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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第4章 西北大陸の闇。
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第74話 メノスキアの真意と入国と。

お読み頂き有り難う御座います。


第74話です。

宿場町で夜が明けて朝日が射し込んだ頃、ザック達はメノスキア王国に向けて出発した。


街道は森を抜ける一本道で、メノスキア国境を越えると直ぐに十字路に差し掛かる様だ。


メノスキア王国は国交を遮断している国家な為、国内の主要な町へはその中の一本の道を進まなければ行けないそうだ。


他の道は迂回路になっており、北と南に進める様になっているらしい。


国の外周を迂回路が囲んでいるという変わった国なのだ。


本来ならば旅人はその迂回路から他の国へ入国する事になるのだが、国の規模が結構大きい為に別のルートで他国へ向かう者が多いという。


ザック達は半日ほど峠道を走ると、国境手前にあるトレントという町で小休憩を取った。


この町は、メノスキアを経由せずに他国へ向かう者達の為の街道が東と南北に通っている。


その街道を通れば途中に宿場町が点在しているので、宿に困る事も無いという訳だ。


当然この町にも宿屋が多く、諸国を渡り歩く行商人や冒険者達で賑わっていた。


ローラ:『活気のある町ですねぇ。』


メル:『メノスキア領の迂回路には宿場町が無いらしいですからね。』


ザック:『国同士の繋がりが無いのは兎も角、旅人の利便性が悪いってのはどうなんだろうね・・・。』


アン:『ますますメノスキアって国が解らないわよね。』


セディ:『そこまで考えて無いか、領内に長居されたく無いって事なんでしょうかね?』


ザック:『まぁ国家の内情を一切明かさないって国だからね。』


ザック達はそこまでして外部に漏らしたく無いほどのものが何なのかが気になっていた。



移動を再開して国境に差し掛かると、レイトン共和国とメノスキア王国の兵士達が待っていた。


ザック:『アーデリア皇国君主のザック・エルベスタです。外交訪問で参りました。』


メノスキア兵士:『承っております。国王陛下は皆様を歓迎するとの事で御座います。我々が王宮まで御案内させて頂きます。』


ザック:『宜しく御願いします。』


もちろん国土が広いので国境から王都までは1日程度では行く事は出来ない。


メノスキア王国は南西部最大の領土を誇る為、そのほぼ中心に位置する王都には少なくとも4日ほど掛かってしまう のだ。


旅人達の間でも昔から難所として有名だったらしい。


迂回路で隣国へ行くには、馬車を使っても最低で10日も掛かってしまう。


アン:『あの兵士達は人族みたいね・・・。』


ザック:『そりゃまぁ国境警備兵だもんな。他国の人間と顔を合わせる機会も多いから人族を立たせるだろ?』


恐らく兵士達からは異質な感じがしなかったのだろう。


アンが少し安堵した様に見えた。


ザックも周囲に気を配ってみたが、異様な気配は感じられなかった。



しばらく進むと十字路に差し掛かり、1つの道にはゲートがあった。


恐らくここが事実上の税関に当たる場所なのだろう。


兵士の詰め所や出入国する者達を検閲する為の建物が建っている。


その場に常駐していた兵士がゲートを開け、ザック達を迎え入れた。


その先は等間隔で兵士が警備を行い、この国の警備がかなり厳重である事がよく分かった。



メノスキア王国。


この国は西北大陸でも一二を争うほどの古い歴史と広大な国土を有する大国である。


その長い歴史の中で、過去に一度たりとも外交を行った記述が無く、国家の主義や政治体制などは全てにおいて謎である。


各都市へのギルドの介入をも許さないほどに外部との関係を拒絶している事から、各ギルドからも警戒されているらしい。


メノスキア王国の国土面積は現アーデリア皇国の東部地域を除いたほどの面積で、その大半は森林地帯である。


首都は王宮を中心に周囲を権力者達が暮らす城下町が囲み、その外周を林と水路、その更に外側に民間人の町が囲むというサークル状の都市設計になっている。


首都からかなり離れた東西南北の地域に4つの都市が配され、その都市の周辺は全て森に覆われている。


森には小さな集落こそ点在するものの、他に町は存在しない。


首都から4つの国境へ伸びる街道は各都市を経由しており、国の外周を通っている迂回路を除いては各都市間を直接移動する事は出来ない。


地理に関するこの情報はメノスキアの兵士より手渡された国の概要を綴った書類に記載されていたものだ。


これだけ詳細な国の地理に関する情報を開示してくれた事にザックは驚いていた。


ザック:(この国の王の意図が解らないな・・・。信用されている訳は無い筈だし、これはこんな簡単に開示して良い情報じゃ無いだろう。単に歓迎するからと言って、今までひた隠しにして来た国内の情報を何故こうも容易く教えるなんて・・・。)


国境から5時間ほど進むと、東の都市【エルムスタ】が見えて来た。


その町の手前にある郊外の建物の前で隊列は止まった。


建物の前には数名の兵士と獣人族のメイドが何名か待っていた。


兵士:『アーデリア皇室御一行様、お待ち申し上げておりました。本日はこちらの屋敷でお休み下さい。』


どうやら今晩の宿はここらしい。


恐らく街中では何かと問題もあるのだろう。


部屋に入ったザック達は自室で話をしていた。


アン:『てっきり宿屋に泊まるのかと思ってたけど、こんなに上等な屋敷を用意されるなんてねぇ。』


ザック:『見知らぬ人が街中に居れば、結構な騒ぎになるだろうからね。』


メル:『恐らくこの屋敷は王家の所有物なのでしょう。それでザック様、王都まではまだ結構掛かるのですか?』


ザック:『兵士の話だと、最低でもあと4日ぐらいは掛かるらしいよ。どうやら一本道らしいから、近道とかも無さそうだしね。』


ローラ:『にしてもこの大陸にしては随分大きな国ですね?今までは小さな国の集まりでしたけど。』


セディ:『確か領土だけなら大陸で一二を争うほどの広さなんでしょ?それだけの領土を持ってるなら周辺諸国から危険視されてもおかしく無いわよね。』


アン:『多分危険視はされてるんじゃない?恐らく過去には進軍を受けた事もあると思うわ。それを退けても軍を進行しなかった事で、軍事的な脅威とはならなかったのかもね。』


