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切り結ぶ水曜日  作者: 灰色大神
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第2章 縁結び神と縁切り神

 沈黙を続ける2人に、わたしは恐る恐る尋ねた。

「わたしを助けるって、どういう意味…?」

弟切(おとぎり)さんはゆっくりと顔を上げた。

楠木(くすのき)みや…。落ち着いて聞いて欲しい。君は命を狙われている」

「わたしが、命を狙われている…?何それっ!からかってるの!?」

転向してきたばかりで、いきなり他人に命を狙われていると言うなんて、どうかしてるとしか思えない。

「このバカ!アホ!だから急過ぎるんだってば!いきなり言ったって誤解されるだけじゃん!」

結野(ゆいの)さんは腕を振り回し、大声で怒鳴った。

「回りくどいのは好きじゃない。それに、声がでか過ぎる。チビのくせに、目立って仕方ない…」

「ぐぅ…!ほんっとムカつく!…とにかく、みや。うーん、えっと、みやみや?この話は、後でゆっくり

するから、取り敢えず帰ろうよ」

わたしは2人の意味不明な会話にウンザリして、無視して下駄箱に向かった。

命を狙われてるなんてバカバカしいにも程がある。

いつもよりやや乱暴に下駄箱を開け、靴を取り出そうとすると何かが手に触れ、はらりと落ちた。

拾い上げると、それは1枚の紙だった。

真っ白な紙に無機質なPC文字で何か書かれている。

学校のお知らせか何かかと思い、軽い気持ちで見たけれど、思わず息が止まりそうになった。


【アナタの周りの人間を1人ずつ殺します。アナタは7番目に殺します。ご存知かと思いますが、この殺人は既に始まっているのです。何故か?アナタはそれを知りたいでしょうが、ご自分でお考えください。

何故か…?もしも、アナタがそれに気づく事が出来たなら…状況は変わるかもしれません。ただし、これだけは守って下さい。1・警察に知らせないこと。2・メディア、ネットなどに情報を流さないこと。これらを破った場合、更に大量に死者が増えることでしょう。それでは、7番目のアナタ。楽しみにしていて下さい。】


 それは、明らかに殺人予告が記された手紙だった。

しかも、わたしを狙っている事がはっきりと書かれていた。

突然不安になり、手紙を握りしめたまま辺りを見回すと、結野さんと弟切さんが静かに立っていた。

「みやみや…その紙は何?」

結野さんが覗き込んできたので、わたしは無言のまま手紙を渡した。

「うわー。これは大胆な殺人予告だね…。取り敢えず、早く帰ろうよ。犯人が誰か分かんないしさー。ここじゃ色々と危ないと思うんだよねー」

ついさっきまではわたしが命を狙われているなんて信じられなかったけれど、この手紙を見て、本当かもしれないと思った。ただ、イタズラの可能性もあるし、結野さんと弟切さんを信じて良いのかも疑問だった。

「君はまだ、疑っているのかもしれない…。だけど、どうか信じて欲しい。このままでは大変な事になる」

ギラリと光る弟切さんの目を見て、わたしは仕方なく2人を連れて、自分の家の方へ歩き出した。


 わたしの住んでいるアパートは商店街の近くにある。

丁度、今夜食べる物が無かったので、いつも良く通っているお肉屋さんへ寄り道した。

【お肉のさおとめ】と大きく掲げられた看板が目に入る。

結野さんと弟切さんはわたしの後についてきながら、しきりに鼻を鳴らしていた。

お腹でも空いているんだろうか。

わたしが店の前に立つと、ぽっちゃり太った早乙女(さおとめ)さんがニコニコしながら出てきた。

「あら、みやちゃん、いらっしゃい。今日もいつものやつ?」

わたしは後ろの2人をちらっと見た後、少し考えて「コロッケ3つ下さい!」と元気良く頼んだ。

早乙女さんは少し目をぱちぱちさせた後、

「あらあら、今日は3人なの。お友達がいるならおまけも奮発しなきゃね!」

と、唐揚げを3つサービスしてくれた。

「ありがとうございます!」

「いえいえ!また来てね、みやちゃん」

早乙女さんは、わたしが何回か通う内に顔を覚えてくれ、家の事情も知っているので、いつも何かしらおまけをくれる。正直、ギリギリな生活を送っているわたしにとっては、とてもありがたい。

