第21話 ホームパーティーと女王と。
お読み頂き有り難う御座います。
第21話です。
いよいよホームパーティー当日、屋敷では料理の準備に追われている。
キッチンではジーナとフェルテとノエルが分担して料理をし、ザックがお菓子と飲み物の支度をする。
アンとメルにはテーブルクロスや花などの準備をしてもらい、ローラとサリーで食器類を並べて貰う。
リアスにはトレーラーの展開とモービィの点検をして貰う。
女王陛下が乗りたいと言いかねないので、念の為だ。
リアスの点検が終わり、着替えてザックを手伝う。
ザック:『これでいつ来ても大丈夫だな。それじゃあ俺はクイーンズ・エレメントを迎えに行って来るよ。』
リアス:『分かりました。此方の事はお任せを。』
王都のギルドに転移してクイーンズ・エレメント全員を屋敷に転移する。
続いてリーンのギルドに転移してリサ・エミリア・アイラの3人を転移する。
庭にはすでにゴールドランクの3人とワルデンナイツのメンバー、ムーランの2人、商人ギルドの2人、奴隷商のセデスも来ていた。
シルビアはシフトが終わり次第来るそうだ。
王宮に転移すると女王陛下とシンクレア王女、お目付け役として近衛大臣も同行する事になった。
屋敷に転移すると他の御客様は全員揃っていた。
シンクレア王女をローラがエスコートし、料理の席へ案内すると騎士団長が固まった。
ザック:『本日は御忍びですので、お気になさらず。』
と言うと、少しは緊張がほぐれた様だ。
女王陛下にモービィとトレーラーを見せると大はしゃぎだった。
ベルクレア:『ザック殿!ザック殿!これは直ぐにでも帝国に輸入の交渉をせねばなりません!』
ザック:『これは特別製みたいなので、通常のモービィはもっと性能は低いらしいですがね。』
そんな話をしていると、ゴールドランクの3人も此方に来た。
カリン:『ザックさん、これ凄いですね!え~と、此方の方はどなた様ですか?』
カインに耳打ちすると、3人は目を見開き、その後小声で陛下に挨拶していた。
クイーンズ・エレメントの面々も陛下に挨拶を交わし、御忍びという事で無礼講として接する様に御願いした。
飲み物を取りに行くとフランシアに話し掛けられた。
フランシア:『ザック殿、本日は御招待有り難う御座います。所で彼方に居るパーティーはどちらの?』
ザック:『うちと同じく名誉騎士団になったクイーンズ・エレメントっていう王都のギルドパーティーだよ。』
フランシア:『そうでしたか。見覚えの無い方々がいらっしゃると結構緊張するものですね。』
ザック:『良かったら紹介するよ。行こう。』
ワルデンナイツのメンバーをクイーンズ・エレメントに紹介した。
ザック:『シーラ、此方は旅の間屋敷を警備してくれていたワルデンナイツのリーダーのフランシアだ。』
シーラ:『そうでしたか、今回途中から旅に同行したクイーンズ・エレメントのシーラです。エルザ!』
エルザ:『どうしたシーラ。』
シーラ:『此方はアーデンギルド所属のワルデンナイツのリーダー、フランシアさんだ。』
エルザ:『エルザです宜しくお願いします。』
フランシア:『フランシアです。うちのパーティーはチーム・アポストロの親衛隊をさせて頂いてます。』
という挨拶をした後、両パーティーは親睦を深めていた。
≪ザック様!≫
リースの3人が寄って来た。
ザック:『お前らも楽しんでるか?』
リサ:『はい、しかし凄い御屋敷ですね!』
エミリア:『料理がとても美味しいです!』
アイラ:『私までこんな所にお呼ばれして、本当に良かったんですかね?』
ザック:『良いに決まってるだろ?せっかく頑張って準備したんだから楽しんでくれよ。』
ダイソンはジーナの料理をとても誉めていた。
屋敷の中から出て来たジーナをダイソンが呼び止めては調理法を聞いていた。
メリアはそんなダイソンの傍らでニコニコ笑っている。
騎士団長と兵士団長は女王陛下や近衛大臣と話をしている。
サリアとレイティアは奴隷商のセデスと何やら難しい話をしている様だ。
シンクレア王女はローラとトレーラーに夢中になっている。
こういうホームパーティーは一定の時間を過ぎると静かになる事がある。
話し疲れて身近な人と静かに飲んだり、食事ををし始めるのだ。
そのタイミングを使って、大衆浴場を作る話を発表した。
食堂に関しても話せる範囲で発表した。
アーデンの住民とリーンの3人は大喜びしていた。
敷地の一部を使って行う事もあり、商人ギルドの2人も賛同してくれた。
その時突然女王陛下が全員の前で身分を明かし、称賛を贈ってくれたのだが、正体を知らなかった人達はその場に平伏してしまった。
せっかく御忍びという事にしたのに台無しにされてしまったのだ。
その後何とかザックがその場を修め、全員に今日の事を口止めした。
ザック:『ふぅ、勘弁して下さいよもう。』
ベルクレア:『申し訳御座いません、ご迷惑をおかけしました。』
