悲劇のヒロインなんてもういらない
孤独な殺し屋ナナ、母も家もない孤独な美少女は、世界を社会をとことん憎みながら、ピストル一丁だけを信じて、
人間の底辺を生きている。ある日、何不自由なく生きているガードマンの御幣島は、絶対に出会うことのない時間軸を生きるナナと出会ってしまう。二人の出会いはたくさんの人間を巻き込みながら後戻り不可能に突き進んでいく。
15枚シナリオです。
○字幕「2020年7月」
○病室
ベッドに夏天萌子(25)
夏天ナナ(5)が椅子に座り
母、萌子を見ている。
ナナ「ママ、来週の私のお誕生には
おうちに帰れる?」
萌子「ナナ、ごめん、病気くん
がママの体中にいるのたくさん」
ナナ「ママ必ず治るって・・?」
萌子「だから、ナナの6歳の誕生日は
一緒にいてあげれないかも」
萌子咳き込む。
ナナ「ママ、お誕生日にはたまごっち
買ってくれるって」
萌子「ごめんね、ナナたまごっち無理
みたい。でも、ママのお守りを
ナナにあげる。ママがお婆ちゃんから
貰った魔除けの弾丸よ」
萌子首にかけたペンダントを
開けて中の銀の弾丸を出す。
ナナ「お守りなんてくだらない、今更」
萌子「あのね、ナナが生まれて
きてくれたおかげで、ママは誰よりも
楽しい人生を送ることができたわ、
ナナのお陰で幸せだったよ、有難う」
ナナ「ありがとうって・・何それ?
あんなに頑張ってたママがこんな
辛い目に遭わなきゃなんないの?私、
全然納得できない!おかしい!」
萌子「ごめんねナナ。ママそろそろ
行かなきゃ」
ナナ「何言ってんの?病気治ったら
一緒にハウステンボス行くって
約束したじゃん」
萌子「ごめん、ごめんね」
ナナ「ママの嘘つき!頑張れば
お金持ちになれるって、生活も
楽になるって、ママ結局働きすぎで
病気じゃん、わけわかんない」
ナナの瞳が涙で潤み頬を流れる。
萌子「ごめんね、ナナ、ママずっと
貴方のこと見守っているから、
生きて、生きて、生き抜いてほ
しい・・こんなママでごめんね」
ナナ「ママ謝ることない!間違ってる
のはこの世界の方だよ、私はこの
世界を憎む、とことん憎む」
萌子目を閉じて力なく項垂れる。
ナナ、拳を握り唇を噛む。
○字幕「13年後2033年」
○マクドナルド
背中を丸めて、ハンバーガーを
食べる御幣島慧夜(18)。
財布の中に一万円札とメモを
みる。メモには「これで外で
夕飯食べて、母」とある。
御幣島「ふう、外でってことは、
帰ってくるなってことか・・」
桜の宮蘭子(18)が手に
食べ物に乗ったトレイを持っ
て御幣島の前に座る。
蘭子「慧夜、ここで何してんの?」
御幣島「ハンバーガー食べてる」
蘭子「それは、みたらわかる。
それならもっと美味しそうに
食べたらいいじゃん。眉間に皺
よっているよ」
御幣島「眉間の皺は生まれつきだよ」
蘭子「難しい顔してるから、悩み事
かなって心配になるでしょ」
御幣島「悩みなんてないよ、
マンションオーナーのお袋は外に
男作って帰ってこないし、親父は
ネットで小物アクセサリーの商売
始めて大儲け、金は唸るほどある。
悩みは老婆さんが同じ話題を1日に
10回もいうことくらいだよ」
蘭子「じゃあ、よかった。いつも通り
病んでるね。はい、お誕生日の
プレゼント、おめでとう御幣島」
蘭子、腕時計を差し出す。
御幣島「あ、そうか明日俺誕生日か」
蘭子「そう、20歳になるんでしょ、
学校一美人の、この私がお祝い
してあげてんだから、盛大に喜んで」
御幣島、時計を腕にはめる。
御幣島「わああ!すっごい嬉しい!
