠と呼ぶ人って」
「気になるよねー。魔法師団の師団長とかかな?」
「まあロゼッタさんが教えを乞うレベルってなるとその辺りだろうなぁ」
「ん? でもさっきのロゼッタさんの言い方だと……」
「なに?」
「いや、昔も今も直接会ってる感じだったなって思って。そうなるとこの学園の中にいるんじゃないか?」
「はははー。まさかぁ」
そんなやり取りを交わして離れていく生徒たち。
その後ろでシエスタ、コランの二人はルクスの顔をじっと見ていた。
「な、なんだよ」
「いや、ルクス君って本当に凄い人なんだなぁって改めて」
「そうですね。私もそう思っていたところです」
シエスタとコランに言われてルクスは頭を掻きながら嘆息する。
「おい、お前らも今日は解散だぞ。さあ、行った行った」
「あ、はーい」
そうしてオリオールに促され、ルクスたちは訓練場を後にすることになった。
***
「ノームのじっちゃんたちは……。まだ帰ってきていないか」
ルクスは一旦自分の家に戻り、辺りをキョロキョロと確認する。
が、ノームやウンディーネが戻ってきた痕跡はなく、ルクスは息をついた。
それなら今日もダンジョン攻略に出かけるかと思った矢先――。
「またダンジョンに行くのですか?」
「どわっ!?」
突然背後から声をかけられ、ルクスが声を上げる。
見ると、そこには月の精霊ルーナが浮かんでいた。
「る、ルーナ。どうしてここに?」
「ノームとウンディーネに会えるかと思ったのです。昨日の話では貴方の家に戻ってくるだろうという話でしたから」
「な、なるほど」
ルーナの表情は相変わらず無愛想な感じで、ふわふわと宙を漂っている。
ルクスは素っ頓狂な声を上げてしまったことが気恥ずかしくなったのか、咳払いを挟んでからルーナに話しかけた。
「てっきりルーナはずっとシエスタに付いているもんだと思ってたよ」
「基本的にはそうです。先程の授業もずっと見ていましたよ」
「あ、やっぱり?」
「話しかけようかとも思ったのですが、生徒たちの目もありましたからね。大人しくしていたというわけです」
「へ、へぇ」
「それから、シエスタは今日この後図書室に行くというので話かけられませんし」
「やることがないからこっちに来た、と」
「です」
何故かルーナは微妙に得意げな笑みを浮かべていた。
ノームにしてもウンディーネにしてもそうだったが、精霊はやっぱりどこか変わっているなとルクスは思わせられる。
「しかしどうすっかなぁ。せっかくルーナが来てくれたなら話でもしたいけど」
「ふふふ。望むところです」
「いや、そんなに意気込まれても困るんだけど」
と――。
ルクスがそんなやり取りを交わしていたところ、家の中に風が吹き抜ける。
扉や窓は開いてはおらず、だからルクスはそれが誰によるものなのかが分かった。
「やれやれ。今戻ったぞい」
「あぁー、つっかれた。ルクス、お茶でも淹れて――ってルーナじゃない!? どうしてアンタがここにいるのよ!」
「おお。二人ともナイスタイミング」
そこに姿を現したのはノームとウンディーネだった。
二人はルーナがいたことに驚きの反応を示す。
「お久しぶりですノーム。ウンディーネは……相変わらず賑やかですね」
そして二人の反応とは対象的に、ルーナは無表情で再会の言葉を投げかけたのだった。





