三箇所の参加賞
「丁度ここで休憩できるね。」
叔父が石でできた椅子に荷物を置く。
そこは木々がひらけた傾斜のない場所で、中央にぽつんと背もたれのないベンチ?が置いてあった。
もうへとへとだなぁ…。
木々の隙間から差し込む光が視野になだれ込み点滅する。
鳥のさえずりが絶え間なく響き、火照った身体から蒸発する汗のお陰か、背中がとても心地よかった。
蒸れた脚も涼ませてやろうとズボンを捲った時、私は驚愕した。
「何故に!?」
「「「どうした(の)!?」」」
行きのバスで酔って以降、消沈していた私の突然の反応に周囲が心配する。
…私の右脚は血塗れになっていた。
血を見るのが苦手だった私は、頭が真っ白になっていた。
涼しげだった空気は悪寒に変わり、鳥の鳴き声が頭に響き渡る。
「ヒルにやられたんだね。」
叔父がリュックから絆創膏を取り出して手渡す。
タオルと消毒液で傷口を拭いてから、そこに貼り付ける。
「ありがとうございます…ってえぇ…、こっちにもあるのか…。」
傷を塞いだと思っていたら、第二の傷が見つかった。
最初の傷と同じように処置をする。
…結局、右脚を三箇所噛まれていたようだ。
「うわぁ…全然血が止まらない…、しかも本当に痛くないです…気付けない訳だ。」
落ち込む心の水深はどんどんどんどん深くなる。
5分程度経っても全く止まる気配がないので、登山を再開する。
頭の中では、小学生のときに見ていた理科の教育番組が思い出させられる。
ヒル特集の回に、気味が悪いと思った事を正にそのまま自分が体験することになるとは。
ここから記憶がないのでカット。
帰りに山の麓の温泉に寄ることになった。
勿論、血は止まっていない。
入っては不味いのでは、と自分の血で温泉が汚染される事を恐れた私に、大丈夫だよ、と叔父が笑って言う。
そこは、温泉というにはとてもこじんまりとした、悪く言えばしょぼい場所だった。
湯船に浸かるも、借りて来た猫というレベルではない気分で恐縮してしまう。
傷口からは、薄っすらと血が滲み出ていた。
また記憶が不鮮明故カット。
流石に家に帰る頃には、血は少し滲む程度に落ち着いていた。
その日に起こった出来事を思い出そうとしたけれど、記憶は殆どが真っ赤だった。
寝る前に、絆創膏を張り替えて神経質な程にガーゼを張る。
内心、何か感染症にでもなっていたらどうしようと恐れていたが、疲れが出た為直ぐに眠ってしまった。
…数日後。絆創膏を剥がすと傷口は綺麗に治っていた。
…ああ、そういえば初めて本格的に登ったんだったっけ、ショックな出来事のせいで忘れていたけれど、この時になってやっと、登りきった自分が誇らしくなった。
①「台詞」or動作事実描写
②(台詞の後)発言者が明白になる事実描写
③空間描写or心理描写
③繰り返し最低2回程度を目安?
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