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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
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第39話 帝国の闇と国王と。

お読み頂き有り難う御座います。


第39話です。

ザック達は帰りがてら王都に立ち寄った。


ベルクレア女王に渡航を取り止めた事を伝える事と、マリエリア・ロムネイブ伯爵令嬢に挨拶をする為だ。


ベルクレア:『ザック殿、それでは王国内で魔動機の技術者が見つかったという事か?』


ザック:『はい、モービィの設計をやっていたという者が魔動機のエンジニアだったそうで、部品や材料の伝もあるとの事でしたので急遽雇う事にしました。帝国の魔動機ファクトリーとの交渉も考えましたが、オリジナルを作るなら1から作った方が早いと思いまして。』


ベルクレア:『ザック殿がそう判断されたなら妾も文句は無いが、皇帝は随分と会いたがっておる様じゃぞ?』


ザック:『はい?何故皇帝が?』


ベルクレア:『先の来訪の時にザック殿との会話が新鮮だった様じゃ。近い内に別件でも良いから帝国に赴いては貰えんかのう?』


ザック:『そうでしたか・・・では行きますか?』


ベルクレア:『ん?どういう事じゃ?』


ザック:『陛下は帝国の皇宮に行かれた事があるんですよね?』


ベルクレア:『あるが、それでどうするのじゃ?』


ザック:『以前シンクレア王女と王宮に転移して来たのを覚えておられますか?あの時はシンクレア王女の記憶をトレースしてワープで転移したんですよ。』


ベルクレア:『つまり今度は妾の記憶で帝国へ行くと?』


ザック:『はい、皇宮近くの風景を思い出して頂ければ結構です。』


ベルクレア:『なるほどのう。あい分かった、その方等、聞いておったな?暫し留守にするぞ!』


ザック:『みんなは街で時間を潰しててくれ。』


アン:『余計な事に首突っ込んじゃ駄目よ!』


ベルクレアは皇宮の入り口付近を思い出してイメージした。


ベルクレア:『ザック殿、よいぞ。』


ザック:『では。』



見事に皇宮の入り口付近に転移する事が出来た。



ベルクレア:『ほう!見事なものじゃのう!』


ザック:『でもこれだけ距離があるとさすがに少し魔力が持って行かれますね。』


さすがのザックも数千キロの距離を転移するのは初めてだった。


実に王宮からシェルバールまでの距離の3倍ほどの距離を転移した事になる。



ベルクレア:『妾が門兵に話そう。』



そうベルクレアが言うと門へ向かった。



門兵:『どちら様でしょうか?』


ベルクレア:『レデンティア王国女王のベルクレアじゃ。転移魔法にて此方に参った。エルベラ皇帝陛下に御目通り願いたい。』


門兵:『では身分の証を。』


ベルクレアは王家のペンダントを門兵に見せた。


門兵はその場に膝間付いた。



門兵:『レデンティア王国女王陛下、これより皇帝陛下に来賓の報告を致しますゆえ、暫しお待ち下さいませ。』


後ろに控えていた兵士に合図すると兵士は宮殿内に走って行った。


ベルクレアとザックは門兵と共に内門まで進むと、門兵は宮廷係に引き継いで外門へ戻って行った。



謁見の間に通されるとエルベラが出迎えてくれた。



エルベラ:『おぉ!ベルクレア女王!ザック殿まで!』


ベルクレア:『お久しぶりですねエルベラ陛下。今日は此方のザック殿の転移魔法で参りました。』


ザック:『御無沙汰しております皇帝陛下。』


エルベラ:『なんと転移魔法とな?転移魔法は一度行った所へしか飛べぬと聞いたが?』


ザック:『俺にはイマジントレースというスキルがあります。女王陛下の記憶を読んで此方まで転移した次第です。』


エルベラ:『ザック殿には不可能が無いのかえ?まぁそれは兎も角、良くぞ参られた!して転移魔法で来られたという事は何か急用か?』


ベルクレア:『いや、ザック殿のパーティーの帝国行きが中止になったものでのう。帰りに王宮へ立ち寄ったのでエルベラ殿が会いたがっておったと話したら転移で来ただけの事じゃ。』


