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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
32/77

第31話 地下都市と統治者と。

お読み頂き有り難う御座います。


第31話です。

シェルバールからの仕入れ作業は日課になっていた。


最近ではメルがサポート役でついて来てくれている。


だがいつまでもこの仕事に時間を取られてばかりでは、本業が疎かになってしまう。


そこで商人ギルドに輸送業務も含めて、完全に委託をする事となった。


鮮度の問題もあるので、魔術師協会から5人の転移魔法の使い手を派遣して貰い、商人ギルドの指揮の元に働いて貰う事にした。


業務管轄が商人ギルドとなるのでザック側が魔術師協会に代金を払う必要は無い。


商人ギルド側としても、業務全般を取り仕切る事が出来るので喜んでいた。


ランバル側としても、権限はザック個人・業務は商人ギルドと分けた方が好ましいと言っていたのだ。


勿論、屋敷や食堂、ムーランの分は別にしてもらえるので、当初の目的は達成した事になる。


そんな時、冒険者ギルド長のカリンが屋敷にやってて来た。



ザック:『カリンさん、珍しいですね。』


カリン:『はい、今日はチーム・アポストロに直接依頼が有って来ました。』


ザック:『直接依頼?』


カリンの話では、町の北に有る森の中にダンジョンが出来たという事だ。


シルバーランクの冒険者が発見し、ギルドに報告が有ったらしい。


カリン:『そこでチーム・アポストロにダンジョンの先行調査を行って頂きたいのです。』


ザック:『なるほど、これはギルドからの直接依頼という事なんですね?良いでしょう、お請けしましょう。』


カリン:『ダンジョン内でのドロップアイテムに関しては、内容の報告さえして頂ければ所有権はザックさん達にあります。』


ザック:『しかし、それにしても前情報が少ないですね・・・。誰も襲われたりしていないんですか?』


カリン:『実は・・・今朝ブロンズのパーティーが無断で入ってしまい、行方不明になっているんです。ですのでザックさん達にはその者達の捜索も兼ねて御願いしたいのです。』


