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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第1章 闇の奴隷商人。
4/77

第4話 アンの想いと拳銃と。

お読み頂き有り難うございます。


4話です。

うっすらとした意識の中、俺は暗い部屋を見回した。


何故か身体が重い。


昨日の討伐で疲れてたのだろう。


再び睡眠を貪ろうと寝返りをすると、やわらかい感触と共に甘い香りが鼻をくすぐった・・・。


ザック:(っんん!?やわらかい感触と甘い香り!?)


恐る恐る目を開けると、そこには美しい少女が優しい笑みを浮かべてこう言った。


アン:『おはよう・・・ザック。』


ザック:『な、な、な、何でアンがここに!?』


アン:『え~と・・・ザックが話してるうちに寝ちゃったから・・・そのまま添い寝しちゃった・・。』


アンは顔を真っ赤にしながらモジモジしていた。


ザック:『ま、まずいって!』


アン:『だって・・・ザックの寝顔が可愛かったんだもん・・・。』


ザック:(いかん!このままじゃ理由をこじつけてマズイ事してしまいそうだ・・・。)


ザック:『ちょっと待って!俺がどさくさ紛れに変な事するとか考えなかったのか!?』


アン:『ザックも男の子だし・・・その、私で満足して貰えるなら・・・。』


ザック:(ヤバい・・・何処でそんなフラグが立った!?あっちの経験が無い訳じゃ無いが、さすがにパーティーのパートナーにそういうのはマズイだろ!?)


確かにアンは美少女だ。


胸もそれなりにあるしスタイルも良い、正直断る理由が見当たらない。


でも昨日の今日だし相手は異種属の少女なうえにギルドからも保護対象になっている。


ザック:『いや、そうじゃ無くて!そりゃアンの事は好きだけど、昨日会ったばかりでそういうのはマズイと思うんだ。』


必死に説得するとアンは少し表情が暗くなった。


アン:『私が何でこの宿に移って来たか解る?』


続けてアンは目に涙を浮かべて話した。


アン:『貴方は私を受け入れてくれて、私の事を尊重もしてくれた。私達エルフは他の町では見下されたり蔑まされたりするのに、貴方は私に平等に接してくれた。優しく笑顔で接してくれるのが凄く嬉しかったの。こんな相手に巡り会える事は二度と無いかも知れない。』


エルフ属が寿命を迎えるまでは、一定の年齢からは肉体的年齢が固定される為に身体が衰える事が無い。


それに反して人属よりも体力や文化水準は低く、教育水準も劣る事から人属から蔑まされる事が多いそうだ。


アン:『もし貴方が望むなら、私は貴方の奴隷にでも何でもなる!だから・・・お願いだから貴方の側にずっと居させて・・・。』


アンは泣きながら訴えた。


ザック:(もし俺が使徒として最初にしなければならない事が有るとすれば彼女を救う事だ。ならば俺はずっと彼女の側に居て、彼女を対等な目線で接してあげなければ意味が無い。奴隷だなんてとんでも無い、彼女を蔑ます様な事は絶対出来ない。)


ザック:『アン、俺はアンを絶対奴隷なんかにはしないよ。アンは俺の大切なパートナーだしパーティーメンバーじゃないか。アンの気持ちは嬉しいし俺もアンが大好きだ。だから安心して。絶対君の側から離れたりしないよ。』


そう言うとアンが泣きながら抱きついて来た。


アン:『絶対・・・絶対だからね・・・。』


アンはそのまま夜が明けるまでザックに抱きついていた。



その後落ち着いたアンが自分の部屋に戻り、ザックも入浴を済ませた後で記憶の指輪でステータスを見てみた。


するとそこには【神託】の文字が。


項目を開くと『闇の奴隷商人と盗賊を倒しなさい。』と書いてあった。


ザック:(そうか、こいつ等を放って置けば今後アンに危険がおよぶ。この町の亜人種だって危険なはずだ。アーデンには商人や自由民の亜人種が多いから、事と次第によっては町の存亡の危機となるって事か。)


