表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/78

第40話 実力隠し


【砂の回廊:第1階層】


「さて、見てばかりじゃ実践授業にならないからな。次はお前たちでこのフロアの魔物と戦ってみろ」

「うわー、いよいよか」

「私、魔物とはあんまり戦ったことないから不安―」

「よっしゃ。俺の魔法を試してやるぜ」


 オリオールが告げるとFクラスの生徒たちは口々に呟いた。


 不安や緊張、意気込みなど、様々な感情を持ちつつ、生徒たちは同じ班の仲間と打ち合わせを始める。


「あんまり離れず班ごとに行動するんだぞー」


 オリオールがそのように言葉を発すると、それぞれの班ごとで別々の方向へと散開していった。


 《砂の回廊》は初級ダンジョンということもあってか、ダンジョン内もさほど入り組んだ構造にはなっていない。


 足場が砂地となっている箇所が多いことはやや難点だが、広々としていて死角となる場所も少ない。

 そのため、引率教師のオリオールからしてみれば生徒たちが散り散りになっても監督しやすい環境と言えた。


「よし、それじゃ俺たちも行くか」


 ルクスの掛け声にコランが頷き、シエスタは不安や緊張の入り混じった表情を浮かべる。


 少し進むと、ルクスたちはすぐに魔物と遭遇した。


 さすがに初級ダンジョンというところか。

 現れたのは低級の魔物として知られるスライムだ。


 ブヨブヨとした体で突撃を受ければ多少の衝撃はあるものの、それだけだ。

 《ノームの洞窟》の本当の最下層で魔物たちと死闘を経験しているルクスにとってみれば取るに足らない相手と言える。


 しかし、ルクスは自分の方を向いていたオリオールを確認すると思考を巡らせる。


(あの習得魔法を書く紙には《火球の礫(ファイアボール)》としか書かなかったしなぁ。まあ、この程度の魔物なら何とかなるか)


 最終的に単純な結論に達したルクスは、スライムに向けて火の玉を射出する。


「《火球の礫(ファイアボール)》――」


 放たれたその魔法の威力は低めだったが、それでも低級の魔物を(ほふ)るには十分だった。


 火球が着弾すると、スライムは跡形もなく消失する。


「やったね、ルクス君」

「サンキュ。とはいえスライム相手だからな。これくらいならわけないさ」


 ルクスは短く息をついて、コランと顔を見合わせた。


 そして、そのまま先へ進もうと、後ろにいたシエスタの方を振り返る。


「……」

「シエスタ、どうした? 先に行こうぜ」

「あ、は、はいっ。すみません!」

「……?」


 何か考え事でもしていたのだろうか。

 シエスタはルクスが声をかけると慌てた感じで返事をする。


 ルクスはシエスタの様子を(いぶか)しがりながらも、ダンジョンの奥へと進むことにした。


「……」


 そんなルクスたちの後ろ姿を見ながら、Fクラスの担任教師オリオールは顎に手をやる。

 そして無精髭を擦りながら独り思考を巡らせていた。


(使ってたのは普通の初級魔法だなぁ。別に威力や精度が高いようにも見えない。俺の考えすぎか?)


 結局考えても答えは出ず、オリオールは溜息をつくと、他の班の生徒たちの方に視線を向けた。



 そして――。


 実はこの時、ルクスの実力はある人物たち(・・)に露見していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

本作の小説第①巻が発売です!
書籍化に際して大幅改稿していますので、WEB版をご覧の方もぜひお楽しみください!
※画像を押すと販売ページに移動します。無料試し読みも可能です!

最弱と呼ばれた少年、実は最難関ダンジョン攻略済み

― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しい物語をありがとうございます。 続きが気になります!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