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「…えっと、お兄様。何をしていらっしゃいますの…?」
「フルールを待ってたんだ。…ああ、これは別に私が何かしたわけじゃないよ。勝手に集まってきたから害はないし放っておいたんだけど、フルールが嫌ならすぐ解散させようか?」
一応何をしているのか聞いてみたところ、わたくしを待っていただけのようだ。待っているだけでこの人集りとは、我が兄ながら本当に恐ろしい。しかも、皆さんきちんと一定の距離を開けていらっしゃる。
ノクス・ロサノワールは絶世の美青年、王国一の天才魔術師ということで有名だが、それと同じくらい気難しいことも知られている。気難しいというか、気分屋というか…それを考慮してのこの間隔なのだろう。皆さん、よくわかっていらっしゃるわ。
わたくしは、お兄様が何かしでかす前に言った。
「いえ、皆さんお兄様を一目見たくていらしたんでしょうし、わたくしは構いませんわ」
「そう?あ、でもそれじゃあ私のフルールを見られることになるね。それは嫌だから、やっぱり…」
「いいえお兄様!それよりも、わたくしたちがここを去った方が早いですわ!ちょうど、紹介したい方もおりますの。ささ、お兄様。行きましょう?」
「紹介したい方…?」
わたくしの言葉に、お兄様はすっと目を細めエリス様を見る。
そこでわたくしは気づく。お兄様は記憶持ち。エリス様も恐らく記憶持ち。片や恋慕すら抱いている妹を処刑に追い込まれた兄、片や恋慕した相手の婚約者に暴漢を差し向けられ殺されそうになった聖女。この二人、混ぜるな危険の組み合わせじゃないの…!!!
やらかした。やらかしてしまった。完全に王太子だと思い込んで突撃したわたくしのミスだ。
エリス様の方は、ニコニコとしていて全く表情に出ていない。いや、それはそれでとっても不気味だ。入学初日に目の前に現れたラスボス。いったい何を思っているのやら…。
とにかく、ここはわたくしが責任を持って緩和剤とならなくては。
まずはお兄様の気を逸らすため、わたくしはギュッとお兄様の腕に抱きついた。そのまま人混みを抜けるため歩き出す。
「そういえばお兄様、お仕事があるから帰りは迎えには来られないって仰っていましたよね?」
「うん、さすがに毎日は難しいけどね。今日はフルールの入学初日だから、心配で仕事放り出して来ちゃった」
「本当に何をしていらっしゃいますの!?」
サラッと仕事をサボってきた宣言をするお兄様に思わずツッコんでしまう。どちらのお仕事をサボってきたのだろうか。公爵?魔術師団?今日は宮廷へ行かれていたから、後者だろうか…。
正直、全くもって嬉しくない。朝お会いしただけでも計算外なのに、まさか迎えにまで来られるとは。そしてエリス様と鉢合わせとか、いったいどんな拷問だ。
「お兄様、お仕事を放り出すのはよろしくないと思いますわ」
「大丈夫だよ、皆私がいなくてもちゃんと働いてくれるからね。というか普段の私の仕事なんて、そんな大したことないし。たまに新しい術式考えていればうるさく言われないんだよ。まあ、遠征行ったり夜会に出たりってこともあるから、そういう時はどうしようもないんだけど」
「………」
つまりお兄様は、遠征だったり夜会だったりがなければ、わたくしのお迎えに来られるらしい。
お兄様、今朝は確か、
『毎日の登校は私と一緒にしようね。本当は下校時も一緒がいいんだけど、仕事的にそこまでは難しくて…』
と仰っていた。だからてっきり、下校時は一緒には無理という意味だと思ったのだけど、これは、
『本当は下校時も毎日一緒がいいんだけど、仕事的にそこまでは難しくて…時々迎えに来られなくなってしまうかもしれないんだ』
という意味だったのね!?
な、なんたること…。それじゃあ、登下校はほぼほぼお兄様と一緒ということじゃないの…。
わたくしは絶望した。お兄様とはなるべく顔を合わせない方向でいきたかったのに、これでは毎日顔を合わせるしかない。
これも、かなり早めに逆行していたお兄様が裏で色々画策した結果なのだろう。わたくしは、こう言うしかなかった。
「…さすがお兄様。とっても優秀でいらっしゃいますわね…」
「ふふ、可愛いフルールと一緒にいるためなら、これくらいはね」
お兄様はぽんぽんとわたくしの頭を撫でる。ううっ、兄が優秀すぎてつらい…!
「ところで、フルール」
暫く歩いたところで、お兄様は歩きを止めた。そしてくるりと後ろを向き、わたくしたちの後ろをついてきていた人物の顔を見る。
「ここなら、他に人気もないことだし。そろそろ、その紹介したい方っていうのを紹介してもらってもいい?」
「…ええ、もちろんですわ!」
そう、ずっと黙っていたが、わたくしたちの後ろにはエリス様もついてきていた。紹介するって言ったからね、緩和剤のわたくしが間に入ってきちんと紹介いたしますよ。責任は取ります。取りますけれども…、
「………」
「………」
ひ、ひええええええええ。
心の中で淑女にはあるまじき叫びを上げる。対面した二人はそれはそれは綺麗な笑顔で…寒い、寒すぎる。おかしいわね、今は桜が咲き誇る、暖かい春の筈なのだけれど。なんだか急に寒気がしてきたわ。
これはある意味、人気のない場所に移動してよかったかもしれない。あの場で紹介していたら下手をすれば病人が出ていたわ。幸いにして、お陰様で被害者はわたくしだけだ。
そして、だからこそ全力で思う。
「(なんで、王太子じゃなかったのよー!!!)」
女神の生まれ変わりを殺そうとしたわたくしに女神のお導きなんてあるわけがなかった。もう今後一切、女神のお導きを信じるのはやめようと思う。
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