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「…い、いけませんわお兄様!兄妹でこんな…!!!」
「は?」
「え?」
再度迫ってくるお兄様の口づけを拒もうとすると、お兄様ではない、女性の怪訝そうな声が聞こえてきた。見るとそこにはわたくしの専属侍女のきょとんとした顔が。……あら?
「……あなた、モカ?」
「いかにも、外見だけは超一流のロサノワール公爵家長女フルール様の専属侍女を務めさせていただいております、中身も外見も完璧美少女の完璧侍女、モカですが」
「…そうね、そんな濃いキャラクターの侍女はモカで間違いありませんわ」
侍女なのに物怖じしないどころか厚かましい態度。そして何より、オレンジ色の外ハネミディアムヘアーという特徴的な髪型。間違いない、わたくしの専属侍女のモカである。
でもそっか、モカは生きていたのね。よかった…。
「…まあ、あなたのその態度は今は置いておいて。とにかく、あなたが無事でよかったわ!王国は無事?他の皆はどうなりましたの?あれから、いったいどれくらい経って───……」
「…はあ。お嬢様、また一瞬のうちに夢の世界へトリップしていたのですか?まったく、いい加減目を開けながら眠るのはやめてくださいよ。これから学園の入学式なんですから、しっかりしてください」
「……え…?」
安堵したばかりのわたくしの心臓がまた急速に嫌な音を立て始める。
確かにわたくしは、目を開けながら夢の世界へダイブできるという素晴らしい特技を持っている。でも、世界滅亡の危機に陥った今さすがに居眠りする余裕はないし、モカだってこんな場面で冗談は言わないはずだ。
…信じられない。信じられないけれど…。
わたくしの中で、嫌な仮説が組み立てられる。
「…モカ。今、入学式って言ったわよね?」
「そうですよ。まだ寝ぼけてるんですか?もうメイクしたんですから、顔は洗えませんよ」
「…そう。ちなみに、わたくしって今何歳だったかしら?」
「…8/26で16歳になる、ピッチピチの15歳です。お嬢様、本当に大丈夫ですか?ついに頭に何か異常が…」
あら、ついに頭の異常を疑われてしまったわ。普段なら「主であるわたくしに頭をおかしいと言うなんて、なんて失礼な侍女なの!今日一日クビですわ!」「お休みを頂けるんですか。では、遠慮なく」「ま、待ちなさい!やっぱりクビはなしよ。一生休みなくわたくしのお世話でもしていなさい!」なんてやり取りをしているところだが、わたくしも、ちょっと自分の頭が壊れてしまったかもと疑いたい。
辛辣で無表情がデフォルトのモカだが、少々寄っている眉から本気で頭の異常を疑っている…いや、心配しているのがわかる。
わたくし的にも、その方がよかったと思うのだけれど…。
「頭に異常って失礼ね。モカの言うとおり、ちょっと夢と混乱していたみたい。でも、もう区別がついたわ」
「…そうですか。ですが、具合が悪くなったらすぐに言ってください。速攻で医者を呼びますので」
「そうするわ。ちょっと落ち着きたいから、暫く一人にしてくれるかしら」
「わかりました。馬車の用意ができましたらお呼びしますね」
「ええ」
…多分、恐らくだけれども。
どうやらわたくし、学園入学の日まで戻ってしまったみたいですわ!?
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