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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第4章 西北大陸の闇。
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第70話 美味しい料理と違和感と。

お読み頂き有り難う御座います。


第70話です。

サーシア:『エルベスタ陛下よ、西部では盗賊も出ると聞く。十分に気をつけて行かれよ。』


ザック:『有り難う御座います。サーシア陛下もお元気で。』


ラムサスを出発したザック達は、サーシアの好意により国境まで騎士が同乗する事になった。


同乗した騎士は国境で待っているパレスティン王国の騎士に、サーシアからの文書を渡す為という別の理由もあるそうだ。


国境には事前にパレスティンと合流している騎士が居るので、帰りは一緒に馬車で帰るそうだ。


街道にはパレスティンから戻って来る行商人が集団で歩いていた。


恐らく市場や商店に卸売りに行った者達なのだろう。


ふと見ると、森の中の所々に小屋が建っている。


騎士に聞くと、その小屋では森で採れた薬草を加工して回復薬を作っているそうだ。


ラムサスは薬草が多く採れる事でも有名だそうで、西北大陸で売られているほとんどの薬はラムサスで採れた薬草を使っているという話だ。


森を抜けると拓けた牧場が点在する。


一軒辺りの牛は600頭近くも飼っているそうで、その半分以上は食肉用だそうだ。


西北大陸でも牛乳を飲む風習はあるそうで、牛乳を使って様々な加工品も作られている。


この牧場地帯にあるホルテットという町では、牧場で作られた乳製品が売られている。


もちろん肉も他の町に比べて安価に手に入る。


という訳で、ホルテットの町で昼食を食べる事になった。


セディ:『私は何たってステーキとチーズポテトね!』


アン:『セディは肉に目が無いものね、私は温野菜と燻製肉のチーズ和えかしらね。』


メル:『私は牛肉のシチューにしましょうかね。』


ローラ:『私はセディさんと同じステーキと香草入りの魚のスープにします!』


何だかんだでみんなこの町に来るのを楽しみにしていたらしい。


出掛けにサーシアからおすすめ料理を聞いていたのもあって、頭の中は食べる事でいっぱいだった様だ。


騎士の話では、この町には冒険者も多いそうだ。


やはり料理が美味しい所には冒険者が集まるというのは本当らしい。


実は同行している騎士も、この町に立ち寄るのを期待していたそうだ。


食事を終えると、町で特産品を購入する事にした。


後でジーナに届ける事を考えて、少し多目に買い込んでしまった。


実は3日に一度は皇宮にこちらの特産品を届ける事にしている。


これはジーナからの希望で、他国の食文化を勉強したいのと、城で出す料理のバリエーションを増やしたい事からだ。


最近皇宮には大きな冷蔵室が出来たので、ある程度食材の日保ちもする。


神様から贈られた大量の食料品や調味料に関しては、地下の格納庫の一角に保管庫を設置して保管している。


うっかり他の料理人が持ち出さない様にする為だ。


ムーランのダイソンさんには定期的に調味料を届けているが、足りない時はジーナに言う様に言ってある。



ホルテットを出発して山岳部を抜けると、今夜泊まる宿場町のエヴァンスに到着した。


モービィとキャラバンを騎士局に預けて、ラムサス政府が手配した宿屋に泊まる事になった。


驚いた事にその宿屋の主人はアーデンの出身で、ダイソンさんとの面識もあるそうだ。


主人のデイロンさんはアーデンがアーデリアの首都になったと知った時は、町並みが変わってしまうのではと心配していたらしい。


国交を樹立した事を伝えると、それなら来年には一度アーデンに帰るとの事だったので、ダイソンさんへの伝言を預かる事にした。


