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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
31/77

第30話 サリーの師匠とアンの優しさと。

お読み頂き有り難う御座います。


第30話です。

王都へ転移したザックとサリーはサリーの師匠の家に向かっていた。


サリー:『あの先を右に曲がった所に師匠の家が有る筈です。』


サリーの師匠は道場を経営している。


元王宮の騎士局の道場で師範をしていた猛者だったらしいが、引退後は道場で若い冒険者や執事の訓練をしているらしい。


道場の前に着くと、目の前に居た女性がサリーに駆け寄った。



レーネ:『サリー!本当にサリーなの!?よく無事で!』


サリー:『レーネさん、お久し振りです。』


レーネ:『本当に心配したのよ!それで此方の方は?』


サリー:『はい、私の主様、アーデンの冒険者のザック様です。』


レーネ:『アーデンのザック様・・・え!?まさか、ロードズ・ブレイブ!?』


女:『騒がしいぞ!』


道場から出て来た女性が声を荒げた。



女:『何を騒いで・・・サリー!!』


サリー:『お久し振りです御師匠様!』


師匠:『連絡が無いので心配しておったのだぞ!・・・してこの男は何者だ?』


サリー:『この方は私の主様です。アーデンの冒険者にして名誉騎士団チーム・アポストロのリーダー、ロードズ・ブレイブことザック・エルベスタ様です。』


ザック:『初めまして、アーデンより参りました。ザック・エルベスタと申します。』


オリビア:『私の名はオリビアだ。そうか、そなたが最近ゴールドランクになったというロードズ・ブレイブか。して、何故サリーと?』


ザック:『サリーが自分の無事をどうしても御師匠様に伝えたいと申しまして、不躾にも訪問させて頂きました。』


オリビア:(この者から発せられる異常に強い気は何だ!?もし抑えてこの強さだとするなら、解放すれば普通の者なら気に当てられて気絶してしまうぞ!?)


オリビア:『・・・サリーよ、善き主に買われた様じゃな。ロードズ・ブレイブよ、サリーと再び会わせて頂いた事に感謝する。どうぞ御入りなさい。』



ザックはサリーを買った経緯と現在のサリーの扱い等を細やかに説明した。


オリビア:『事の経緯は良く解った。よくぞサリーを救って下さった。少しでも遅ければどうなっていた事か・・・。それにザック殿がサリーを解放しない理由はサリー達の保護の為だと言うのだな?』


ザック:『はい、サリーが俺の元を離れたいと言うので有れば解放しますが、最近使用人の奴隷化等の事件がありますので差し控えております。』


サリー:『ザック様は私達を絶望の淵から救って下さいました。私はザック様が私を御捨てになるまで御使いするつもりです。』


オリビア:『案ずるなサリー。私はザック殿からお前を取り上げるつもりは無いし、お前のザック殿を慕う気持ちも重々承知しておる。それはそれとして、私はザック殿の冒険者としての腕前に興味がある。ザック殿、御主の御人柄もサリーの様子を見れば良く解る。どうだろうか?私と道場で手合わせをしては貰えないだろうか?』


ザック:『宜しいでしょう。御期待に沿えるかどうかは解りませんが御相手しましょう。』



道場では王都でも凄腕と言われる冒険者や格闘家等が見守る中、オリビアとザックが向き合う。



『始め!』


合図と共に二人は木剣を付き合わせ相手の出方を見る。


ザックが踏み込み間合いを詰めると、オリビアが木剣でいなす。


そのままオリビアが斬り掛かるとザックは木剣の根元からすくい投げる様に受け止めて、そのまま胴に叩き込む。


寸での所でかわしたオリビアは直ぐさま間合いを詰めると肩に攻撃を繰り出す。


ザックは後ろに下がりながら手首に木剣を打ち込むと、オリビアが木剣を捻りザックの攻撃を見事にかわした。


オリビアがザックの首元に木剣を突き出すと、ザックはしゃがみ込んでオリビアの脇腹に木剣を叩き込んだ。


『そこまで!』


突然の事にオリビアは呆気に取られてしまった。


実際ザックのスピードにオリビアは付いて行くのがやっとだった。


見ていた冒険者や格闘家達も、無言で固まっている。


オリビア:『やられたのう。やはりザック殿は思った以上の実力だった様だな。』


ザック:『オリビアさんも攻撃の切り替えが早くて、次の手の判断に迷いましたよ。』


オリビア:『やはり現役のゴールドランクは伊達では無い様だな。』


サリー:『御師匠様、ザック様はアーデンギルドでゴールドランク3人を相手に全勝された実力をお持ちです。そこらのゴールドランクと同じに考えない方が宜しいかと・・・。』


サリーの言葉に場内はざわついた。


オリビア:『う~ん、ザック殿、カードの色は何色かな?』


ザック:『の、ノワールです・・・。』


オリビア:『っ!!ノワールだと!?・・・何故それを先に言わんのだ!』


ザック:(え~!?)


