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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
33/77

第32話 ボルトと異世界と。

お読み頂き有り難う御座います。


第32話です。

地下都市の領有化が決まり、王宮やマリエリアの事務所を行き来するザックだったが、1日位は休みが欲しいとこの日は屋敷で寛いでいた。


しかし女王が帝国へ交渉へ行く日が近付いている事と、地下都市に兵士局を開局する為に色々と頭を使う事が多い。


帝国の情報に関してはアレクから色々と聞く事が出来た。


まず帝国領内における獣人属の扱いに関しては、政府と住民で大きく見解が異なる事。


これは獣人属が生活する上で、社会保証や収益面で大きな格差が起こっているというアレク側の言い分と、人属の支配下において安全な暮らしを保証するという帝国政府側の言い分の相違である。


帝国政府としては、獣人属からの領民税は徴収しない代わりに社会保証や身分保証をしないという政策によるところが大きい。


実際獣人属の帝国での生活水準はかなり低い様だ。


リアスの話によれば帝国内の獣人属の人口が増えすぎた事によりこの様な政策に転換したとの事だが、現実的に考えて他国への移住の自由は有っても旅費すら稼げないというのこの政策は明らかに乱暴なものだった。


ザック:(つまり移住の自由が有るのなら、本来交渉の必然性は無いんだよな。しかし第三国が勝手にこんな事をすれば帝国も面白くは無いだろうしな・・・。)


ザックが考えているのは今の事では無い。


近い将来に様々な国と国交を行う場合に、王国がより住み良い国であるという印象を与える必要があると思っているのだ。


王国は他国に比べ、獣人属に対する偏見や差別は少ない国だ。


しかもレデンティア王国の貴族の中には獣人属が居る。


マルセリオ男爵家とローネ伯爵家は建国100年の式典時に王国内の成功者として獣人属初の貴族として迎えられた。


獣人属の貴族が居る国はかなり珍しく、世界でも2国だけである。


王国は広大な面積の大陸全土が国土である事もあるが、獣人属のみならず多種属による共同集落が古くから点在していた事がこの国を多種属友好国家にした要因であろう。


王国がこれまで外交政策を積極的に行わなかったのはそこに理由が有るのかも知れない。


ザックの屋敷ですらエルフ・ハーフエルフ・ドワーフ・獣人属・人属が揃っている。


アンの話ではこの国の北東部には魔人属という魔族と人属の混合種族も住んでいるそうだ。


人属の世界しか知らなかったザックでも、人属の間で人種差別が有った事を覚えている。


ザック:『向こうの世界でも種族や宗教の違いによる差別は有ったもんなぁ・・・俺みたいに異世界から来た人って居るのかな?』


可能性が全く無い話では無い。


恐らく使徒や勇者は異世界人だ。


その他にも何らかの理由で此方の世界に来た者が居るのではないか?



そんな事を考えていた矢先、ボルトが屋敷を訪ねて来た。


以前シェルバールからアーデンに転移魔法で送った時に住所を教えていたのだ。



ボルト:『ようザック、時間が出来たから遊びに来たぜ!』


ザック:『いらっしゃい、どうぞ入ってよ。』



ボルトはアーデン近郊の集落で病を患っていた人の為に薬を作っているらしい。



ボルト:『しかし凄い屋敷だな・・・執事にメイド・・・何したらこんな所に住めるんだ?』


ザック:『元々は借家だったんだよ。執事やメイド達だって、旅の留守を頼む為の使用人が欲しくて奴隷商から買ったんだ。』


ボルト:『それで女王陛下が屋敷を買い上げてザックに譲渡したって訳か・・・。まぁ名誉騎士団なんて称号貰ったなら当然か。』



ボルトは以前から気になっていた事が有った。



ボルト:『なぁザック、俺の勘違いかも知れないが、お前はもしかして他の世界から来たんじゃないのか?』


ザック:『・・・何故そう思うの?』


ボルト:『なんとなく・・・てのは無理があるな。まずお前の魔法や能力の成長速度が早過ぎる。初めてザックに会った時は無職の自由民だったろ?例えステータスがノワールだとしても、普通の人間の魔力量ってのは限られているんだ。お前は頻繁に転移魔法を使っているみたいだが、どんな凄腕の魔法使いだろうと転移魔法を何度も使えばぶっ倒れちまう。だがお前は疲れが溜まる程度で済んでいるんじゃないか?』


