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第31話 ロゼッタの修行(おまけ付き)


「そういえば師匠って」

「ん?」


 放課後――。


 ルクスとダンジョン探索に同行していたロゼッタがふと呟く。


 昼休みの際、学園裏の丘でルクスと昼食を共にしたロゼッタは、放課後のダンジョン探索の約束を取り付けることに成功していた。


 訪れたのは中級のダンジョンであり、ルクスとロゼッタの二人は既に第10層まで攻略している場所だ。

 にもかかわらず再度訪れているのは、ロゼッタが申し出た鍛錬のためである。


 この場所は様々な種類・属性の魔物が出現することから、修行の場にもってこいなのだ。


 ロゼッタ自身、相当な実力の持ち主なのだが、当人からすればまだまだらしい。

 自分が師事しているルクスに憧れ、その強さに近づきたいと、日頃から思っていた。


「いや、師匠って一体、何種類の魔法を使えるのかなぁ、と。相当多いことは確かだと思うんですが」

「使える魔法の種類か。確かに、どれくらいだっけ?」


 ルクスは指を折り、自身が習得した魔法名を口にしながら数えていく。


 そして、その往復が10を超えたところで、ロゼッタはストップをかけた。


「わ、分かりました師匠。もう大丈夫です」

「そう? まだ半分もいってないけど」

「……師匠って、自分の強さに無自覚なわけじゃないと思うんですが、他の人と比べてどうかってところに無頓着すぎますよね」

「うーん? 強いからとか魔法がたくさん使えるから偉いってわけでもないだろうし? まあ、色んな魔法を使えた方がダンジョン探索は(はかど)るだろうけどな! はっはっは」

「……私は今、改めて凄い人に教わっているんだなぁと実感しています」

「いや、俺は別に教えてるなんて偉そうに言うつもりはないんだけどな」


 ロゼッタがしみじみと頷く中、ルクスは短く溜息をついた。


 そもそも、ルクスのことを師匠と呼ぶのはロゼッタの一存である。

 ルクス自身はこそばゆい思いもあるのだが、呼び方は別に自由で良いかと思った結果、今のような形になっている。


「と、魔物が出ましたね。それでは師匠、私の戦い方を見て足りないところがあれば遠慮なく指摘してください」

「おっけー」


 現れたのは獣系の魔物と、ダンジョン内の湖から這い出してきた水棲系の魔物が数体。


 ロゼッタは自身が得意としている氷魔法を駆使しながら、魔物の群れを難なく撃破していった。


 その様子を見ながらルクスが「おー」と呑気な声を漏らし、パチパチと手を叩く。


「ふぅ。どうでしょうか、師匠」

「いやぁ、十分すぎるんじゃないかな。この前のイビルローズとの戦いでも思ったけど、やっぱりロゼッタの氷魔法は一級品だな」

「そ、そうですか。そう言われると嬉しいものですね」


 ロゼッタは頬をわずかに紅潮させ、自分の銀髪を指でくるくると弄っていた。


 一つ補足すると、ロゼッタほどの実力者ともなれば褒められることは日常茶飯事だ。

 先日のダンジョン攻略実践授業でもあったように、他の生徒の模範として戦闘を任せられることもあるくらいなのだから。


 それなのにロゼッタが今照れていた理由は至極単純。

 褒めてくれた相手がルクスだったからである。


「でも、ここをこうしたらもっと良くなるとかはないでしょうか? やっぱり師匠に近づくためにはもっと腕を磨かなければと思いまして」

「うーん、そうだなぁ」


 ロゼッタが熱心に聞いてきたため、ルクスもまた真剣な表情で考え込む。


「ロゼッタの使う氷系の魔法はさっきも言ったけど確かに一級品だ。ただ、もっとバランスよく色んな属性を使った方が良いだろうな」

「色んな属性の魔法を、ですか」

「ああ。きっとこのクラスの魔物であれば使う魔法は一辺倒でも十分だと思う。ただ、前に《ノームの洞窟》の最下層まで潜った時に思ったんだよな。扱える魔法のバリエーションを増やしておかないと厳しいって」

「なるほど。師匠が前に話していた魔物たちは凄く強力だったと聞きましたしね」

「例えば、さっきの水棲系の魔物なんかを相手にしてるのを見ると、普通の獣系の魔物を倒すよりも若干だけど時間がかかっていたよな? たぶん、氷系の魔法に耐性があったからなんだろうけど」

「うぐっ……。確かに」


 魔物の群れを難なく一掃するという結果を残しているくらいなのだから、ルクスの言葉は本来気にするまでもないことだ。


 しかし、更に上を目指すロゼッタにとっては必要な指摘である。


「でも、なるほど。そうなるとやはり扱える魔法の数も増やしていった方が良いですね」

「だな。《ウンディーネの大氷窟》をクリア済みだと思うけど、他の八大精霊ダンジョンもどんどんチャレンジしてみて良いと思う。攻略すれば新しい魔法も習得できるだろうしな。って、俺もまだ全部攻略したわけじゃないから偉そうに言えないけど」


 ルクスの言葉を聞いて、ロゼッタはその好機を逃さなかった。


「あ、それなら、今度私と一緒に八大精霊ダンジョンの攻略に行きませんか? ほら、その……《ノームの洞窟》みたいに、第10層より下の階層を見つけられれば師匠にとっても有益でしょうし」

「ん、そうだな。ノームのじっちゃんが戻ってきたら色々と聞いてみても良いだろうしな」

「決まりですね! それじゃあ、今度一緒に八大精霊ダンジョン巡りをしましょう!」


 ロゼッタは笑顔を弾けさせ、胸の前で両拳を握ってみせる。

 それは文字通りのガッツポーズだった。


 八大精霊ダンジョンというのは本来、最難関ダンジョンと位置づけられるほどの場所であり、「巡りましょう!」などという軽い調子で言うものではないのだが……。


 しかし、またルクスと一緒に出かける約束を取り付けることができたロゼッタにとって、そんなことは些末(さまつ)な問題だった。



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