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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第4章 西北大陸の闇。
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第61話 深まる疑惑と飛行兵器と。

お読み頂き有り難う御座います。


第61話です。

ファクトリーの件から数日後、ザックの元にベルクレアから連絡が入った。


西北大陸のスレーニア共和国から特使が来たそうだ。


スレーニア共和国は西北大陸の中央部に位置する小国で、現在北の隣国であるベンゲル王国との軍事衝突をしている。


アーデリア建国時に話題に上がったのはこの二つの国である。


ベルクレアの話では第三国による仲介を得てベンゲル王国との停戦をしたいとの事であった。


しかしベンゲル王国側には停戦の意思は無く、政治的な停戦交渉に応じないらしい。


ベルクレアとしても軍事衝突となった理由と経緯がはっきりしない事には協力も出来ないとの事だったが、ベンゲル王国が周辺諸国にまで被害を拡大しようとしているらしく、ノルバーンやアーデリアにも意見を求めたいとの事だった。


これを受けてザックとパーティーメンバーでレデンティア王宮にやって来た。


ベルクレア:『ザック殿達、よくぞ来て下さった。』


ザック:『事が事なので急いだ方が良いと思いまして。それでベンゲル王国の動向はどうなんですか?』


ベルクレア:『それが妙なのじゃ。スレーニア側の話では国境付近の資源採掘場に関する領地争いらしいのじゃが、その範囲がやたらと広い上に、他国の領地にまで領有権を主張し始めておるらしい。』


アン:『他国の領地までですか!?』


ザック:『その採掘場や領有権を主張しているエリアに、ベンゲル王国が欲している何か埋蔵されている物があるんでしょうね。』


ベルクレア:『そこなのじゃ。実はその国境付近の採掘場では純度の高い魔法石が採掘されておるのじゃが、それは元々スレーニアとベンゲル両国による共同採掘を行っていた様でのう。』


メル:『共同採掘という事は協定がなされてた筈ですよね?』


ベルクレア:『そうなのじゃ。ところが一年ほど前に突然協定を破棄して、スレーニア領の北部全域を明け渡す様に要求して来たそうなのじゃ。』


ザック:『という事は、ベンゲル側による一方的な攻撃って事ですか!?』


ベルクレア:『スレーニア側の話が真実ならばじゃがな。それとベンゲル側が好戦的なのは使っておる兵器にも関係があるらしい。』


ザック:『それってまさかノルバーン帝国製の!?』


ベルクレア:『断言は出来んがな。じゃがベンゲルには兵器開発を行うだけの産業は無いと聞いておる。輸入したとなればノルバーンからの輸入が濃厚じゃろう。』


ザック:『十分にあり得る話だとは思いますね。恐らくベンゲルでも弾薬や砲弾の生産位は出来るでしょうから、相当量の兵器が揃っていれば強気に出れるでしょうし。それでエルベラ陛下は何と?』


ベルクレア:『今までベンゲルに渡った可能性がある兵器の量をファクトリーの出荷履歴から調べて、早急にベンゲルの戦力を算出すると言っておった。』


ザック:『それでベンゲル側が今後攻勢を強めた場合、あちらの周辺諸国はどうするんですかね?』


ベルクレア:『やはり連合を組む事にはなるじゃろうな。じゃが問題はベンゲル以外の国は最新鋭の兵器を持たぬ上に、西北大陸には魔法の使い手が少ない事じゃ。』


ザック:(これは少し不味いかも知れないな・・・。ベンゲルの内情を探る必要があるかも知れない。)


