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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
24/77

第24話 メルの決意と宿屋の小競り合いと。

お読み頂き有り難う御座います。


第24話です。

夜が明けて朝食を作る。


朝食はザックとアンの担当だ。


神様から貰った物資の中にはベーコンフレークや粉末スープなど、此方の世界には無い便利な食材が多数有ったので簡単な料理を容易に作る事が出来るのだ。


アンはザックとの付き合いが長い事もあり、調味料の使い方やある程度の調理方法は知っているのだ。


すっかりザックの屋敷の料理に馴染んでしまったメルやローラも、村や町の食堂の料理では満足し切れなくなっている。


今回の朝食は玉子とじスープとコンビーフサンドとポテトサラダだ。


向こうの世界では当たり前の様なメニューも、此方の世界では塩や調味料が貴重なので結構味気無い物が多い。


今回は此方の世界で入手した岩塩を使用した。


朝食を終えてトレーラーから外へ出ると、昨日出来無かった神殿の調査を行った。


この神殿はおよそ470年前に建てられた物で、内戦以降は盗賊の隠れ家になった事が多かった様だ。


ザック:『メル、何か気になる所はあったか?』


メル:『これを見て下さい、我が一族の家名がありました。恐らく建造時には神殿騎士団が駐在していたんでしょうね。』


そう言うメルは誇らし気な顔をしていた。


記載されているメルの祖先であるバーディアル・ジルゴートはジルゴート家の家名を賜ってから3代目にあたる。


ジルゴート家はドワーフの家系で初めて家名を賜った一族であり、神殿騎士団で唯一のドワーフ属でもある。


神殿騎士団は350年ほど前に解散し、その後ジルゴート一族は流浪の民として諸方を渡り歩いていたという。


ザック:『メルは神殿騎士団を復活させたいと思ったりしないの?』


メル:『神殿騎士団は世界が危機に遭遇したその時、勇者が現れると自ら約束の地に集結すると言われております。我が一族にも約束の地の場所に関する言い伝えを受け継いでおります。』


ザック:『そっか。その時が来たらメルはメリアル・ジルゴートに戻るんだね。』


メル:『どうでしょうか・・・私はザック様の従者です。たとえ勇者様が現れたとしても、私は使徒様であるザック様の元を離れるつもりはありませんので。』


ザック:『でもそれじゃあ先祖を裏切る事になるだろう?』


メル:『私は決めたのです!ザック様の剣となり盾となり、神殿では無く神の力となる事を!神殿はあくまで人が作った物です!神の御意志である神託の為に働く事、ザック様の為に働く事こそが我が一族の務めだと!』


ザック:『・・・そうか、なら俺は勇者の力になれる様に努力しなきゃな。俺が転生する時に神様も勇者に協力しろって言ってたしな。』


ザックがそう言うとメルはザックに微笑んだ。


ザック:(でも神様の神託って、あえて勇者を作らない様にしてる気がするんだが気のせいか?)


一通り神殿の調査を終えたザック達は神殿を後にした。



4時間ほど走ると街道に合流し、シェルバールまではあと少しだ。


アン:『見て!海!海が見える!』


アンが指差す方を見ると、大海原が広がっていた。


ザック:『おぉ!綺麗だな!』


アン:『ねぇ、この辺で少し休憩しようよ!』


ザック:『そうだな、景色も良いしこの辺で休憩するか。』


モービィを停め、全員で丘の上で紅茶を飲む。


アン:『私海見るの初めて♪おっきいね!綺麗だね!』


メル:『私は以前大陸北部の港には行った事が有りますが、やはり南の海は綺麗ですね。』


ローラ:『私はアンさんと同じで初めてです。本当に大きいんですねぇ。』


ザック:(海かぁ、確か最後に見たのはもう1年以上前だなぁ。)


