第54話 眷属と妃と。
お読み頂き有り難う御座います。
第54話です。
エトルで一泊したザック達は町を離れ、街道をナバックという村まで進んでいた。
ナバックはエトルへ農作物を卸す、東部で2番目の規模を誇る農村地帯だ。
この農村地帯を抜けるとアンの故郷でもあるエルフの森【フェイラント】に入る。
ザック:『確かエルフの集落に入るには、森の入り口で鈴を鳴らすんだっけ?』
アン:『そうよ。私の鈴を使えば、エルフが来た事が分かる筈よ。』
フェイラントは昔から迷いの森と呼ばれており、不用意に森の奥に入ろうとすると街道に戻れなくなるという言い伝えがある。
それはエルフの集落に入れなくするために、何者かが入り込むと魔法で道が変わる様にしている為らしい。
エルフの集落は太古からの掟を重んじており、外界とは隔離された環境で暮らす事にしている。
理由は様々だが、一番の理由は自分達の文化を犯されたく無いという事らしい。
農村地帯を抜けて小高い丘を登ると、フェイラントの森が見えて来た。
アン:『ここで停めて。』
ザックがモービィを停めると、アンは祈りながら鈴を鳴らした。
目の前の景色が歪むと、街道から反れる1本の道が現れた。
アン:『これで集落に入れるわ。左の道を進んで。』
アンの指示通り、左の道を進むと森の最深部に入る。
その奥の方に大きな集落があった。
ザック:『ここに停めても大丈夫?』
アン:『大丈夫よ。』
ザック達の元に男性のエルフが歩み寄って来た。
アン:『あの人がここの長、族長のソイルよ。』
ソイル:『戻ったか、アン。』
アン:『お久しぶりです、族長。』
ソイル:『そなたがアーデリア皇王だな。』
ザック:『お初にお目に掛かります族長。ザック・エルベスタと申します。』
ソイル:『・・・そなたと二人で話がしたい。こちらへ。アン、テーラに会いに行ってあげなさい。』
アン:『はい、ザック、私達は私の両親に会いに行くわね。』
ザック:『分かった。』
族長の家。
ソイル:『アーデリア皇王、先ずは我が一族への誠意ある立ち振舞いに感謝の意を述べる。さて、そなたからは強き神と聖霊の力を感じる。この大地の者では無い様な?何者か?』
ザック:『私は転生者です。そして神より使徒としてこの地に使わされました。』
ソイル:『やはりそうか・・・。では使徒よ、我々一族は今後そなたの意に従う事としよう。』
ザック:『ならば私は貴殿方一族をアーデリア国民として承認し、今後貴殿方が今までと同じ暮らしが出来る様に協力しましょう。』
ソイル:『感謝する。使徒よ、実はアンの事なのだが、彼女はそなたに娶ってもらいたい。』
ザック:『それはアンが決める事です。私は彼女に無理強いはしたくありませんので。』
ソイル:『いや、彼女はそれを望んでいる。だが自分がエルフである事を理由にしようとしている様だ。それにそなたに娶って欲しいのには理由がある。彼女はもはや普通のエルフでは無いのだ。』
ザック:『どういう意味ですか?』
ソイル:『そなたの様に彼女にもまた神の力が宿っている。聖霊の力も強くなっている。それは普通のエルフには強過ぎる力なのだ。』
ザック:『それはまさか・・・。』
ソイル:『彼女はそなたの眷属となりつつある。』
ザック:『それはまさか、アンが普通のエルフとして生きて行く事が出来ないという事ですか?』
ソイル:『いや、普通のエルフとして生きる事は叶うだろう。だがもし彼女がそなたの元を離れれば、エルフとしてでは無く聖霊として生きなければならなくなるかも知れない。』
ザック:『っ!!何故ですか?』
ソイル:『それはエルフの身に余る力を宿しているからだ。エルフは風と土と水の聖霊の加護を受けている一族。だが大きな神の力が宿れば、それはすでに加護とは呼べず聖霊となった事になってしまう。』
ザックは自分が危惧していた事が現実となっている事に戸惑っていた。
ソイルの話が本当ならば、他のメンバー達も同じという事になる。
ザック:『・・・その件に関しては少し考えさせて下さい。』
その後先日通ったフレイトスの森での出来事を話してから、ソイルに案内されてアンの家に着いた。
アンの両親はザックを迎えると手厚くもてなした。
ザックが自己紹介をするまでも無く、メンバー達から色々と聞いていたらしい。
ソイルによってアンと両親が連れ出され、先ほどの話を両親に告げられると、3人は少し複雑な表情で戻って来た。
恐らく族長はザックに話した事も告げたのだろう。
その後アンの両親はアンの幼い頃の話を沢山してくれた。
そして集落を離れる時が来た。
ザックはアンの両親と族長が話した内容について、両親にアンに対しての自分なりの覚悟と気持ちを告げた。
するとアンの両親はザックに全てを委ねると言ってくれた。
ザック:『大変お世話になりました。』
ソイル:『旅の無事を祈っている。』
