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神の使徒になりました。  作者: KEMURINEKO
第2章 領主そして建国。
18/77

第18話 ギルド騒動とモービィと。

お読み頂き有り難う誤差います。


第18話です。

女性の声:『・・・有り難う。』


ザック:『え?』


女性の声:『救ってくれて有り難う。』


ザック:『君は・・・。』


女性の声:『貴方に託します・・・。』


ザック:『何を?・・・。』


女性の声:『私の総てを・・・。』


ザック:『君はいったい・・・。』


女性の声:『私の名は・・・。』


・・・。


(夢を見た。金色の世界・・・金色に輝く少女。)


ザック:『彼女はいったい・・・。』


アン:『ザック、起きてる?』


アンが部屋に入って来た。


アン:『なんだ、起きてるじゃん。どうしたの?呆けちゃって。』


ザック:『・・・何でもない、おはようアン。』



王都から帰って3日ほど経った。


あれほど賑わっていた町も落ち着き、普段と変わらないアーデンに戻っている。


唯一変わった事が有るとすれば、中央広場の一角に騎士局と兵士局の総合局が建設されている事だ。


今までは兵士団の兵舎だけだったが、女王陛下の計らいでこの町にも王国騎士が駐在する事になったのだ。


サリー:『ザック様、おはようございます。』


ザック:『おはようサリー。』



ザックの屋敷は以前と変わらず、朝はジーナ以外の6人がリビングで寛ぐのが日課になっている。


フェルテ:『そろそろジーナを手伝いに行きますね。』


ローラも立とうとしたらサリーに止められた。


サリー:『ローラさん、貴方はもう奴隷では無いでしょ?』


ローラ:『サリーさん、私が手伝いたいだけですから。』


そう言ってローラはキッチンへ向かった。


ザック:『サリー、ローラは生活を変えるつもりは無いみたいだから、あの子が自分でやりたいと言うならやらせてあげてくれ。』


サリー:『分かりました。あの子、今回の旅で少し大人になった気がしますね。』


アン:『盗賊や刺客とやりあったり、女王陛下と謁見したりしたものね。そう言えばローラがシンクレア王女と何か色々お話してたみたいだけど、ザックは知ってる?』


ザック:『俺もはっきりとは聞いて無いけど、何かヒソヒソ話してたな?まぁシンクレア王女とローラは同い年だから、御互いに感じる所もあったんだろ?』


メル:『あの子は物怖じしない性格の子ですからね。昨日も騎士の方と話をされていましたし。』


ザック:『ローラのそういう所は色々な知識を吸収するのには良い事だよ。旅では少し気を付けた方が良いかも知れないけどね。』


朝食が出来たそうなので食堂に向かうと、ジーナお手製の素晴らしい料理が並ぶ。


留守中にワルデンナイツのメンバーにも振る舞われたジーナの料理だが、ワルデンナイツのメンバー達は屋敷を離れるのを惜しむ程ジーナの料理が気に入ったらしい。



食後にリビングで寛いでいると、フェルテとジーナが洗い物を終えてやって来た。


ザックが戸棚から2人分のカップとソフトクッキーを出すと、サリーが紅茶の用意をする。


フェルテとジーナに対しての食後のご褒美タイムだ。


ザック:『そう言えば、みんなって戦闘スキルとかあるの?』


ジーナ:『あれ?言ってませんでしたっけ?私とフェルテさんの二人は元々シルバー並みの戦闘スキルを持ってます。サリー様は王都の騎士局で剣術や対人戦術を学ばれているはずですよ?』


