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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
23/77

第23話 女盗賊団と闇の奴隷商人と。

お読み頂き有り難う御座います。


仕事が多忙の為に少し間が空きましたが第23話です。

3人の冒険者達と別れてひたすら大陸を南下していたザック達は、ランドーという小さな町の手前で一夜を過ごした。


ザック達は朝食を終えると、今後のルートについて話合った。


ザック:『この先の町は道幅が狭いらしい。だからその手前から左にそれて、農村地帯を抜けようと思うんだけどどうかな?』


アン:『本当は町で買い出ししたかったけど仕方無いわねぇ。このトレーラーを引っ張って走るには狭過ぎるみたいだし。』


この先にあるランドーの町は馬車で通る事すら困難なほど道幅が狭いと3人の冒険者達から聞いていたのだ。


ローラ:『でも農村地帯を抜けるって事は、盗賊の出没エリアを通るって事ですよね?』


メル:『私達の技量なら盗賊を倒すのは難しくは有りません。しかし次の大きな町までは5時間は掛かりますから、早い段階で遭遇すると結構長い時間連れて行く事になりますね。』


ザック:『でもまぁ、その分資金も調達出来るってメリットもあるんだよなぁ・・・。』


アン:『ザックの言いたい事は解るけど、長時間連れて行くのはちょっとねぇ。適当に蹴散らして前に進む事を考えた方が良くない?』


ザック:『まぁ取り敢えず出会さない事を祈るしか無いな。』



出発してしばらく走ると町の手前にある分岐点に差し掛かった。


ザック:『ここを左だな。』


農村地帯を走っていると、村人達がこっちを指差して見ていた。


アン:『なんだかんだで結構目立ってるわね。』


ザック:『仕方無いだろ?この国にはモービィもトレーラーも無いんだから。』


幾つかの村を抜けると、前方から兵士団の騎馬隊がやって来た。



兵士:『貴様達は何者だ?珍しい物に乗っているが・・・。』


ザック:『俺達はアーデンギルド所属の冒険者です。』


そう言ってギルドカードを兵士に見せると、急に態度が改まった。


兵士:『なんと!?名誉騎士団のチームアポストロの一行でしたか!貴殿方のお噂は聞いております。それでどちらまで?』


ザック:『はい、ちょっと野暮用でシェルバールまで行く所なんですが、兵士団の皆さんは?』


兵士:『我々はこの界隈を騒がしている盗賊団を警戒しておりまして。』


ザック:『その盗賊団はこの辺りに出るんですか?』


兵士:『実は・・・。』


兵士の話によると、盗賊団は毎日主没場所を変えているらしい。


昨夜この農村地帯の先で襲われた旅人が居たそうだ。


毎日の様に旅人を襲う事から、兵士団も手を焼いているらしい。


ザック:『なぁアン、片付けておいた方が良く無いか?』


アン:『言うと思ったわ・・・でも兵士さんの言う内容から考えても、この後通る人達が標的になるのは目に見えてるわね。良いわ、やっちゃいましょ。』


トレーラーに乗っていたメルとローラも賛同してくれた。


兵士団と別れた後で遭遇すると厄介なので兵士2人をトレーラーに乗せて移動する事にした。



村を4つほど越えた辺りで街路樹が多い所に出た。


この先には非公認の村が2つほど有るそうで、盗賊団のアジトがあるという噂がたっているらしい。


アン:『狙って来るとしたらこの辺かしら?』


ザック:『可能性は高いな。道幅もそんなに広く無いし、こっちは図体がデカくて身動きが取りづらいから一番狙い易いだろうね。』



そんな話をしていた矢先、前方で数名の盗賊らしい者達が道を防いでいた。



モービィを停め、戦闘体制に入る。


女盗賊1『こりゃまた随分と珍しいもんに乗ってるじゃ無ぇか!』


女盗賊2『こりゃ結構高く売れるぜ!』



盗賊団は10人で歩み寄って来る。


良く見ると全員若い女性の盗賊団だった。



ザック:『全員女か・・・ちょっと厄介だな。』


アンがニヤリとしながら何か閃いた様に言って来た。


アン:『ねぇザック、殺すのが忍びないなら全員の脚を狙える?』


ザック:(なるほど、全員生け捕りにしようって事か。でも大丈夫かなぁ・・・。)