ザック:『それならあまり時間が無いですね・・・。準備が出来次第、午後からでも出発しましょう。』


カリン:『有り難う御座います。それでは私はギルドに戻って、他のゴールドとシルバー達でダンジョンを封鎖する支度をしますので失礼します。』



カリンとの話を終えたところでパーティーメンバー全員をリビングに集めた。


状況を話すと全員で準備を始めた。



アン:『ザック、ダンジョンって初めてだけど、特別に必要な物ってある?』


ザック:『ダンジョンからワープで転移出来るかどうか解らないから、一応食料とランタンと魔物避けのお香は持って行こう。アンはショートボウを用意してくれ。』


メル:『ザック様、魔力薬はどの位持って行きますか?』


ザック:『取り敢えず6本持って行こう。途中で野宿する事になるからな。』



準備を終えたザック達は北の森へ向かった。



ダンジョンの入り口付近は、樹木が無くなり開けていた。


ザック:『おかしいな、この辺りは木が乱立していたのに。』


アン:『ここってリサ達を特訓した辺りよね?』


ザック:『うん、あんな洞窟なんて無かったもんな。』


洞窟はごく普通な感じだった。


人の手によって掘られた様には見えず、まるで何百年も前からそこに有った様な印象を受けた。


ザック:『兎に角調査を開始しよう、戻って来て無いパーティーが心配だ。』



ザックがランタンに火を灯して先頭を行く。


いつもの通り、ザックとメルが前衛でアンとローラが後衛だ。


洞窟の中を進むと、明らかに人の手によって造られたダンジョンだった。


アン:『ねぇこの壁レンガよ?こんなに綺麗に積まれてるなんて・・・。』


ザック:『こりゃまるで大きな神殿の回廊だな、少し嫌な予感がして来た。』


この時ザックは、このダンジョンが人の手によって造られたのでは無く、魔族が造ったのではないかと考えていた。


通路は所々に交差点が有ったが、ダンジョンの構造は単純で順路の様になっていた。


かなりの広さがある様で、ザック達は2時間近くも歩き続けた。


メル:『ザック様、あそこに扉が有ります。』


メルが指差す方を見ると、木で造られた扉が有った。


ザック:『・・・調べる必要が有るな。』


ザックは小石を拾い、扉に向かって投げた。


小石は何事も無く扉にぶつかって落ちた。


ザック:『大丈夫そうだな。』


扉に近付きノックしたが反応は無かった。


ザック:『開けるぞ。』


扉を開くと下へ続く階段が有った。


アン:『どうやら此処からが本格的なダンジョンみたいね。』


だが階段には灯りが灯されており、綺麗に掃除までされている。


明らかに誰かが手入れをしている様だった。


通路の先は行き止まりだったので降りてみる事にした。



メル:『妙ですね、魔物が出るかと思ったんですが・・・。』


ローラ:『そうですね、こんなダンジョンなら低級の魔物が結構いるものですが・・・。』


ザック:『言われてみればそうだな。魔物が居無いって事は寄せ付けない何かが有るか、もしくは強い魔族が居るとしか想像出来ないんだけど・・・。』


アン:『魔族が居るなら入り口に居た時点で私が解る筈よ?結界も無いし魔族の存在も感じないなんて・・・。』


ザック:『て事は盗賊の可能性も出て来たな。ここらの盗賊は以前に退治しただろ?土魔法と技術者が居ればこういうダンジョンが造れるんじゃないか?』


メル:『造れますね。でも盗賊と魔法使いや魔導師が連るんでるとしたら厄介ですよ?少なくとも魔法を無効化は出来るわけですし。』



そんな話をしている内に下の階層に着いた。



アン:『えぇ!?』


ザック:『なんだこりゃ!?』


ザック達の目の前に現れたのは、なんと地下都市だった。


アン:『ちょっと!何よこれ!?』


ザック:『それを聞きたいのは俺だよ!こんなにデカい町をどうやって・・・。』


ローラ:『見て下さい!あそこにアーデンの冒険者がいますよ!?』


メル:『兎に角事情を聞いた方が良いですね・・・。』



冒険者に声を掛けるとザックの顔を見て目を丸くした。



冒険者:『ザ、ザック様!?どうして此処に!?』


ザック:『いやそれは此方のセリフだよ!ここは何なんだ!?と言うか、お前達此処で何してんだよ?』


冒険者:『ここはアレクさんという技術者が造った地下都市だそうです。私達はシルバーの冒険者と一緒に今朝森に入ったんですが、シルバーの奴が此処の守衛と居無くなってしまったんで探していたんです。』


ザック:『取り敢えずお前達はそこの階段から一度アーデンまで戻ってくれ。恐らくダンジョンの入り口付近にギルドの連中が居る筈だ。それと俺達はこの町の事を調べてから戻るって伝えてくれ。』


