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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第4章 西北大陸の闇。
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第69話 サーシアと食文化と。

お読み頂き有り難う御座います。


第69話です。


ラムサス共和国に到着してから2日が過ぎた。


メルが手伝っていた、神殿騎士団やジルゴート家一族に関する文献の記述の進捗は、ある程度目処がついたとの事なので予定通り出発出来そうだ。


サーシアの了承を得て、王宮の高台に通信の為の中継局を設置した。


今後アーデリアから西北諸国に魔信機を贈り、各国家間の長距離通信網を構築する為と、ザックが遠方に出向いた際の皇宮との連絡の為だ。


テストでリアスとの交信を行ったが、今後は各国専用の回線チャンネルを設ける事になる。


使用用途に応じて出力の異なる魔信機を作る事で、不要な混線も避けるつもりだ。


サーシアの希望で、今回の外交が終わってからアーデリアへ招待する事になった。


その際はファルネリアのエルシアも一緒に招待する事になっている。


一方でアーデリア国内では、憲兵大臣により海洋防衛軍の設立に関する法案が議会で可決された。それに伴いシェルバール近郊の入り江に造船所と海軍基地が建設される計画が議会で承認された。


国防及び海洋の沿岸警備が主な目的で、アーデリア領の離島もその対象となる。


事前にザックにはその事を伝えられており、法案提出に関しては条件付きで了承している。


その条件は、あくまでもアーデリア領海内に限定した防衛・警備活動である事と、停船勧告を最低三回は行い、最終警告の後に武力行使を行う事だ。


事前にそういった明確なルールを前提条件としておく事で、組織活動の名目をはっきりさせたのだ。


更に警察組織と政府機関である兵士局を完全に分離し、警察を皇室・民間による合同管轄の独立した治安組織として新たに権限を与える事になった。


これはかねてよりザック自身が希望していたもので、警察組織内に内務・内政監察部を作り、政府内部の人材に関しても取り締まりが可能な部署を設立する為のものだ。


設立理由としては、将来的に考えられる、法的機関に関わる国家政府組織による独裁的な取り締まり活動を防止し、政府が必要以上に肥大化するのを抑止する為でもある。



こちらの外交活動に関しては、サーシアの口添えによって次に訪問を予定しているパレスティン王国への伝達をして貰えた。


パレスティン王国側はこの事にかなり驚いたらしい。


ラムサス共和国がファルネリア以外の国と条約を結んだ事自体が異例だそうで、そのラムサスがパレスティンに特使を送る事は今まで例が無かったそうだ。


そんな事もあり、パレスティン側は国をあげて歓迎するとの事であった。


パレスティン王国は西北諸国において、国土も少なく兵力が低い弱小国らしい。


元々は大陸西側の3割もの領地を治める大国だったそうだが、貴族達により引き起こされた内乱により国が分裂して今に至るという話だ。


元の領地は分裂した国々によって統治され、現在はパレスティンを含め4カ国となっている。


サーシアはその事情を考慮し、4カ国全ての国に特使を派遣したそうだ。


大陸においてのファルネリアとラムサスの影響力はかなり大きく、特に東部諸国には顔が利くとの事だ。


サーシア:『ある程度の段取りは済ませておいたが、北部と中央に関してはここ100年ほど関係を築いておらんでな。後はそちらとの関係を持つ諸国に頼んでみてくれ。』


ザック:『御助力頂いて感謝します。それでパレスティン王国はどの様な国なんです?』


サーシア:『詳しくは知らんのだが、国王は若い男らしい。4カ国の中では最も古い歴史を持っておるが、弱小国になってからは国家そのものも衰退しとる様じゃな。なんでも特産品はライスらしいぞ?。』


ザック:『米が特産か・・・。なら輸出さえ上手くやれば、それなりに国力を上げられそうなんだけど・・・。』


サーシア:『交易に関する話を聞いた事が無いので一概には言えんが、内需を賄うので手一杯なのではないか?』


ザック:『農地面積が少なければそうでしょうね。でも政府が何の策も打たないのは不自然です。何か事情がありそうですね。』


各国諸事情があるとはいえ、同じ大陸であまりにも繋がりが無さ過ぎると思った。


自国は自国、他国は他国という考え方は解らなくもないが、こうも近隣諸国の情報が共有出来て無いのは、やはり問題だろう。


気付けば隣国が亡んでいた、等という事にも成りなねないのだ。


アン:『ザック!リアスから通信が入ったわよ!』


突然アンが魔信機を持って来た。


ザックが応答すると、リアスは興奮気味に言った。


リアス:『陛下、量産を開始した冷蔵庫を大量輸入したいと、南方諸島同盟から発注があったのですが、如何致しましょう?外務大臣と内政大臣から意見を求められたのですが?』