ザック:『結構無茶な注文だが・・・やってみるか。』


アン:『そう来なくっちゃ♪』


ザックは銃を抜き次々に盗賊団の脚を撃ち抜いて行く。


アンは弓で盗賊団の腕を狙い打ちにしていた。


後方からローラが火炎魔法で盗賊団を足止めしている隙にメルが側面から回り込んで木剣で残りの盗賊達をなぎ倒して行った。


結果、盗賊10人の内6人が脚と腕をやられ、残りの4人がメルによって気絶させられた。



ザック:『こんなもんかな?メル!お疲れ様!』


全員を縛り上げた後で回復魔法を掛けてやり、トレーラーの中に放り込んだ。


中では兵士達が取り調べをしている。


ザック達は暫し外で休憩をしていると、騎馬隊の先発隊が追い付いて来た。


他の盗賊団はやはり近くの村に住んでいる様で、兵士団の一部はその村に急行した。


捕らえられた盗賊団は全員奴隷に落とされるらしい。



盗賊団のリーダー各がザックに話があるらしいと兵士に言われたので面会する事にした。



ザック:『何の用だ?』


クラン:『私はこの盗賊団のリーダーのクランだ。こんな事を言うのは虫が良いのは重々承知なのだが、私の頼みを聞いては貰えないだろうか。』


ザック:『頼み?襲われた俺達がなぜ盗賊の頼みを聞かなきゃならないんだ?』


クラン:『私達はこのままだと奴隷に落とされてしまう。恐らく元盗賊の奴隷なんて性奴隷か、悪党に買われてこき使われるのが落ちだ。なら私達はあんたの元に仕えたいと思ってね。』


ザック:『随分と調子の良い話だな。俺が盗賊団を囲って何の徳があるんだ?しかも10人もだ。俺がお前がさっき言った様な事をしないという保証も無いだろ?それにこんだけの人数を食わせる俺の身にもなってみろよ?』


クラン:『あんた達は名誉騎士団のパーティーなんだろ?そんなパーティーのリーダーがそんな事をする筈が無い。それに私達があんたの奴隷になる事で、あんたにとっての有益な情報だって仕入れる事が出来る筈だ。私達は裏社会に精通している。これはあんたにとっても良い利益になるんじゃないのか?』


ザック:『つまり俺と取引がしたいって事か?随分とナメられたもんだな。俺としては面倒事は避けたいんだ。だいたいお前達全員を奴隷にした所で、俺達が得たい情報が手に入るとも思えない。』


クラン:『私達の情報網は馬鹿に出来無いぞ?伝を使えば異国の情報だって手に入る。何ならあんた個人の隠密部隊になっても良い。今ならタダで奴隷が10人も手に入る。しかもうちの連中は割りと外見も良いし全員処女だ。悪くは無い話だろ?』


ザック:『なるほどな。しかしその口調は何とかならないのか?これから奴隷になろうって奴が、主になって貰えるかも知れない奴に対してあんまりな口振りじゃ無いか?それに悪いが俺は自分の奴隷に危険な事や性的奉仕をさせる様な男じゃ無い。うちには奴隷が5人居るが、それぞれ比較的自由に暮らしてるんだ。』


クラン:『本当か!?奴隷だぞ?男が複数の奴隷を囲うなら、やることは1つじゃないのか!?』


ザック:『おいコラ!人を色魔みたいに言うな!(そうしたい願望が無い訳じゃ無いけど。)俺には恋人も居るし、自分が生きる上で必要な人材を奴隷商から買って側に置いてはいるが、1人の人として家族として扱っているつもりだ。』


クラン:『そんな夢みたいな話が信じられると思うか?奴隷が人並みの生活なんて出来るものか!』


ローラ:『それは本当です!』


トレーラーの外で話を聞いていたローラが中に入って来た。


ローラ:『私はこの御方に奴隷として買われてパーティーに入りました。王都での事件を解決した際に、陛下からパーティー全員へ最高位勲章を賜った事でザック様は私を解放して下さいました。解放された今でもこうしてザック様の元に居るのは、ザック様が身分に関係無く接して下さったり他の方々と同等に扱って下さるからです。自分の望む仕事をさせて下るし、自由も与えて下さる。ザック様はそういう御方です。』