冒険者:『分かりました、お気をつけて!』


ザック達は町の守衛所を探す為に聴き込みを始めた。


この町の住人達の大半は北方からの移住者らしい。


その殆どが獣人属で、帝国の政策から逃れる為に此処に移り住んだのだという。


ザック:『なんか平和そうな感じだけど、亜人種しか居ないところを見るとシェルバールの件を意識してしまうな。』


メル:『そうですね。アレクという者が何者かは知りませんが、これほどの町を造れるだけの人脈と地位を持ってるとなれば放ってはおけません。』


メルが言う事はもっともなのだが、町は平和そのもので外からの来訪者に対しても警戒している様子は無かった。


ふと目をやると、子供達が元気に走り回っている。


それを見たザックにはアレクという人物が悪人には思えなかった。


町を歩いていると、守衛らしい人物が居たので声を掛けてみた。



ザック:『外から来た者なんですが、話を聞かせて貰えますか?』


守衛:『構わんよ。何について聞きたい?』


ザック:『アレクという人物がこの町を造ったそうですが、どんな方なんです?』


守衛:『アレク殿は技術者であり魔法使いでもある。特に土魔法を得意とされている方なんだが、森の地下が丈夫な地盤だという事でこの町を2年掛かりで造ったそうだ。』


アレクという人物は、元々は地下都市を築いてから女王に自治権を求めようとしていたらしい。


町はどんどん大きくなり、住む者が居なければ自治権を得られないと思った矢先に帝国の政策に苦しむ獣人属を住まわせようと思い付いた。


転移魔法を使える者を何人か呼び寄せて帝国の住人を招く画策をして仲間を募ったそうだ。


ザック:『なるほど、それでそのアレクという人はどちらに?』


守衛:『会ってどうする気だ?』


ザック:『本人から事情を聞いて悪意が無いと判断出来れば、俺から女王陛下に話を通しても良いと思っています。』


守衛:『お前さんは何者なんだ?そんな事本当に出来るのか?』


ザック:『これでも名誉騎士団のリーダーですからね。ロードズ・ブレイブって言えば分かります?』


守衛:『なっ!?まさかあんたが!?』


ザック:『まぁそういう事です。』


守衛:『・・・分かりました。ご案内しましょう。』



ザック達は守衛と共にアレクの家に向かった。


アレクの住まいは予想に反して小さな家だった。



守衛:『アレクさん、お客さん連れて来ましたよ。』


アレク:『何だい?何処の誰だよ?』


ザック:『はじめまして。アーデンの冒険者チーム・アポストロのリーダー、ザックと言います。』


アレク:『はぁ!?何だってそんな有名人がこんな所に?』


ザック:『貴方とこの町の話を此方の守衛さんに聞きましてね。貴方のお話次第では、正式にこの町を王国の都市として認めて貰える様に俺から直接女王陛下に相談してみようかと。』


アレク:『悪いがあんただけ入ってくれ、他の人達には表で待っていて貰う。』



アン達はそれなら町を見て来るとその場を離れた。



アレク:『さっきの話だが、この町に住む者達を見ただろ?帝国から逃げて来た者達ばかりだ。もっとも俺もそうだがな。この町を公式に王国の都市と認めたら、この国と帝国の関係が悪くなるかも知れないんだぞ?』


ザック:『それは帝国側と王国側との外交次第では?帝国が獣人属を逃がしたく無いなら、これほどの数の人民が逃げ出した時点で策を行じたと思いますがね?あくまでも俺の感ですが、恐らくこの町の存在は帝国側も知っているんじゃないですかね?』


アレク:『じゃあ帝国はこの町の存在を知った上で何もして無いって事か?馬鹿げてる!お前は帝国で何が起きているかを知ってるのか?』


ザック:『えぇ、以前獣人同盟という者達に話を聞きましたし、うちにも北方で奴隷に落とされた使用人もいますからね。帝国の事情はそれなりに聞いていますが、だからと言って勝手に造られたこの町を王国側としても黙認は出来無いでしょう。実際アーデンではダンジョンが出来たと騒ぎになっています。騎士団や兵士団が来て退去させられるよりは良いと思うんですがね?』


アレク:『ちょっと待て!退去ってどういう事だよ?』


ザック:『貴方は王国の領有地に勝手に町を造ったんですよ?森だろうが平原だろうが、王国の領有地である事に変わりは無い。しかも地下にこれだけの空間を作ってしまった。王宮の許可も無しにこんな事をしたらどうなるか解らない訳でも無いでしょうに?』


アレク:『じゃあ此処の住人達はどなるんだ!?』


ザック:『そりゃまぁ普通なら強制送還になるでしょうね。王国民としての証が無い訳ですから。』


アレク:『・・・なぁ、あんたなら救えるのか?』


ザック:『伊達に名誉騎士団のリーダーはやっていませんよ。独立した自治権は難しいかも知れませんがね。獣人属の方々が安心して暮らせる環境が欲しいと言うなら、貴方自身も俺に色々と協力して貰う事になると思いますけどね。』


