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ブクマ数が40を超えました…!ありがとうございますm(_ _)m

評価数もいつもつけていただいて、感謝感謝です…!

 そんなエリス様とわたくしは隣の席に座ることになった。窓際…と言いたいところだけれど、窓際は日焼けをしてしまうためわたくしはあまり好まない。ということで、廊下側の一番前を選んだ。


 日焼け云々もそうだけれど、それを抜きにしてもわたくし、昔から太陽の光があまり得意ではないのよね…。お兄様もそれは同じみたい。ロサノワール家が闇魔術の家系だからその影響だと、以前お兄様が教えてくれた。


 そして、後ろではなく前を選んだ理由については、もちろん授業をきちんと受けるためよ。前回のわたくしなら迷うことなく一番後ろを選んでいたけれど、今回のわたくしは違う。王太子妃となるため、授業も真面目に受けると決めたのよ。むしろ、一番前に座りたい。


 そんなこんなでやってきた昼休み。


 ───よし、これはチャンスよ。前回エリス様は、王太子と一緒に昼食をとっていた。ということは、エリス様の側にいれば自然と王太子と出会えるはず!


 と思い、順調すぎる出だしに心の中で思いっきり高笑いしていたのだが…


「う〜ん、中庭にして正解でしたね!桜が綺麗です!」

「そ、そうですわね」


 なぜか人気の少ない、中庭まで連れてこられていた。側に王太子らしき人物はいない。あ、あれ…?


「それにしても、お弁当を多めに作ってきてよかったです!お友達と一緒に食べれたらなぁって思ったんですけど、まさかフルール様と一緒に食べられるなんて…!」

「あー、えっと…ほ、本当にわたくしも戴いてよろしいの?わたくし何も持ってきておりませんし、今から食堂に行っても…」


 そうすれば王太子と会えるかもしれないし。


「いいえ、本当に多めに作ってきてしまったので、むしろ食べていただけるとありがたいんです!あ…そっか、私なんかが作ったものではそもそもフルール様のお口には合いませんよね。完全に失念していました…!ど、どうしましょう。あとでフルール様のお家の料理人の方に弟子入りするとして、今日のランチがなくなってしまいますね…あああ、盲点でした…っ」

「い、いえ!決してそういうことではないんですのよ!?本当に、ご迷惑だったらと思っただけで…エリス様がよろしいのなら、ぜひ戴きたいわ」


 あまりの落ち込み具合に、気づけばそう話しかけていた。本当は王太子に会うために食堂に行きたかったのだけど…そもそも王太子が食堂にいるかもわからないし、今から食堂に行っても入学初日の今日は席が埋まってしまっているだろう。それなら、無理して食堂に行かなくてもいい。


 ということで、わたくしは中庭でエリス様のお弁当を戴くことにした。お弁当は外でも手軽に食べられるサンドイッチだった。食パンのサンドイッチとクロワッサンのサンドイッチがあり、どれもとても美味しそう。


 まずは食パンの方を手に取って、一口食べてみると…、


「!美味しい…!」

「本当ですか!?よかったです…!どんどん食べてくださいね!」


 エリス様のサンドイッチは、お世辞抜きで美味しかった。もちろん、家の料理人の腕に並ぶかと言われたらそんなことはないんだけど、なんかこう、心が温かくなる味というか…。


「…ふふっ、フルール様、本当に美味しそうに食べてくださるんですね」

「だって、本当に美味しいんだもの。わたくし、エリス様のサンドイッチとても好きだわ。何か特別な調理法でも使っているの?」

「そんなもの我が家にはありませんよ!でも、美味しくなあれってたっぷり愛情を込めました。もしかしたらフルール様に食べていただけるかもって思ったら、余計にはりきっちゃって…」


 フルール様は照れたように笑った。わたくしは信じられなかった。こんなに美味しいのに、特別なことはしていないなんて…。


 と、いうか。今さらっと重要な発言をしたわねこの子。わたくしが食べるかもって、なぜそれを前提にしてお弁当を作るのよ。知り合う前なのにおかしいでしょう。


「…エリス様、貴女…」

「フルール様、よければこちらもどうぞ。はい、あーん」

「あーん」


 う〜ん、クロワッサンサンドの方も美味しい!…って、違う!


「ふ、フルール様があーんて、あーんて…!か、可愛すぎます〜!!!」

「え、エリス様が突然あーんをしてくるからですわ!」


 しまった、お兄様とモカにあーんされ慣れているから、つい条件反射で…!