ザック:『とりあえずは向こうの状況を知る必要がありますね。西方諸国連合にも知らせた方が良いかも知れません。』


ベルクレア:『一応西方にも既に知らせてはある。じゃが西方としては西北との国交が少ないゆえ、情報に関してはあまり期待せんで欲しいと申しておった。』


ザック:『となると・・・ギルドから事情を聞いてみましょうか。少なからず情報は聞けると思いますし。』


アーデリアに戻ったザックは他のメンバーと別れ冒険者ギルドを訪ねた。


カリン:『ベンゲル王国ですか・・・。実はスレーニアとベンゲル両国のギルドからは異なる情報が来ているんです。』


ザック:『と言いますと?』


カリン:『ベンゲルギルドからは、スレーニア政府が協定違反をしたとの報告が来ているんです。』


ザック:『協定違反?それってまさか共同採掘に関する協定違反ですか?』


カリン:『そうらしいですね。しかしギルドとしては政治的干渉が出来ませんので、その真意を知る術はありませんけどね。』


ザック:『となると、やはりスレーニア側の意見を鵜呑みにするのは危険か・・・。』


カリン:『まさかとは思いますが、西北の軍事衝突に干渉されるおつもりですか?』


ザック:『干渉というか、出来れば穏便に解決出来ればと思っています。もちろん他の国と協力しながらですけどね。』


カリン:『でしたらお耳に入れておきたい事があります。ベンゲルには飛行兵器があるらしいという情報がありまして。』


ザック:『飛行兵器ですって!?』


カリン:『これはスレーニアの東の隣国、シュレーデン王国のギルドからの情報なんですが、ベンゲルとの国境付近で飛行兵器の試験飛行を目撃した冒険者が数人居るのです。』


ザック:『その話が本当なら考え方を変える必要があるか・・・。』


ギルドを後にしたザックは皇宮の地下格納庫へ向かった。


リアス:『ザック様?』


ザック:『リアス、組み立てはあとどの位掛かる?』


リアス:『あと数日で組み立ては完了しますが、どうかしたのですか?』


ザック:『もしかすると、近い内にこいつを使わなきゃならないかも知れない。』


リアス:『・・・分かりました。数日中に組み立てと調整を終わらせます。』


ザック:『あとステラをここに呼んでくれないか?』


リアス:『っ!!話されるのですね・・・。分かりました、すぐに呼んで来ます。』


リアスがステラを呼んで来ると、ステラはその場の光景に驚きのあまり少しの間固まっていた。


ステラ:『これはいったい・・・。』


ザック:『ステラ、驚いてる所悪いんだが、ちょっと込み入った話があるんだ。』


ザックはステラに全てを話した。


ステラは話を聞くにつれ、事の重大さを感じていた。


ステラ:『正直にわかには信じがたい話ではありますが・・・。陛下の御事情はよく分かりました。それで陛下、私に何をさせようと?』


ザック:『君にはここにある兵器類の調整とメンテナンスを御願いしたい。君ならここの兵器のシステムプログラムや構造を理解出来ると思う。分からない事に関してはリアスに聞いてくれ。』


ステラ:『分かりました。それではマニュアルを解析して、直ぐにでも調整が行える様にスケジュールを組ませて貰います。』


この飛行機はこの世界なら単体でも一国を滅ぼす事が出来るだけの兵力を持つ。


本来この世界で使う事が許される様な兵器では無い。


ベンゲル王国が試験飛行をしているという飛行兵器がどの様な物かは分からないが、今後簡易的な爆撃機として運用される可能性が高い。


だとすれば通常の兵器とは異なり、広範囲を同時に攻撃出来る事になる。


国境付近でしか目撃情報が無いという事は、近距離飛行しか出来ない可能性があるが確証は無い。


何れにせよ空からの対地攻撃を前提とした兵器であれば、民間人に被害が及ぶ危険が非常に高いのだ。


となれば被害が拡大する前に一気に鎮圧する必要が出て来る。


まずはベンゲル王国の内情を探る事が優先だが、いざという時の為にコイツを使える様にする必要がある訳だ。


その為にもリアスとステラに頑張ってもらわないといけない。



城の自室に戻ると、アンとセディが何やら話し合っていた。


ザック:『どうしたの?』


アン:『実はね、今回の西北の件なんだけど、クラン達に西北で内情を探って貰ったらどうかと思ってね?』


セディ:『その護衛として私とメルが行きたいって話をしてたんだけど。』


ザック:『確かにメルとセディなら戦力としてはかなり心強いとは思うけど、それはあまりにも危険過ぎるよ。直接アーデリアに絡む問題では無いから、悪いけど許可する事は出来ないよ。なるべく他国経由で情報を集めないと、ベンゲル王国に警戒させる事にもなるしね。』


