第13話 音魔法と新たな敵
《ノームの洞窟》198階層を攻略し、下層に続く道を見つけたルクス。
「それにしても」
ルクスはゴツゴツとした岩が露出している坂を下りながら呟く。
「八大精霊ダンジョンって言われてるのに、精霊、いないよなぁ。いたら会ってみたいんだけど」
――八大精霊ダンジョン。
それは、リベルタ学園周辺でも最難関の攻略難易度を誇るとされるダンジョンの総称である。
これらのダンジョンにはそれぞれ「火」「水」「風」「土」「木」「月」「光」「闇」を司る精霊が住んでおり、それら精霊の属性にちなんだ魔法を習得することができる。
これがリベルタ学園の教本にも書かれている内容だった。
また、各ダンジョンの第10階層では極めて強力な魔法や利便性の高い魔法が眠っていて、どれか一つでも習得できた者は例外なく学園の歴史に刻まれると言われるほどだ。
学園内でもエリート中のエリートと評されているロゼッタなども、この内、水の精霊ダンジョンを10層まで攻略している。
ちなみにルクスがそのことを祝った際、当のロゼッタからは「師匠の半分もいっていないんですから、まだまだです」という言葉を頂戴していた。
「お、ここが199層か。どれどれ」
次なる階層に到着したルクスが手をパチンと叩き、ある魔法を使用する。
と、澄んだ音が洞窟内に反響し、ルクスはその音に耳を傾けた。
「うん。やっぱりあと2つだな」
反響音を聞き終えたルクスが呟き、舌なめずりをする。
その時、ルクスが使用したのは初級の音魔法である。
発生させた音波を増幅させる効果があるが、それ自体は別に珍しい魔法ではない。
というより、この魔法は本来、吟遊詩人などが自身の演奏をより多くの聴衆に届けるなどの使用法で用いられることが普通なのだ。
普通の人間には、そもそもダンジョン内でこの魔法を使用する発想自体が浮かばない。
しかし、ルクスはこの方法によって、ダンジョンには世間で言われている10層よりも先があることを発見していた。
「あの時はびっくりしたよなぁ。10層の壁をぶっ叩いたら下に降りる道が現れるんだもん。一緒にいたロゼッタも驚いてたっけ」
《ノームの洞窟》の深層へと続く道を発見した時のことを思い出し、ルクスはうんうんと頷く。
「他の八大精霊ダンジョンで使った時も、まだまだ奥があるような響き方だったからな。この洞窟をクリアしたら他のダンジョンの下に続く道も見つけに行きたいし。あー、ワクワクが止まらない」
妄想を膨らませ、ニヤケ顔のルクス。
と、そんなルクスの前に一体の魔物が現れた。
「あれは……初めて見る敵だな。というか、骨?」
その魔物を前にして、ルクスは思わず呟く。
――フシュルルル。
鋭く尖った四本の手足に、竜族を彷彿とさせる巨大な翼、威嚇するように開かれた口と、その全てが剥き出しとなっている。
それはまさしく、巨大な動く骨だった。