ジーナはさも当たり前の様に話した。


ザック:『へぇ、知らなかったよ。みんな結構強いんだね?』


サリー:『本来執事は主様を守る仕事でもありますしね。ですがワルデンナイツの皆様にこの事を言って御断りするのもなんでしたし・・・。』


サリーが苦笑いをしながら言って来た。


ザック:『そういう事なら、後でみんなの腕前を見てやろう。今後どんな形で襲われるかも分からないしな。』



今日は他のパーティーメンバーは自分の好きな様に過ごす事になっている。


このティータイムが終われば、使用人達も今日はお休みだ。


今回の旅でかなりの額のお金が手に入ったので、使用人達には臨時で給金を渡してある。


ザックは久しぶりに一人で町を歩いた。


この町に来てからはいつもは必ず誰かと行動していたから、一人で歩くのは妙に慣れない。


商人ギルドの前を通り掛かるとサリアが声を掛けて来た。


サリア:『ザックさん、今日はお一人ですか?』


ザック:『うん、たまにはみんな自分の時間を作ろうって事になってね。サリアは仕事?』


サリア:『私は来月から神殿に入るので、その準備をしてました。』


ザック:『とうとう神職に進むんだ?それでギルドは辞めるんだよね?』


サリア:『はい、町の外れにある神殿で働く事になるので。シスターと神官様にはもうお話をしてあります。』


ザック:『じゃあこれから色々大変だね。何か困った事が有ったら言ってね。』


サリア:『はい、そうだザックさん、もし御時間が宜しければ神殿に行きませんか?』


ザック:『うん、一度行ってみたかったんだ。行こうよ。』



こうしてザックとサリアは東門を抜け、アーデン神殿へ向かった。



東門から延びる街道は山脈地帯を抜けてルゾフという小さな町に繋がっている。


その先には平原と農村地帯が続き、エトルという町からアンの住んでたエルフ属の森を抜けて【湖の都セレンティー】へと繋がる。


神殿は東門から林を抜けた丘の上に建っていた。


ザック:『此処が神殿かぁ、結構大きな建物だね?』


サリア:『ここからだとアーデンが一望できるんですよ。』


ザック:『本当だ。結構登って来たもんなぁ。』



神官:『おや、お客様ですかな?』


サリア:『神官様、今度こちらで御世話になるサリアです。』


神官:『おや、そうでしたか。そちらの方はもしや・・・。』


ザック:『アーデンギルドの冒険者、ザックと申します。』


神官:『・・・そなたが・・・失礼を承知で伺いますが、もしや洗礼をお受けになってはおられませんかな?何やら神聖な力を強く感じますが・・・。』


ザック:(この神官すげぇな・・・。)


ザック:『私は先日王都に赴きましたので、そのせいでは無いかと・・・。』


神官:『ほう、左様でしたか。王都には女神クレア様の加護がありますゆえな。』

(この御方の桁違いに強い神力・・・恐らくは使徒様・・・確かこの方は王宮での事件を解決されたという・・・。)


サリア:『ザックさんはまだ神殿に来られた事が無いそうなのでお連れしたんです。』


神官:『そうでしたか、どうぞゆっくり御覧になって下さい。』


ザック:(あの神官・・・多分俺が使徒だと気付いてるな。普通の人には感じないと思うけど、恐らく俺からは神の力が出ているはずだ。一応メルの事だけでも話しておくべきかな?いや、ここは普通に接しておこう。)


ザック:『綺麗な神殿ですね。何年位前に建てられたんですかね?』


神官:『この神殿はおよそ700年前に建てられたと言われております。世界の管理者である最高神様と南西大陸を司る女神クレア様が、この地に祝福されたという伝承があるのです。王都の神殿は此処よりも新しい時代に作られたと言われております。一度魔王によって文明が滅びた時も、このアーデンの地には人が住んでいたと言われております。』


ザック:(俺が世界神様に転生して貰ったのもアーデンだ。確かに祝福を受けた土地なんだろうな。でもアーデンってランスからの入植者が作った町だった様な?)


アーデンの町はランスからの入植者が作った事に間違いは無い。


実はこの町が出来たのは、この神殿から見下ろせる場所だったからだ。


元々アーデンは小さな村だった。神殿騎士がこの神殿を知り、話を広めた事によりランスからの入植者が集まった事がアーデンを大きな町にした理由だという。


ザック:『なるほど、歴史ある神殿なんですね。』


神官:『それでは、どうぞ御自由に御覧になって下さい。』


サリア:『神官様、ザックさんを気に入られたみたいですね。』



しばらく神殿を見学して町に戻るとサリアと別れてギルドに行った。


考えてみれば、この町に来てから一度も酒場に顔を出した事が無い。


酒場に入ると客達がどよめいた。


ザック:『何か軽い飲み物有るかい?』


ルーチェ:『こりゃあスゲェ、【ロードズ・ブレイヴ】が来てくれるとは嬉しいわねぇ!軽い奴だね?今持って来るわ。』


『ザック様!?本当にザック様なの!?』


『本当だ!?ロードズ・ブレイヴだ!』


みんな口々にザックの話をしている。


(自分の所属しているギルドの酒場だ。あれこれ言われるのは有名税って事にしよう。)