エルベラ:『そうであったか、ときにザック殿、モービィの現地生産の話じゃが、ファクトリーが不快な物言いをしたらしいのう?』


ザック:『いや、ファクトリーも企業ですからね。企業なりの言い分は有るでしょう。そこで我々としてはオリジナルのモービィを王国内で生産する事にしました。』


エルベラ:『ほう!王国製のモービィか!』


ザック:『帝国もそうでしょうが王国には裕福な者も居れば貧しい者もおります。科学面で後進国の王国ではモービィを必要としているのは貧しい者達ほど多いので、帝国製の高価なモービィは買えません。そこで我々が独自に王国の需要に合わせたモービィを作る事にしたんですよ。』


エルベラ:『やはりそうなったか・・・。いや実はな、こちらのファクトリーから、モービィの生産権利を帝国内に制限しろとの嘆願書が来てのう。ザック殿との交渉で何かしらの危機感を感じた様じゃ。勿論余は他国の産業に口出しは出来ぬと却下したのじゃが。』


ザック:『そうでしたか。本当は帝国の魔動機ファクトリーとの交渉を考えていたんですが、モービィファクトリーからの圧力が掛かると色々面倒だと思って王国内で魔動機も製造する事にしたんですよ。』


エルベラ:『ザック殿も思う所が有った様じゃのう。こちらの魔動機ファクトリーも王国での動きが気になっておる様でのう。モービィファクトリーとの契約を切られた魔動機ファクトリーが王国に拠点を変えようとしているらしい。』


ザック:『契約を切られた?』


エルベラ:『ザック殿もモービィファクトリーとの交渉をして分かったと思うが、帝国内のモービィファクトリーは利益優先型の経営をしておる。理由としては貴族への上納金や幹部の過剰な報酬じゃ。政府としても行き過ぎた経営体制に規制を掛けようとしておったが、如何せんこの議題を出す度に、委員会が粗探しをしては改善を要求して来るので議論が進まんのが実態なのじゃ。魔動機ファクトリーはモービィのファクトリーよりも多数ある。しかもモービィのファクトリーとは違い民間だけで運営しとる企業じゃ。当然貴族が絡んでおるモービィのファクトリーは足下を見るからのう。』


ザック:『あんまりな話ですね。皇帝陛下の勅命という訳にはいかないんですか?』


エルベラ:『そうしたいのは山々なんじゃが、帝国では国民活動に皇帝が干渉出来る範囲が法律で大きく制限されておる。皇帝の権限を過剰に行使するとただの独裁政治になるでな。勿論貴族の行動にも制約はあるが、ファクトリー自体貴族が運営しておる事が多いのじゃ。』


ザック:(やっぱりな。そこを何とかしなきゃ今後帝国とのやり取りは難しいか・・・。)


ザック『例えばの話ですが、法改定を行う場合、皇帝陛下はどの程度の権限を行使出来るんです?』


エルベラ:『法改定となれば、委員会の決定した案件に対しての最終決定権は余にある。勿論余が改定案件を議題として委員会に提出する事も可能じゃ。』


ザック:『では貴族に与えられている権限を少し限定する法改定をされては如何です?』


エルベラ:『確かに貴族の権限を限定する事は可能じゃ。各大臣や内政に関わる上級貴族からは賛同を得られるじゃろう。しかし皇帝がその案件を委員会に提出したと分かれば中下級貴族どもの反発は避けられぬし、最悪反徒となる危険を伴う。今の段階で内戦を起こせば諸外国からも色々と圧力を掛けられるでな。』


