第19話 最下層ダンジョンからの帰還
読者の皆さまへ
第1章最終話となります。
あとがきに作者からのメッセージがございますので、
ぜひお読みいただけると嬉しいです。
それでは、本編をお楽しみくださいませ。
「《精霊召喚魔法》? それって、ノームのじっちゃんを召喚できるってこと?」
「いかにも」
ルクスが問いかけるとノームは頷く。
その顔には笑みが浮かんでいて、ルクスが魔法を習得できたことを喜んでいるように見えた。
「ふーん。この魔法を使うとノームのじっちゃんをねぇ」
「……ルクスよ。お主今、こんな小さいジジイがそんな凄いのかと思ったじゃろ」
「ギクッ」
「まったく、分かりやすい奴じゃ。まあ、真っ直ぐとも言えるがの」
「い、いや、ノームのじっちゃんはすごく喋りやすいし、俺としても初めて会えた精霊がじっちゃんで良かったと思ってるよ。うん、ほんとに」
「はぁ、下手なフォローなんぞせんでもいいわい」
ノームは溜息をつき、言葉を続ける。
「よいか? 精霊召喚魔法というのは、単に精霊を召喚するだけに非ず。召喚した者が精霊の力を行使し、様々な現象を引き起こす魔法なんじゃ」
「様々な現象?」
「そう。そしてそれは普通の魔法の比ではない」
「どんなことができるんだ?」
「そうさのぅ。色々あるが、例えば分かりやすいもので言うと、この階層まるごと土に埋めることくらいならできるかの」
「いっ!? そ、それってとんでもなく凄いんじゃ……」
「じゃろう? しかし、現にルクスはそれだけの力を得たわけじゃ。下手に使うと自分や周りの人間を巻き込みかねんからな。使う時は注意するのだぞ。適性を持っていたお主なら大丈夫だと思うが」
「わ、分かった」
ルクスはノームに言われたことを噛み締め、コクコクと頷く。
その素直な反応が気に入ったのか、ノームもまた柔らかい笑みを浮かべて頷き返した。
そして、手を握ったり開いたりしているルクスをじっと見つめ、ノームはあることを決める。
「さて。ところでじゃ、ルクスよ」
「ん?」
「お主、洞窟に寝泊まりしてるわけでもあるまいし、帰らにゃならんのじゃろう? 聞いたところ学園とやらにも通っておるようだしの」
「あ、うん。学園は休みだから別に良いんだけど、明日はちょっと予定があるから、確かに帰らないとだな」
「ほう? 予定とな?」
「知り合いの女の子とダンジョンに潜ろうって約束をしてて」
「ぷっ。ははは! 何じゃルクス。お主なかなか隅に置けんのぅ!」
ノームがゲラゲラと笑い、ルクスは「そんな笑うことかなぁ」と呟きながら頭を掻く。
「まあいいや。ノームのじっちゃん、色々とありがとな。また話したいし、そのうち会いに来るよ」
「ああ、またな」
「……?」
意味深に笑ったノームが引っかかりつつも、ルクスは200層に転移術式の魔法陣を設置する。
そして、いつもダンジョンから帰還する時に記録しているノートを取り出し、そこに「ノームの200階層、攻略!」と書き込んだ。
***
「あ、師匠っ!」
ルクスが転移術式でダンジョンの入口まで戻ると、そこにはロゼッタがいた。
既に辺りは暗くなっており、ロゼッタの銀髪が月の明かりに照らされている。
「ロゼッタ、もしかして待ってたのか?」
「はい。生徒会の仕事がついさっき終わったものですから、師匠そろそろ終わったかな~、なんて」
「そっか。わざわざありがとな」
ルクスはそう言って礼を言ったが、ロゼッタの発言は嘘である。
実は二時間以上も前に生徒会の仕事は終わっており、ルクスに会うためにずっと待っていたのだ。
ルクスは歩きながら、今日のダンジョンであった出来事をロゼッタに伝えていく。
――でさ、デカい骨の魔物とか壁の魔物がいてな。
――さすが200階層ともなると違いますね。でも、それに勝っちゃう師匠はもっとさすがです。
――あと、精霊にも会えたんだ。気のいいじっちゃんだったな。
――精霊さん! 私もぜひお会いしてみたいです!
――ああ。転移術式で記録したから、今度ロゼッタも一緒に行こうぜ。
――は、はい! ぜひっ!
――それから明日のダンジョン探索だけど。
そんな微笑ましいやり取りを交わしながら歩く二人。
一人は楽しそうに話し、一人は興味深く耳を傾け。
そして、その様子を上空から一匹の生物が見守っている。
「なるほどのぅ。うんうん、青春じゃ」
優しげな笑みを浮かべていたのは、こっそりとルクスに付いてきた精霊、ノームだった。
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