1話 一生のお願いの使いどき
「お〜い、ツム!」
放課後、そう声をかけてきたのは友達のケイゴだった。
「家でゲームしないか?」
まぁいつものことだ。
「いつも言ってるだろ、僕はゲームはしないんだ」
ケイゴはなぜか僕にゲームを勧めてくる。
最初はもっと丁寧に断っていたが、だんだんめんどくさくなって、最近は軽く流している。
「え〜なんでだよ〜楽しいぞ、ゲーム」
懲りずに言ってくるのは毎度のこと。
「なぁ〜お願いだから〜一生のお願いだから〜」
「こんなところで一生のお願い使うなよ!ってか一生のお願いなんて何度目だよ!」
そう言うと、ケイゴは指を折って数え始め……
「26回目だな!」
「多いわ!」
まったく、いい加減なやつだ。
26回生きたケイゴってか
「本当にお願い!なんでもするから!」
あぁ、うるさいなぁ。
「今なんでもするって言ったな」
「お、おう、言ったな!」
「じゃあ……」
(ゴクリ)
「僕にゲームをさせないようにしてくれ」
「お安い御用だ!」
即答だなぁ。
「じゃあそういうことで」
「よし!ゲームをしに行くぞ!」
「ちょっと待ってくれ。さっきのを聞いたか?」
「あぁ、もちろん聞いたぞ!ゲームをしないよう……。あれ?ゲームをさせるためにはゲームをさせないように……。あれ?どういうことだ?」
「パラドックスってやつだな、じゃあね〜」
よし、これでかわせたかな。
「ちょっと待ったー!」
まだだったか。今日はいつもよりしぶといな。
「わかった、ゲームをしてくれるなら、土下座でも土下座でも土下座でもしよう!」
土下座しかないじゃないか。
「いいのか、廊下で土下座なんかさせたら、結構めんどくさいことになるぞ!」
「いや、それ君もめんどくさいことになるだろ」
なんだその変な脅しは。
そんな死なば諸共みたいな発想をされても。
ていうかこのやり取りも結構やばいんじゃないか?
「土下座まであと1秒!」
「短い!3分くらいは待とうよ」
「0!」
うわ、本当にした!
「ちょ、ちょっと、わかった、わかった、ゲームするから、マジで顔あげて」
「本当か!」
うおっ。びっくりした。
「あぁ、わかった、ゲームします、するから早くこの場を離れよう」
「よっしゃラッキー!」
ラッキーでもなんでもないからね。どちらかと言うとアンラッキーだからね。
学校で土下座したって噂広まるよ?
まぁ、この時の僕はまだ、噂が広まったかどうか確認できると思ってたらしい。




