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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
27/77

第27話 海賊騒動と帝国の闇と。

お読み頂き有り難う御座います。


第27話です。

ザック達がシェルバールに来てから4日が過ぎた。


漁船の契約が成立してから仕入れや流通関係の確保に3日を費やし、ようやく一段落着けると思っていた矢先の事だった。


サリー:『ザック様、この辺りの近海で海賊が出たそうです。』


サリーの言葉にザックは引きつった。


ザック:『それはいつ頃の話だ?』


サリー:『昨夜お泊まりになられた御客様が言っておられたんですが、最近海賊の活動が活発になっている様です。』


ザック:(参ったな・・・折角仕入れや流通の確保が出来た矢先に・・・。)



ザックとアンは情報を求めて航海士ギルドに向かった。



受付嬢:『いらっしゃいませ、本日はどの様なご用件でしょう。』


ザック:『最近の海賊の動向について聞きたいのですが。』


受付嬢:『確か御客様はアーデンの・・・そうですか、実はあまり他言して欲しくは無いのですが・・・。』


受付嬢の話では、ここ数週間で活動が活発化している様だ。


狙われて居るのは北方からの貨物船で、南方からの船は襲われていないそうだ。


航海士ギルドを出た2人はカフェで話し合った。


ザック:『襲われてるのは北からの船だけか・・・。』


アン:『本当に海賊の仕業なのかなぁ?』


ザック:『妙だよな?西や南の船は狙われて無いんだぜ?』


アン:『北からの船に何か特別な物でも積まれてるのかしら?』


ザック:『有り得るとすればモービィかな?でも違う気がするんだよなぁ。』


アン:『どういう事?』


ザック:『可能性としては帝国に反発する反政府組織とかかな?漁船や他の貨物船が狙われて無いからね。』


アン:『じゃあ私達には影響無いと思って良いのかしら?』


ザック:『いや、逆に警戒した方が良いかも知れないな。』


アン:『なんで?漁船は狙われないんでしょ?』


ザック:『考えてもみろよ、狙われているのは北方の船だけ。襲われる主な場所はシェルバール近海。もし帝国の対抗勢力が主犯なら亜人種の可能性が高い。亜人種に一番穏和な国は王国だろ?』


アン:『まさか帝国が攻めて来る危険があるって事!?それは飛躍し過ぎじゃない?』


ザック:『その可能性は否定出来ないって事だよ。そこで俺達が海賊退治をしたらどうなる?』


アン:『ちょっと待って!ザック!何考えてんのよ!相手は海賊よ!?海での戦闘のプロよ!?私達が敵う相手じゃ無いわよ!』


ザック:『何も正面から戦う必要は無いだろ?襲われる海域の近くに隠れやすい入り江が有れば、陸上で片付く可能性もあるんだ。』


アン:『それってこの近くに隠れ家が有るって事?』


ザック:『可能性は高いな。盗賊の村や非公認の村がこの近くにはやたら多いだろ?単に貧しい人が多いってだけでは説明がつかないんだ。しかも普段はこの町に出入りしている可能性が高い。』


アン:『どうしてそう思うの?』


ザック:『海賊達はどうして正確な航海時間を知ってるんだ?この町に内通者でも居ない限り、北からの船だけを正確に襲う事なんて出来ないだろ?』


アン:『え!?もしかして航海士ギルドに・・・。』


ザック:『あくまでも俺の感だけどね。とは言え亜人種の船乗りは多いから、ギルドに出入りしている亜人種を調べようにも人数が多すぎる。だから頻繁に町の外に出る亜人種をマークした方が良いかもな。』


アン:『ねぇザック、冒険者より賞金稼ぎに転職した方が良いんじゃない?そっちの方が向いてるかもよ?』



その日の午後から交代で頻繁に町の外に出る亜人種をマークした。



最終的に絞り混んだのは3人だった。


メル:『ほぼ間違いありませんね。全員同じ方に向かっています。』


ザック:『メル、明日はそいつらの後をつけてみよう。俺とメルで追跡して隠れ家を特定する。アン達は門の近くで待機して連絡を待ってくれ。当たりならそのまま兵士局に連絡だ。』