その夜、皇宮に戻ってホルテットの特産品をジーナに手渡し、デイロンさんからの伝言をジーナに頼んだ。


保管庫から数種の調味料を持ってエヴァンスの宿屋に戻ると、それらをデイロンに手渡した。


ダイソンにも差し上げた物だと言うと、デイロンは何度も感謝の言葉をザックに言った。


翌朝、デイロンが朝食を作ってくれたので、食べてから出発する事にした。


アン:『あれ?この味って・・・。』


ザック:『さすがはアンだね。あれを渡したんだよ。』


メル:『ん~!!この味!!』


セディ:『これはブラックペッパーとBBQソース!?他にも使ってるわね・・・。』


ローラ:『ザック様、これって・・・。』


ザック:『うん、昨夜向こうに戻ってホルテットの特産品を渡した時に持って来て、デイロンさんにあげたんだ。』


デイロン:『お口に合いましたでしょうかね?』


ザック:『とても美味しいですよ。でもまさかあの後・・・。』


デイロン:『えぇ、どうしても試してみたくて、あれから何種類か味見してみたんですわ。そしたら偉く美味しかったんで、今朝のメニューに使ってみたんです。』


ザック:『実は全部頂き物なので、自分用にでも使って下さい。恐らく手には入らない物ばかりですから。』


デイロン:『はい、大事に使わせて頂きます。』


エヴァンスを出発すると、メルが感慨深そうに言った。


メル:『さっきの料理を食べて、普通の冒険者だった頃を思い出しました。久しぶりにダイソンさんの料理が恋しくなりましたね。』


ザック:『メルはパーティーに入る前にムーランに泊まってるんだもんな。』


アン:『私は初めて会った時のメルの方が、気さくで良かったと思うんだけどなぁ。』


メル:『あれでもあの頃は演技してたんですよ?』


ローラ:『どんな感じだったんですか?』


セディ:『私も気になる!』


メル:『やめて下さいよぉ!今でも柄じゃ無いと思ってるんですからぁ!』


ザック:『分かりやすく言えば、セディの話し方に近いかな?』


セディ:『えぇ!?想像出来ない!』


ローラ:『でも何か似合う気がします!』


メルは顔を真っ赤にしていたが、ザックはメルにもっと力を抜いた感じで接して欲しいと感じていた。


エヴァンスから半日ほど進むと、林の中の道に入った。


突然騎士が周囲を警戒し始めたので、この辺りが盗賊の出没地帯だという事が理解出来た。


アン:『ザック、私達見られてるわ。』


こういう時のアンは鋭い。


視界には入らない者の気配が分かるのだろう。


ザックは周囲に気を配った。


確かに林の木の陰から視線を感じる。


メルもそれを感じたのか、その場でモービィを停車した。


ザック達がキャラバンから降りると、隠れていた者達がキャラバンとモービィを取り囲んだ。


黒いローブを身に纏った10人以上の集団だ。


女1:『アーデリア皇国、皇王のザック・エルベスタ陛下御一行とお見受けする。』


ザック:『如何にも、俺に何か用か?』


女1:『何故この大陸へ参られたのか、その真意を伺いたい。』


ザック:『名目上は建国の挨拶と友好条約の締結、という事になっているけど?』


女1:『私は真意を伺いたいと言った筈だが?』


ザック:『外交の内容をベラベラと話す君主が居ると思うか?大体おたく等は何者だ?』


女1:『貴様が知る必要は無い。』


ザック:『そりゃ無いんじゃないか?こっちはおたく等に取り囲まれてんだぜ?』


女1:『良かろう、我々はさる高貴な御方に支える誇り高き従者だ。いずれはこの大陸全土、いや、世界をも手に入れる御方だ。』


ザック:『そりゃすげぇ!それが本当なら世界中の王様はみんな失業だな?だが良い事を教えといてやるよ。世界ってのはたった1人の王が束ねられるほど単純なものじゃ無い。だからこそ大国と呼ばれる国には問題も多いんだ。』


