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最弱と呼ばれた少年、実は最難関ダンジョン攻略済み ~ダンジョン探索を楽しんでいたらエリートクラスの美少女から弟子入り志願されています~ 書籍化&コミカライズ化決定!  作者: 天池のぞむ
第2章 精霊と少年と少女と

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第24話 瘴気に染められた魔物


「この階層にもいなかったか……」


 《白水晶の遺跡》の第9階層までを捜し終え、それでもまだ行方不明の生徒たちは見つけられていなかった。


 ルクスは懐中時計を取り出し、遺跡に入ってからの経過時間を確認する。


 入り口でノームが示した30分という時間は、黒の瘴気の中での活動限界。

 言い換えれば生命が保障される時間でもあった。


 ――その猶予時間が、残り10分。


 僅か20分足らずで魔物の跋扈(ばっこ)するダンジョンの1から9までの階層を踏破するというのは異常な速さである。


 しかしそれでも、タイムリミットは刻一刻と迫っていた。


「残りはこの下の層だけだな。ロゼッタ、大丈夫か?」

「まだまだ平気です。それに、今は弱音を吐いている時ではありませんからね」


 ルクスの言葉を受けたロゼッタが笑みを浮かべて返す。


 時間が制限された中での連戦に魔法の連発だ。


 疲労が見えていないと言えば嘘になるだろうが、ロゼッタもルクスも、今は生徒たちの救出をと急いでいた。


 そして、《白水晶の遺跡》の第10階層――。


「やはり瘴気の発生源はここのようじゃの」


 ノームが呟いた言葉通りだった。


 第10階層は一面が黒い霧に包まれており、視界は不良。

 本来は幻想的な光景を演出するはずの白水晶も、今はただ黒く濁っていた。


「この瘴気がここの魔物にも影響を与えているのは間違いないよな」

「そうですね、師匠。明らかに初級ダンジョンの強さではありませんでしたし」


(もしこの階層が発生源なら、更に強力な魔物がいてもおかしくない、か……)


 ルクスがそんなことを考えながら歩を進めていたところ、違和感を覚える。


 それまでは遺跡の中ということもあってか、比較的平らな石畳だったのに、突然ゴツゴツと隆起した足場に変わっていたのだ。


(これは、植物の根か? でも、以前このダンジョンに入った時には植物なんて……)


 そこまで考えた時、ルクスは前方から迫る風切り音を耳にする。


「――っ!」


 それが何であるかを確認する間は無かった。


「伏せろ!」

「きゃっ――」


 ルクスは隣にいたロゼッタを押し倒し、二人で地面の上を転がる格好になる。


 それは突然の行動だった。


 半ば反射的に、ロゼッタの頭には困惑と歓喜の感情が駆け抜けるが、ルクスがそんな脈絡も無い行動を取るはずはないと思い直し、すぐに状況の理解へと及ぶ。


 先程までロゼッタが立っていた場所を何かが通過していったのだ。


「《一陣の旋風(シルフィード)》――!」


 ルクスが風魔法を使用したことで、辺りを覆っていた黒の瘴気が一時的に晴れる。


 すると、奥にいる()の正体が明らかになった。


「あれは……」


 ロゼッタに手を回していたルクスが視線を上げて呟く。


 一方でルクスに抱えられたままだったロゼッタは、これが別の状況だったならどんなに願ったことだったかと、雑念に支配されそうになった。

 が、すぐにその考えを打ち払い、ルクスと同じ方向を見やる。


 ――そこにあったのは一本の花とも草とも言えないような出で立ちの植物だった。


「やはり、瘴気はコイツの仕業か……」

「ノームのじっちゃん、何か知ってるのか?」

「うむ……。あれは、魔界の植物――イビルローズじゃ」

「イビルローズ? それに魔界って?」

「詳しくは後で話す。それより注意しろルクスよ。あやつの長い蔦は脅威じゃぞ」


 ノームの示した通り、イビルローズと呼ばれた植物は何本もの蔦を持っていた。


 それらはウネウネと触手のように動き回っており、先程通過していったのはあの蔦かとルクスは理解する。


「師匠、あれを……」


 と、起き上がったロゼッタがイビルローズを指差して呟く。


 奥側の蔦に絡め取られていた二つの人影。


 それは、行方不明になっていた生徒たちの姿だった。



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