なんだか、後ろの2人もとても嬉しそうだ。

結野さんがパタパタと、隣まで駆け寄ってくる。

「すっごい良い匂い!みやみやは良い縁も持ってるんだねー…」

「縁って何?」

「縁は縁だよ。後で説明する」

「あとその、みやみやって呼び方はちょっと…。今まで呼ばれた事無いんだけど」

「えぇー良いじゃん。可愛いじゃん」

わたし達はそんな風に他愛のない会話をしながら、家へ帰った。


 わたしの部屋に入ると、2人はどっと疲れたように、お腹の底からため息を吐いた。

「2人とも、どうしたの?凄く疲れているみたいだけど」

「あまりこの姿で過ごす事には慣れていないから、凄く疲れた…」

弟切さんは壁にもたれ、腕を組んで目を閉じていた。

すかさず、結野さんが口を挟む。

「はぁーほんと、お前って説明下手。あれだよ、言葉が足りな過ぎるんだよねー」

「お前は、喋り過ぎだと思うけどな…」

「なんだとっ!」

「良いから2人とも、早く説明してよっ!」

わたしが大きな声を出すと、2人は互いに睨み合いつつも、すっと立った。

「みやみや、今から起こる事は信じられないかもしれないけど、驚かないでね。あと、絶対に誰にも言わないで。これだけは約束…」

「う、うん」

わたしは座り込んだままじっと身構えた。

すると、金と銀の光が部屋中を照らした。

あまりの眩しさに目を瞑っていると、だんだんと光が弱まるのを感じ、ゆっくり目を開けた。

「う、うぁっ!何!?」

わたしは信じられないものを目にした。

さっきまで結野さんと弟切さんがいた場所に、和服を着た狐と狼がいる…。

狐の方は首の辺りに大きなリボンのような物が結ばれており、腕には白い蛇が巻き付いていた。

狼の方は、巨大な鋏を背中に背負っており、両手にはギラリと大きな爪の光る手甲が付いていた。

どちらもこの世のものとは思えない不気味で不思議な雰囲気を纏っていた。

「えっと、まぁびっくりするよね。じゃあ、改めて自己紹介。あたしは縁結び神、柚子。結野っていうのは、人間の姿の時困るから、適当に名乗ってるだけ。もちろん、縁結びの神様だから、人間同士の縁を結び付ける事が出来るよ。んでこっちが…」

「縁切り神の紫苑。こいつとは正反対で、人間同士の縁を切る事が出来る。悪縁はもちろん、病気や、災難の縁も…」

わたしは一気に説明されて頭が混乱した。

「ちょっと待って。じゃあ2人とも人間じゃないの…?本当に神様って信じられないんだけど」

「疑い深いなーみやみやは。大体の人間は、この姿見たらすーぐ信じるんだけどね」

「そ、そりゃあ狐と狼が喋ってたらびっくりはするけど…」

「あっさては、ちょっとバカにしてるなっ!?」

「…実際に、楠木みやと、誰かの縁を切ってみる…?」

「いきなりそれは酷過ぎるでしょ。考えろって!」

わたしは2人の間に割って入る。

「そもそも、2人は何でわたしの前に現れたの?助けるって何の事?先生が亡くなった事件と、わたしの下駄箱に入っていた手紙は何っ!?」

「ちょ、ちょっと落ち着いて、みやみや。あたしが順番に説明するね。まず、あたし達が現れたのは、みやみやを助ける為だよ。天界の偉い神様に言われて来たんだー。何でこいつと組まされているのかは分かんないけど。で、助けるっていうのは、連続殺人事件の最後がみやみやだから…。なんでも、もしこの連続殺人事件を止められなかったら、もっと大きな、この国の社会を揺るがしかねない事件に繋がっちゃうらしいんだ。…あの手紙は、犯人からの予告状で、多分、先生が1番目の犠牲者なんだよ…」

