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おにぎり、温めますか。

作者: 下月優紘

人の温かさを感じられるような作品にしました。

是非、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

午後10時。仕事帰りの僕はいつものように家の近くのコンビニへ入る。

(あ、またあの店員さんだ。)

僕は炒飯おにぎりを2つ手に取り、レジへ向かった。


「いらっしゃいませ。おにぎり、温めますか。」

「すみません、お願いします。」


いつも同じおにぎりを買う僕に、彼は毎回律儀に

「おにぎり、温めますか。」と聞く。


「かしこまりました。266円になります。」


僕は266円を払い、商品を受け取った。


「ありがとうございました。またお越しくださいませ。」


外に出た僕は、温めてもらったばかりの炒飯おにぎりを食べながら帰路に着き、風呂に入って寝る。お決まりのパターンだ。


ある日。いつものように会社から帰る途中、電話がかかってきた。相手は4年程付き合っている彼女だった。

(どうしたんだろう、こんな時間に。)


「もしもし、どうした?」

『話が、あって。 』

「話?」

『 うん...。あのね私...ね、好きな人が、できた。』

「...」

『だから、ね...。別れて欲しい...の 』


何を言われたのかわからなかった。電話を切った後、徐々に何が起こったのかを理解した。


「なんで...っ!なんでだよぉ...」


僕は彼女との結婚を考えていた。それくらい好きだった。大好きだった。なのに人の気持ちはこんなにすぐに変わってしまうものなのか。僕は大泣きした。ひとしきり泣いた後、僕の足はなぜかあのコンビニへ向かっていた。店内へ入ると、いつもの店員さんがいた。


「いらっしゃいませ」


彼は僕の顔を見て一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべてそう言った。僕はまたいつものように炒飯おにぎりを2つ手に取り、レジへ向かった。


「いらっしゃいませ。おにぎり、温めますか。」


その言葉を聞いて止まったはずの涙がまた流れた。悲しみに打ちひしがれている僕に彼は何も聞かず、いつもと同じように接してくれた。彼にとってはなんてことないことかもしれない。でも僕にはそれが彼の優しさであるように思えた。僕はお金を払い、店を出た。そしておにぎりを食べながら家に帰り、風呂へ入った。眠りにつく頃、幾分か気持ちが軽くなっていた。どんな時でも変わらない人の温かさを実感できたことが嬉しいと思った。

(こんな風に思えるのは彼のおかげだな。明日からも、頑張ろう。)


僕はその日、彼の優しさを思い返しながら、深い深い眠りの国へと吸い込まれていった。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

是非、感想など聞かせていただきたいです。


何か一つでも読者様の心に残るものがあったら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  企画読みから来ました。  感想を求められていたので書きます。  人の立ち直るきっかけとして、些細な優しさでもよいというメッセージを込めた作品だと感じました。 [気になる点]  小説の書き…
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