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反抗をしたその日に処刑を言い渡され、そのまま処刑台へと送られた。普通はもっと時間がかかるものだが、聖女が関わっているなら話は別。そのまま国王のもとへ案件が送られ、即処刑が決まったらしい。監視の騎士がベラベラと教えてくれた。
きつく腕を押さえられ、牢屋には行かずにそのままギロチン台まで送られた。ほぼほぼ一瞬で決まった処刑だというのに、足元には多くの民衆が集まっていた。王太子や聖女もあの様子を見ていたのかは、今となってはわからない。
「…そうだ。それで、初めて後悔して、怖くて涙と震えが止まらなかった時にお兄様が来たのだわ。それで…」
『…私がちょっと国を離れている間に、何やら大変なことになっているね。なぜ私の可愛い妹が、ギロチン台にいるのかな。しかも、こんなに乱暴に扱われて』
『っ、ノクス・ロサノワール!!!貴様、なぜここに…!』
『…大方、私のいないうちに済ませてしまおうってことだろうけど…馬鹿だねえ。帰ってきてフルールが処刑なんてされていて、私が、はいそうですかで済ませると思う?きっと父上もお許しにならないだろうなあ』
『だ、黙れ!貴様の妹は大事な女神の生まれ変わりを殺そうとした!それに処刑は陛下の決定だ!亡き貴様らの父親のことなんて知ったこっちゃない。わかったらそこで黙って見ていろ!!!』
『ふーん?そう、陛下の決定ねえ。…じゃ、こんな国いらないよね。死んでくれる?』
『え…?ぎゃ、ギャー!!!』
それからはあっという間だった。お兄様が放った炎が王宮を、王都を、森を、国を覆い尽くし、瞬く間に王国中が炎で焼き崩れた。
で、お兄様に抱かれてそれを上空から眺めていたところに、お兄様から…その、く、口づけをされて…、
「〜〜〜!!!」
あ、危ない。危うく叫び出すところだったわ…。
確認のために思い返してみたけど、やっぱりあれは現実で間違いない。だってあんな…あんなリアルな口づけが夢でたまるもんですか!
上唇と下唇を角度を変えてハムハムされて、思考がフリーズして無防備になっているところに───いやハムハムされている時点で防備もヘチマもないのだけど───す、隙間からぬるっとしてどこか甘美なお兄様の舌が!舌が!!!
「き、キャーーー!!!」
「お嬢様!?どうされました!?」
興奮しすぎてついにベッドでゴロゴロのたうち回っているわたくしを見て、悲鳴を聞いて飛び込んできたモカは瞬時に白けた表情になる。
「…お嬢様。朝からそんなに美味しそうな…ゴホン、火照った顔をされて…さっきは敢えてスルーしましたけど、もしかして、ノクス様の夢でも見られたのですか?」
「へ!?!?お、おおおおお兄様の!?どうしてかしら!?」
「…お嬢様、叫んでいたじゃないですか。『いけませんわお兄様!兄妹でこんな…!』って。もしかして、お嬢様はノクス様のことが…」
「な、なななななんのことかしら!?わたくしそんな、お兄様にく、口づけをされる夢なんて、そんなもの全くもって見ていないんですからね!?」
というかモカ、随分とわたくしの声真似が上手い。わたくし、あんな風に叫んでいたのか。それは確かに敢えてスルーしたくなる。だって、なんかとっても破廉恥だった。
「…ついに夢に見るまでなったか」
「?モカ、何か言ったかしら?」
「いいえ、何も。それより、はしたないのでベッドから起きてください。誰が髪も制服も調えると思ってるんですか」
「はーい」
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