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第4話 ルクスの実力


 《ノームの洞窟》のとある階層にて。


「本当に凄いですね」


 心底感嘆した様子でロゼッタが呟く。

 多数の魔物を一掃したルクスに向けての一言である。


「ああ、さっき使った魔法か。前の階層をクリアした時に習得した魔法なんだけど、使い勝手が良くて重宝してるよ」

「いえ、私が言ったのは師匠に対してです。そもそもあの階層まで一人で行けることが異常ですし、魔法の発動速度も異常です。普通、強力な魔法は発動までにそれだけ時間がかかるものなのに」

「うーん。ずっとダンジョンに潜ってるからなぁ。慣れかな?」

「……慣れの一言で済ませる師匠はやっぱり異常です」


 あからさまな溜息をついて、ロゼッタは額に手を当てた。


「ロゼッタだって今この階層にいるじゃないか」

「私が今ここにいられるのは師匠のおかげです。こんな深い階層を一人でなんて、とても探索できませんよ。さっきだってはぐれの魔物を撃退するのが精一杯でしたし」


 ロゼッタはまた溜息をつき、今ひとつ自覚のないルクスをジトッとした目で見つめる。

 ルクスはそんなロゼッタを見て何故か、絵になるなぁと場違いなことを考えていた。


「それより師匠、公表しなくていいんですか?」

「公表って、何を?」

「私たちが今いる……というか師匠が見つけたダンジョンの新階層のことです」


 ロゼッタが人差し指をチョンチョンと下に向ける。


 ――この世界に何故ダンジョンというものが存在するのか。


 それはまだ明らかになっていない。


 森林など、一部の例外はあるが、基本的に地下に続いているものが多く、階層が深くなるほどに出没する魔物が強力になるという法則がある。

 しかしその原理は不明である。


 遺跡など、古代の建造物から下に伸びているダンジョンも多いため、古代人が遺したものなのではないかというのが有力説だったが、未だに不明点が多い。


 一定の階層まで到達すると、魔法が習得できるという現象も解明に至っていない。


 火で肉を炙れば旨いのと同じように、原理や理屈を知らなくとも有効活用できるものであれば利用してきたのが人類なわけだが、ダンジョンもまた然りというわけだ。


 そんな謎多きダンジョンなのだが、一つだけ定説とされていることがある。


 ――それは、ダンジョンというのは多くとも「10階層まで」という認識である。


 ルクスたちが今いる場所は、その定説を覆すものだった。


「公表すれば師匠も一躍時の人になれると思うのですが」

「うーん、興味ないなぁ。それに、以前ロゼッタが言っていたじゃないか。公にしたら間違いなくAクラスに昇格するだろうって」

「言いましたが」

「それはあんまり……。というかAクラスって課される課題が多いんだろ? だったら俺は今の気楽なFクラスの方が性に合ってるし、ダンジョンに潜れる時間も増えるし」

「はぁ……。残念です」


 ロゼッタは言葉通り曇った表情を浮かべる。


 そしてその後で「私は師匠と一緒のクラスが良いのに……」と、自分だけに聞こえる声で漏らしていた。


   ***


 一方その頃、リベルタ学園の職員室にて――。


「オリオール先生。何を見ていらっしゃるんです?」


 ルクスがいるFクラスの担任教師であるオリオールが、何やら難しい顔をして一枚の羊皮紙を見ていた。


「あ、これはこれはエレイン先生。今日もお美しいですね」

「ありがとうございます。それで、何ですかこれ?」

「はぁ、取り付く島もない……。いやね、さっき王都の魔法師団から届いたんですよ」

「魔法師団から? 何が書いてあったんです?」

「まだ推測の域を出ないらしいんですがね。何でも、ダンジョンには10階層よりその先があるかもしれないってことなんですわ」


 オリオールは言って、ボリボリと頭を掻く。


「えぇ? 10階層より先ですか?」

「はい。11とか12があるかもってことなんでしょうなぁ」

「もしそれが本当なら大ニュースじゃないですか」

「まあそうなんですが、どうにも魔法師団側も自信が無いような書き方でして。要はもし10階層より先の階層が見つけられたら連絡がほしいって文書ですな」

「ダンジョンの階層は深くなるほど強力な魔物が出ますからね。もしあるとしたらですが、間違って生徒が立ち入らないように注意喚起しなくては」

「ですね。とりあえず、この文書は学園長の方に回しときますわ」


 オリオールは羊皮紙を畳み、元入れてあった封筒に仕舞う。

 そして、せっかくの話す機会を逃すのが惜しいとでも考えたのか、別の話題を振ることにした。


「そういえばエレイン先生の妹さん、凄いですな。この前もA級ダンジョンを攻略されたんでしょう?」

「ああ、ロゼッタですか。そうですね。でも本人はまだまだだって言っていましたよ」

「へぇ、そりゃまた。A級ダンジョンですら通過点ってわけですか」


 オリオールはロゼッタの向上心が故の発言だと思ったが、エレインからは別の答えが返ってくる。


「いえ、それが何でも、師匠と呼ぶ人ができたとか。その方に刺激を受けているみたいです」

「師匠? あのロゼッタさんほどの実力者が?」

「はい。誰なのかは内緒と言っていましたが」

「ふーむ。どんな人物なんでしょうなぁ。ロゼッタさんが師と仰ぐほどの人物とは。学園内……にはいないでしょうな。魔法師団の師団長とかでしょうか」

「それはあるかもしれませんね。何と言っても王国最強の魔導師と呼ばれるくらいですし。……ちょっとクセの強い女性みたいですが」


 そんな談笑を交わしながら時間が経ち。

 エレインは日が迫っている学園祭の広報資料の準備があるからと去っていった。


「さて、それじゃコイツを学園長に届けますかね」


 オリオールは独り呟き、手にした封筒に目を落とす。


(しかし、10より先の階層があるかもしれない、ねぇ……。にわかには信じがたいが)


 胸の内で懐疑的な思考を巡らせながら、オリオールは自分の席を立った。


   ***


「よっし。今日はここまでにするか」

「お疲れ様でした、師匠。私はあまり倒せませんでしたが、今日も勉強になりました」


 ロゼッタが言って、ペコリと頭を下げる。

 ルクスとしては頭を下げられるようなことをした自覚がないだけに、照れて頬を掻くばかりだ。


「それにしても師匠、まだまだ余裕ですね」

「そんなことはないさ。魔物も強くなってきたからな。でも、目標の階層まであともう少しだ。……と、ちゃんと記録しておかないとな」


 ルクスはそう言って、地面に指で何かを描いていく。

 それは複雑な紋様の魔法陣で、青白く発光している。


 ルクスが描いたそれは、記した場所まで瞬時に戻ることができる、転移術式と呼ばれるものだった。


 こうして記録しておけば目的の階層までの移動時間を大幅短縮でき、ルクスからすれば様々な魔法である。


 魔法陣を描き終えたルクスは、懐から小さな本とペンを取り出す。


「こっちにも記録して、と」


 その本は、ルクスがその日に行ったダンジョン探索の到達点を記したノートである。


 ルクスがペンを走らせた後には、こんな文字列が記載されていた。



【ノームの洞窟:197階層】




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元社畜の転生おっさん、異世界でラスボスを撃破したので念願の異世界観光へ出かけます ~自由気ままなスローライフのはずが、世界を救ってくれた勇者だと正体バレして英雄扱いされてる模様~





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