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「……あ…」
「…クゥン」
いた、足元に。真っ黒でもふもふしていて、小首を傾げながらわたくしを見つめる生き物が。
…わたくしの、精霊が…!
「わんっわんっ!」
わたくしと目が合った途端、その子は嬉しそうにわたくしに飛び掛かってきた。
二本足で立って戯れてくる。
本当に、契約できた…!わたくしが、このわたくしが…!!
「あ、ああ…っ!本当に?本当にわたくしの精霊ですの?」
「わんわん!」
「これは凄い。あの魔力、恐らく闇の上位精霊だよ。フェンリルやガルムっぽいけど…まだ子供っぽいね」
「じょ、上位精霊?えっ…」
真っ黒でもふもふな可愛らしい狼のようなこの精霊は、確かにまだ子供っぽい。が、王太子の言葉に思わず撫でようとしていた手が止まってしまう。
上位精霊ですって?わたくしが?前回は魔法陣すら光らなかったのに??
困惑して王太子を見るも、嘘をついている感じはしない。なら、本当なのだろう。確かに、召喚時、光も風も凄かったけれど…。
わたくしは精霊と目線を合わせるためにしゃがんだ。するとこの子も、戯れつくのをやめて大人しくお座りした。これだけで、とても知能が高いのがわかる。
「……ふふ、上位精霊でも子供でも、なんでもいいわ。こんな可愛い子がわたくしの精霊になってくれたなんて、夢みたいだわ。精霊さん、わたくしと契約してくれてありがとう」
「!わん!」
ギュッと抱きつくと、嬉しそうに尻尾を振った。本当に、わたくしの精霊なのね…。嬉しすぎて、目の奥が熱くなってくる。
が、ここでみっともないところを見せるわけにはいかない。
ひとしきり撫でて堪能した後、わたくしは立ち上がり王太子に向き合った。そして深々とカーテシーを披露する。
「殿下、この度は本当にありがとうございました。おかげでこんなに可愛い精霊と契約することができました。これも全て、殿下がアドバイスをくださったおかげですわ」
「そんなかしこまらないで。僕は、授業で習うはずだったことをちょっと早く貴女に教えただけなんだから。遅かれ早かれ、きっと貴女は再挑戦していたはずだ」
「…確かに、再挑戦はしたかもしれません。ですが、それでも今日ここでこの子を召喚できたのは、殿下のおかげです。あの日図書館で殿下がアドバイスをくれ、今日見守ってくださっていたからこそ落ち着いた心で召喚することができたのです。ぜひ、何かお礼をさせてくださいませ」
「うーん…」
全て本心だった。だから思ったことをそのまま伝えたのだが、どうやら困らせてしまったらしい。王太子はちょっと眉を垂らしてしまった。
…かえって、迷惑になってしまったかしら…。
「……どんなことでもいい?」
「!はい!わたくしにできることなら、なんなりと!」
どうやら何かほしいもの…いや、王太子なのだから、手に入らないものはないだろう。だから、わたくしにしてほしいことがあるらしい。
だから嬉しすぎて前のめりに返事をしたら、苦笑されてしまった。
はっ…!わたくしったら、嬉しすぎてつい。淑女のすることではなかったですわね。王太子の御前だというのに、なんてこと…。
「し、失礼いたしましたわ」
「いや、気にしないで。寧ろ、貴女のそういうところは今後も見せてほしい。王太子だからって変にかしこまってほしくないんだ。だから、ある意味これもお礼になるのかもしれないけど…」
「?」
王太子はちょっと言うのを迷ったようだった。けれど、それも一瞬。
彼はわたくしに近づき、わたくしの右手を取った。そして、照れたように微笑んでこう言った。
「…貴女の名前を…フルールと呼ぶ許可をくれないだろうか?」
王太子は紳士です^^
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