ザック:『まぁ確かにぶっ倒れた事は無いかな?』


ボルト:『それとお前の使っている武器だ。その銃とかって武器は北方の技術ですらまともに作れる様な代物じゃ無い。そこに刻まれている文字やあり得ないほど正確な金属の加工。よほど進んだ技術で無ければ作るのは不可能だ。』


ザック:(ボルトには敵わないな。正直言ってこの男には誤魔化しても通用しないだろう。)


ザック:『御名答・・・俺は他の世界から転生して来た。だが俺はこの世界をどうこうする為に来た訳じゃ無いよ。』


ボルト:『やはりそうか・・・この町に俺意外にも居たとはな・・・。』


ザック:(ん?今何て?俺意外にもって言ったか!?)


ザック:『ボルト・・・あんた・・・まさか!?』


ボルト:『あぁ、多分ザックとは違う世界だがな。それに俺はこっちの魔術師に召喚されたんだ。まぁその直後に俺を召喚した奴が死んじまったんで帰れなくなったんだがな。』


ザック:『驚いたな。俺意外にも異世界人が居たなんて・・・。』


ボルト:『何言ってんだよ、この世界には俺達以外にも結構異世界人が居るぜ?』


ザック:『え?・・・マジかよ!?』


ボルト:『まぁ世界各国に点在はしてるがな。転生して来た者や俺みたいに召喚されて帰れなくなった奴も居る。だがお前ほどの能力を持つ奴は居無いだろうがな。もしかしてお前は何かの役割を課せられてこっちに来たんだろうな。』


ザック:(言いづれぇ・・・神様からこの世界の管理者として転生させられたとか、ぜってぇ言えねぇ・・・。)


ザック:『まぁそうなのかも知れないけど、俺は俺の価値観で生きるだけだよ。』


ボルト:『お前らしいな。俺はザックが悪人では無い事を良く知ってるつもりだし、お前は力の責任と言う奴を理解してる男だ。お前が何をしようとしているのかは知らないが、俺はザックを信用するよ。』


ザック:『俺はボルトが理解ある人で良かったと思ってるよ。ところでボルトは何故薬師に?』


ボルト:『そういえば話して無かったな。俺は向こうの世界でも薬師だったんだよ。薬師って言うか医師に近いかな?もっとも文明水準も違うし、こっちでは医療技術も遅れてるから勝手も違うんだけどな。ザックはやっぱり学生か何かだったのか?』


ザック:『俺は向こうでは派遣会社で工場に勤務してたんだ。事故で死んじまったんだけど運良く転生させて貰えたんだ。向こうじゃ40過ぎのオッサンだったんだぜ?』


ボルト:『はぁ!?どう見たって10代じゃ無ぇか!なんだよその若返り特典は!ずりぃぞ!』


ザック:『まぁ色々事情が有るんだよ。こっちでは15才で成人を迎えるとかで、このぐらいの年齢の方が都合が良いって転生させてくれた人が言ってくれたんだ。』


ボルト:『・・・お前、何か条件付きで転生したみたいだな。深くは詮索しないが、よほど重要な事なんだろうな。よし、俺に協力出来る事が有るならいつでも力になるぜ。って言っても、俺に出来るのは薬をくれてやる事ぐらいだがな。』


ザック:『・・・なら早速頼みがあるんだ。北の森に地下都市が出来たのは知ってるよな?』


ボルト:『あぁ、何でも帝国からの移民の町なんだろ?』


ザック:『そこに不定期でも良いから薬屋を出して欲しいんだ。』


ボルト:『どういう事だか説明して貰えるか?』


ザック:『そこに住んでいるのは帝国で社会保証を受けられ無かった人達なんだ。だから病気になったり怪我をしてもそのまま放っておくのが習慣になっている。そんな人達が重い病を集団感染でもしようものなら、このアーデンも危ないだろ?だからきちんと事前予防や薬で治療する習慣を作ってやりたいんだ。』