アン:『ねぇザック、こんなに水があるならこの辺の人達って海から水を汲んで暮らしてるの?』


ザック:『海の水は塩辛いんだ。だから飲めないし、身体を洗うと肌が荒れやすいんだよ。』


アン:『じゃあ飲み水とかはどうしてるの?』


ザック:『山から水路を引いてるんだよ。ほら、あそこの山から水路が続いてるだろ?』


アン:『海辺に暮らすのも結構大変なのねぇ・・・。』


ローラ:『それを聞いちゃうとアーデンて恵まれてるんですねぇ。井戸も水道もありますもんね。』


ザック:『この辺だと井戸を掘ると海水が湧き出すからな、真水が欲しければ山から湧き水を水路で引くしか無いんだよ。』



しばらく休憩した後、シェルバールに向けて出発した。



海沿いの高台を走っていると、眼下にシェルバールが見えて来た。


町の規模は大きく、港には漁船だけで無く貨物船や旅客船がたくさん入港していた。


シェルバールは商人ギルドと航海士ギルドが連携して大陸間交易のハブ港にもなっているらしい。


よく見ると入り江から入り込んだ湾になった地形になっており、水深もかなり深そうなので大型船でも無理無く入れそうだ。


港から陸の山を取り囲む様に大きな町が出来ている。


規模だけならアーデンの倍以上の町だ。


坂を下るとシェルバールの手前にある砦が見えて来た。


アン:『おっきな砦ねぇ、兵士団や傭兵団が駐在しているんでしょ?』


ザック:『あぁ、多分王都の砦の3倍以上はあるんじゃないかな?』



砦の入り口に着くと、兵士団が検問をしていた。


兵士:『冒険者か?カードを見せてもらうぞ。』


ザック達がカードを出すと他の兵士と一緒に戻って来た。


兵士:『名誉騎士団のチーム・アポストロの皆さんですね?お話は伺っております。御車は此処で結構ですので、事務所へお越し下さい。』


そう言われてザック達は事務所へ向かった。



兵士:『これはザック殿、先日の盗賊団の一件、感謝申し上げます。』


ザック:『いいえ、旅人の安全に貢献出来て良かったです。』


兵士:『そこで懸賞金に関しての取り決めなのですが、本当に全額御寄付頂いても宜しいのですか?こちらとしては、半額でも十分高価な寄付となるのですが。』


ザック:『こちらとしてはタダで奴隷を10人も頂いたので、それ以上を望むのは贅沢だと思っております。寄付は全額で構いませんので、代わりに漁船の船主を紹介しては頂けませんか?』