「そんな…そんな事…。今すぐ何とか出来ないの?本当に神様なら、その姿が変な着ぐるみや何かのトリックじゃないなら出来るでしょ?」

「本当に、正真正銘神様だよっ!あたし達は縁の神様だから、今すぐどうこうするのは無理だけど…」

金色の瞳が瞬き、揺れる。わたしはやっぱり、この瞳に見覚えがあった。

それを悟ったかのように、狼姿の弟切さんがゆっくりと口を開く。

「楠木みや…。私達は、転校して来る前に一度会っているんだよ。あの体育倉庫で…。君はロープで縛られて閉じ込められていたんだ」

「えっ…だって、だって、あれは夢じゃ…あっ!でも狼の顔、今の弟切さんと同じ…」

わたしは思わず立ち上がり、まじまじと弟切さんの顔を見る。

青みがかった灰色の狼の顔に、印象的な銀色の瞳。そして確か、あの時…。

「助けてくれた…」

「そう、助けた。危なかったよ…。犯人の目的が分からないし、どうにかなっていたかもしれない…」

「そうそう、こいつの普段はあんまり役に立たない、でっかいハサミでロープを切ったんだよねー」

「普段はあまり役に立たないは余計だ。いつも喋ってばかりのおチビさん」

「うっわーマジムカつく!この件終わったらボッコボコにしてやるー!」

「好きにしろ…」

2人はしばらく言い合っていたけれど、やがて疲れたのか、大人しくなった。

なんだか子どもみたいで、ますます神様だとは思えなくなっていた。

「みやみやー。これで取り敢えず、信じて貰えたかなー。あたし達が神様だって事」

「う、うーん。2人が体育倉庫にやって来て、閉じ込められていたわたしを助けてくれたって言うのは信じるけど…。そうだ!実際に縁か何かの力を使ってみてよ。簡単なので良いから。そしたら流石に信じるよ」