ザック:『神託が来たって事は兵士や冒険者ギルドだけでは倒せないって事か・・・。』


情報が無ければどうにもならない。


まずは情報を集める事にした。



アンを呼び一緒に朝食を取る。


ザック:『アン、少しは落ち着いた?』


アン:『うん・・・ザックが・・・優しくしてくれたから・・・。』


アンは頬を赤く染めてうつむいた。


ザック:(こりゃしばらく討伐には行かない方が良さそうだな・・・。)



朝食を終えてから二人で冒険者ギルドに行った。


ザック:『おはようシルビアさん。』


シルビア:『あ、ザックさん、ギルド長からお話が有るそうです。』


ザック:『わかりました、いってみます。』


執務室のドアをノックするとカリンが迎える。


カリン:『今日は二人でいらしたんですね。』


ザック:『それでお話というのは?』


カリン:『実は今朝早くに女性の方から、変わった紙の箱を預りまして・・・。』


カリンの目線の先を見ると大きなダンボールの箱があった。


ザック:(ん?ダンボール?こっちの世界ってダンボールあったっけ?)


ザック:『持って来た女性とはどんな方か分かりますか?』


カリン:『女性はサクラと名乗ったそうです。そう言えば分かると言っていたそうですが、それ以上の事は分からないんです。』


ザック:(サクラって・・・転生官のサクラさんか!?だとすれば中に入ってる物はあっちの世界の物か?となると中を見られると色々マズイな。)


ザック:『その方なら以前故郷で世話になった人です。』

(まさか天界の人だとも言えないからな。)


カリン:『そうでしたか。宿を教えたんですが、時間が無いからと言ってすぐに旅立たれたそうなので。』


アンがダンボールに釘付けになっている。


ザック:(なにか食べ物とか入ってたらアンにも1つやるか・・・。)


ザック:『そうでしたか。もし今度来られたら礼を言ってたと伝えて下さい。』


カリン:『わかりました。次にこちらが本題なんですが、実は今度新しく隣町のリースにギルドの支部が出来るんです。』


アン:『リースには今までギルドが無かったんですか?』


カリン:『リースはアーデンの半分位の規模ですからね。最近移住者が増えたのでリースには冒険者ギルドと商人ギルドを合わせた総合ギルドを作る事になったんです。』


ザック:『なるほど。それで何故俺にその話を?』


カリン:『その総合ギルドに明日から物質を運ぶのですが、その護衛をお願いしたいんです。』


アン:『護衛ですか!?お言葉ではありますが、もっとランクの高い冒険者を雇った方が良いのでは?』


アンの言葉にカリンが続けて説明する。


カリン:『今シルバー以上の冒険者はほとんどが臨時討伐のクエストに出払っているので、この際ならノワールのステータスをお持ちのザックさんにお願いしようと思いまして。』


ザック:(なるほど。でもカリンさんまだ何か隠してるな ・・・。)


ザック:『リースまでの距離って結構有るんですか?』


カリン:『片道だと四半日といったところですね。』


ザック:(意外と近いな。片道六時間弱ってところか・・・街道なら魔物もほとんど居ない。という事は盗賊対策か。)


ザック:『もしかしてリースのギルドで働く職員の方も同行するんですか?』


カリン:『はい、すでに向こうの各ギルド長と鑑定官は移住を終えてますが、若い職員は同行する事になっています。職員の中には亜人種の者も多いので。』


ザック:(やはりか。若い亜人種の職員って事は女性も含まれているはずだ。盗賊の狙いが亜人種の若い女性なら今回の移動に目を付けてもおかしく無い・・・神託の事もあるし、この依頼は受けた方が良いかな?)