ザック:『あれ?南方に量産開始の連絡なんて入れたっけ?』


リアス:『実は外務大臣が量産開始直後に南方に連絡を入れたらしいんですよ。』


ザック:(あれほど海外に連絡する時は俺に一言入れてくれってって言ったのに・・・。)


ザック:『それで現段階で検査済みの在庫はどの位ある?』


リアス:『検査と試運転が済んだのは500台ぐらいですね。』


ザック:『じゃあ300台までなら出荷すると伝えてくれ。他に回す予定の所もあるから。』


リアス:『畏まりました。それでは出荷準備に入ります。』


サーシア:『今言っておったレイゾウコとは何じゃ?』


ザック:『食料品、特に生物なんかを冷やして保存する箱の様な物です。冷やす事で普通より長く保存出来るんですよ。』


サーシア:『それは季節に関係無くという事か?』


ザック:『えぇ、それに製氷機が付いているので氷も作れるんですよ。』


サーシア:『なに?西南大陸では冬季に氷を作っておらんのか?』


アン:『西南大陸は温暖な気候なんで、冬でもあまり氷は出来ないんですよ。』


ザック:『でも製氷機に水を入れた器を入れておけば、夏場でも手軽に氷を作れるんです。飲み物も冷やしておけますしね。』


サーシア:『という事は、夏場に冷えた飲み物と氷を作れると言うのか?』


アン:『そういう事ですね。』


ザック:『元々は食堂等の飲食店の為に作ろうと思ったんですが、用途が幅広いので一般向けにも製造する事にしたんですよ。』


サーシア:『例えばの話じゃが、その逆は出来ぬかのう?』


ザック:『逆ですか?』


サーシア:『こちらの冬は冷えるでな、料理も作った側から直ぐに冷えてしまうのじゃ。一応保温箱はあるのじゃが、如何せん短い時間しか持たんのじゃ。』


ザック:『保温かぁ・・・。多分可能ですね。大きい物なら魔法術式を使えば良いし、小さな物なら材質と構造の工夫で何とかなると思いますよ?』


サーシア:『誠か!?』


ザック:『えぇ、俺が居た世界でも保温の弁当箱や保温庫はありましたからね。少しこっちの世界仕様に工夫するだけで作れると思います。』


サーシア:『是非頼む!北国の者達はそういう物を欲しておる筈なのじゃ!』


ザック:『それでは国に戻りましたら、早速開発に着手しましょう。』



セディとローラは町に買い出しをしに行って貰っている。


ついでにこの国の特産品をチェックして貰っているが、これには理由がある。


行く先々で特産品をチェックする事で、その国の風土や食文化を知る事が出来る。


さらに町に根付く文化を体感する事で、その後の交易や産業開拓の参考に出来るからだ。


ザックが外交を行うにあたって重要にしているのは、その国の王でも王室の権威でも無い。


その土地に暮らす人々の生活なのだ。


人々が健やかな生活をしていれば、その国の主義や政治体制に関係無く、人々にとっては良い国という事になるからだ。


セディ:『ただいま陛下!』


ローラ:『ただいまです!』


ザック:『おかえり、町はどうだった?』


セディ:『綺麗な町でしたよ。市場や商店街も活気があって、人もかなり出てましまね。あ、そうそう、これお土産です♪』


ローラ:『甘いお芋のお団子です。』


アン:『え?なになに?美味しそう♪』


メル:『美味しそうですね。』


ザック:『え?これって・・・中に入ってるのって、もしかしてさつま芋か?』


セディ:『やっぱり陛下もそう思った?私も色を見てさつま芋だと思ったんですよ。それで、材料のお芋を少し分けて貰えたんですけど・・・。』


ザック:『少し形は違うけど、間違い無くさつま芋だよ。でもセディ、さつま芋なんてよく知ってたね?』


セディ:『ロンドンの店に売ってたんで知ってたんです。アニメで焼き芋見てから、食べてみたくて売ってないか調べまくったんですよ。』


ローラ:『そんな事より、さぁ、みんなで食べましょ!』


その団子はスイートポテトみたいに裏ごししたさつま芋を丸めて、団子状にした物をデニッシュの様な生地でくるみ、卵黄を塗ってオーブンで焼いた物だった。