女1:『馬鹿が!それはその大国の王が皆脳無しだからだ!この志も無き偽王め!真の王たる我が主を愚弄するか!貴様の様な愚かな偽王と我が主を一緒にするな!』


ザック:『さすがにそれは言い過ぎじゃね?いくら俺でも傷付くぞ?』


女1:『黙れ外道!今この場で斬り捨ててくれる!』


ザック:『そうか・・・他国の領土だから遠慮してたけど・・・ちょっと運動しても良いですかね?』


ザックは騎士に同意を求めた。


騎士:『いや、逆によく今まで我慢されていたと感心していた所ですよ。私も少し運動したいと思っていた所です。』


女1:『貴様はラムサスの犬か、まぁせいぜい吠えろ、どうせ次期に無くなる国だ。』


ザック:『ひとつ言い忘れてたが、俺達は冒険者でもある。俺のランクはゴールドだ。やり合うのは構わんけど手加減出来る保証は無いぞ?』


女1:『ハハハ!何人を相手にしていると思っている!どの程度の腕前かは知らんが、相手の心配をする前に自分達の心配をするべきだろう?』


ザック:『って言ってるけど、アン?どう思う?』


アン:『あ~ごめん・・・もう詠唱終わってるのよねぇ・・・。』


次の瞬間、ザック達の周辺を囲む様に風が吹き荒れ、取り囲んでいた者達は風によって巻き上げられた。


互いに空中でぶつかり合って、更に上昇した後に地面に激しく叩きつけられ、その場で動けなくなった。


ザック:『うわぁ・・・。』


セディ:『えげつなっ!』


メル:『えぇぇ・・・。』


ローラ:『凄い・・・。』


アン:『だって聞いててイライラしたんだもん・・・。』


ザック:『それでコイツ等・・・どうします?』


騎士:『取り敢えず、隣町の兵士局に回収の依頼をしましょうかね・・・。』


彼女達が回復して逃走する可能性もあったが、一緒に連れて隣町まで行くのは何かと面倒だ。


ザック達は隣町まで行くと、兵士局に彼女達の捕獲と回収を依頼した。


彼女達が誰の従者で、何の目的で行動しているのかは不明だが、いずれまた何かしらの接触をして来る可能性が高い。


取り敢えずはパレスティン王国へ向かう事を優先した。


その日の夕方、ラムサスとパレスティンの国境に到着したザック達は、同行していた騎士と別れて、パレスティンの騎士団と共に王宮に向けて出発した。


その後、国境から程近いアリゼの町で一泊する。


アリゼの町ではザック達が到着すると沿道に居た人々から歓声が湧いた。


騎士の1人に尋ねると、パレスティンの国王から立ち寄る予定の全ての町へ、ザック達が来訪する事を伝えていたそうだ。


国をあげて歓迎するとは言っていたが、正直これほどとは思って居なかった。


宿屋の前に停車すると、その周囲を騎士団が囲み、ザック達が宿屋に入りやすい様に配慮してくれた。


ザック:『これほどの歓迎を受けるとはね・・・。』


アン:『逆に恐縮しちゃうわね。』


セディ:『自国の王家の地方遠征みたいな光景よね。』


メル:『町中の人達がこんなに集まるなんて・・・。』


ローラ:『少しやり過ぎな感じもしますけどね。』


5人が降り立つと更に大きな歓声が湧いた。


ザック達は歓声に応えて宿屋に入った。


部屋に入るとパレスティンの騎士団長がザック達に今後の予定を話してくれた。


どうやら明日の夕方には王宮に到着するらしい。


国王と貴族達が王宮で出迎えるそうだ。


ザックは少し違和感を感じていた。


パレスティンは経済的にも軍事的にも弱小国だと聞いている。


にも関わらず、町ではあれほどの群衆が集まりザック達を歓迎し、王宮では国王と貴族達が出迎える。


アーデリアの様な建国間も無い国の王が来訪しただけにしては、やはりやり過ぎなのだ。


アーデリアに経済支援を望んでいるならば、こんな茶番染みた事はやる必要は無い。


逆に何かを企んでいるとしても、その真意が全く理解出来ないのだ。


だがせっかく歓迎してくれるというのならば、その好意は受けなければ失礼にあたるだろう。


その夜、ザック達は町で一番評判の良いという食堂でもてなされた。


そこで出された料理もまた、聞いていたパレスティンの内情を感じる事が出来ないほどに豊かな食材を贅沢に使用した物ばかりだった。


アン達もそれには困惑している様子だった。


宿屋に戻り、数々の不安が頭を過りながらも、その日は眠りに着く事にした。


お読み頂き有り難う御座いました。

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