ザック:『わかりました、護衛をさせて頂きましょう。それで出発は?』


カリン:『明日の日の出に合わせて出発します。』



依頼を受け、ダンボールを抱えて宿に戻った。


アン:『ねぇ、ねぇ、これ開けないの?』


アンがワクワクしながら聞いて来た。


ザック:『分かった分かった!今開けるから!』


ダンボールを開けると向こうの世界ではお馴染みの食料やお菓子類や飲料、さらに調味料と・・・これって・・・。


ザック:(銃!?おいおいこれ、45口径のオートが2丁にマガジンが4個。それにデュアルのショルダーホルスターと銃弾が4ケースも・・・どうりで重たかった訳だ。ってか神様こんなの送って来るとか正気か!?)


アン:『ねぇ、全部見た事無い物ばかりなんだけど、なんなのこれ?』


ザック:(どうしよう。こんな食品のパッケージはこの世界には無いし、ハンドガンとか文明的にもあと500年以上は先を行っている・・・。)


ザック:『アン、悪いんだけどメリアと食堂の料理人さんをを呼んで来てくれないか?』


アン:『うん・・・分かった。』



アンが呼びに行ってる間にホルスターと銃を装備した。



アン:『連れて来たわよ。』


メリア:『ザックさん、こちらはこの宿の主人で食堂の料理人もやっているダイソンさんです。』


ダイソン:『主のダイソンです。私に何かご用ですかい?』


ザック:『はじめましてダイソンさん、実はちょっとこの調味料を味見して貰いたいんです。』


ダイソン:『これって、調味料なんですかい?』


ザック:『俺の故郷で良く使われている調味料なんですがどうですかね?』


見せたのは醤油・味噌・胡椒・みりん・カレー粉だ。


ダイソン:『こりゃどれも今まで味わった事の無い味です。でも確かにどれも旨い料理が出来そうですな。』


ザック:『良かったらこれを使って料理を作って貰えませんか?』


ダイソン:『う~ん、出来るとは思いますが、良いんですかい?凄く貴重で高級な物みたいですが。』


ザック:『構いませんよ。俺が持っていてもしばらくは使いそうも無い物なので。』


ダイソン:『分かりました。そこまでおっしゃるなら遠慮無く。』


ザック:『メリア、ちょっとこれ食べてみて?』


メリアにチョコレート菓子を1個渡す。


メリア:『凄く美味しい!?なんですかこれ?』


ザック:『俺の故郷で売っているお菓子だよ。気に入ったなら袋ごとあげるよ。』


メリア:『そ、そんな、お客様から貰うなんて、そんな事出来ませんよ!』


ザック:『遠慮しないで受け取ってよ。これからもお世話になるんだし。』


メリア:『はぁ、分かりました。有り難うございます!大事に食べますね。』


二人が部屋を後にすると、アンがジト目でこっちを見ていた。


ザック:『そんな目しないの、アンの分もちゃんとあるから。』



アンが紅茶を入れてくれたので、二人で貰ったお菓子を頂く。


アン:『ちょっと!これ凄く美味しい!ザックってこんなに美味しい物ばかり食べて育ったの!?』


ザック:(そりゃ美味しいよね。この世界にはスナック菓子なんて無いし、コンソメ味のポテチなんて初めて食べたら止まらなくなるに決まってる。)


ザック:『別に毎日食べてた訳じゃ無いよ。それにこれならこっちでも似た様な物は作れるよ?』

(こっちにもじゃがいもはあるからね。)


アン:『そうなんだ・・・。そういえばザックは何処から来たの?遠くから来たって話は聞いてたけど。』


ザック:(困ったな・・・何て言おう。)


ザック:『多分説明しても分からないんじゃないかな?俺の居た所は魔法より科学っていうのが発達した所だし。』


アン:『へぇ~。でもこの袋とかあの箱とか凄いね。こんなの王都とかにも無いでしょ?』


ザック:『多分無いんじゃないかな?』

(はい、これが精一杯の対応です。)


アン:『そういえば両脇に下げてるそれって武器なの?変わった形してるけど。』


ザック:『これは銃って言って、離れた所から狙い撃てる武器だよ。反動と音が大きいし、重いからアン向きじゃ無いと思う。』


ザックは銃を1丁抜いて見せた。


アン:『そうなんだ・・・。』

(こんな武器見た事無い・・・やっぱりザックって凄い人なのかな・・・。)