クラン:『そんな、そんな夢の様な・・・。』


ローラ:『ザック様、この者に屋敷を見せては如何でしょう?』


ザック:『おいローラ、まだ奴隷にするって決めた訳じゃ無いんだぞ?』


ローラは真剣な目でザックに言った。


ローラ:『ザック様、この者にも違った生き方がある事を見せてあげて欲しいんです。奴隷の身に落ちた私や他の方々がこんな生き方も出来るという事を。』


ザックはローラに微笑んで頭を撫でた。


ザック:『解ったよ。この子にうちを見せてやろう。』



ザックは転移魔法を使いクランを屋敷に連れて行った。



クラン『こ、ここは!?』


ザック:『ここはアーデンにある俺の屋敷だ。転移魔法で連れて来た。』


屋敷からサリーとフェルテが出て来た。


サリー:『ザック様、どうかされたのですか?』


ザック:『ちょっとこの子が屋敷の様子を見たいっていうので連れて来たんだ。』


サリー:『初めまして、私は執事のサリーです。此方はメイドのフェルテです。』


クラン:『ど、どうも・・・。』


ザック:『この2人も奴隷だ。』


クラン:『えっ!?・・・。』


ザック:『あそこで建築の指揮をしているのも、あの小屋から出て来た料理人もだ。どうだ?みんな奴隷には見えないだろ?』


クラン:『・・・こんな・・・こんな事って・・・。』


ザック:『・・・それじゃあ戻ろう。』



再び転移魔法でトレーラーに戻った。


ザック:『どうだ?みんな生き生きしてただろ?』


クラン:『・・・。』


ザック:『あれが奴隷だなんて正直言われなきゃ分からないと思う。今では俺の大切な家族として暮らしてるよ。あの執事とメイドと料理人の3人は元々低俗落ちになる寸前で俺の所に来たんだ。だがお前達は人々を襲って金品を奪っていた犯罪者だ。さすがに【はいそうですか】って感じでお前達を囲う事は出来無い。』


クラン:『・・・。』


ザック:『罪を何度も犯して来たなら、それ相応の償いをしなければな。』


クラン:『もし・・・私が1人で罪を償うと言ったら、仲間達だけでも貰ってはくれないだろうか?あの子達はシェルバールの貧民街の出身で、人並みの生活というものに縁が無かったんだ。あんたが凄い人だってのは十分分かったよ。だから!だからせめてあの子達だけでも!』


ザック:『・・・何か事情がある様だな。話を聞こうか。』


この盗賊団は元々貧民街の少女達で結成されたらしい。


貧民街の少女達は、船乗りや海賊などに拐われて売られたり、強制的に奴隷にされたりする事が多いそうだ。


彼女達は自分の身を守る事と、生活の為に已む無く盗賊団として生計を起てていた様だ。


ザック:『・・・話は解った。少し時間をくれないか?』


ザックはトレーラーから出ると兵士と話をし、アン達に相談を持ち掛けた。


今回狙われたのはザック達であり、他の旅人への被害に関しては不明なままだが、彼女達の境遇や生活環境における今までの不当な扱いを考慮して、彼女達の身柄はザックに預けられる事となった。


