第29話 【リベルタ通信:速報号】生徒たちを救った英雄
読者の皆さまへ
第2章最終話となります。
あとがきに作者からのメッセージがございますので、
ぜひお読みいただけると嬉しいです。
それでは、本編をお楽しみくださいませ。
【リベルタ通信速報号 発行:リベルタ学園新聞部】
●初級ダンジョンに現れた黒い霧、そして英雄
既にご存知の読者諸君も多いかと思うが、大変な事件が起きた。
初級ダンジョン《白水晶の遺跡》にて、謎の黒い霧が噴出したのである。
この黒い霧については当新聞部や学園の先生方も調査中であり、詳細はまだ分かっていない。
しかし、人体に有害な気体であることは確かなようだ。
ダンジョン内に噴出した黒い霧を吸い込んだ生徒数名が、意識を失うという事態に陥ったからである。
これまで聞いたことのない謎の気体なだけに続報が待たれるが、新たなことが分かり次第、こちらのリベルタ通信でも情報発信していけたらと思う。
さて、話を事件の方に戻そう。
事件が起きたのは二日前の休日、その朝のことである。
場所は《白水晶の遺跡》。
初級に区分されるダンジョンであり、魔法を習得できる魔法陣も無いことから、足を踏み入れたことがないという生徒も多いだろう。
ダンジョン内には白い水晶のような鉱石が多数見受けられ、幻想的な景色が味わえることから、一部の生徒たちの間ではデートスポットとして人気という噂もあるが、その話は置いておく。
事件は、《白水晶の遺跡》に先述の黒い霧が発生したことから始まる。
休日ということもあって《白水晶の遺跡》を訪れていた生徒数名を、謎の黒い霧が襲ったのである。
黒い霧を吸い込んだ生徒たちは、意識が朦朧とするのを感じ、慌ててダンジョンの入口まで戻ったという。
しかし、そこで事件は終わらない。
ほとんどの生徒が自力で脱出できたものの、ダンジョンの中にはまだ二人の生徒が残っていたのだ。
入り口まで逃げおおせた生徒たちも意識朦朧とし、ダンジョン内には増え続ける黒い霧。
そこへ現れたのが、ロゼッタ・シトラス副生徒会長だった。
最高峰のAクラスに所属し、学園でもトップクラスの実力を持つとされているロゼッタ副会長が、なぜ休日の朝から初級ダンジョンを訪れたのか疑問に思う読者諸君も多いだろう。
ロゼッタ副会長に直接話を聞いたところ、偶然居合わせたとのことだったが、そこはクールかつ品行方正で知られるロゼッタ副会長のこと。
まさか異性と一緒にデートスポットを訪れていたということもないだろう。
これは当新聞部の勝手な推測になるが、彼女は生徒会の人間として、日頃から各ダンジョンに何か異変が無いか、危険な目に遭っている生徒はいないかなど、見回りをしているのではないだろうか。
だとすれば、休日の朝から他の生徒のために自分の時間を割いて初級ダンジョンまで足を運ぶという行為に尊敬の念を抱かざるを得ない。
いずれにせよ、ロゼッタ副会長は《白水晶の遺跡》を訪れた。
そして、その《白水晶の遺跡》には有害な黒い霧が満ちており、中に二人の生徒が取り残されていた、ということである。
入り口で生徒から話を聞いたロゼッタ副会長は、迷うことなくダンジョンへと突入したらしい。
その数十分後には取り残されていた生徒たちを救出することに成功したとのことだ。
始めに抜け出していた生徒たちの証言によれば、黒い霧の影響か、ダンジョン内にはおよそ初級ダンジョンには見合わない魔物たちが出現していたという。
ロゼッタ副会長の話でもダンジョンの第10階層には凶悪な植物系の魔物がいたという話もあり、それを掻い潜って生徒二人を救出した彼女には称賛の意を示したい。
まさに英雄とも言える活躍だ。
なお、入り口で臥せっていた生徒たちによれば、偶然居合わせたFクラスの男子生徒が、ロゼッタ副会長に同行したという話がある。
恐らく生徒二人を入り口まで運ぶための人手に過ぎなかったと思われるが、ロゼッタ副会長は魔物の跋扈するダンジョン内でこの生徒のことも守護しながら最下層まで辿り着いたということになる。
ロゼッタ副会長はこの男子生徒がいなければ生徒たちの救出は成し得なかったと明らかな謙遜で語っているが、このことからも彼女の謙虚な人間性が垣間見えるというものだ。
ところで、何故多くの生徒たちが行動不能に陥るほどの黒い霧が満ちたダンジョン内に入ってロゼッタ副会長とこの男子生徒は無事だったのだろうか?
このことについてロゼッタ副会長は言葉を濁していたが、恐らくそこにも彼女の強さの秘密があるのではないかと思われる。
今回の記事は速報号のため、簡易的な事件のあらましを語るものになっているが、今後も当新聞部では事件の更に詳しい情報を掲載し、事件の対処に当たったロゼッタ副会長を追っていく所存である。
とにかく、この速報号をご覧になっている読者諸君においては、生徒たちを救出してくれた英雄にぜひとも万雷の喝采を送ってほしいと意見を述べ、当号を締めさせていただく。
(担当記者:リベルタ学園新聞部 ミーリ・グロワール)
お読みいただきありがとうございます!
ここで第2章が終了となります。
●○● 読者の皆様へ大切なお願い ●○●
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