オリビア:『・・・まぁ兎も角、それだけのスキルと腕前ならば、そこらの族に狙われても殺られる心配は無さそうだな。』



その後道場の門下生達に稽古を着けさせられたザックだが、門下生のレベルは結構高く十分に楽しめた。



サリー:『御師匠様、それではアーデンに戻ります。どうか私の事は御心配無き様。』


オリビア:『うむ、サリーの元気な姿を見れて嬉しかったぞ。ザック殿、今後もサリーの事を頼みます。』


ザック:『はい、それでは。』



道場を後にした2人は、カフェで一休みする事にした。



ザック:『オリビアさん、サリーの元気な姿を見れて嬉しかったみたいだな。』


サリー:『多分私の行方までは御存知無かったと思いますし、ザック様の元に買われたと知れば安心されると思ったのです。』


ザック:『実際安心したんじゃないかな?ところでサリー、他に行きたい所とか無いか?二人きりで出掛けられる事ってそう無いだろ?』


そう言うとサリーはモジモジしながらボソッと言った。


サリー:『そのぅ・・・色々なお店を見てみたい・・・です。』



カフェを出た2人は、王都の繁華街でウインドウショッピングを楽しんだ。



心なしかサリーの表情もいつもより柔らかい様に感じた。


とある店の店頭に薄いブルーの服が飾ってあった。


サリーが見とれていたので、良い機会だと思って購入した。


サリーは私用で出掛ける事がほとんど無い。


サリーの私服は執事服のイメージに近い物ばかりで、若い女の子ならではの華やかさに少し欠ける気がしたのだ。


ザックはこれからは使用人達との時間も作りたいし、一人一人のメンタルケアが重要だと感じていた。


サリー:『ザック様、その、宜しいのですか?』


ザック:『試着した時、凄く似合ってたじゃん。勿体無いよ。』


サリー:『しかし、私は奴隷の身ですし、執事という職務上この様な服は・・・。』


ザック:『サリー?奴隷だとか執事だとか、俺はそんな事を気にしないって言っただろ?何なら今奴隷商に行って解放したって良い。自分の立場を気にする必要なんて無いんだ。』