『あ、ロードズ・ブレイヴがいる。』


見た目小さな魔法剣士の女の子が声を掛けて来た。


ザック『あ、はじめましてザックです。』


ユンシャ:『あたいはユンシャ、あんたと同じゴールドだよ。』


ユンシャはアーデンギルド訓練場の師範でもある3人のゴールドランカーの1人だ。


その容姿から新人冒険者からナメられる事が多く、訓練場に連れ込んではボコボコにする事で有名らしい。


ザック:『ゴールドなりたてなんで宜しくお願いします。』


ユンシャ:『あんたはあたいの事見た目で馬鹿にしないね。気に入ったぞ♪』


ニコニコしながら強い酒を水の様に飲む姿は、はっきり言ってタダ者では無い。


ルーチェ『へぃお待ちぃ♪・・・ってユンシャ!また昼間っからそんなに飲んで!』


ユンシャ:『なんだよルーチェ、今は気分が良いんだ♪少しくらい良いだろ♪』


ルーチェ:『ザックさん、この子絡むから気をつけてね?』


ザック:『絡むの?』


ルーチェ:『・・・この子、気に入った男が出来るとキス魔になるのよ。』


ザック:(えぇ~!?)


ユンシャ:『ねぇブレイヴたん♪ちゅ~しお♪』


ザック:『ちょ、ちょっとユンシャさん、駄目ですって!』


その瞬間、周りに居た女性冒険者達がユンシャを取り押さえた。


『ちょっとユンシャさん!それだけは駄目~!』


『私達のザック様になんて事を!』


『ザック様逃げて~!』


席を立とうとしたその時、後頭部に柔らかい感触を感じた。


エリオラ:『あらザック君、酒場に来てくれるなんて嬉しいわね♪』


ザック:『え、エリオラさん!?』


エリオラ:『ちょっとユンシャ、あんたまた酔ってんの!?』


ユンシャ:『ブレイヴたんとちゅ~するのぉ~♪』


エリオラ:『ザック君だって困ってるじゃない。おとなしく・・・ちゅ~!?』


ユンシャがエリオラに黙れと言わんばかりに、それは濃厚な口付けをした。


エリオラ:『こ、こらぁ、飲み過ぎ!』


ユンシャ:『ちゅぎはブレイヴたんの番ね♪』


突然エリオラがユンシャに水をぶっかけた。


エリオラ:『あんた・・・いい加減になさい!訓練場で根性叩き直してやるわよ!』


ユンシャ:『何しやがる!上等だぁクソアマ!あたいに喧嘩討った事後悔させてやんよ!』


ザック:(なんでこうなった?)



2人と訓練所に行くとギャラリーが沢山付いて来た。


ザック:(ややこしい事になったなぁ。)


カリン:『何の騒ぎですか!』


カリンが腰に手を当てて声を上げた。


ザック:『あのぉ、これこれこういう訳で・・・。』


カリンに説明するとカリンは二人の間に割って入ってこう言った。


カリン『貴女達、そんなくだらない事で喧嘩するなど、自分達の立場をわきまえなさい!』


ザック:(これで修まったかな?)


カリン:『ザックさんが貴女達程度の冒険者がどうこう出来る人だと思ってるんですか?彼に気に入られたいなら彼に一本でも決めてからにしなさい!』


ザック:(うんうん・・・って、えぇぇぇぇ!?)


ザック:『ちょっとカリンさん!?何言ってくれちゃってんの!?おかしいでしょ!?』


カリン:『だって悔しいんですもの!私だって!私だってザックさんとお酒飲みたいですもの!』


ザック:(何これカリンさん、キャラおかしいでしょ!?どういう事よ!?)


3人がザックに詰め寄る。


≪さぁ、御相手して頂けますよねぇ?≫


ザック:『・・・はい。』


ザック:(なんだよコレ?なんで俺が責められてんの?ふざけんなよ?俺はただ酒飲みに来ただけだっつの!あぁやってらんねぇ、もう頭来た!)