(わざとらしく)これでいい?」
蘭子「まあ、合格。幼馴染に気を
つかわさないでよね」
御幣島「蘭子の誕生日にも何か送るよ」
蘭子「無理しないでいいよ」
御幣島「じゃあ無理しないよ」
御幣島、鞄を持って立ち上がる。
蘭子「待って、もういくの?」
御幣島、急に床を見てかがむ。
御幣島の表情が明るくなる。
御幣島「あ、10円みっけた、今日は
いいことありそう」
御幣島10円玉を見る
御幣島「バイト行ってくるわ」
蘭子「もう・・ご飯くらい一緒に・・
行ってらっしゃい」
○スーパー太陽・事務室
上司の山田太輔(45)が
座っている。御幣島入る。
御幣島「お疲れ様です!」
山田「遅い!御幣島、てめえ
やる気あんのか?30分間には
仕事場入れよ!」
御幣島「ういっす!すみません!」
山田、防犯カメラの映像を
指差す。
山田「そら、怪しい女発見、行ってこい
御幣島!」
御幣島「わかりました!」
御幣島、事務所を出る。
○スーパー太陽・文具売り場
夏天ナナ(19)、赤いスカート
白いノースリーブのシャツを
着て文具売り場で消しゴムを
見てそのまま鞄に入れる。
ガードマン、御幣島慧夜(19)
がナナの後をつけている。
○スーパー太陽・食料品売り場
人でごったがえす果物売り場。
ナナ、りんごを一個取り
ポケットに入れる。後ろから
慧夜がその様子を見ている。
ナナ(M)「私は、夏天ナナ19歳。
変な名前。ママは私が幸福になる
ように願い、幸運のナンバー、7
にちなみナナという名前をつけた
らしい。しかしママは病気で呆気
なく死んだ。幸福の名前なんて
くだらない。世の中くだらない事
ばかり。大人なんて嘘ばっかりだ。
本当のことは何も話してくれない。
私は幸福とは正反対の疫病神だ。
大人になるなんてくだらない」
ナナ走って出口の方に行く。
○スーパー太陽・出口
ナナ、自動ドアをくぐろうとする。
防犯カメラが、ナナを追っている。
御幣島、ナナの腕を掴む。
御幣島「お嬢さん、りんご万引きしました
ね、ポケット調べさせていただきます」
ナナ、その場で呆然(演技)
ナナ「え・・・あ・・・」
御幣島「お嬢さん、名前は?住所と
電話番号、ここ書いて」
御幣島、手帳を出す。ナナ、
住所と電話をそこに書く。
ナナ「ガードマンさん・・ごめんなさい、
とってもお腹が空いてて・・本当に
ごめんなさい」
御幣島「とにかく、事務所へ来てください」
涙を流して抵抗するナナ、
御幣島の手がナナの手首を掴み
爪が食い込む。
ナナ「痛いっ!」
ナナの白いノースリーブに血が
とびシミになる。ナナ、キッと
御幣島を、睨む。
ナナ「いやあ!許して、ガードマンさん!御幣島「暴れないで、とにかくこっちへ!」
ナナ「やめてえ、誰か・・助けてえー」
○スーパー太陽・事務室(中)
机の奥に座ったナナ、
対面に座る、ガードマンの御幣島
御幣島「ポケットの中調べさせてもらい
ますよ、消しゴムと林檎があるはずだ」
ナナ、半ベソ(演技)でポケットを
裏返す。何もない。
ナナ「ガードマンさん、ひどい、私何に
もとってないわ」
困った顔の御幣島ドアを開けて、
課長の山田太輔(45)が入る。
山田「御幣島くん、生ぬるい、ほら、
お嬢ちゃん、上着脱いで貸して」
山田、強引にナナの上着を
脱がす。ナナ泣きながら抵抗する。
ナナ「いやだあ、やめて」
御幣島「ぼ、ぼく、お茶入れてきます」
御幣島、山田の強引なやり方を