兵士:『分かりました。それでは商人ギルドに掛け合って、漁獲の多い漁船の船主を紹介しましょう。それではこちらに署名をお願いします。』


聞けば懸賞金額は30万ジルも有ったそうだ。


正直惜しい気もしたが、漁獲高の高い漁船の船主を紹介して貰えるのなら良い取引だろう。


今後週に何度も買い付けるなら、市場を通さず魚介類が買えるのなら安く仕入れる事が出来る。


ムーランだけで無くジーナの食堂やアーデンの市場に卸す事が出来れば、アーデンの人達の食生活がより豊かになる。


更にザックなら王宮に直接届ける事も出来るので、鮮度の良い魚介類をいつでも女王陛下に献上出来るのだ。



寄付の書類に署名したザック達は冒険者ギルドに向かった。



受付嬢:『おや、見ない顔だね?何処の所属だい?』


ザック:『アーデンギルド所属のチーム・アポストロです。旅の途中で結構討伐したので換金したいんですが・・・。』


受付嬢:『っ!!あ、アーデンのチーム・アポストロだって!?ちょ、ちょっと待っててくれ!』


受付穣は血相を変えて奥へ走って行った。


すると身なりのきちんとした女性が奥の部屋から出て来た。


エレノア:『チーム・アポストロの皆さん初めまして、ギルド長のエレノアです。わざわざこんな南方までようこそおいで下さいました。』


ザック:『初めまして、アーデン所属のザックです。実はちょっと買い付けで来ましてね、平原地帯で討伐した魔物の換金が今まで出来なかったので立ち寄らせて頂きました。』


エレノア:『そうでしたか、アーデンギルド長のカリンとは同じパーティーだったので、一度お話してみたかったのです。なんでも旅の途中で盗賊団を退治されたそうですが?』


ザック:『もうその話が広まってたんですね・・・。はい、先ほど兵士団事務所に行って来たところです。』


エレノア:『そうですか、うちのギルドでも皆さんの事は噂になっていましてね、中にはロードズ・ブレイブに会いにアーデンに行きたいという者までおります。まぁこっちの冒険者は海賊対策の警備任務とかがほとんどなので、うちにはゴールドランクが私だけなんですけどね。』


ザック:『宜しければ滞在中にまたお邪魔しますよ。俺で良ければ北の話をしますし。』


エレノア:『それは嬉しいですね!王都での話やアーデンでの話を皆にしてやって貰えると助かります。こちらでは娯楽も少ないので、旅人の土産話が何よりの娯楽になるもので。』