アレク:『協力?一体何をさせる気だ?』


ザック:『貴方には帝国についての情報を出来るだけ提供して頂きたいんです。王国が帝国と交渉する上で、帝国の情報が有るのと無いのでは結果に大きな差が出ます。』


アレク:『情報ったって、俺が知ってる情報なんて市民レベルだぞ?上層部の情報なんて俺等が仕入れられる訳無いだろ?』


ザック:『いや、市民レベルの情報の方が重要なんですよ。実際に生活していた人達の情報ほどリアルなものは無いですからね。』


一通り話を聞いた後、ザックはアーデンから来たシルバーランク冒険者の行方を守衛に尋ねた。


どうやらその冒険者は、この町の東側にある北方の道具を専門に扱う道具屋に行ったらしい。


ザック:『ブロンズの冒険者を放っぽって何やってんだか・・・後で説教が必要だな。とにかく解りました、それじゃあアーデンの冒険者ギルドと騎士局には話を通して此処をそっとしておいて貰います。』


アレク:『感謝するよ、それと今後の事も宜しく頼む。』


ザック:『結果に関しては出来るだけ早く報告しに来るつもりですが、場合によっては時間が掛かるかも知れません。それまではあまり帝国を刺激する様な活動はしないで下さいね。』



アレクの家から出たザックはメンバーに事情を話して地上へ戻った。


入り口にはカリンをはじめ、ゴールドメンバーが封鎖に当たっていた。


カリン達に中での出来事を話すと、少し困惑していた。


無理も無い、他国の政治に干渉する行為は冒険者の権利を逸脱するものだからだ。


しかし最終的判断を女王に委ねる事を話すと、納得してくれた。



一度屋敷に戻り、リアスに事の事情を話した。



リアス:『う~ん、まぁ帝国では獣人属の人口が肥大化している事が政策を大きく転換する原因だったので、その交渉自体は上手く行きそうですけどね・・・でもザック様、もしかするとその町の統治はザック様に一任されるかも知れませんよ?』


ザック:『なんで?』


リアス:『理由は2つです。まずその町は独自の自治権を要求しているので、王国の介入が直接的に行え無くなる可能性がある事。次にそのアレクって人がザック様に町の命運を託したので、事実上ザック様がその町で最も影響力の有る王国民である事です。』


ザック:『あの町には守衛も居るし、法を王国の法に準ずる形にすれば問題無いんじゃないの?』


リアス:『独自の自治権を求めるという事は、ある意味独立国を作るのと同じ事ですよ?まぁ地下の一部分だけなので、そこまで大きな話にはならないでしょうけどね。』


ザック:『なるほど・・・それなら・・・。』


リアス:『ザック様?』


ザックは考えていた。


独自の自治権を持つ町が国の一部を占有する事は、王国にとっては扱いに困る事上に色々と問題が多い。


あくまでも王国の一部としての町で有りながら、固有の自治に関する法を地方条令として定める事が出来れば、行政と同じ扱いが出来る。


ザック:(それには領主が必要だが・・・居るな。)


ザック:『ちょっと王宮に行って来る。』



ザックはそう言って王宮に転移した。


女王に内密な相談があると言って会議室で女王と話す。



ベルクレア:『それで内密な要件とは?』


ザック:『実は・・・。』


ザックはアーデンでの事を話した。


ベルクレア:『ザック殿はその地下にある町を黙認し、独立した自治権を与えろと申されるのか?』


ザック:『いや、俺としてはその町をアーデンの一部として統治した方が良いと思いますけど、あの町には帝国の政策から逃れて来た者達が暮らして行ける環境が必要です。そこで特別自治区として王国の法の元にその地域での条令を行使出来る自治権を与えて、王国への移住者の町としてのモデル地区にしては如何かと思いましてね。』


ベルクレア:『あくまでも王国の法の元に・・・か。そういう事で有れば、その町をザック殿の領地として任せた方が良いかも知れんのう。そのアレクと申す者がどれだけ信用に値するかは分からんし、アーデンの郊外ならばザック殿の領地としても国民も納得するであろうしのう。』


ザック:『俺が領主ですか・・・しかし俺は貴族ではありませんよ?貴族の方々の手前も有ります。陛下、確か王宮にロムネイブ家の方が居られますよね?』


ベルクレア:『うむ、ロムネイブ家の家長なら居るが、ザック殿は如何にしてロムネイブ家を?』


ザック:『先日ロムネイブ家のご令嬢とお会いしまして、貿易に関する仕事をされておられるとの事でした。ならばロムネイブ家の領地にされては如何かと思いましてね。ロムネイブ家ならば王家との繋がりも深く、信頼に値する貴族かと思いますが?』


