第45話 新国の告示と落成式と。
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第45話です。
告示。
私新国君主ことザック・エルベスタより現レデンティア王国の全ての国民に通達する。
先のレデンティア王国王室よりの告示の通り、新国の建国をここに宣言する。
この建国はレデンティア王国・ノルバーン帝国・西方諸国連合の各国君主による承認の元に承認された決定事項である。
国土は西南大陸中央部ランス北端より南側、大陸南端までの全土とする。
新国の国名はアーデリア皇国、首都はアーデンとする。
皇国政府発足後から新憲法告示までの期間は現王国法を適用する。
納税に関しては従来通りとする。
尚、今後レデンティア王国民を希望する者は騎士局にて申請を行う事。
アーデリア皇国民を希望する者は新政府発足後に騎士局にて定住希望申請を行う事。
これ等全ての申請費用は無料であり、レデンティア王国民の移転に関しては、その移送費用をレデンティア王国並びにアーデリア皇国の両国より負担する。
移転時には、アーデリア皇国より馬車を手配する。
新政府発足後の両国間の往来に関しては、国境での検閲を受ける事無く自由に往来出来るものとする。
罪人による逃亡に関しては、両国の騎士・兵士が国境を越えての公務を行使出来るものとする。
即位の式典は翌月元日を予定している。
新国アーデリア皇国君主ザック・エルベスタ。
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アーデリアという国名は首都となったアーデンから名付けられたのだが、以前神殿の神官から『かつてこの周辺一帯がアーデリアと呼ばれていた記述がある。』と聞かされた事が大きな理由でもある。
アン達もこの名前が大いに気に入ったらしい。
この告示が出されるとすぐに、アーデンの町には【祝アーデリア皇国建国!】という横断幕が貼られた。
アーデンや周辺の町からは歓声が湧いたそうだ。
城の建設も大半が完了しており、ザック達が城に移住する日が近付いて来た。
今後屋敷は改装して医療施設として再利用される事になる。
屋敷周辺の空き家も、医療施設に勤める者達が暮らす宿舎として商人ギルドから買い上げた。
大衆浴場と食堂は商人ギルドに運営を委託する事になったが、従業員は元盗賊の奴隷達が継続して行う。
その収益の一部を医療施設の運営に回す事で医療施設の負担を軽減する事にした。
サリー・ジーナ・フェルテ・ノエル・リアスは奴隷から解放し、リアス以外はザック達の専属使用人として支える事になった。
皇宮内の使用人の人手が足りなくなる為、使用人を募集すると予想を上回る希望者が集まった為、サリー達に教育係を頼む事にした。
リアスの工房は皇宮の一角に移転し、リアスの個人的な研究施設となる。
リアスは皇国の技術開発顧問に任命し、今後はモービィだけで無く、様々な研究開発を行う事になる。
告示以降忙しい日が続いていたが、何とか1日休みを取る事が出来た。
休みに合わせたかの様に突然ザックのスマホに信託の項目が出た。
内容を見ると、建国を祝うものであった。
【この度の建国をお祝い申し上げます。西方諸国での活躍と今回の建国を祝し、祝いの品をお贈りします。】
ザック:『・・・今度は何を送って来るつもりだろう。』
(まぁ城なら倉庫も大きいから多少は多くても問題無いかな?)
