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ブクマが70を超えました…!

いつも応援ありがとうございます!

 まあ、いつまでも悔やんでいても仕方がない。エリス様はわたくしのお友達だし、遅かれ早かれお兄様に紹介することになっただろう。それなら事前にお伝えしていたかったとも思わなくはないが、おかげでお兄様が変に何かするのを防げたと捉えることもできる。


 そう思ったら、今日紹介するのが最も良い選択肢に思えてきたわ。わたくしはお兄様の腕を離し、二人の間に立つ。


「お兄様、こちらわたくしのお友達のエリス様ですわ」

「お初にお目にかかります、エリスと申します。平民ですので姓はございません。美貌の公爵と呼ばれる閣下にお会いできて、光栄です」


 わたくしが紹介すると、エリス様は綺麗なカーテシーで挨拶をした。わたくしには及ばないが、なかなかに様になっている。


 それを見て、お兄様も綺麗な微笑みで挨拶をする。


「ご丁寧にどうも。フルールの兄、ノクスだよ。まさかフルールに初日から友達を紹介されるとは思っていなかったな。しかも、平民ねえ…」

「…お兄様は、エリス様が平民であることがお嫌ですの?」

「いや?私は頭の固い連中とは違って、その辺は寛容なつもりだよ。変な貴族連中よりはある意味安全かなあとも思うし」


 それは多分、ロサノワール公爵家の権力欲しさに近寄ってくることがないからという意味だろう。確かに平民相手なら、政治の陰謀に巻き込まれることは殆どない。


 ということは、お兄様が引っ掛かっているのは平民であること自体ではなく…、


「ただ、平民なのに随分と綺麗な挨拶をしてくれる子だなあと思って。豪商の娘でも、ここまで綺麗なカーテシーはなかなかできないものだから」

「………」


 やはり、そこに引っ掛かっておられましたか!


 わたくしは心の中でがくりと項垂れる。わたくしでさえも気づいたんですもの、優秀なお兄様が気づかないわけがなかった。


 わたくしに挨拶をした際もエリス様は綺麗なカーテシーを披露した。エリス様に記憶があるのかどうか、発言からだけだと聖女なのか聖女もどきなのか判断ができなかったが、あのカーテシーを見たことでわたくしは彼女が聖女で、記憶を持っていると確信したのだ。なぜなら、記憶のないただの平民にあんなに綺麗なカーテシーができるわけないのだから。


 それを指摘したら、エリス様はきっと困ってしまう。わたくしもそれによってわたくしにも記憶があることを知られるのが怖かった。だから結局、今まで触れずにいたのだけれど。


 お兄様にとっては、自分に記憶があるとバレようが関係ないということなのだろうか。そう思ったが、いや違う。


「ふふふ、まさか閣下にお褒めいただけるとは、至極光栄です。実は私、幼い頃から礼儀作法に関しては母に教えられてきたのです。母はもともと男爵家の娘でしたから、最低限のことは覚えておいた方がいいと言われまして」

「えっ、そうだったんですの?」


 それは初耳だ。エリス様のお母様は平民の男性と結婚したということか。


 ちらりとお兄様を見上げるが、「へえ、そうなの」と平然と答えている様子からは何を考えているのかはわからない。でも恐らく、お兄様のことだからエリス様の情報は前回ひと通り調べているだろう。


 エリス様はそう言うが、男爵家の娘があんな綺麗なカーテシーを教えられるとは思えない。お兄様もそれは承知の上だろう。


 前回に比べて聖女としての覚醒が早いのも、記憶があるからだと考えられる。だからお兄様は、エリス様に前回の記憶があると確信していらっしゃると思う。その上で見極めているのだろう。エリス様がどう出てくるつもりなのか。


 つまりお兄様にとって、目の前にいるエリス様は前回と変わらず敵なのだ。


「お、お兄様」


 そう思い至ったら、いてもたってもいられなくなった。お兄様の結論次第で、最悪エリス様は、今ここで消されてしまうかもしれない。


 それは嫌だ。今世では今日出会ったばかりで、正直エリス様のことをよく存じているわけではないけれど…それでも、エリス様のわたくしへの好意は本物だった。そんなエリス様を消させるわけにはいかない。


 わたくしはお兄様の側に行き、その腕を掴む。


「…フルール!顔が真っ青じゃないか…!」

「まあっ、大変!そういえば先ほども、具合がよろしくなさそうでしたものね。フルール様、ごめんなさい!お疲れなのに、わざわざ紹介していただいて…」

「…いいえ、わたくしの体力がないのが原因ですから。それに、せっかくできたお友達ですもの。すぐにでもお兄様に紹介したいと思ったわたくしの我儘ですのよ。だからエリス様は、どうかお気になさらないでね」

「フルール様…」


 そう、せっかくできたお友達なのだ。前回だって取り巻きはいたけれど、お友達はいなかった。王太子の寵愛が聖女に移った途端皆わたくしから離れ、聖女のもとへ行ってしまった。あれは皆、フルール・ロサノワールではなく未来の王太子妃という権力に惹かれていただけだったのだろう。


 でもエリス様は、王太子の婚約者ですらないわたくしをお友達と言ってくれた。わたくしのために手作りのサンドイッチを作ってくださり、今も本気で心配してくれている、正真正銘わたくしの初めてのお友達だ。


 だから、つい嬉しくてお兄様に紹介してしまったのだけど…もっとよく考えるべきだった。わたくしの方こそ、申し訳ないことをしてしまった。


「エリス様、また明日学校でお会いしましょう。それで、もしよかったら…お弁当、作ってきてくださる?エリス様のお料理、とっても美味しいんですもの。また食べたいわ」


 あれは本当に美味しかった。エリス様と一緒に食べる時間も楽しかったし、ぜひお願いしたい。


 そう言うと、エリス様はパッと笑顔になった。


「!ええっ、もちろんです!明日はサンドイッチじゃなくて、別のを作ってきますね!それでまた、あーんさせてくださいっ」

「えっ、あ、あーんはちょっと…は、恥ずかしいですわ」

「は、恥ずかしがるフルール様も、なんてお可愛らしい…!」

「え、ちょっと待ってあーんて何。ねえ、フルー、」

「ではエリス様、また明日!」

「はい、また明日」

「フルール?ねえ、あーんって何?フルールがされたってこと?しかも手作りのサンドイッチを?こら、フルール無視しないで…!」


 お兄様の手を引っ張ってエリス様から遠ざかる。


 ───ふう。なんとかエリス様消滅危機から脱したわ。暫くはお兄様とエリス様は会わせないように…は、ほぼ毎日登下校を一緒にしようとしているお兄様がいる限り難しいから、なんとかお兄様にエリス様を害さないよう説得しなければ。


 さて、どうやってこのわたくしが大好きすぎる変態魔術師を説得しようか。


 お兄様の声を無視しながら、わたくしは内容を考える。そんなわたくし達を見ている視線があって、それをお兄様とエリス様が密かに見ていたことに、わたくしは全く気づいていなかった。

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