アン:『分かったわ。』



翌日。



メル:『ザック様、来ました。』


ザック:『やり過ごして帰る時に後をつけよう。』


ザック達は目の前のカフェで時間を潰していると、マークしていた亜人種が門の方に歩いて行った。


ザック:『どうやらあの岬の辺りが狭い入り江になっているみたいだな。』


メル:『ザック様、あれを。』


メルが指した方を見ると、周囲の景色に隠れる様に集落があった。


ザック:『メル、一端退いて岬の入り江に行こう。船が有るかも知れない。』


入り江に着くと大き目の船が一艘係留されていた。


ザック:『見張りは?』


メル:『3人ですね。どうします?』


ザック:『門に転移してアン達に知らせたら直ぐに戻る。戻ったら船を押さえよう。』


メル:『畏まりました。』


ザックは門に転移してアン達に当たりだと告げた。


その後入り江に転移すると、メルと船の側まで近付いた。


3人の見張りが後ろを向いた瞬間、ザックとメルが木剣で気絶させる。


3人を縛り上げて船内に入ると、何処からか声が聞こえた。


声がする方に行くと1人の女の子が檻に閉じ込められていた。


女の子:『ちょっと!いい加減だしなさいよ!私は造船技師よ!帝国の事なんて知らないんだから!』


ザック:『俺達は海賊じゃ無い、今出すから下がって。』


ザックが檻の鍵に銃を撃つと、鍵が壊れて扉が開いた。


女の子:『ねぇちょっと!それ何?よく見せて!』


ザック:『それは後だ、まずは脱出しなきゃな。』


縛り上げた3人は大人しく気絶している。


ザック:『なぁ、他に船員は居ないのか?』


女の子:『全員降りて行ったわよ。』


メルが船内を一通り見回ると、誰も居ない事をザックに告げた。


縛り上げた3人を浜辺まで降ろし、ザックが火炎魔法で船に火を放つ。


時を同じくして兵士団が集落に押し入り海賊達が逮捕された。


逃げ出した者も捕まり、実に20人もの海賊が捕まった事になる。


兵士の1人に航海士ギルドに協力者が居る事を告げると、数人の兵士が町に向かった。


浜辺で気絶していた3人が目を覚ましたので取り調べる。


ザック:『お前達は何者だ?何故北方の船を襲う?』


男:『私達は亜人種同盟だ。帝国の人種差別に対する報復をしただけだ。貴様ら王国民に危害は加えていない!』


ザック:『悪いけど、この国でそういう事をされると結構面倒な事になるんでな。おたくらの小競り合いに第三国を巻き込む様な真似は止めて欲しいんだ。』


男:『小競り合いだと!?これは聖戦だ!亜人種の人権を求める戦いだ!この国は亜人種に穏和なのでは無かったのか!』


ザック:『穏和だとは思うが、この国を巻き込めば国同士の戦争になりなねないだろ?お前達はこの国の国民に犠牲者を出させたいのか?』


男:『聖戦に犠牲は付き物だ!我々の為に戦って死ねるなら本望だろうが!』


メル:『ザック様、こやつらには何を言っても無駄です。結構根深く洗脳されています。』


ザック:『兵士さん、連れて行って下さい。』


3人は色々と喚きながら連れて行かれた。


ザック:『これは何処かに大きな組織が絡んでるな。』


メル:『えぇ、やはり帝国内部の組織でしょうね。』



女の子:『ねぇ、私は誰が保護してくれるのかしら?』


ザック:『・・・まだ居たの?兵士達に保護して貰えば良かったじゃん。』


女の子:『あ・・・そう言えばそうよね・・・。』



アン達と合流したザック達は、自称造船技師を兵士局に送った後で宿屋の主人達の様子を見に屋敷へ転移した。



ローラ:『わぁ、久々のお屋敷ですぅ!』


ザック:『そっか、ローラは旅に出てから1度も屋敷に戻って無いんだっけな。』


ローラ:『はい!』



ザック達に気付いたフェルテとリアスが出迎えてくれた。



フェルテ:『ザック様、お帰りなさいませ。』


リアス:『お疲れ様です!』


ザック:『リアス、浴場の建築はどうだ?』