しかし罪人としての罪が消えた訳では無く奴隷処分は確定となるが、アーデンの商人ギルドと奴隷商の承認を得られれば自動的にザックの所有物となる。


その代わり懸賞金の受け取りを放棄して兵士団に寄付するという話で折り合いを着けたのだ。


ザック:『という訳で、彼女達を俺の管理下に置いて、働かせようと思うんだけど・・・どうかな?』


アン:『そんな話聞いちゃったら反対出来るはず無いでしょ?』


メル:『それにしても10人もですか・・・。』


ローラ:『ジーナさんの食堂を手伝わせてはどうですかね?』


ザック:『なるほどなぁ。ローラ、ナイスアイデアだ、早速商人ギルドと奴隷商に相談してみるか。』


兵士団に話が纏まった事を伝え、ザックは盗賊団の一行を連れてアーデンに転移した。


商人ギルドで事情を説明するとレイティアは快く承諾してくれた。


奴隷商に書類を見せて彼女達に奴隷紋を入れて貰う。


そのまま屋敷へ戻り、サリーとジーナに彼女達を任せる事にして、ザックはアン達の所に戻った。


ザック:『お待たせ!出発しようか。』


兵士団は既に出発した後だったが、シェルバールの兵士団事務所に顔を出す様に言っていたそうだ。



ザック達はその後幾つかの町や村を抜けると遺跡の様な所に着いた。


ザック:『これって神殿か?』


メルが書いてある古代文字らしい物を見ると頷いた。


メル:『間違いありません、これは神殿騎士団が守っていた神殿の一つです。』


アン:『こんなにボロボロになってるなんて、遺跡荒らしにでもやられたのかしら?』


アンの言う通り、遺跡はあちこち朽ちて崩壊寸前だった。


ザック:『メル、もしかして調べたい事があるんじゃないのか?』


ザック:『えぇ、ですがシェルバールまでまだ1日掛かりますし、帰りでも良いですよ?』


ザック『問題無いよ、今日はここに泊まるとしよう。メルは中を調べて来たらどうだ?』


メル:『有り難う御座います。それでは少し探索して来ます。』


ザック:『ローラ、念の為に一緒に行ってくれ。』


ローラ:『はい!ではメルさん参りましょうか。』



アン:『しかし大きな神殿ね?場所に不釣り合いな気がするんだけど?』


ザック:『アン、あれを見てみろよ。』


ザックが神殿の先を指差すと、そこにはかつて大きな町だった様な痕跡が幾つもあった。


此処はかつてシェルバールに次ぐほどの大きな町が有った様だ。


アン:『何で滅んじゃったのかしら?』


ザック:『過去にはこの国でも内戦が結構有ったって女王陛下が言ってたからなぁ。もしかすると、大陸の南方が独立しようとしてたんじゃないかな?』


アン:『言われてみれば何処にも王国の紋章が無いわね。神殿や教会には必ず何処かしらに紋章があるはずなのに・・・。』



メル:『ザック様!!ちょっと此方へ!!』


メルの声にザックとアンは走って神殿内に入った。


するとそこには奴隷の首輪をつけられた若い女性が5人も縛られていた。


ザック:『これは・・・。』


アン:『あの事件はまだ終わって無かったのね・・・。』


1人1人首輪を外して縄をほどくと皆泣き出した。


ザック:『もう大丈夫だよ。ねぇ君達、拐って来た奴等の顔は分かるかい?』


女の子:『分かりません、皆フウドを被されて居たので・・・私達は北方大陸から船で運ばれて来たのです。他にも3人居たのですが、連れて行かれて・・・。』


ザック:『もしかして君達は帝国の出身かな?何か力になれるかも知れない、拐われた時の状況とかを話してくれないか?』


彼女達は帝国の城下町に暮らす商人の娘達だった。


王都の事件同様、町を歩いていた所を突然襲われたそうだ。


アン:『なんか王都での話と酷似してるわね。もしかして闇の奴隷商人の残党が帝国に逃れて活動してるのかしら?』


ザック:『可能性は有るけどな・・・アン、この子達に温かい飲み物と食事を出してやってくれ。俺はモービィで手前にあった町の兵士団事務所に行って来る。』


アン:『うん、気をつけてね。』


ザックはトレーラーからモービィを切り離し、その足で兵士団事務所に走った。


話を聞いた兵士達もかなり驚いた様子だった。


一通りの説明をした後、隊長をモービィに乗せて神殿に急いだ。


他の兵士達は毛布と食べ物を積んだ馬車で後から来るそうだ。


兵士団長:『こ、これはいったい・・・。』


ザック:『団長さん、これがこの子達につけられていた奴隷の首輪です。』


兵士団長:『まさか北方大陸にまで闇の奴隷商人が暗躍していようとは・・・。ザック殿、この子達の身元が分かり次第、直ぐにでも帝国に問い合わせましょう。』


ザック:『宜しくお願いします。』


しばらくすると他の兵士が到着し、彼女達は手厚く保護された。



その後トレーラーを展開して宿泊の準備をした。


ザック:『ちょっと王宮に行って来る。』


アン:『あの子達の事を話すのね?』


ザック:『あぁ、恐らくこのままでは済まない気がするからな。情報を教えて帝国に使者を送って貰える様に頼んでみるよ。』



ザックは王宮に転移して女王と面会した。


事の経緯と事情を説明すると女王は顔を曇らせた。


ベルクレア:『異国の民を救って下さった事に感謝を申し上げます。闇の奴隷商人に関して、ロンゼウムの配下だった者から少しきな臭い話を聞いてのう・・・。』


女王はロンゼウムの配下だったバルーゼン男爵から聞いた事を話し出した。


闇の奴隷商人は元々帝国に暗躍していた闇の組織だったそうだ。


その裏ではかなりの実力者が指揮をしているとの事で、帝国皇室もなかなか手を出せずにいるらしい。


帝国における階級制度には一定以上の実力者への特権があるそうで、皇帝自身における権限を行使するには貴族の他に実力者からの支持が得られなければ、単独での行使が出来無いらしい。


ザック:『そうなると、第三国である王国からも手を出せないという事なんですね・・・。』


ベルクレア:『まてよ?・・・よもやザック様なら・・・。』


ザック:『・・・陛下、何かお企みになられてはおられませんよね?』


ベルクレア:『ん?いや、この状況を神様が見ておられたら何とするかと思いましてな。』


ザック:(この人神様を焚き付けようとしてないか?)