ベルクレア:『・・・正直妾はロムネイブの娘と殆ど面識が少なくてのう、ザック殿はその令嬢をどう見る?』


ザック:『実に現実的で柔軟な思考をお持ちの方だと思いました。人柄も他人から好感を持たれる感じでしたね。それにロムネイブ家は王国でも名家ですので他の貴族からも異論は出ないかと。』


ベルクレア:『ザック殿がそう申すのであれば妾としても異存は無い。では早速ロムネイブに話をしてみよう。じゃが、実質的な町の統治に関してはザック殿に一任する事になると思って欲しい。』


ザック:『どういう事でしょう?』


ベルクレア:『簡単な事じゃ、ロムネイブ家との面識がある騎士がアーデンに居るのじゃ。その者が統治を代行すればロムネイブもわざわざアーデンまで行く必要も無かろう?じゃが問題は帝国じゃな。』


ザック:『やはり交渉は難しいですか?』


ベルクレア:『いや、恐らく交渉は簡単であろうが、多くの獣人属を押し付けられるかも知れん。妾が直々に出向いて交渉すれば交渉自体は直ぐに終わるのであろうが、もしそうなればそれなりに広い土地を与えて大きな町を作る方が良いじゃろうのう。しかし管理する者が大変じゃ。』


ザック:『陛下の仰有る通りになった時は、条件付きで土地を与えて独立国とさせては如何でしょう?王国の領地には手付かずの広大な平原や山脈地帯等が御座います。王国との和平条約を条件にすれば、王国に対して好戦的な態度はしますまい?』


ベルクレア:『そんな簡単な話では無いぞ?それこそ独立国を建国させるならば各国との話し合いが必要となる。それに我が国としては、今後の交易や和平の問題も含め、十二分に信頼がおける人物に王となって貰わなければならぬ。つまりはザック殿に王となって貰わなければならぬのじゃ。妾が今回の話を無条件に受諾するのは、使徒様であるザック殿の話で有るからこそなのじゃからのう。』


ザック:(こんなに女王陛下から信頼されてたとはな。しかしまさか自国の領土から独立国を建国させる事に躊躇無く答えるとは思わなかった・・・。)


ザック:『まぁそれはその時に考えれば良い事でしょう。一先ずは先ほどの件をアレクさんに伝えます。』


ザックは女王が言った建国に関する話を例え話の様なものだと思っていた。


だが女王は以前からザックに一国の王となって欲しいと願っているのは本当だった。


それはザックがレデンティア王国の地方に所属する一冒険者としておく事に無理がある人材であり、自分よりも国をおさめる立場に相応しい人間だと感じて居たからだ。


さらにザックは神の使徒でもある。


ザックが自分が使徒である事を明かして世界各国のまとめ約となれば、大半の国々がそれに従うであろうとも考えていたのだ。


既に女王は実の妹でもある西方の小国【アルゼンヌ共和国】の女王に、ザックに関する話をしていた。


アルゼンヌの女王はギルドを通じてザックの事を知っており、レデンティアの女王と共に新国建国を模索していたところであった。


そんな事を知らないザックは何とかその場を修めてアーデンへ転移した。



地下都市に向かいアレクに王宮での話を伝えた。



アレク:『何だって!?本当に女王陛下に懇願したのか!?あんた凄いな!』


ザック:『転移魔法を使えば王都まではすぐですしね。それに俺は王宮への出入りを許可されているんです。』


アレク『つまりロムネイブ伯爵家が名目上の領主で、あんたが事実上の統治者って事か・・・。まぁ陛下に直ぐ様謁見出来るあんたなら信用出来そうだし、ここは任せる事にするよ。』