ザック:『つまり諸外国から賛同を得られる形で内政問題を解決出来れば良いと?』


エルベラ:『確かにその通りなのじゃが、解決策が見つからん。ザック殿が余の立場ならどの様な策を講じるかのう?』


ザック:『簡単ですよ。全面的に国家の方針を変更するんです。』


エルベラ:『ザック殿、余はそなたの言っておる事がいまいち理解できんのだが、具体的にどうしろと言うのじゃ?』


ザック:『現在の帝国政治を撤廃して、皇国として新たな国家体制を作るんですよ。』


エルベラ:『何を言っておる!そんな事をすれば貴族はおろか、国民全体を敵に回す事になるぞ!』



ベルクレアは無言で二人の会話を聞いていた。


ザックが国家崩壊を望む筈が無い。


何かしらの改善策を持っていると思ったのだ。



ザック:『先程のお話だと、現在の帝国の体制は貴族や実力者に都合の良い体制になっています。皇帝陛下が内情に行使すら出来ない現在の状況がこのまま進めば、当然貴族の中には帝国を乗っ取ろうと組織する輩も大勢出て来るでしょう。ならばあえて現在の帝国としての体制その物を見直して、新たな体制を構築するしか方法はありません。陛下がお望みになられている平穏な内政は現在の体制では到底不可能な状況なのです。諸外国が帝国に望むのは体制の透明化ではありませんか?』


ここでベルクレアが口を開いた。


ベルクレア:『エルベラ陛下。本来他国の女王である妾が口を挟むべき事では無い事は重々承知の上で言わせて頂きます。貴女が民の平穏な生活を御望みなら、現状を打破しない限り叶いますまい。陛下御自身の現在の御立場と国家の歴史や定説も大事なのは十分分かりますが、そろそろ未来の国家の在り方を模索しなければならない時期に来ているのでは無いでしょうか?』


エルベラ:『では国民の生活はどうなる?現在の体制だからこそ成り立っているものも多い。貴族の便宜が有ればこそファクトリーも成立しておる。』


ベルクレア:『その便宜がファクトリーを暴走させている事は陛下も御存知ではないのですか?陛下御自身が国の舵取りを出来ない状況である以上、事実上貴族や実力者が実権を握っている。これは国家の危機と言えるのではないでしょうか?』


エルベラはベルクレアの言葉に反論出来なかった。


皇帝に即位して以来、国政では外交以外の公務を成功させていなかったのである。


今回の王国との国交が成功したのも貴族達との利害が一致した事によるものだ。


ファクトリーとしてもマーケットが拡がる事での利益を期待したであろう。


エルベラ:『余の代で帝国を終わらせてしまうのか・・・。』



ザックが静かに口を開いた。



ザック:『1人の冒険者が他国の内政に干渉するのは分をわきまえない事だと重々承知しております。しかし陛下の苦悩を側で見てしまった者として、見過ごす事が出来ませんでした。しかし根本的な解決方法は先ほど申し上げた案しか無いのも事実です。苦渋の選択をさせてしまいました。深く御詫び申し上げます。』


エルベラ:『いや、ザック殿。こちらこそすまない、余も分かってはおったのじゃ。ベルクレア陛下よ、皇国設立に向けて第三国にも後ろ楯になって頂きたい。諸外国への働き掛けの助力を願えんだろうか?』


ベルクレア:『喜んで。しかしそうなると、取り急ぎその前にやらなければならぬ事が有りますわ。』


エルベラ:『そうじゃな、味方は1人でも多い方が良い。』



二人は笑顔でザックを見た。



ザック:『えっ・・・まさか・・・嘘ですよね?』


エルベラ:『ここまで他国の内政に干渉しておいて、まさか自分だけ冒険者のままで居られるとは思っておらぬよな?』


ベルクレア:『そろそろ領地の自治も安定する頃合いじゃろう?何せ領主が長旅を出来るんじゃからのう?』


ザック:『え?あれ?俺まさかハメられた!?』


元々ベルクレアはエルベラと共に、ザックへ建国承認と王座即位の打診を求める為に会合の席を設ける算段をしていた。


今回の一件で今後エルベラの進退問題が浮上した際に近隣国家の最高権力者の助力が必要になる。


よって予定よりも早くザックを一国の王にしなければならなくなったのだ。

お読み頂き有り難う御座いました。

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