 恥ずかしくて頬を両手で覆う。ああ、今きっと、顔が真っ赤になっているに違いない…。


「すみません、フルール様が可愛すぎてつい。もうっ、やっぱり中庭を選んで正解でした。こんな可愛いフルール様を見せたら、いったいどんな獣が襲ってくるか…」

「…け、獣?」

「はい、獣です。フルール様、この学園には危ない獣がたくさんいるんです。くれぐれも気をつけなければなりません」

「……そんな危険な獣なんていたかしら?学園には強力な結界が張ってあるし、そう危険な獣はいないと思うのだけど…」

「いいえフルール様。獣にとって、結界は関係ないのです。普段は形を潜めていますが、ちょっとフルール様と目が合ったり、お声を聞いたりしたらすぐさま襲ってくるでしょう」

「そ、そんなに危険なの!?」


 全く知らなかった。前回は獣なんていなかったと思うけれど、今回は違うのかしら…。


 でも確かに、お兄様はやたらと学園には通ってほしくなさそうだった。あれはてっきり、お兄様がわたくしを好きすぎるが故の単なる過過過過過保護からくる発言だと思っていたのだが、もしかしたらお兄様は、このことを心配されていたのかもしれない。


「はい、そうです。特にルで始まってアで終わる獣には気をつけなければなりません」

「ルで始まってアで終わる獣…?名前を教えていただくことはできないの?」

「…名前は口にできないのです。その名を呼ぶことはごく一部の者しか許されておりません」

「そんなに恐ろしいの?!どうしましょう、わたくし、とてもそんな獣に立ち向かう力など持っていませんわ…」


 名前すら呼べないなんて、きっととても恐ろしい獣に違いない。せっかく処刑と国滅亡と近親相姦から逃げようとしているのに、まだ新たなる敵がいるだなんて…。


 恐ろしくて震えてしまうと、エリス様はわたくしを安心させるよう両手をギュッと握ってきた。


「大丈夫ですフルール様。言ったじゃありませんか。私の聖女の力は、フルール様を幸せにするためにあるのだと」

「エリス様…」

「フルール様のことはこのエリスがお守りします。だから、ずっと一緒にいましょう?私が全力でフルール様を獣から守ってみせます!」

「エリス様…!」


 何なのこの子、物凄いいい子じゃない…!ごめんなさいエリス様、わたくしこんなにいい子なあなたに、前回はなんて酷いことを…!


 感極まってエリス様に抱きつくと、エリス様は優しくわたくしを抱きしめてくれた。エリス様の身体は柔らかかった。お母様がいたら、きっとこんな感じなのかしら…。


 モカにはない柔らかさに、思わずわたくしは溜め息をついてしまう。


「ん…ふふ、フルール様、光栄です」

「…エリス様に抱き締められると、なんだかとっても安心しますわ。これはきっと、聖女だからではなくて、エリス様ご自身が優しさで溢れているからなんでしょうね」

「…私の優しさは全てフルール様のためにありますから。だから、フルール様はご安心して学園に通われてくださいね。ロサノワール公爵閣下にもぜひそうお伝えください」

「お兄様にも?」

「はい。きっと閣下もフルール様を心配なさっているでしょうから。ですから、聖女エリスがしっかり獣からお守りいたしますとお伝えできれば、少しは安心なさってくださるかなと」


 今朝のお兄様の心配ぶりを思い出す。確かにと、わたくしはエリス様の言葉に強く頷いた。


「…そうね。お兄様はこの国一番の魔術師ですもの、獣のこともご存じよね。ええ、しっかりお伝えしておくわ。お友達の聖女エリス様がしっかり守ってくださると」

「!はい、はい!そうです、お友達の聖女エリスがしっかりお守りいたします!ふふっ、フルール様大好きです…!」

「きゃっ…エリス様、そんな、胸元に顔を埋められると…んっ」

「私も、フルール様にお返しですっ…ああ、これがフルール様の…」


 今度はエリス様がわたくしに抱きつく形になった。わたくしも抱き締め返すけれど、この体勢、抱きつかれる側は少々苦しいらしいことを知った。いや、苦しいというか、胸元やら首筋やらがこそばゆいというか…。


 わたくしとエリス様は、お昼休みが終わるまでずっとこのように触れ合いながらお昼ご飯を戴いた。余談だが、この中庭にはわたくしたちの他にも何名かいらっしゃって、しかも校舎内から様子が見えるものだから、この様子を見ていた方々によって深窓のロサノワール公爵令嬢と聖女はただならぬ仲らしいと囁かれることになるのだが…当然わたくしにその囁きが入ってくることはなかったのだった。

獣…。エリスはね、嘘は言っていませんよ、嘘は。

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