アン:『ねぇザック、お城に移ったら式典まではそんなに忙しくは無いのよね?』
ザック:『そうだな、大臣達の受け入れ準備や式典の準備はするけど、序盤はそこまで忙しい訳じゃ無いかな。』
アン:『じゃあお城の落成式を兼ねて、孤児院の子供達を招待しない?』
ザック:『良いね!サリー、忙しいかも知れないけど、準備出来るか?』
サリー:『お任せ下さい。ジーナ、料理の方は大丈夫ですか?』
ジーナ:『はい、既に新しい料理人も研修が終わっていますし、式典の予行練習には良い機会だと思います。』
アン:『じゃあ早速明日教会に行きましょ。』
そうこうしているうちに皇宮が完成し、落成式が執り行われる事になった。
落成式にはアーデン内外から沢山の人が集まり、皇宮正面の広場で立食パーティーが行われた。
教会からは神父とシスターが子供達を連れて来ている。
子供達はとても嬉しそうに走り回り、料理やお菓子を楽しそうに食べていた。
アンは子供達と一緒に鬼ごっこをしていた。
神殿からはサリアが来ていた。
サリア:『ザックさんが王様になっちゃうとは思いませんでした。もう冒険者は引退されるんですよね?』
ザック:『いや?特別に冒険者の権利をギルドが承認してくれたから冒険者は続けるよ。勿論旅の内容は今までと変わるかもだけど、いずれはサリアがパーティーに入る事もメンバーは承知してるしね。』
サリア『え!?そうなんですか!?じゃあ私も頑張らなきゃですね!』
サリアは今もザックのパーティーに入るつもりでいてくれた様だった。
ザック達は神殿には時々行く様にしている。
神官にメルを紹介すると神官もメルから話を聞くのが楽しみになった様だ。
ムーランのダイソンとメリアも駆けつけてくれた。
ダイソンは自分の宿のある町が首都の城下町になった事が嬉しいらしい。
しかも自分の宿に王様が泊まっていた事が誇らしい様だ。
メリアも興奮気味に城を眺めていた。
ムーランからも城は見えるのだが、近くで見ると迫力が違うのだろう。
カリンと冒険者ギルドの面々はテーブルを囲んで感慨深そうに城を眺めている。
そんな中、突然荷馬車の隊列が城内に入って来た。
先頭の操馬主から送り状を受け取ると、そこにはサクラと書かれてあった。
荷馬車の隊列は軽く15台を超えている。
そこには木枠の大きな荷物を積んだ馬車も何台かあった。
突っ込み所が沢山あるが、兎に角正面には置いておけない。
皇宮の裏手に回ってもらい、木枠の荷物はリアスにクレーンで下ろして貰った。その場はリアスに任せ、正面に戻ると来場者の接客に当たった。
使用人達はサリーとフェルテの指揮の元で良く働いてくれている。
ジーナや他の料理人達が奮闘してくれたお陰で、テーブルから料理や飲み物が絶える事は無かった。
最後は孤児院の子供達に料理とお菓子のお土産を持たせ、他の来場者には出来たばかりのアーデリア皇国の紋章入りの旗を渡した。
無事落成式が終了し、ザックは裏手に回って荷物の開封作業に移った。
実に荷馬車10台分以上の段ボール荷物と荷馬車15台分の木枠の大型荷物が置かれている。
その尋常では無い量にザックは一瞬目眩がした。
木枠の物から開封していくと、何やら大型の機械の様な物が入っている。
その中の一つに設計図らしい物とマニュアルの様な物が入っていた。
リアス:『ザック様、これ何なんでしょうね?』
リアスは見当もつかない様だったが、全ての機械を繋げるとある物になる事が予想出来た。
ザック:『これ・・・多分飛行機だな。』
リアス:『飛行機!?え!?これって空を飛べるんですか!?』
ザック:『多分そうだね。しかもかなり大きいから、長距離を飛行する事を前提とした物だと思う。』
リアス:『もしかしてこれって・・・あちらの物ですか?』
ザック:『いや、向こうにも飛行機は有ったけど、こんな形のは見た事が無い。』
(まずいな・・・これって間違い無く兵器だ。しかも俺が知ってる戦闘機や戦略爆撃機の類いじゃ無い。こんなの持ってたら国際問題になるぞ?まさか今後これが必要になるって事なのか?)
リアス:『ザック様、ここの地下に運び入れて組み立てても宜しいですか?』
ザック:『いや、取り敢えずは運び入れるだけにしてくれ。他の荷物も整理したいしね。』
この城の裏手には広大な地下空間がある。
城の地下には万が一の有事や大災害に備えた施設を作ってあり、そこから直接アクセス出来る構造だ。
ザックが指示してリアスによって作られたその地下空間は巨大な昇降設備があり、大勢の人民を収納出来る地下シェルターとして使う予定であった。
他の荷物を開けて行くと、恐ろしい量の調味料や食品・更にはザックが以前欲していたパーティーメンバー用の小口径の銃も入っている。
他にもこの世界には無い様々な物が届けられていた。
(もう驚くのやめた・・・。)
ザックは先程の設計図とマニュアルを見ると、やはり大型兵器である事が分かった。
設計図をよく見ると各部がユニットで構成されて、動力ケーブルを繋ぎ接続部のジョイントをボルトオンするだけで出来上がるという、思ったより単純な構造だった。
(つまりある程度完成させた状態で送って来たのか・・・。)
リアスにはこの事を口止めして、今後地下シェルターは格納庫として使うと指示した。
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