芋本来の甘さに加え、少しだけ蜂蜜の甘さがプラスされて濃厚な味わいだが、表面を包み込んでいるデニッシュっぽい生地のおかげで甘ったるく感じない。


この芋団子はパルシェットというラムサスではポピュラーなお菓子らしい。


ザック:『これ温めて食べると、もっと美味しいかもね?』


セディ:『電子レンジが恋しいですね。』


アン:『そのレンジってのを使うと温められるの?』


ザック:『電気っていう力を使って、食べ物や飲み物を温める機械なんだ。便利だし、早く温める事が出来るから楽なんだよ。』


メル:『もしこっちで似た物を作れたら、こういう北国では重宝されそうですね。』


セディ:『さすがに難しいかもね。一応原理は知ってるけど、こっちだと電力を安定して作れないからね。』


ザック:『まぁ電気だけの問題じゃ無いんだけどね。簡易的なオーブンとかは作れるけど、レンジはさすがに無理かな。』


ローラ:『世界も技術も違うから、色々と難しい事はありますよね。』


世界は常に新しい発想と技術によって発展して行く。


それは国の違いこそあれど、中世であろうと現代であろうと変わりは無い。


ザックは向こうの世界とこちらの世界のバランスを考えながら産業開発を進める必要もあるが、こちらの世界の人々が欲している物を作る事も必要だと感じていた。


その日の夜、サーシアはザック達を大広間でもてなしてくれた。


サーシア:『エルベスタ陛下、そして婚約者の方々よ、明日にはそなた達が旅立たれるかと思うと、やはり寂しゅうてな。せめて旅立たれる前に、我が国の特産品や料理を楽しんで貰いたいのじゃ。今宵は思う存分堪能してくれ。』


並べられた料理はどれも素晴らしく、口当たりが良くて味わい深い物ばかりだった。


アン達も美味しそうに食べている。


料理はこの地域では貴重と思われる野菜料理を中心に、牛肉や魚を使った料理だ。


ラムサスの西部では畜産、南部では漁業、東部では農業、北部の山脈では山菜と、比較的食には恵まれた土地だが、冬季の寒さから野菜は貴重品となっている。


特に葉野菜や茸は長い冬季には手に入らない為、値段も中南部の大陸に比べて高価な筈だ。


それらを惜し気も無く贅沢に使った料理は、さすが王家の料理だと納得させられるものだった。


出汁は基本的に肉と骨から取った物を使っているらしい。


こんな時は日本人特有の鋭い味覚を持った事に少し罪悪感を感じる。


出汁や調味料を分析しながら食べる癖がついてしまったのだ。


欧米人と日本人の決定的な違いはそこにあると思う。


欧米人は味と食感のトータルバランスを考えるが、日本人は個々の食材の持ち味や味付けが食材を生かして無いと納得しない。


それを踏まえてもこの料理は美味しいと思えた。


食後、サーシアはこの国の生い立ちを話してくれた。


ラムサスは元々ファルネリア・ブレスデンを含む一つの国家だったそうだ。


各々の領主だった初代国王達は、肥大し過ぎた貴族政治に疑問を感じ、それぞれの主義の元に国家を樹立したのだそうだ。


国を分散する事で、互いの国家を客観的に見て国家の在り方を模索するという目的があったらしい。


いずれは最も正しいと思われる主義の元で再び一つの国家として統合するつもりだったそうだ。


時代が変わるにつれ、各国の考え方が変わり、現在の様な独自の文化を形成する様になったのだという。


その話を聞いてザックは常に世界は変革しているのだと実感した。


レデンティアは国内に抱えていた大きな問題は然程無かった。


にも関わらずザックという存在によって大陸を二分する事になり、アーデリア皇国という国家が誕生した。


ノルバーンもまた貴族に関する問題を抱え、国家の改変を余儀無くされている。


そう考えると使徒の役割とは何なのかと考えざるを得なかったのだった。


お読み頂き有り難う御座いました。

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