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 前回、密かに憧れ続けていたこと。


 気にしないようにしていたけれど、闇魔術の名門家系に生まれ、かつ稀代の天才と言われたお兄様を持つ身としては、やはり精霊と契約できなかったことには劣等感を感じていた。


 それでも、わたくしの価値はそれだけでは決まらないと思い、実際にお兄様にもモカにもそう言われ、気にしないようにしていた。


 でも、もう一度時をやり直して思った。わたくしにとってこのことは、契約の授業を不快に思い、嫌いな勉強を進んでしようと思うほどには重要な事柄だったのだ。


 だって、貴族でも平民でも、魔術大国であるこのアルカディア王国では、精霊と契約できるのが普通。更に貴族なら、契約できて当たり前と認識されている。


 なのに、わたくしはできなかった。地位も美貌も持っていたのに、よりにもよって、お兄様の妹であるわたくしが。それはとても…とても悲しかった。


 だから、今回少しでも可能性があるのならそれに賭けてみたいと思う。


「………」


 風に耳を澄ませると、徐々に心が落ち着いていく。葉が揺れる音が聞こえ、普段は意識しない小鳥の囀りが幾重にも聞こえてくる。


 ……今だ。


「……我に従うべき魂よ。異界より姿を現し、今こそ我の前に跪け」


 そして呪文を唱えた瞬間、


「!?」

「っ、フルール嬢…!」


 魔法陣が凄い勢いで光り出した。強風が立ち上がり、あまりの強さに息もできなくなってしまう。


 …精霊の凶暴化という、恐ろしい事態になってしまったのかもしれないと恐怖で固まってしまう。


 たが、召喚主であるわたくしにはもうどうしようもできない。それに、わたくしが恐れるわけにはいけない。


 せっかく精霊が応じてくれたのだ。だから、恐怖を感じたのは一瞬で、ただただわたくしの精霊のことを想った。応じてくれてありがとうと、どうか仲良くしてくださいと心の中で語りかける。


 数秒後、風はおさまった。魔法陣の光も消え、わたくしはゆっくりと目を開く。


 と、そこには。

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