「むー手強い。それに神様に向かってその態度!みやみやは怖いもの知らずだね!」

結野さんは少し目を吊り上げるとプクッと不機嫌そうに膨れた。

ヤバい、本当に神様?を怒らせてしまったかもしれない。

「そんなに信じて貰えないなら、手紙の縁を辿ってみよう…」

「おっ、そうだね。お前にしては珍しく悪くない案かな」

「一言余計だ。手紙を貸して…」

「う、うん」

わたしは弟切さんに恐る恐る手紙を渡した。

すると、2人は手紙の上に手をかざし、目を瞑った。淡い光が輝く。

わたしは息を吞んでずっと見つめていたけれど、一向に何も起こる気配がない。

「ね、ねぇ…何か分かった?」

「うっ…みやみやー。これ全然駄目だよ…。全く縁が辿れない…」

「えっ?やっぱりインチキなんじゃないの…?」

わたしは呆れてため息を吐く。

「いや、違う。この手紙は機械で書かれた物だ。人間自らでないと中々縁は辿れないものなんだよ…」

「ふーん。何かすっごい言い訳っぽいけど」

すると弟切さんはぐっと歯を食いしばり、わたしに近づいてきた。

「うっ…!」

手甲の鋭い爪が喉元に当てられ、わたしは思わずのけ反った。

「お、おい!こらっ!バカ狼!それはやり過ぎだってば!もし傷付けたりしたら、あたし達どうなるか…」

「分かっている…。手紙からは何も分からなかったから、代わりに本人の縁を辿ってみるだけだよ…」

「な、なんだよ…紛らわしいなっ!もーっ!」

弟切さんはゆっくり離れると、わたしの胸の前に片手をかざした。

まだ手甲の冷たい感触が、喉の辺りに残っている。

表情からは分かり辛いけれど、どうやらわたしは弟切さんを相当怒らせてしまったみたいだった。

少し迷った後、謝ろうと思い口を開きかけたその時、胸に強烈な痛みが走った。

「ぐっ…!うぐっ…あああ!」

あまりの痛みに耐えられず、胸を押さえてうずくまる。

胸の辺りからは、無数の赤い糸のような光がうねうねと出ていた。

「こ、これっ何なの?い、痛いっ…」

弟切さんは片手をかざしたまま、冷めた目でわたしを見下ろしていた。

まるで、わたしが苦しんでいる事なんか、どうでも良いような雰囲気に恐ろしくなる。

「楠木みや…。君は幼い頃に両親を亡くしている。交通事故で」

「えっ…?」

わたしは驚いて弟切さんを見上げる。

「それと、もう一つ。仲の良かった親戚が、行方不明になったまま見つかっていない…」

「どうして、その事を…?うぐっ…」

両親の事も、親戚の事も、わたしは2人に話していないのに、何故分かるんだろう。

もしかしたら、本当に神様なのかもしれないと思いながら、わたしは痛む胸を押さえこむ。

すると結野さんが慌てて間に入ってきた。

「ストップ!ストップ!これ以上やったら、みやみやの身体が持たないって。ムキになるなよっ!」

弟切さんは渋々といった様子で手を下した。それと同時にわたしの胸の痛みも消える。

「これで、信じて貰えた?」

「う、うん。流石に信じるよ…。さっきの赤い糸みたいなやつは何…?」

「あれが、縁だよ。君には相当複雑な縁が絡み付いているみたいだね。もしかしたらこの事件、一筋縄ではいかないかもしれない…」

「そ、そんな…。なんとかならないの?」

「私のこの鋏があれば、悪縁を断ち切る事が出来る。もちろん、犯人との縁も。けれど、万能じゃない。犯人を見つけるまでは難儀すると思う」

「う、うん…」

「心配しないで、みやみや。あたしの縁結びの力があれば、ぱぱーっと解決出来るからさっ!」

「無責任な事を言うな…」

「お前は冷た過ぎ!今不安にさせたってしょうがないじゃん!」

「2人ともありがとう。けど響くから静かにして…」

わたしは人差し指を立てて、シーッと2人をなだめる。どうしてこの2人はこんなにも仲が悪いんだろう。

「ところで、えっと…2人は神様だから、その、もっと丁寧に呼んだ方が良い?」

それを聞いた結野さんは耳をピンと立てて、ゲラゲラ笑い出す。

「みやみや、今更何言ってるの?ぷっははっ!柚子で良いってば」

「じゃ、じゃあ、柚子ちゃん」

言ってわたしは手を伸ばす。

「ちゃんは止めよう。あと、気安く頭撫でるなっ!神様だぞ!」

「ご、ごめん。小っちゃくて可愛いからつい…」

その様子を見ていた弟切さんがふっと笑う。

「神様を撫でる人間は初めて見たよ。まぁ、そいつはチビだけど」

「うるさい!可愛くないでかいやつは黙ってろよ!」

「この…っ」

「まぁまぁ。弟切さんは、何て呼んだら良い…?」

「好きに呼んだら良いよ。私は…私は、人間に崇められるような神様じゃないからね…」

