それは誰の導きか
街灯がポツポツと灯る深夜の道を二人組の男女が歩いていた。
街中の物陰から数え切れぬ数の視線が二人を見ている現状に内心震える。
「先輩なんでこの任務引き受けたんですか?絶対ヤバいですよね?私の第六感にビンビンきてるんですけど!?」
「大丈夫大丈夫、ここで襲われたって話聞いたことないから。」
「・・なんで私達がここに来てるか理解してます?」
「失踪者の調査。」
「もー絶対死んでますって!危険!ここ!危険!」
「しょうがないだろう!?もうこの話50回目だよ!?委員会のお偉いさんが決めたことなんだか「しっ!!」」
何かに気づいた伊崎水は身を固くするが、底冷えする風に空き缶が転がっただけだった。
「・・なんだ空き缶か、驚かせ「あっち見てみろ。」」
水の三つ上の先輩である千界創時は三つほど先の街灯の根元を指差した。
そこには一人の少女が靴紐が解けたのか屈んで結び直している。
傍らには小さなビニール袋が置いてあり、深夜にちょっとコンビニまで行った帰りのように推測できる。
それがもしこの街でなければ。
「・・先輩、私達以外に誰か派遣されるって話、来てます?」
「いや、俺たちだけのはずだ。」
「見なかったことにしません?」
二人はこの街の夜を一月半以上見回ってきてが、一度も午後零時以降に一般人を見かけたことが無かった。
そしてそれは事前に聞いていた話と一致する。
「普段と違うことは全て調査すること、それが今回の任務だ。話しかけに行くぞ。」
「マジっすか。失踪者ってそうやって消えたんじゃ・・?」
「大丈夫大丈夫。」
「今心の中で何か付け足しませんでした?」
「いいや、別に?」
いつまでも着かなければいいのに、少女が靴紐を結び終わって走り去ればいいのに、そんな水の願いとは裏腹に声が届く距離まで来た創時が声を掛ける。
「こんばんわ、お嬢さん。ちょっと聞きたいことがあるだけど、質問していいかな?」
それが一之柘榴との初めての出会いだった。