その後二人は東門から少し離れた平原に向かった。


ザック:『さて、ここなら大丈夫かな?』


アン:『こんな所で何するの?』


ザック:『こいつを試すんだよ。』


そう言って銃を抜く。


アン:『でも魔物とか居ないわよ?』


50mほど離れた所にある小さな切り株に細い丸太を2本立てる。


ザック:『こいつを的にするんだよ。』


銃を丸太に向ける。


ザック:『かなりデカい音がするから耳を防いでおけよ。』


狙いを定め撃つとパンッ!パンッ!と少しカン高い炸裂音が響き、薬莢が飛び出した。


アン:『凄い音!こんなに大きな音がするの!?』


ザック:『まぁ初めて聞くと驚くよね。』

(俺も撃ったのは初めてだけど。)


二人で丸太を見に行くと、丸太は切り株の後方に跳ばされ見事に命中して貫通もしていた。


アン:『凄い!突き抜けてるじゃない!私の弓矢なら刺さるだけなのに・・・。』


ザック:(さすがはシューティングマッチモデルだ。かなり命中精度は良いな。)


ザック:『今度は両手で2丁撃ってみよう。』


再び丸太を並べて戻る。


ザック:『撃つよ!』


アンに一言断ってから2発撃った。


見事に2発共命中した。


ザック:『これなら使えそうだな。』

(盗賊相手なら剣や魔法より銃の方が扱いやすい。ん?もしかして神様はこれを見越して・・・。)


アン:『なんか私の弓矢より相当凄いわよねこれ。』


ザック:『まぁ確かに威力は凄いし早いんだけど、この武器は使い所が難しいんだよ。森の中では音が大き過ぎて他の魔物を呼び寄せちゃうし、直線的にしか攻撃出来ないから途中に遮蔽物があると攻撃が当たらないんだ。』


アン:『そっか、弓矢の様に山なりには撃てないのね。』


ザック:『だからアンの戦力はとても貴重なんだよ。』


そう言うとアンは嬉しそうに微笑んだ。


その後一応薬莢を拾ってから町に戻った。



町に戻った二人はカフェで明日の護衛の打ち合わせをする。


ザック:『明日の護衛なんだけど、万が一盗賊が出たらアンは職員の守備に回ってくれないか?』


アン:『それは良いけど、至近距離だと風魔法と短剣しか使えないわよ?』


ザック:『それで良いよ。盗賊の中には攻撃魔法を使って来る奴が居るかも知れない。遊撃は俺がやるから、アンは風魔法で防御して欲しいんだ。』


アン:『分かったわ。でも街道での護衛にしてはずいぶん神経質になってない?森や草原ならまだ分かるんだけど。』


ザック:(これは説明の必要があるな。アンには少々酷かも知れないけど、俺が考えてる事も知ってもらいたい。アン自身に関わる話でもあるからな。)


ザック:『・・・良いか?これから言う事は絶対に誰にも言うなよ?』


ザックは闇の奴隷商人と盗賊の話をした。


そして亜人種の女性がその標的になっている事、そして希少種であるエルフもその対象である事もだ。


アン:『・・・それ、本当なの!?』


ザック:『本当だ。俺がこの仕事を受けたのは、今回の護衛でそいつ等を倒して情報を聞き出せるかも知れないと思ったからなんだ。そうすれば奴等は今後この町やリーンには手を出しづらくなる。となればアンが狙われる危険も減るだろ?』


アン:『ザック・・・ありがとう・・・。』


アンは感極まった様に涙を流した。


ザック:『だから明日は護衛もそうだけど、自分の身を第一に考えてくれ。俺も精一杯アンを守るから。』


アン:(ザックは私をこんなに大事にしてくれる。人属なのに亜人種の為に命懸けで戦おうとしてくれている。パートナーとして1人の女として、こんなに誇らしい事は無い・・・。)


アンは自分の中にあるザックへの想いが愛情に変わっている事を自覚していた。


ただザックの優しさにすがっていた恋心とは明らかに違う、この人の為なら命をも捧げられるほどの想い。


アン:(でもこの想いはしまっておかなきゃ・・・ザックだって迷惑だろうし種族も違うし・・・だからせめてザックの為に頑張って良いパートナーにならなきゃ!)


