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「へ?」


 王太子は見事に反応を示さなかった。彼の演技が上手なだけ?いやでも、それにしてはあまりにも自然すぎて…。


 というか、


「つ、次の時間ですか?」

「うん」


 なんということだ。わたくしが調べようとしていたことは、思った以上に基礎の基礎だったらしい。


 これなら大人しく家に帰っていればよかった…。そうすれば、王太子にこんな形で暴露することにはならなかったのに。最悪な初対面だってきっと防げたはずだ。


 …ということは、前回既に授業で習っていたということだ。…まあ、既に一度履修済みという事実はわたくししか知らないことだし、これに関しては気にしないでおきましょう。ええ。


「…申し訳ありません、まさかそんなに基礎中の基礎のことだったなんて…この程度のことすら知らなかった自分が恥ずかしいですわ…」

「そんなことないよ。きっとノクス殿があえて魔術の知識に触れさせなかったのかもね」

「え…そんな、まさかお兄様でも、さすがにそこまでは…」

「でも、ここまで何も知らないのも不自然じゃない?噂によると、ノクス殿は見ただけでその人が何の属性でどの精霊と契約しているかまでわかるらしいし、もしかしたら、貴女を気遣ってのことだったのかも」

「あ…」


 …確かに、天才魔術師と言われるお兄様と同じ屋敷に住んでいるのにここまで魔術に関して知識がないのも不自然だ。わたくしが興味を示さなかったにしても、もう少し周りにそれらしきものがあってもいい。我が家は珍しい闇の家系でもあるわけだし。


 そしたら、前回も今回も、お兄様はわたくしが精霊と契約できないことを知って傷つくことのないように、見えないところで色々と気遣ってくださっていたのか。そういえばお兄様は魔術が得意な割には、わたくしの前ではあまり使うことはない。本人は、ずっと魔術を使っていると逆に使いたくなくなるんだよと仰っていたが…そっか、そうだったのか。


「…確かに、そうなのかもしれませんわ。お兄様はわたくしに、精霊は実はとても恐ろしいのだとよく言い聞かせてくださっておりました。だからわたくしにも、お兄様は契約している精霊を見せてくださったことはなくて…あれは、そういうことだったのですね」

「きっとそうなんじゃないかな。まあ、実際ノクス殿が契約しているのは闇の最上位精霊だから、恐ろしいというのもあながち間違いではないと思うよ」

「ふふ、そうですわね」

「あ、やっと笑ってくれた」

「え…?」

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