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佐々木桜と文房具  作者: 豊
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佐々木桜と消しゴム③

今は図工の時間だ。教室にはクラスメート達の賑やかしい声が響いている。図工では俺の出番は無いだろう。寂しくもあるが、こういう時間も悪くない。


「今から俺はマッドサイエンティストになる!」唐突にクラスメートの男の子が宣言したのだ。俺は微笑ましい気持ちになる。回りのクラスメートは興味津々だ。


俺の持ち主、佐々木桜は腕を組み、目は閉じ、顔は真っ直ぐのまま不動の状態を維持し続けている。クラスメートの男の子の宣言にも動じない。やはり他とは違う。


何をしているのかは見えないが、驚きの声、飽きれた声、様々な声が聞こえる、楽しそうな雰囲気だ。


「オペを始める!」マッドサイエンティストがデビューする瞬間だ。騒がしくなってきた所で先生がやってきたようだ。「何してるの!消しゴムをバラバラにしちゃ駄目じゃない!」俺は戦慄した、子供はなんて残酷なんだ、純粋であるが故に痛みが分からないのだ。バラバラになった消しゴムに痛覚はもちろん無い、しかし消しゴムとしての使命を全うできぬまま、無残な姿なり、哀れで仕方ない。


ふと俺は、持ち主である佐々木桜がこちらをじっと見ている事に気がついた、このタイミングで何故こっちを見るのか。佐々木桜の手がこちらに近づいてくる。動悸は激しくなり、瞳孔は開き、冷や汗が出る。しかし消しゴムにそんな機能は無い。ただのイメージだ。


気がつけば俺は佐々木桜の手の中におさまっていた。そしてゆっくりと…筆箱の中に入れられたのだ。授業の終了を知らせるチャイムが鳴っていたようだ。


「男子ってほんとバカだよね、桜ちゃん」クラスメートの女の子から声をかけられた持ち主は、先生に叱られて静かになっている男子生徒を見ながら、「私だったらもっとでっかい消しゴムを一刀両断する」そう一言返したのだ。


「桜ちゃんって変わってるよね」クラスメートの女の子の飽きれた言葉を聞きながら、俺はでっかい消しゴムじゃなくてよかったと、心からそう思った。



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