リアス:『あと2週間ぐらいて完成しますよ。ですから落成式の前日には一度お戻りになって下さいね。』


ザック:『分かった、楽しみにしているよ。』


フェルテ:『ザック様、宿屋の主人達ですが、あと1週間だけ時間を頂けますか?』


ザック:『それは構わないけど、現状はどんな感じだ?』


フェルテ:『最近ジーナが主人達に西部の料理を教えているみたいです。魚料理はあらかた教えたみたいで、今は肉料理みたいです。』


ザック:『そうか、じゃあサリー達にはもう少し頑張って貰うか。それで娘さん達はどうだ?』


フェルテ:『はい、ようやくエスコートが終わり、客室接客とベッドメイクを教えているところです。』


ザック:『出来るだけ丁寧に教えてやってくれ。向こうではサリーが集客を増やしてくれてる。あと昼間も食堂を営業してるから主人達が戻った後も続けさせたい。』


フェルテ:『今は一晩何人ぐらい宿泊されていますか?』


ザック:『そうだな、大体10人ぐらいは泊まってくれてるよ。』


フェルテ:『そうですか、もう少しって感じですね。』


ザック:『そうだな。あ、リアス、ちょっと一緒に向こうに来てくれないか?』


リアス:『え?私がですか?』


ザック:『そうだ。ちょっと北方の事で、聞きたい事があるんだ。』


リアス:『分かりました。少しだけ待ってて下さい、仕事を片付けちゃいますんで。』



久々に屋敷のリビングで寛ぐ。


屋敷には何度も戻ってはいるが、みんなで寛ぐのは出発前以来だ。


アン:『やっぱりこの感じよねぇ。』


メル:『落ち着きますね。』


ローラ:『居心地良いですよねぇ。』


ザック:(みんな精神的にも疲れてるんだろうな。)


ザック:『あと1時間ぐらいしたら戻るからな。』



リアスの仕事が一段落着いたのでシェルバールに戻った。



リアスに今回の海賊騒動の話をすると、真剣な表情で話し始めた。


リアス:『もう4年ほど前の事です。亜人種の間に対政府勢力と呼ばれる組織が生まれ、皇宮に攻め込みました。当然戦力差が大きいので全滅しましたが、それが引き金となって勢力が拡大し、いつしか暴力組織化してしまったのです。皇宮は全ての亜人種がそういった反発組織では無い事を理解していましたし、帝国の人種優位化政策自体は亜人種の保護も念頭に置いたものだったのです。』


ザック:『まてよ、それじゃあ何故反発が激化したんだ?』


リアス:『理由は亜人種の人権剥奪による、社会保証の取り消しです。自分達で稼ぐ事の出来ない者達は、住む所すら無くなってしまうという極端な自立政策が原因で、帝国内の貧困層はより貧しくなってしまいました。反政府組織に参加する者のほとんどが貧困層で、満足な教育が受けられない者や自ら稼ぐ術を持たない者ばかりです。』


ザック:『その組織って、帝国外にも点在してるんだよな?』


リアス:『はい、今では世界各地に点在していると聞いています。でも今の反政府組織は亜人種の救済という名目を良い様に利用した、ただの暴徒の集団です。』


ザック:『なるほど・・・それで帝国政府は海外でのそいつらの活動に関してどう判断しているんだ?今回は俺達が鎮圧したけど、下手すりゃ国同士の問題になるだろ?』


リアス:『帝国政府はあくまでも反徒の悪行として解釈しているみたいですが、あまり大事になると国家間の問題になりかねませんね。』


ザック:(これは陛下に頼んで俺が特使として帝国に行った方が良いかな?でも他国の問題にあまり干渉するのもなぁ・・・。)


ザック:『有り難う、良く分かった。屋敷に送るよ。』


アン達は話を聞くにつれ、今後更なる試練がザックに起こる事を案じた。


リアスを送って戻って来たザックはサリーにもうしばらく主人達の代行をして貰う事を告げた。


その2日後、ザック達はシェルバールを離れ、一路アーデンに向けて出発した。

お読み頂き有り難う御座いました。

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