アン:『族長、私・・・。』
ソイル:『アン、心配は要らぬ。全てを皇王に委ねよ。』
アン:『・・・はい。』
こうしてザック達はフェイラントを後にした。
ザック:『アン、君の事を族長から聞いたよ。』
アン:『・・・うん。』
ザック:『俺の力の影響で、アンにはすまない事をしたと思ってる。』
アン:『そんな風に思わないで。だって私もザックと同じ様に神様から祝福を得たんだもの。』
ザック:『有り難う。でも色々話し合う事があるね。』
アン:『・・・うん。』
その後移動を中断して、全員で話し合う事にした。
ザック:『という訳で、アンが俺の眷属になりつつある事が分かったんだ。』
メル:『アンさんはザック様と過ごした時間が長いですからね。』
ローラ:『それでアン様が変わってしまう訳では無いんですよね?』
ザック:『それは無いよ。ただ今回の事で分かった事があるんだ。』
アン:『どんな事?』
ザック:『うん、恐らくアン以外のみんなも神の力が宿り始めていると思う。』
セディ:『でしょうね。』
メル:『わ、私にもですか!?』
ローラ:『えっ!?』
アン:『それって本当なの?』
サリア:『そんな・・・。』
ザック:『俺は神様の使徒ではあるけど、眷属では無い。でもかなり強い神力を授かってるから、ある意味神様の予備軍みたいなものなんだ。俺の影響を受けてアンに神力が宿ったって事は、当然行動を共にしている皆も同じ事になるんだよ。』
メル:『確かに理屈は通りますけど・・・。』
ローラ:『でも私、そんなに魔力も変わって無いと思いますよ?』
セディ:『これは私の勘なんだけど、多分みんなまだ覚醒して無いだけなんじゃない?』
ザック:『俺もセディと同意見だな。多分俺自身もそうなんだと思う。』
アン:『だとしたら、まだ私達は普通の人間レベルって事なのかな?』
セディ:『色々と普通の種族よりは能力は高いんじゃない?それに私がパーティーに入った事で、神力が上がりやすくなってる可能性はあるわね。』
メル:『言われてみればセディさんは転生者ですものね。』
セディ:『しかも陛下と同じく神様経由で転生しているから、私にも神力が附与されているわ。』
ザック:『それでなんだけど、みんなに聞きたい事があるんだ。応え難い質問にはなると思うんだけど・・・。』
アン:『なに?』
ザック:『・・・。みんな俺の妃になる気はないか?』
アン:『えっ!?』
メル:『は!?』
ローラ:『えぇ!?』
セディ:『やっぱりね・・・。』
サリア:『えぇ~!?』
ザック:『俺の妃になると、君達の人生を俺に捧げて貰う事になってしまう。当然君達の女性としての幸せを俺が奪ってしまう事にもなる。だから出来るだけ考えない様にはして来たんだけど、みんなの将来を守る為にはこれがベストなんじゃないかと思ったんだ。』
アン:『私で良いの?』
メル:『わ、私はドワーフですよ!?』
ローラ:『私だって元々ザック様の奴隷だったんですよ!?』
セディ:『みんな落ち着いてよ!陛下はみんなの全てを受け入れる覚悟があるから聞いてるのよ?種族とか過去とか関係無しにね。』
アン:『分かってるわよ・・・ザックがそういう人だって事は、ここに居る誰よりも知っているつもり。私だってザックと結ばれたらどんなに嬉しいか考えた事は何度もあったわ・・・。』
メル:『私もザック様の優しさに甘えてしまう度に、もしかしたらって思った事は何度もありましたけど・・・。』
ローラ:『私は奴隷から解放されてから、もし許されるならと思った事はあります。でも・・・。』
セディ:『面倒いわね!陛下!もうみんなの気持ちは分かったでしょ?5人まとめて嫁に貰いなさいよ!』
ザック:『みんなが良いなら・・・ん?5人!?』
セディ:『当然私も入ってるに決まってるじゃないですか!2度の人生の両方をバージンで終わらせる気ですか?』
サリア:『えっ!?ちょっと待って下さいよ!それって私も入ってるんですか!?』
セディ:『え?サリアさんは嫌なの?』
サリア:『嫌という訳では無いと言うか、何と言うか・・・。』
ザック:『サリアはまだ神殿の巫女だぞ?うちのパーティーに入る予定ではあるけど、まだメンバーじゃ無いんだ。
セディ:『でもいずれパーティーに入るなら、そういうつもりでいた方が良いんじゃない?』
サリア:『ま、まぁ確かに・・・そうかもですね・・・。』
ザック:『ま、まぁそれもそうか・・・。でもみんな、俺で本当に良いの?』
アン:『こんな女で良ければ・・・。』
メル:『私の様な色気の無い女で宜しければ・・・。』
ローラ:『身も心も捧げます・・・。』
セディ:『今度の人生は幸せにして下さいね!』
という訳でザックはひとまず4人の妃を娶る事になった。
この旅が終わり、城に帰ってから一人一人に再度プロポーズをする事にした。
お読み頂き有り難う御座いました。