アレクとの話を終えたザックはカリンにも事の事情を説明した。


カリン:『何と言いましょうか、貴方にはいつも驚かされますね・・・。それで女王陛下は領主の代わりに貴方を統治者としたという事で間違い無いのですね?』


ザック:『そういう事になりますね。』


カリン:『よく貴方を貴族にするって言いませんでしたね?まぁ名誉騎士団の称号を持っている以上は伯爵と同等かそれ以上の扱いにはなりますが、正直冒険者として扱うのも本当は失礼な話なんですよね・・・。』


ザック:『は?今何と?伯爵と同等って言いました!?』


カリン:『知らなかったんですか!?名誉騎士団は王宮への入退が自由な上に女王への謁見に関しても制約は受けないでしょう?そんなの普通は上位伯爵家か公爵家ぐらいのものですよ!?』


カリン:(というよりザックさんは陛下を動かせるだけの力を持つ唯一無二の存在なのに・・・。)


ザック:(マジかよ!?でも言われてみればそうだよなぁ・・・正直忘れてたよ・・・。)


ザック:『ま、まぁ俺としてはこの町に来た頃と変わらないつもりなので・・・。』


カリン:『取り敢えず、ザックさんが事実上の統治者となられたのですから、早速ギルド長としては地下都市内でのギルドの開設を希望します。近い内に町の責任者の方に交渉して頂きたいのですが?』


ザック:『それは俺としても考えていました。冒険者ギルドだけで無く、商人ギルドや教会等も開設出来る様に交渉しようと思います。』



ヘトヘトになって屋敷に戻ったザックはパーティーメンバーと使用人にも結果を報告した。



アン:『何て言うか、ザックは何を目指してるのか・・・。』


ザック:『そう言うなよ、俺だってなりたくてなった訳じゃ無いんだぜ?』


メル:『それよりも陛下が仰有っておられたという独立国の話の方が問題ですね。もしそうなればザック様が国王となられる事になる訳でしょう?』


メルが革新を突く事をサラッと言った。


サリー:『一国の王ですか・・・まぁザック様なら良い国を築きそうですが・・・。』


サリーの言葉には、ある意味王になってもらいたいという希望が感じられる。


ザック:『待ってくれよ、国を作るのって大変なんだぞ?各々の役割分担やそれに見有った人材を確保するのだって容易な事じゃ無い。他にも立法や他国との条約の締結なんかもあるし、治安維持や経済の問題も。そんなの俺が出来る訳無いだろ?』


サリー:(一瞬の内にそれだけの事を心配出来る人はそう居無いと思いますが・・・。)



翌日、カリンと商人ギルドのギルド長を連れてアレクに会いに行った。


アレクは町の内情に干渉される事を躊躇っていたが、内容を話すにつれ理解して貰う事が出来た。


町の商人達は無条件でギルドへの加入を承知してくれた。


この町が正式な町として国が認めてくれた事が嬉しい様だ。


じきに兵士局が出来れば、改めて領民登録が行われる。


これでこの町の人民も社会保証を受ける事が出来る様になるのだ。



ザックは王都のマリエリアを訪ねた。



マリエリア:『ザック殿!色々と事情をお聞かせ頂けますね?』


ザックマリエリアに事の事情を全て話した。


マリエリア自身も他国からの難民に市民権を与えられる方法を考えてはいた様だが、まさか自分が移住者の町の領主になるとは思って居なかった様だ。


マリエリア:『私に一言も相談が無いのは少々不満ですが、女王陛下が納得された事でも有りますしね。父が慌てて此処へ来た時は本当に驚いたんですよ?』


ザック:『それはすまない事をしました。それでマリエリアさんには一度その町に来て頂き、町の名前をつけて頂きたいのです。』


マリエリア:『私が町へ出向くのは構いませんが、町の名前をつけるのはザック殿が適任ですわ。』


ザック:『え?領主は貴女ですよ?』


マリエリア:『町の住人達を国民にされたのはザック殿です。ならばその者達の住む町の名もザック殿が御決めになった方が宜しいですわ。』


ザック:『分かりました。それでは日取りを決めましょう。』


その後日取りと当日の打ち合わせをしてアーデンへ戻った。


お読み頂き有り難う御座いました。

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