ザック:『取り敢えず救出した彼女達が安全に帰れる様に、帝国に特使を送って頂けませんか?此方の国が送り届ける方法も有りますが、あの一連の事件を解決した王国側から特使を送る事で、帝国側が重い腰を上げてくれるかも知れませんので。』


ベルクレア:『良かろう。早速特使を送り、助けられた者達に兵士団に迎えを出させましょう。』



一通りの話が着いてトレーラーに戻ると、アン達は既に北方大陸に行く覚悟を決めていた様だった。


アン:『ねぇザック、私達はこれからどうするの?』


ザック:『う~ん、神託が出たら行く事になるとは思うけど、幾つか問題もあるんだよ。』


メル:『どんな問題ですか?』


ザック:『俺達は王国の民だろ?帝国に行くと冒険者としての権利は行使出来るけど、それ以上の事は出来無い。偵察活動や身分制度を害した活動をすれば確実に逮捕監禁されるかも知れないんだ。』


ローラ:『つまり活動が制限される訳ですね。』


ザック:『それだけじゃ無い。俺達の素性がバレると普通の冒険者としての活動そのものが制限されかねないんだ。』


アン:『そっかぁ、私達って名誉騎士団だから王国政府の息が掛かった人間だと思われるかも知れないって事か・・・。』


ザック:『それと帝国には人種格差がかなり酷いってのが一番の懸念かな・・・向こうでは亜人種の人権すら無いらしいからな・・・。』


以前リアスから帝国の人種格差の話は聞いていた。


帝国では人種優位権という法律まで存在するほど、亜人種に対しての差別を合法化されている。


世界での人種の人口はおよそ45%でそのうち男性が3割ほど。


かつては男性の比率の方がが高く、結婚出来無い男も多かったとか。


現在では人種の人口が減っており、更に男性の出産率が著しく減っている事から、このレデンティア王国同様に女性君主が増えているそうだ。


帝国ではこの問題だけで無く、文化や国家を育んで来た人種の尊厳を守る意味でこの法律が作られた。


特に亜人種による富裕層が増えると、人種の貴族や実力者への影響力が強くなる事を懸念して、亜人種の人権その物を無くしたらしい。


アン:『私達の事は気にしなくても良いわ、人種格差なんてどの国でもある事なんだし。私はザックの側に居られれば、どんな仕打ちにだって耐えられるわよ。』


メル:『そうです!私も今まで不当な扱いを何度も受けましたが、自分の価値や尊厳を決めるのは自分自身なんです。それに我々にはザック様が居ます。私はザック様の従者として、自分の役割を果たすのみです!』


ローラ:『御二人共凄いですねぇ。私は人種ですけど、奴隷に落ちてからは人種による格差とか考えられませんでしたし、ザック様に買って頂いてからはむしろ人種の事なんて気にした事もありませんでしたよ。』


ザック:(守らなくちゃ・・・絶対彼女達を守らなくちゃな。)


ザック:『分かったよ。この先どんな仕打ちを受けるか分からない、もし帝国に行く事になったらみんなには辛い思いをさせるかも知れないけど、俺を信じて付いて来てくれ。』



方針が決まったところで屋敷に転移してジーナから夕食を貰う。


ザック:『預けた盗賊団の子達は?』


ジーナ:『はい、サリー様から一通りの説明と指導をされた後に、私の元に3名とフェルテさんに3名、あとノエルさんとサリー様に2名づつ配属になりました。あのクランさんって方はサリー様に付いておられます。』


ザック:『そうか、食堂が出来たらその3人を料理人として鍛えてやれるか?』


ジーナ:『えぇ、丁度盗賊団で賄いを作ってた3人だったので飲み込みは早いですよ?味付けに関してはこれから指導していきますし、皆さんとてもヤル気があるので鍛え概があります。』


ザック:『そうか、なら安心だな。もう暫く屋敷を空けるけど後の事は頼んだよ。』


ジーナ:『はい、それでは御ゆっくり御召し上がり下さい。』


トレーラーに転移すると、既にテーブルの仕度は出来ていた。


相変わらず美味しいジーナの料理に舌鼓を打ちながら、屋敷の方の話をみんなにする。


アンはクラン達がサリーに洗脳されるのを心配していた。


ついさっきまで盗賊団をやっていた女の子達が、今では執事にメイドに料理人だ。


帰るまでに慣れていてくれると良いのだが・・・。



お読み頂き有り難う御座いました。

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