サリー:『ザック様・・・。有り難う御座います。』


サリーはその時、実に少女らしい笑顔でザックに微笑んだ。



屋敷に戻るとアンが厨房で何かを作っていた。



ザック:『アン、何作ってるの?』


アン:『うん、ザックが前に作ってくれたクッキーを私も作ってみたくって。』


以前ザックが手作りのクッキーをみんなに振る舞った事があった。


その時にジーナには作り方を教えたのだが、アンも自分で作ってみたかったらしい。


その時アンは作り方をメモして自分なりに復習していたらしい。


ザック:『アン、ちょっと待ってて。』


そう言うとザックは棚からドライフルーツを持って来た。


ザック:『実はこれを乗せて焼くと少し贅沢な感じになるんだよ。』


アン:『確かに彩りも綺麗になりそうね。』


ザック:『それとこれもね。』


引き出しから出したのは型抜きだった。


ハートや四角、星形なんかもある。


これは神様から貰った物では無く、リアスに頼んで作って貰った物だ。


アン:『わぁ♪これ可愛いわね!よーし!じゃあこれをこうして・・・。』


アンは目を輝かせながら色々なクッキーを作っていた。


するとそこにローラが入って来た。


ローラ:『わぁ!これ可愛いですねぇ!』


ザック:『今アンがクッキーを作ってたんだよ。』


アン:『ねぇ!ローラも一緒にやろろうよ!』


ローラ:『私も良いんですか!?』


二人で生地を伸ばしては型抜きで様々なクッキーを作っていった。


オーブンの前でワクワクしながら待っていると、甘い香りに誘われて屋敷の使用人達も集まって来た。


普段女の子らしいイベントの少ない屋敷だが、こういうイベントが発生すると実に女子校的なノリになる。


結局その後もクッキー作りは続いて、とんでもない数のクッキーが出来上がった。


自分達で食べる分を取り分けてから、残りを教会の子供達に届けようという事にした。


これはアンの提案である。



モービィに積み込んでアンと教会へ出発した。


教会には10名ほどの子供達とシスターが外で遊んでいた。


珍しい乗り物が目の前に停まった為、シスターがこちらに駆け寄って来た。


シスター:『教会に何かご用ですか?』


ザック:『こんにちは、俺は冒険者のザックで、こちらはパーティーメンバーのアンです。屋敷で焼き菓子を作ったのでお裾分けに来ました。』


シスター:『ザックさんて、まさかあのザックさんですか!?メリアからお話は伺っております!』


アン:『それでこれがそのお菓子よ。』


シスター:『まぁ可愛らしくて美味しそう!何とお礼を申し上げて良いやら・・・。』


アン:『気にしないで、私と屋敷の使用人の子達が楽しんで作ったお菓子だから。』


ザック:『それにうちでは食べきれませんので。』


シスター:『本当に有り難う御座います!』


当然の事ながらあの量でも直ぐに無くなるだろう。


アンは以前から教会の子供達に何かしてあげたいと言っていた。


ザック:『アン、時々クッキー作って持って来ようか。』


アン:『え!?良いの?』


ザック:『だって見ろよ、子供達があんなに嬉しそうにしてるだろ?』


アン:『子供達の一番の楽しみって、美味しいお菓子を食べる事なのよね。だから前から恵まれない子供達に何かをしてあげるなら、お菓子を作ってあげたいって思ったのよ。』


ザック:『俺がメリアとお菓子を届けに行った時の事を覚えてたんだな。まぁあれは神様から送って貰った向こうのお菓子だけど、やっぱり手作りって良いよな。』


アン:『うん、だから私があげるなら手作りのお菓子にしたかったのよ。手作りのお菓子って人の温もりを感じるって言うか、作った人の気持ちを感じるじゃない。』


アンが話す顔を見て、ザックは彼女の根底に有る優しさが深く広いものだと感じた。


アンもまた、ザックが自分の気持ちを理解してくれた事を心より喜んでいた。



屋敷に戻ると、屋敷で働く使用人達とパーティーメンバーを集めてささやかな御茶会を開いた。


夕方までの仕事を休みにさせて、先ほど作ったクッキーと紅茶を楽しむ事にしたのだ。


ドライフルーツやナッツ等をトッピングしたクッキーは、見た目も美しく味も良い。


最初にアンが大量に生地を作っていなければ、こんな御茶会なんて出来なかっただろう。


元盗賊だった使用人達も、今では随分と女の子らしい振る舞いになって来た。


初めの頃こそ荒い言葉使いをしてはいたが、最近では他の使用人同様に人当たりの良い言葉使いに変わって来ている。


最近ではパーティーメンバーとも良い関係を築いている様だ。


ふと何気にスマホを見ると、まだ神託の項目は空欄だった。


スキルを見ると、神力という項目が出来ており、レベルも表示されていた。


まさかと思い試しに記憶の指輪で確認すると、こちらにも神力というスキルが有った。


ザック:(おかしい。神の使徒ってだけで、神の力が宿っている。俺は神では無いし、神様から能力を授かっただけな筈だ。)


ザックは困惑していた。


何故なら此方の世界に転生してから魔法を使ってはいるが、それ以上の事はしていない。


ましてや使徒としての活動回数もそれほど多くは無いのだ。


その時ふと世界神の言った言葉を思い出した。


世界神:『貴方にはその世界の管理者として転生してもらいたい。』


ずっと引っ掛かっていたその言葉。


それに加えて。


サクラ:『神力の付与もさせて頂きます。』


ザック:(あ、言ってたな・・・。)


ザックは自分なりの仮説を立てていたが、このスキルを見て気付いてしまった事があった。


(世界神は俺を自分の眷族にしようとしているのではないか?)


もしそうだとすれば、転生してこんな早い段階で神力を授かる理由が成り立つ。


世界の管理者。


総体的に考えて、世界の管理者とは神を意味する事が多い。


向こうの世界の歴史においても、【見守りし神】や【神の御業】等という言葉が幾つも出て来る。


ザック:(まさか世界神は俺をこの世界の神に奉り上げて管理させようとしているのか!?)


ザックはその項目をじっと見て、自分が今後どう生きるべきかを考えていた。


夜、部屋に戻ったザックは、スマホを開いてその疑念をメールで尋ねた。


驚いた事に直ぐに返信が来た。


『当たらずとも遠からずです。貴方に神力を与える事で、万が一圧倒的不利な状況が発生した時に使える対抗手段として授けました。勿論貴方の今後の働きや、将来死の淵に見舞われた時、貴方自身がこの世界の神と成りたいと願うならば貴方をこの世界の神としましょう。』


ザック:『随分とアバウトな答えだなぁ。でも俺が望まない限りは神になる事は無い訳だ。せめて記憶の指輪で表示されない様にして貰いたいもんだよ。これじゃあ俺は神様です!って言って歩く様なもんじゃないか・・・。』


声に出して言った言葉が通じたのか、次の瞬間記憶の指輪から神力の項目が消えた。


スマホの方はちゃんと出ている。


ザック:(なんだ、神様のうっかりミスか・・・。何はともあれ、これで俺に神力が有る事は伏せられる。)


内心ザックはホッとしていた。


神の使徒ならばまだ人として見て貰える。


だが神力を持っているとなれば、直ぐ様生き神として世界中から祭り上げられてしまうのだ。


文明水準が中世であるからこそ、その辺は警戒しなければならないのだ。


ザック:(こんな世界で神様が降臨したとなれば、厄介なのが次から次へとやって来そうだしな。)


ザックが懸念していたのはそれだけでは無い。


もしザックが神の眷族になった場合、パーティーメンバーや使用人達はザックの眷族となってしまう。


人として暮らせなくなるだけでは無く、何かしらの異能力を身に付けてしまうかも知れないのだ。


中世の世では、異端者は迫害を受ける事が多い。


その力が大きければ大きいほど、その力を利用したがる者は多いのだ。


ザックは彼女達に、普通に得られるべき幸せを得て欲しいと願っていた。



お読み頂き有り難う御座いました。

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