その時ザックの中で何かがプチっと切れる感覚と共に自分の中にある変な感情が込み上げて来た。



順番に剣の相手をした。


全力で3人を立てなくなるまで叩きのめした。


見に来ていた他の冒険者の目に映ったのはギルド最強と言われた3人が意図も容易くボコボコにされる地獄絵図だった。


あちこちから悲鳴が聞こえ、3人がぐったりと動かなくなると、皆が冷めた目で静かに見ていた。


その時初めてノワールスキルの恐ろしさを目の当たりにしたのである。



ザック:『・・・何か言う事は?』


≪参りました。≫



その後4人で酒場のカウンターに座る。


3人の体は回復魔法で治してある。


カリン:『ザックさんが強いのは知ってましたけど、あれは反則ですよ・・・。』


カリンはザックの動きに付いて来れないどころか、その場から動く事すら出来ずにやられたのだ。


何度も繰り出される攻撃に悶絶して最後には泣き出してしまった。


エリオラ:『あの動きは反則よねぇ、私なんて構えた直後には記憶が無かったもの・・・。』


エリオラはスタート直後に胴に木剣を思い切りぶつけられていた。


直後には首の付け根に強力な一撃もくらって壁に突き飛ばされていた。


ユンシャ:『あたしよりましよ。まじ殺されるかと思ったんだから・・・。』


ユンシャは詰め寄られた直後に3発の攻撃をくらい、顔の真ん前で中級の火炎魔法をぶち込まれたのだ。


やられた直後には涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになっていた。


フランシア:『幾ら何でもさすがにあれは不味いんじゃ・・・。』


見に来ていたワルデンナイツのフランシアが後ろから声を掛ける。


ザック:『悪かったよぉ、ちゃんと回復魔法掛けてやったでしょう?お詫びに今度屋敷でやるパーティーに招待しますから。』


すると3人プラスフランシアが。


≪ホント!?絶対に!?≫


ザック:『ワルデンナイツには旅の時に世話になったし、メンバー全員連れて来ると良いよ。ゴールドの3人も勿論どうぞ。』


と言うと、途端に皆が元気になった。



屋敷に戻ると、使用人達が庭で稽古をしていた。


ザック:(あ、そう言えば約束してたな・・・。)


サリー達に声を掛けて実力を見る。


3人共、いつ冒険者になっても自力で食って行ける腕前だった。


とくにサリーの剣術は素晴らしく、無駄な動きがまるで無い。


短剣・長剣共に上手く使いこなしていた。


ザック:『みんな凄いじゃないか!これほどとは思わなかったよ。』


そう言うと彼女達は満足気に微笑んだ。



リビングで寛いでいると、サリーが入って来た。


サリー:『ザック様、大量の御荷物が届いたのですが。』


ザック『うん、今行くよ。』



そこには過去に無いほどの数の段ボールの山が有った。


ザック:(サクラさん、もう少し分けて送ってよ・・・。何処の大手スーパーの納品だよこれ。)


それもそのはず、特大サイズの段ボール箱が30個以上も有るのだ。


ザック:『とりあえず順番に中身チェックしたら指示するから運んで貰えるかな。』


中身をチェックしているとアンが帰って来て目をキラキラさせていた。



次々に開けて行くと、一つだけあり得ない程に大きな木枠にシートが被された物が有る事に気付く。


ザック:(このサイズって・・・普通に考えたら小さめのオープンカーとか入ってる大きさだよな・・・。そんなのこの世界で使ったら大騒ぎになるぞ?)


恐る恐る木枠を剥いでシートを捲り開けると、やはり車の様な乗り物だった。


ザック:(でもこれ普通の車じゃ無いな・・・リバーストライクって奴か。でもこんな形の奴は見た事無いぞ?)