妙に引っ掛かるような言い方だった。縁切り神というのは、そんなに偉くない神様なんだろうか。

そんな事を考えながら、ふと窓に目をやると、外はもう真っ暗だった。

「もうこんな時間だ!えっと、2人はさっきのコロッケと唐揚げ食べる?神様って普通に人間の食べ物、食べられるの?」

わたしが聞くと、2人は耳をピンと立てた。

「食べられるよ!このままの姿でも、みやみやがあたし達にくれるっていう形なら。こっちから勝手に人間の食べ物に手を出すのは禁止されてるけどね」

「へぇ、そうなんだ。それじゃあ、温めてくるね」

わたしは今日買ったコロッケとおまけで貰った唐揚げを2人の前に置いた。

柚子は丁寧に箸を使って食べていたけれど、弟切さんはコロッケも唐揚げも手甲の爪に刺して、そのまま口に放り込んでしまった。

「ぷっは!お前、もしかして人間から食べ物貰った事ないだろ!手甲に刺すとかバカ過ぎるって。ぷははははっ!」

「うるさい…。この方が食べやすいんだ」

「はいはい。…みやみや、これすっごく美味しいよ!あのお店との縁は絶対に大切にするべきだね」

「うん。いつもお世話になってるしね」

「うん、うん。それと…あと、もう一つ。大事なことだよ。みやみやは、誰かに命を狙われている。それも連続殺人事件の7番目だって、予告されてる。だからね、なんとかするから、あたし達との縁も大事にして欲しいんだ」

「うん、ありがとう。お願いします…」

柚子は真剣な顔で話していたかと思うと、そこでふいっと顔を上げた。

「そこでね、一つ頼みたい事があるんだけど、この家に住んでもいいかな?」

「へ?」

予想外の言葉に、わたしは一瞬固まってしまった。

「いやいや!無理無理!こんなボロアパートに3人で住むなんて無理だよ!食費とか、光熱費とか色々かかるし…」

「えぇっ!お願いだよー。言われるがままにこっち来ちゃったから、住むところないんだよー。それに、3人じゃなくて正確には1人と2柱だし、大丈夫だよ!」

「良く分からないけど、あんまり変わらないし…」

「別に人間や動物みたいに、しっかり食べないと死ぬ訳じゃないし、大丈夫たよ。それに、みやみやは命を狙われてるんだから、あたしが近くにいた方が絶対安全だって。お願いだよー」

「うぅ…」


 その後、何度か言い合いになった末、結局わたしは柚子に押し負けてしまった…。

「わーい!みやみや!ありがとう!」

柚子は嬉しそうにポンと跳ねると、わたしの腕にしがみ付いて来た。

「こらこら!柚子って全然神様らしくないよね。なんか子供かペットみたい」

「むっ!あたしはちゃんと由緒正しい縁結びの神様だもん!…神様らしくないって、あいつの方がよっぽど神様らしくないけどね」

柚子はわたしにしがみ付いたまま、弟切さんの方へ顔を向けた。

不機嫌そうに腕を組んでいた弟切さんが、こちらを睨みつける。

「そ、そうだ。弟切さんも家に住むんだよね。だったら、2人とも、もっと仲良くしないと…」

「私はここには住まない」

「え?」

「心配しなくても、私は私のやり方で君を助ける。学校にもちゃんと人間の姿で行く。…それと、ごちそう様。人間から食べ物を貰ったのは初めてだよ」

弟切さんはそれだけ言うと、窓を開けて狼の姿のまま飛び出してしまった。

「ちょ、ちょっと待って!一体どこに行くの?」

わたしは弟切さんに向かって大きな声で叫んだけれど、既に姿は見えなくなっていた。

「どうしよう…」

「あいつなら、放って置けば良いよ」

「でも、あのままの姿で平気なの?住む場所だって無いんでしょ?」

「いーよ、いーよ。みやみやは心配しなくって。適当に隠れながら、空き家でも見つけるでしょ。それに、どーせ学校にはのこのこ来るんだろうしさ」

柚子はふわぁっと退屈そうにあくびをした。

「2人は、どうしてそんなに仲が悪いの?」

「ん?あぁ…。そもそもあたし、縁切り神って嫌いなんだ。何か暗いし。でも中でもあいつは特別嫌い。得体が知れないし、何考えてるか良く分かんないしねー」

「得体が知れないって、どういう事…?」

「え?あぁ、えっと、まぁとにかく良く分からない、変なやつって事だよ」

柚子はもう一度、ふわぁっと大きなあくびをすると、くるりと丸まってその場で眠ってしまった。

「神様って自由だな…」

今日、1日起きた事を振り返ると、どっと疲れて眠気が急に襲って来たので、そのままベッドへ倒れ込んだ。

自分の命が誰かに狙われている事や、転校生が神様だったという有り得ない事が、全て夢であったら良いと思いながら、わたしは静かに目を閉じた…。


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