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第47話 ロゼッタとの邂逅


「なるほど、そんなことが……」


 昼休み――。


 学園校舎の階段下、人目につかない場所でルクスはロゼッタと話をしていた。


「でも驚きですね。まさか師匠と同じクラスに精霊さんと既に関わりを持っている生徒がいたとは」

「だろ? 俺もびっくりしたよ」


 ルクスがロゼッタに伝えたのは昨日の一件について。

 ダンジョン攻略実践授業の後、クラスメイトの女子生徒――シエスタに話しかけられ、そこで月の精霊ルーナとも出会ったことに関してである。


「シエスタさんって、青い髪の方ですよね? お姉さんが王都の魔法師団に属しているっていう」

「知ってるのか?」

「はい。生徒会の仕事で色々と生徒の経歴を見る機会がありますから。それに、学園でも何度か見かけたことが」

「なるほどな」

「お話したことはありませんけどね」


 ロゼッタは銀の髪を耳にかけ、話を続けた。


「まあでも、確かに精霊さんの存在を知っていたとなると、黒の瘴気の一件は隠すべきではないでしょうね。情報を共有した師匠の判断も頷けます」

「シエスタやルーナも協力してくれるっていうし、今度みんなで話できたらいいな」

「そういえば師匠。ノームさんとウンディーネさんは?」


 ロゼッタの言葉にルクスはふるふると首を振った。

 まだ戻ってきていないということである。


「そうですか。こうなってくると一度皆で情報を整理したいですね。シエスタさんや月の精霊さんともお話してみたいですし」

「そうだな。いずれにせよノームのじっちゃんとウンディーネが戻ってきたらになると思うが」


 こんなことならこまめに戻ってきてもらえば良かったかなとルクスが考えていたところ、ロゼッタは少しだけ低い声で声を発する。


「ところで師匠。シエスタさんとはお家で話をしたんですよね?」

「ん? ああ、そうだけど。それが何か?」

「……いえ、別に。道端で話せるような内容じゃないと思っただけです」


 別にとは言いつつも、ロゼッタは自分の髪をくるくると(いじ)っていた。


(まあ、流れ的にそうなるのは仕方ないですよね……。で、でも師匠のベッドで寝たことがあるのは私だけのはず。それならまだ……)


 ロゼッタはそんな思考を巡らせていたが、先程の質問の真意が分からないルクスは怪訝な表情を浮かべる。


 そんな折、予鈴の鐘の音が響き渡った。


「と、そろそろ午後の授業だな。それじゃロゼッタ、また」

「そうですね。……あ、師匠」

「ん?」

「あ、いえ。やっぱり何でもないです」

「何だよ、気になるじゃないか」

「ふふふ。それは後のお楽しみということで。では、また――」

「おーい」


 ロゼッタは意味深な言葉を残すと、手を振って去っていく。


 浮かべていたのはどこか悪戯っぽい笑みで、ルクスの中には疑問だけが残った。


   ***


「おーし、それじゃ今日の授業はじめんぞー」


 その日最後の授業を前にして、ルクスは既に眠そうな目を擦る。


 教室の前の方ではFクラスの担任教師であるオリオールがいつもの如くボサボサの髪を搔きながら生徒たちを見渡していた。


(昨日はダンジョン攻略の授業だったのに、今日は一転して座学ばっかりだな。どうせ授業は受けるんだから意識だけ放課後に飛ばせたらいいのに……)


 ルクスは欠伸(あくび)を噛み殺し、そんな詮無(せんな)いことを考える。


 しかし現実として授業はあるわけで、寝ていれば当然怒られてしまう。


 だからルクスは教本の適当なページを開いておき、窓の外の景色へと視線を送った。


(ノームのじっちゃんとウンディーネもまだ戻ってこないしなぁ。精霊を見つけるのって大変だろうし、仕方ないけど。ああ、分身を作って授業を抜け出せるような魔法は無いだろうか……)


 またもルクスの思考が現実逃避をし始める。


 ――と、不意に背中を(つつ)かれ、ルクスは後ろを振り返った。


「どした、コラン?」

「ルクス君、あ、あれ……」


 何やらコランが驚いたような表情で前の方を指差している。


 ルクスは自然とコランの視線の先を追い、そして目を見開いた。


「は……?」


 そこに立っていたのはロゼッタだった。



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