アン:『うん、私も頑張る!』



宿に戻るとダイソンさんに声を掛けられた。


ダイソン:『あぁザックさん!ちょっと良いかい?』


ザック:『なんですか?』


ダイソンは厨房から幾つかの料理を持って来た。


《おぉ~。》


ザック:『これってさっきの調味料を使ったんですか?』


ダイソン:『久々に腕が鳴りましたよ。一応相性の良い食材を使ってみたんだけど、ザックさんの意見を聞きたくてね。』


ザック:『食べても良いんですか?』


ダイソン:『ザックさんから頂いた調味料ですからね。良かったらアンさんもどうぞ。』


アン:『えっ?私も良いんですか?』


ダイソン:『もちろんですよ。』


ダイソンが作った料理はとても美味しかった。


和洋折衷な感覚はあるが、前に居た世界の雰囲気は十分感じられる。


《うまぁ~!》


ザック:『めちゃめちゃ旨いですよダイソンさん!』


アン:『ホント凄く美味しいです!』


ダイソン:『そう言って貰えると嬉しいです。ところでザックさん、あの調味料は何処で作ってるんです?なんか色々書いてあったんですが、あんな文字見た事も無くて。』


ザック:(ヤバい!パッケージの事を忘れてた!まさか異世界の調味料だなんて言えないし・・・。)


ザック:『実は言語の違う遠い異国の物なんです。俺の故郷にはその国の方が住んで居たのですが、俺も製造法までは分からないんですよね・・・。』

(・・・って、そんなんで誤魔化せないよな・・・。)


ダイソン:『なるほど。東方の小国などは共通語を使って無いらしいですからな。』


ザック:(そうなの!?)


ダイソン:『でも調味料の味が濃くて結構奥深い風味なので、癖のある食材でも美味しく作れるから手に入るものなら欲しいですな。』


ザック:(ん~こればっかりはなぁ。)