ザック:『分かりました。それではまた明日お邪魔します。』



換金が終わって冒険者ギルドを後にしたザック達は、その足で商人ギルドに向かった。



受付嬢:『いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?』


ザック:『兵士団事務所から船主への紹介要請が来てると思うんですけど。』


受付嬢:『え~と・・・ザック様ですね?はい、承っております。この通りを東に行くとランバルという船主の家がありますので、明日の昼前に伺ってみて下さい。』


ザック:『明日の昼前ですね?分かりました。』



一旦兵士団事務所まで戻り、モービィとトレーラーを預かって貰う事にした。


確かにトレーラーは結構広いが、たまには宿屋に泊まってゆっくり寝たいのだ。


ザック:『まずは宿屋だな。』


アン:『さすがは湊町、結構宿屋が多いわね?何処がいいかしら?』


女の子:『お兄さん達!宿屋探してんのかい?』


声をした方を見ると、市場の前から猫人種の女の子が此方に歩いて来た。


ザック:『そうだけど、良い宿を知ってるかのい?』


女の子:『えぇ、ムーンライトって宿なら料理も旨いし風呂付きだよ!船主が経営してるから料金も安いしね。』


すると後ろから別の声が聞こえた。


女の子2:『騙されちゃ駄目よ!その女はムーンライトの従業員なんだから!』


振り返ると人種の女の子が腕を組んで見ていた。


女の子:『ちょっとリズ!お客さん横取りする気?』


リズ:『何言ってんのよ!水路の末端の宿屋なんてまともにシャワーも使えないじゃない!』


女の子『リズの所だって板前に逃げられて満足な料理も出せないって言うじゃない!』


リズ『失礼ね!逃げられたんじゃ無いわよ!あまりにも好き勝手するからクビにしたのよ!ネロん所だって料理作ってんの漁師あがりの素人じゃない!』


ザック:『・・・行こっか。』


アン:『そうね・・・。』


ネロ:『待って!』


リズ:『待って下さい!』


ザック:『・・・アン、なんか似たような経験がある気がするんだけど。』


アン:『偶然ね、私もまったく同じ事を思い出した所よ。』




リース 酒場。


≪へっくし!!≫


リサ:『エミリア風邪?』


エミリア:『リサこそ・・・グスン』


アイラ:『誰か噂でもしてるのんじゃないの?』




女性:『おやめなさい!!』


通りの奥から現れたのは犬人種の女性だった。


女性:『貴女達は恥ずかしく無いの?御客様の前で小競り合いをするなんて!』


リズ:『ちっ!厄介なのが来たな・・・。』


ネロ:『もう!どうしていつもこのタイミングなのよぉ。』


パセラ:『見苦しい所を御見せしました。私はこの町の商人ギルドで宿屋の管轄をしているパセラと言います。旅の御一行とお見受けしましたが、宿屋をお探しですか?』


ザック『はい、2日~3日ほど滞在する予定なんですが・・・。』


パセラ:『ちなみにどちらの方から?』


アン:『アーデンから来ました。』


パセラ:『国内の方々でしたか、シェルバールへようこそ。宿屋を選ぶ上での条件などは御座いますか?』


アン:『そうねぇ、やっぱりお風呂は入りたいわよね。』


ローラ:『食事はどうします?』


メル:『料亭で食べれば良いんじゃないでしょうか?』


ザック:『後はベッドの状態が良い宿だよなぁ。』


パセラ:『なるほど、その条件ですと少しお値段が張りますが宜しいですか?』


ザック達は顔を見合わせて頷いた。


パセラ:『ではリストから条件に該当する宿屋にご案内させて頂きます。』


≪待って下さい!≫


ネロ:『ムーンライトも御希望に沿える宿屋だと思います!』


リズ:『モーニングスターもです!』


パセラは2人に向き直り言い放った。


パセラ:『貴女方の先ほどの言い争いが、御客様にどの様な印象を与えたとお思いですか!商人ギルドとしてあの様な客引き行為を容認する事は出来ませんし、双方の宿屋を御客様にお勧めする事は出来ません!』


2人は項垂れていた。



宿屋への道中、パセラが2人の事を話してくれた。


あの子達は幼馴染みで、親は同じ船の漁師だったそうだ。


彼女達が生まれた事で両家は船宿を始め、現在では宿屋に専念しているという。


しかし湊町で宿屋を営むには、それなりの信用が無ければ客は取れない。


そこで彼女達の親はお互いの宿屋を提携して、団体客を分散して宿泊出来る様にしたそうだ。


だがある時期からか互いの宿屋で客の取り合いをする様になってしまったらしい。


パセラ:『何か良い解決策が有ると良いんですが・・・。』


とパセラがぼやいていた。


アン:『あぁいうのは親だけの問題じゃ解決出来そうに無いわね。』


アンがもっともな事を言ったが、確かにその通りだ。


ザック:『パセラさん、彼女達の宿屋って互いに近いんですか?』


パセラ:『実はお向かいさんなんですよ。酷い時なんか道の真ん中で言い合いが始まるんです。ギルドとしても困っているんですけどね・・・あ、失礼しました、御客様には関係無い事でしたね。ついペラペラ話してしまいました。』


ザックはアンにこっそり話を持ち掛けた。


ザック:『アン、俺達で何とか出来ないかな?』


アン:『出来る事なら互いの宿屋の関係を何とかしてあげたいけど・・・ねぇ、2つの宿屋は提携してるのよね?』


ザック:『そうだけど、何か策でもあるのか?』


メル:『お二方は仲が悪いんですよね?』


ローラ:『なんか修羅場が想像出来るんですけど・・・。』


アン:『ジーナに頼んで両方の宿屋に料理指導して貰ったらどうかしら?美味しい料理が食べられるって噂になれば集客は見込めるんじゃない?』


ザック:『なるほどなぁ、でも同じレシピを教えたら逆に揉めないか?』


アン:『提携しているなら、どちらでも同じくらい美味しい料理が食べられなきゃ集客が片寄っちゃうでしょ?交代でメニューを変えられる様にすれば、固定客も着きやすいと思うの。』


ザック:『確かに、でもどうやって?』


アン:『そこはザックの転移魔法よ、屋敷の厨房に転移しちゃえば2人共逃げようが無いでしょ?』


ローラ:『あぁ、その手が有りましたね!』


メル:『確かにお屋敷なら・・・。』


ザック:『ってオイオイ、屋敷に連れて行くのかよ!』



などと言っていると、パセラが口を開いた。


パセラ:『あのぅ、何をこそこそしていらっしゃるのですか?』


ザック:『パセラさん、俺達を彼女達の宿屋に連れて行って下さい。』


パセラ:『え!?よ、宜しいのですか?』


ザック:『はい、もしかすると何とかなるかも知れませんので。』


こうしてザック達は彼女達の宿屋へ向かうのであった。


お読み頂き有り難う御座いました。

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