見ていられず、事務の外に出る。
○スーパー太陽・給湯場(中)
御幣島、お茶を入れている。
御幣島「いくら仕事だからって、あれは
ないよな。俺あんな強引なの無理、
ガードマンなんて向いてないよ」
悲鳴が聞こえる。
ナナ「きゃーーーーー!!」
御幣島、事務室のドアを開ける
○スーパー太陽・事務室(中)
慌ててドアを開ける御幣島
御幣島「どうしましたか?」
血だらけの山田が床に倒れている。
ナナの姿はない。
御幣島「警察だ、いや救急車、だめだ
待てよ」
狭い事務所に御幣島と、
血まみれで倒れた山田だけが
残されている。
スマホを出して思い止まる御幣島。
慧夜「考えろ、何が起きた?どうした
らいい?落ち着け、落ちつけ、考えろ」
御幣島の心臓の音がする。
血まみれの山田を見る御幣島。
防犯カメラが壊れされている。
御幣島「まずい、これじゃ俺が犯人
みたいだ」
震える自分の手を見つめる御幣島
御幣島「探さなきゃ、あの子を・・」
御幣島、事務所から外に出る。
○川沿い(夕方)
川沿い堤防の階段に座るナナ、
林檎を持ったまま、白い服に
ついた血のシミを見る。
ナナ「お気に入りの服なのに野郎許さん」
ナナ立ち上がり、スカートの
ポケットから拳銃を取り出す。
林檎を空中に投げて拳銃で撃つ。
林檎砕け散る。
ナナ「あいつの頭、ふっとばしてやる」
ナナ、拳銃をポケットにしまう。
○御幣島の祖母宅(夜)
御幣島、遠くから、お婆さん宅を
見ている。警察官がいる。
御幣島「家はお袋の彼氏きてるから、
婆ちゃん家にきたけど・・警察官だ、
俺、やっぱり追われてるんだ」
ポケットからスマホを取り出す。
画面は真っ暗。
御幣島「電池切れてる」
御幣島、スマホポケットにしまう。
もう一度ポケットを触ると
10円玉が出てくる。
御幣島「さっき拾った10円」
○住宅街(深夜)
遠くにコンビニの灯りが見える。
御幣島「コンビニだ・・でも、お金は
スマホの中にしかないもんな・・」
御幣島のお腹が鳴る。
○コンビニ(中)
慧夜、コンビニに入る。
ベルが鳴る、蘭子に貰った
腕時計を見ると午前2時。
カウンターには誰もいない、
御幣島パンコーナーに行く。
御幣島「メロンパン・・うまそう・・」
御幣島ごくりと生唾を飲み、手を
伸ばす。拳銃を持ったナナが
無表情で銃口を御幣島のコメカミ
に当てる、驚く御幣島。
ナナ「よくも私の服に血のシミを
つけてくれたな」
御幣島「き、君は!」
ナナ「わたしゃ、おめえみたいな奴が
大嫌いなんだよ。生まれた時から
苦労らしい苦労したことないのに、
不幸そうなツラしてる奴がさあ」
御幣島「うそ」
ナナ「死にやがれ」
ナナが引き金に指をかけた時、
警察官が走って入ってくる。
警察官「いました!御幣島慧夜です」
ナナ「ちっ!邪魔が入ったか」
ナナ、振り返り武佐寂庄司
(33)に向け発砲する。
武佐寂血飛沫をあげて倒れる。
警察官A「警部どの!」
警察官Aナナに拳銃を構える。
警察官A「女、銃を捨てろ」
警察官B「落ち着け、あの女、
ただものじゃないぞ」
ナナ、御幣島のこめかみに
銃口を当てて、人質にとる。
ナナ「おっさん、そこどけよ、でないと
こいつの頭、ふっとばすぞ」
ナナ、御幣島に銃口を向けたまま
ゆっくりコンビニの外に行く
FIN
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