ボルト:『・・・ホント、お前を転生させた奴を誉めてやりてぇよ・・・。良いだろう!営業日は週に3日だ。店の建物や内装なんかはザックに任せて良いんだろ?』


ザック:『あぁ、店舗は空きが有ったから、2週間も有れば店は作れるよ。』


ボルト:『なら俺はそれまでムーランに泊まってるから、出来上がったら連絡してくれ。』



ボルトが帰った後でサリーがリビングに入って来た。



サリー:『失礼とは思いましたが、先ほどの話を聞かせて頂きました。ザック様のいらっしゃった世界って、どんな世界だったのですか?』


ザック:『そうだな・・・住んでいる人々は人属だけだった。獣人属や他の亜人種は居なかったんだ。空想の物語には獣人属が出て来るんだけどね。でも同じ人属同士の間で差別はあったんだ。俺が住んでた国ではほとんど無かったけど、肌の色や宗教の違いで殺し合いもあったんだ。』


サリー:『え!?人属同士でですか?国同士の戦争とかでは無くて!?』


ザック:『そう。くだらないよね。文明先進国の人達が、発展途上国の人達を見下したりしてさ。自分達がしている事や話している言語が分からない者は、自分よりも下等な生き物だと思っている人達が多かったんだよ。大きな戦争も2回あったんだ。俺が住んでた国はかつて軍事国家で、侵略戦争もした国だった。戦争に負けてからは戦争をしない国として平和国家を築きあげた。でも世界はいつも何処かしらで戦闘が行われて難民が生まれていたんだ。』


サリー:『何故和平を結べないのでしょうね。同じ種族なのに・・・。』


ザック:『色んな事情があるからね。でも誰も自分から進んで争いたがる人って居無いと思うんだ。俺が住んでた国でだって争い事や個々の殺し合いは有ったけど、それ以上に平和を愛する人達が多かったからね。だからこそ俺はこの世界で、身分や立場で他人を蔑む事をしたく無いんだ。』


サリー:『ザック様・・・。』


ザック:『あ、そうそう、俺が住んでた国ではサリー達獣人属の女性はモテるんだよ?』


サリー:『え!?そうなんですか?』


ザック:『向こうの世界ではサリーみたいなモフモフの獣耳の女性は居無いし、空想の世界の住人に憧れを感じているんだよ。』


サリー:『憧れ・・・ですか。』


ザック:『あ、そうかこれで・・・。』



ザックはスマホで異世界物のアニメの動画をサリーに見せた。



サリー:『こ、これ、何ですか!?動いてる!喋ってる!この方も獣人属ですよね!?絵が何でこんなに・・・。』


大興奮である。


サリーは自分の仕事も忘れて動画に見入っていた。


ザック:(まぁ楽しいよね。俺も好きだったなぁ。)


その後もアニメやコスプレ画像等々を興味深く見ていた。


サリー:『ザック様、ザック様のいらっしゃった国は素晴らしいです!こんなに素敵な娯楽が有るなんて・・・。』


ザック:(ちょっとサリーには刺激が強過ぎたかなぁ?)


夕食後、サリーがこの事を皆に話した為、使用人達やパーティーメンバー達も見たいと言って来たのは言うまでも無い。


結局夜遅くまで付き合わされたのであった。



自分の寝室に戻り、此方の世界に来て初めて向こうで好きだったミュージシャンの音楽を聴いた。


だがザックは少し聴いただけで音楽を停めてしまった。


(駄目だ・・・。此方の世界に向こうの世界の記憶を持ち込んでは駄目だ・・・。)


ザックは頭の何処かで向こうの世界に未練が有った。


今までも料理や調味料など向こうの物を持ち込んでいたが、音楽を聴いた時に向こうでの思い出が蘇るにつれ、自分が聞くべき物では無いと思ってしまったのだ。


此方の世界には無い音、此方の世界にはそぐわないメロディー。


ザック:(俺は此方の世界で生きて行くんだ。そしてこの世界でみんなと築き上げて行くんだ。思い出は思い出、忘れなければ無くならない。なるべく向こうの世界に依存せずに生きなきゃ・・・。)

お読み頂き有り難う御座いました。

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