ザック:『むしろ領土が広いと資源目当てで侵略を受ける事の方が多かったんじゃないかと思うよ。見たとこ自然はかなり豊かだし、地域によっては貴重な資源もかなり埋蔵されてる可能性が高いからね。』


メル:『四方を他国に囲まれていますしね。特に北にあるという山脈地帯には貴重な資源は多いでしょうし。』


西南大陸では元々レデンティア王国による一国統治だったが、隣国とは海を隔てていた事もあり他の国からの侵略の不安は少なかった。


この西北大陸では小さな国が密集している地域が多い。


北部の軍事衝突でも分かる様に、資源確保の為の国家間のトラブルは起こりやすいと言える。


西方や北方でも起こりうる話ではあるが、こと西北では国家間の繋がりが少ない事で周辺諸国は互いに牽制し合っている傾向がある。


恐らく向こうの世界で言えば中世のヨーロッパの様な状況なのだろう。


唯一大きな違いがあるとすれば、列強各国による植民地政策が無い事ぐらいだ。


問題は産業の急速な発展に伴う資源の過剰なまでの需要と消費にある。


供給量を増やす為に無計画な採掘を繰り返す事で、自国の資源では賄えなくなるのだ。


現在のシュレーデン王国の状況がまさにそれなのであろう。


近代産業にはそれに加えて公害の問題もあるのだが、幸いこちらの世界には魔法がある。


鉱石・レアストーン等の採掘や加工時に出る埃などこそあるが、魔法のお陰で燃料の消費率がかなり少ない事が幸いして化石燃料等による汚染の度合いがかなり低いのだ。



その夜出された料理はそれなりに豪華なものだった。


食材もさる事ながら、こちらの世界では貴重な調味料や香辛料を使った料理が並べられた。


味付けも悪く無い。


だが決して豪華過ぎる訳では無く、もてなしとして納得が出来る範囲のものだ。


その点に関してはかなり好印象だった。


アン:『ねぇザック、もしかしてまだこの国の国王について考えてた?』


ザック:『いや、考えるのはやめにしたよ。どのみち会ってみない事には分からないからね。あまり変な詮索ばかりしていても疑心暗鬼になるだけだろ?もちろん興味はあるけどね。』


アン:『確かにそうね。でも情報が無いってこんなに不安だなんて思わなかったわ。』


セディ:『でもあと4日かぁ、やっぱり領土が広いと大変よね。考えてみればレデンティアの王都なんて北部の港からは馬車で一月も掛かるのよね?』


メル:『アーデリアでも同じ事が言えますけどね。シェルバールからアーデンまではモービィでさえ8日は掛かるんですから。』


ローラ:『確かにそうですね。もっともアーデリアは領土の中心に首都がある訳じゃありませんけど。今までは小さな国が続いたので実感しませんでしたが、西北は大陸自体が巨大ですから同じ感覚では見れませんけどね。』


この西北大陸は、アーデリアがある西南大陸より更に広い。


所狭しと国が密集する地域と、メノスキア王国の様に広大な領土を持つ国との差が激しい。


その分モービィで移動出来る範囲は速く移動出来るが、国の騎士達や兵士達と同行する場合は速度を馬に合わせる為に時間が掛かってしまうのだ。


ザック:(仕方がないとは言え、正直メルとローラには結構負担掛けてるよな・・・。ゆっくり休息を取らせてやれれば良いんだけど・・・。)


ザック:『なぁメル、ローラ、メノスキア王宮に着いたら、二人は少しの間休息を取りなよ。西北(こっち)に来てから毎日運転続きで疲れてるだろ?』


メル:『御気持ちは嬉しいのですが、私の事は御気遣い無く。キャラバンの中にずっと居るよりも運転している方が気が紛れますし。』


ローラ:『私も大丈夫ですよ?むしろ馴れて来ると魔力のコントロールを感覚的に出来る様になったので、周りを見る余裕も出来ましたしね。』


ザック:(こういう娘達なんだよなぁ・・・。いつも少し無理をしちゃうんだよ。もっと我が儘になってくれて良いのに・・・。北部に行く前に一度何処かでアーデンに戻るかな・・・。)


翌朝早くに出発し、東の都市エルムスタを通過した。


恐らく住民達を驚かせたく無かったのだろう。


街並みはとても美しく、まるでヨーロッパの古都を思わせる様な印象を受けた。


街の規模はかなり大きく、都市と言うだけ有ってかなり都会だ。


早朝から歩いている人は少なく、ちらほらと亜人種の姿が見えた。


身なりはキチンとしており、他の国の亜人種に比べて生活水準は高いらしい。


エルムスタを抜けると直ぐ森を抜ける街道になる。


都市自体が巨大な城壁の様な壁に囲まれていることもあり、その景色は一変した。


その後の4日間の移動は何事も無く、夜は宿泊用の屋敷に泊まりながら移動し、とうとうメノスキア王国の首都ロシュタルに到着した。

お読み頂き有り難う御座いました。

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