ザック:『まぁ、皆さんが理解ある方々で助かりましたけど、あまり無茶しないで下さいよ?』
ベルクレア:『ザック殿の素晴らしい計画を聞いてつい気分が高揚してしまいまして・・・。』
近衛大臣:『私が付いていながら、全くもって申し訳無い。』
ザック:『いや、あれは大臣さんがどうこう出来る状況ではありませんでしたよ。』
シルビアが仕事を終えて合流した。
シルビア:『ザックさん、御招待有り難う御座います。此方の方々は・・・?』
ザック:『シルビアさん、冷静にお願いしますね?此方の方は・・・。』
小声で説明して皆も知っている事を伝えると、深々と御辞儀をした。
シルビア:『ざ、ざ、ザックさん?な、何故陛下が!?』
ザック:『このホームパーティーの事が後からバレて、何故呼ばなかったと責められたく無かったんですよ・・・。』
シルビア:『ザックさんてそんなに王宮に精通していらっしゃったんですか!?』
ザック:『一応名誉騎士団ですし、彼方に居る王都のパーティーも名誉騎士団なもんで、バレる可能性は高いでしょ?』
シルビア:『あ・・・確かに・・・。』
ザック:『かと言って大っぴらに女王陛下を招待したとも公表できませんしね・・・。』
シルビア:『そういう事だったんですねぇ。』
どうやらシルビアも納得した様だ。
女王の来場が明らかになってもパーティー自体は盛り上がった。
ふと入り口を見ると騎士団が数人来ていた。
騎士団長に訪ねると女王陛下が来ている以上は最低限の警備を付けねばならないとの回答だった。
まぁ当然と言えば当然な話だ。
しかし女王陛下が来場した事で、王宮との距離感を感じていたアーデンの住民が少し身近に感じた事は、女王や大臣としても喜ばしい事の様だ。
先代国王の時代は王家と国民との距離が近かったそうだが、現女王になってからは各地との交流が疎遠になっていたという。
これは貴族による領民への粛清による王家への不振や貴族の領地への王家の干渉を極力避けた結果らしいが、近年の貴族縮小化はこの事を危惧しての事らしい。
実際今この場で女王が寛いで居る姿に皆が笑顔で見守っているのだ。
これは王家や国民にとっても良い事だろう。
使用人達が一段落して庭に出て来た。
来客の前で使用人達を並ばせ、今日の功労者として皆に紹介した。
来客者達は使用人達に喝采を送ってくれた。
中でも料理を担当したジーナとフェルテに対しての拍手は特に大きく、女王陛下からもその料理の腕前を誉められた。
実際今日の料理を食べた来客達は誰もがその味を絶賛していたのだ。
使用人達全員がザックの奴隷である事を知らなかった者達は、その事を知ると大変驚いていた。
アン達も手が空いて此方にやって来た。
改めて来客にパーティーメンバーの紹介をする。
思えばアンとのコンビから始まり、今では4人のパーティーとなった。
これまでたった2ヶ月足らずで色々有ったなぁと想いに耽っていると、アン達がお酒を持って来た。
アン:『たまにはどう?』
ザック:『そうだな、一緒に飲もうか。』
アン:『ねぇ、いっぱい来てくれたね。』
メル:『本当ですねぇ。』
ローラ:『こんなホームパーティーなんて初めてです。』
ザック:『やって良かったな。』
サリー達がこっちにやって来た。
パーティーというのはある程度の時間が過ぎると、もてなしの必要が無くなる事がある。
主宰が居なくても参加者で勝手に盛り上がるのだ。
今回の場合はアーデンのゴールドランク3人による手合わせ指導だ。
特にユンシャとエリオラがノリノリでやっている。
すでにリースの3人はのされていた。
だが、終わり際になるにつれ、みんな静かになっていく。
それはその場に飽きるのでは無く、満足感に浸ってしまうのだ。
ザック達にはもう一仕事残っている。
今回のパーティーの思い出となるお土産を渡すのだ。
今回ザック達が用意したのは、ジーナ特製のシフォンケーキである。
以前ジーナが作った物を更に進化させたのだ。
そこにはメッセージも添えてある。
全員に渡し終わると、遠方の招待客を転移魔法で送り届け、アーデン在住の者はそのまま帰って行った。
食器類を片付けると、庭の篝火を消した。
パーティーの後の静寂が屋敷を包む。
大量の洗い物が残っているが、それらは明日にしてプレイルームで寛ぐ事にした。
ザック:『今日はみんな本当にお疲れ様。』
アン:『今日は女王陛下に振り回されっぱなしだった気がするわ。』
メル:『そうですねぇ。突然正体を明かした時は本当にどうしようかと思いました。』
ローラ:『シンクレア様も少し退いてましたね・・・。でも無事に終わって良かったです。』
まったくだ。
これだけのメンバーが一同に会して無事に終わったのだ。
それこそが一番のご褒美だ。
余談では有るが、王国にモービィを普及させたいが為に、女王陛下は後日帝国に使者を送ったそうだ。
お読み頂き有り難う御座いました。




