第10話 Fクラスの友達
「ルクス君。その、本当に……本当にありがとう」
「ああ。良かったな、大事な腕輪が返ってきて」
ルクスがCクラスの生徒たちから腕輪を奪還した後でのこと。
二人は今、昼休みの時と同じ小高い丘の上にいた。
陽が沈みかけの時間で、リベルタ学園の広大な敷地がオレンジ色に染めらる様が何とも幻想的だ。
そんな中、コランはルクスが取り返してくれた腕輪を胸に抱きながら、何度も何度も頭を下げていた。
「アイツら、お話をしたらちゃんと聞き入れてくれたしな。あれならもうコランに絡んでくることもないだろう」
「は、はは……。聞き入れてくれたってより、ルクス君に恐れおののいていたような感じだったけど」
戦闘後のやり取りを思い出し、コランは若干引きつった笑みを浮かべる。
あの後、ルクスはCクラスの生徒たちに二つのことを約束させていた。
一つはルクスのことについての口外禁止。
といってもこちらはやんわりとだ。
連中からしても「Fクラスの生徒に屈服させられました」などと吹聴はしにくいだろう。
もう一つはコランに対して二度と絡まないということだ。
こちらの方がルクスとしてはもちろん重要だった。
もし今後コランにまた下手な手出しをした時には――とルクスが言うまでもなく、Cクラスの生徒たちは平伏していたので問題はないだろうが。
「でもさ、ルクス君」
「ん?」
「なんでルクス君ほどの人がFクラスにいるの? さっきの戦いぶりもそうだし、ルクス君なら普通にAクラスだと思うんだけど」
「あー」
「あの魔法、《念操作魔法》だってそうだよ。超高難易度ダンジョンを攻略しないと習得できない魔法でしょ? オリオール先生に言えば、きっとすぐにAクラスに転級できるよう掛け合ってくれると思うんだけど……」
コランの発言はもっともである。
しかし、今の環境がちょうど良いと感じているルクスからすると、クラス昇級にはあまり興味がないのだ。
むしろ上級クラスは時間を拘束されることも多いため、ルクスとしてはFクラスのままが良いとさえ思っていた。
……ぼっち気味で、友達はまだいなかったが。
ルクスがそのことを伝えると、コランは一瞬呆気に取られたような顔になる。
そして、吹き出して笑みを浮かべた。
「ルクス君って、やっぱり変わってるね」
「そうかな?」
「うん。変わってるよ」
妙に嬉しそうな顔を浮かべ、きっぱりと言うコラン。
そんなコランを見て、ルクスもまた笑みを返す。
二人が並んで座る丘には、夕暮れ時の爽やかな風が吹いていた。
***
「ルクスくーん!」
翌日――。
朝、教室で自分の席に着いたルクスの元へ、コランが駆け寄ってきた。
「おはようコラン。どした?」
「あの。これ、昨日のお礼にと思って」
コランはルクスに何かを差し出してくる。
それは昨日取り返したものとはまた異なる、一つの腕輪だった。
その腕輪には小さい石がいくつか散りばめられており、淡い銀の輝きを放っている。
「これは……?」
「昨日、作ってみたんだ」
「へ? 作ったって、コランが?」
「うん。僕、こう見えて手先は器用だから。あれだけのことをしてもらったのに、何もできないのは嫌だなと思って」
言って、コランはルクスに銀の腕輪を手渡した。
「お礼になってると良いんだけど」
「い、いや、ありがとう……。すっげぇ嬉しいよ」
「ううん。こちらこそありがとう、ルクス君」
「今日から寝る時も着けるわ」
「ね、寝る時は外した方が良いんじゃないかな」
ルクスはコランが作ってくれた腕輪を握りしめ、胸の内で呟く。
(昨日はダンジョンに行けなかったけど、こういうのも悪くないな……)
やや照れ隠しも含んだ思考を浮かべ、ルクスはコランからもらった腕輪を手にはめる。
ルクスにとってFクラスで初めての友達ができた。
そんな一連の出来事だった。
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