アン:『でも少しでも実状を知らないと動き難いわよ?最終的にはアーデリアが行動を起こす事になるんでしょ?』


ザック:『その辺は考えてるよ。地下にあるアレを使うんだ。』


セディ:『あの飛行機を使うの?』


ザック:『そう、あと数日で完成するから、上空から戦況を見る事も出来るしね。政治的な実態は別の方法で探って、軍事的な面は上空から見れば良いんだ。万が一ベンゲル側が非道な手段を使っていたとしても、その時は俺達が飛行機で乗り込めば良いだけの話さ。』


アン:『でも大丈夫なの?あんなの見られたらもう言い逃れなんて出来ないわよ?』


ザック:『確かにそうなんだけど、後々事を考えると知らせるしか無いと思うんだ。でも侵略目的で使う訳じゃ無いからと言って信用して貰えるかがネックなんだよね。』


アン:『一応ベルクレア陛下とエルベラ陛下には先に教えといた方が良いわよ?突然あんなのを使ったりしたら他の諸国も驚くだろうし。』


セディ:『それ以前にこのお城って滑走路あるんですか?あの大きさだとかなりの距離が必要そうだけど・・・。』


ザック:『王国と帝国には明日にでも知らせるつもりだよ。それと滑走路は必要無いんだ。あれは垂直上昇が可能だからね。』


セディ:『え!?垂直上昇?ヘリみたいに?凄い!?』


アン:『すいちょくじょうしょう?何それ?』


ザック:『普通飛行機ってのは飛ぶ時に加速する必要があるんだけど、結構長い距離の道が必要なんだ。うちのはそのまま空に真っ直ぐ上がれる様な作りなんだよ。』


アン:『よく分からないけど要は凄い事なのねぇ。それであの飛行機って何人乗れるの?』


ザック:『定員は8人だから十分な余裕はあるよ。』


セディ:『陛下、今回の件って神託が出て無いみたいだけど、放っておいてもこの世界に影響が無いって事なのかな?』


ザック:『もちろん影響はあるよ。神託が出ていないのは俺達が既に動いているからっていう可能性が高いかもね。』


セディ:『案外ベンゲル王国の動きを見て出そうとしてたりして。』


アン:『でもベンゲル王国の話って何か引っ掛かるのよねぇ。いくら埋蔵資源が欲しいからって、そこまでメチャクチャやるかしら?自国の悪名が広がるだけだと思うんだけど。』


ザック:『そこなんだよなぁ。』


アンが言った事にはザックも同感だった。


まるで理屈に合わないのだ。


スレーニア共和国が協定違反をしたという話も少しおかしい。


スレーニア側の話を真に受けてベンゲル側に停戦の話を持ち掛けたとしても、協定違反の話題が直ぐに上がるのは分かりきっている。


にも関わらずスレーニア共和国はレデンティアに停戦交渉を依頼しに来た。


だとすれば、双方の話が食い違っている以上、第三者が絡んでいる可能性が非常に高い。


両国が揉めて一番得をする者が居る筈なのだ。


そもそも大量の魔法石を欲している国は、それを加工若しくは大量に使用する何かを作っている国だ。


いくら独占的に売却したいからと言って、ベンゲルやスレーニアが軍事衝突をする可能性は低い。


ノルバーン帝国はそれらを使用した産業を軸としている経済だが、北方大陸でも十分な資源は確保出来ているので考えられない。


そして極めつけはベンゲル王国の東の国境付近で目撃されている飛行兵器だ。


ベンゲルにそんな物を作れるだけの産業は無いし、今までの様子を見る限りノルバーンのファクトリーにそこまで完成度の高い技術力は無い筈だ。


こういう兵器は専門的に長年に渡り技術開発と研究を進めなければ作り上げる事は出来ない。


航空力学等の問題もある為、モービィからの技術転用だけで作る事は到底不可能なのだ。


となるとベンゲルの東にあるというシュレーデン王国が怪しいという事になる。


ベンゲル・スレーニア・シュレーデンの三カ国の内情を探る必要が出て来た訳だ。


翌日ザックはベルクレア・エルベラとの密談を行う事にした。

お読み頂き有り難う御座いました。

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