アン:『私もこの風味好きだなぁ。なんかホッとする。』


ザック:『多分手に入れるのはかなり難しいかもです。今回はたまたま故郷でお世話になった方が持って来て下さったんですけど、すぐに旅立たれたとの事だったので。』


ダイソン:『やっぱりそうでしょうな、では期間限定でこの調味料を使った料理をメニューに載せても良いですかい?』


ザック:『全然構いませんよ、差し上げた物なんで自由に使って下さい。』


ダイソン:『ではそうさせてもらいましょう。』



食事を終えて部屋に戻り、しばらくするとメリアが来た。


ザック:『何かご用?』


メリア:『ザックさんから頂いたお菓子なんですけど、教会の子供達にあげても良いですか?』


ザック:『俺は全然構わないけど・・・あれじゃ足りないでしょ?ちょっと待ってて。』


ダンボールに入っていた他のチョコレート菓子を2袋取り出してメリアに手渡す。


メリア:『えっ?こんなに!?良いんですか?』


ザック:『教会に来ている子供達って、もしかして孤児院の子供達なんじゃないの?』


メリア:『・・・はい。親が魔物に殺された子供達がほとんどです。』


ザック:『だったらこれでも足りない位だろうけど、少しでも子供達が喜ぶなら持って行ってあげて。』


メリア:『本当に・・・本当に有り難うございます!』


メリアが深々と頭を下げる。


ザック:『いや、そんな、頭をあげてよ。メリアが自分の分のお菓子を子供達に分けるんだし、俺は少し協力しただけだしね。』


メリア:『・・・ザックさんは優しいんですね。』


ザック:『そうかな?』


メリア:『・・・はい・・・とっても。』



メリアが部屋を後にしてから少ししてアンが来た。


アン:『ザック居る?』


ザック:『居るよ?どうしたの?』


アン:『今のうちに防具屋に行こうと思うんだけど、良かったら一緒に行かない?』


ザック:『うん、じゃあ行こうか。』



防具屋に着くとアンは色々悩んでいた。


アン:『ザック、剣を防ぐならやっぱり手甲もあった方が良いかな?』


ザック:『あった方が良いとは思うけど、でも弓を引く時に邪魔にならない?』


店主のオッサンが口を挟む。


店主:『お嬢ちゃんが弓士なら左右で形状の違う奴が良いと思うぞ?ちょっと待ってな。』


オッサンが奥から弓士用の手甲を持って来た。


ザック:『着けた感じはどう?』


アン:『うん、良い感じよ。これ幾らですか?』


店主:『そいつは5200ジルなんだが、最後の1個だから4800ジルにまけとくよ。』


アン:『ホント!?じゃあこれ買います!』


店主:『あいよ、まいどあり。』



防具屋を出て宿に戻る途中で偶然シルビアと会った。


シルビア:『お買い物ですか?』


ザック:『シルビアさん、仕事帰りですか?』


シルビア:『えぇ、明日はギルド長がリースに行かれるので今日は早上がりなんです。そう言えばザックさん達が護衛をされるんですよね?』


ザック:『はい、本当ならあと一人欲しい所なんですけどね。』


シルビア:『あぁ、それならギルド長が居るから大丈夫だと思いますよ?ギルド長は元々ゴールドランクの冒険者なんで。』


アン:『え?カリンさんってゴールドランクなんですか!?』


シルビア:『ギルド長は王都でも有名な冒険者だったんですよ?ゴールドランクパーティー【オリオン】でライトニングボルトの異名を持っていたんです。』


ザック:『それは凄いですね・・・。』


アン:『やっぱりギルド長になる人って凄いんですね。』


シルビア:『たぶんうちのギルドに所属してるゴールドランクではギルド長に剣術で勝てる人は居ないと思います。』


ザック:『なら明日の運搬も問題無さそうですね。』


アン:『私も少し安心しました。』


シルビア:『それじゃあ私はこれで。』


ザック:『それじゃあまた。』


アン:『お疲れ様です。』



シルビアと別れた二人は宿に戻った。


シルビアの話を聞いて改めてカリンの偉大さを知った二人は、しみじみと部屋で語り合う。


ザック:『カリンさんって凄い人だったんだなぁ。』


アン:『本当ねぇ、確か二つ名ってゴールドランクでも一部の人しか貰えないって話よね?それだけ凄いって事なのよね。ザックはゴールドランクを目指すの?』


ザック:『どうかな?ランクはともかく、色々と経験値は上げたいかな?スキルがノワールでも、経験が少ないとスキルに頼って戦う事になるから実戦では不利になるしね。アンはどうなの?』


アン:『私は弓士だから様々な弓を使いこなせる様になりたいな。弓って物によって癖が違うのよ。剣より癖の出方が激しいから使いこなすのに時間も掛かるし。』


ザック:『ねぇアン、明日ははショートボウを使って貰えるかな?多分中近距離の戦闘になる可能性が高いし、いざ短剣を使うって時に邪魔になると困るから。』


アン:『分かったわ。実は私も迷ってたの。』


ザック:『じゃあそろそろ準備して寝ようか。』


アン:『うん、おやすみ。』



アンが部屋を出た後でダンボールを覗き込む。


底の方にあったコーラを一本出し蓋を開けた。


ザック:(このシュワッとした感じ。凄く久し振りな気がするなぁ。)


口に着け一気に流し込む。


ザック:『プハァ~!旨い!』


久々のコーラを堪能すると再び明日の護衛の覚悟を決めるのだった。



お読み頂き有り難うございました。

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