手紙が添えてあった。


【これは貴方の世界に有った乗り物を、此方の世界で使える様にした魔道具です。モービィと呼ばれる、北方大陸に存在する乗り物と同じ部品構成で作りましたので、何とか整備は出来ると思います。特別製で性能は他の物の数倍はあります。乗り手の魔力で性能が変化しますが、貴方の力なら限界性能も引き出せるでしょう。有効に使って下さい。サクラ】


ザック:(一応アタッチメントで馬車を引っ張れる様には出来てるのか。パーティーでの旅でも使えるんだな。でもこっちの王国では見た事無いぞ?)


アン:『何これ!?こんなの初めて見たわよ!?』


ザック:『どうやら北方大陸にあるモービィって乗り物を改造した特別製らしいよ?』

(ご丁寧にガレージ用のパーツまで入ってるし・・・。)


アン:『・・・ちょっと乗ってみたい。』


アンがちゃっかり助手席に座ってる。


ザック:『帰ったら残りの荷物の片付け手伝うなら乗せてやる。』


アンは激しく頷いた。


鍵を回してスタータースイッチの様なボタンを押すと『クィィィィン』という小さな音が鳴った。


操作方法はAT車と変わらない。


バックギアが付いているので取り回しも楽そうだ。


ザック:『行くよ。』


ゆっくりアクセルスロットルを踏み込むと滑る様に動き出した。


乗り心地は結構良い。


町では注目の的になってしまった。



折角なのでリースまでツーリングする事にした。


これなら馬車より数段スピードが出るので、リースまで短時間で行けてしまう。


『凄い!速い!コレ良い!』


アンは大はしゃぎだ。


実際これなら他の人でも乗れそうだ。


『アン、ちょっと飛ばすぞ!』


時速だと90㎞/hか100㎞/hは出ている。


もっと意識して魔力を込めればそれ以上出そうな気もするが、路面が良くない為にこれ以上は危険だ。


あっという間にリースに着いてしまった。


スマホを見ると、片道で30分位だった。


アン:『ザック、これ凄いね!こんなに早くリースまで来れちゃうんだね!』


アンには好評だ。


ザック:(でも道が悪いから、飛ばすと足回りへの負担も凄そうだな。)


『さ、帰って荷物を片付けちゃおうぜ?』



屋敷に戻ると、見慣れない馬車が止まっている。


『誰か来たのかな?』


サリー:『ザック様、先程ザック様達が出られた後で此方が届いたのですが、これはいったい・・・。』


それは馬車では無く、トレーラーだった。


しかも外装はとても豪華な装飾がなされている。


普通の荷馬車とは違い、やたらと幅が広く車高も高い。


中を見るとそれはキャンピングカーの様な作りになっていた。


展開式のベッドシートに簡易的なキッチン、魔力で使えるシャワー室まで備わった本格的な物だった。


しかも驚いた事に拡張装置が付いており、最大で8人が宿泊出来る構造になっていた。


ザック:『コイツはトレーラーだな。』


サリー:『トレーラーとは?』


ザック:『こんな風にこの車の後ろに繋げて走るんだよ。』


試しにモービィを繋いで走ってみると、何の苦もなく走出す。


ザック:『こんなの貴族すらも持って無いぞ?本当に良いのか?』


アン:『これも神様からのなのねぇ・・・。もう驚くのやめとくわ。』


サリー:『ザック様って神様に愛されているのですねぇ・・・。』


取り敢えずはトレーラー車をロータリー脇のスペースに停めて、モービィ用のガレージを作る。


ガレージにモービィを入れて再び荷物の片付けに入った。


結局夕食の時間ギリギリまで掛かってしまった。


調味料も大量に送られて来たので、翌日ダイソンにも幾つか届ける事にした。



食後フェルテがモービィを見て言った。


フェルテ:『ザック様、この乗り物だとランスまでどれくらいで行けますかね?』


ザック『飛ばせば、朝に出て夕方には着くんじゃ無いかな?』


フェルテ:『そうですか・・・。』


ザック:『ランスに用事でもあるの?』


フェルテ:『実は、私達と同じ屋敷に支えていた者が、ランスの奴隷商に売られたという情報が入りまして。』


ザック:『ねぇ、それって何時の話?』


フェルテ:『今日商人ギルドへ行った際に、此方の奴隷商の方からそのお話を聞いたのです。』


ザック『フェルテ、行こう!』


フェルテ:『でも・・・。』


ザック:『今から行こう!』


フェルテ:『え?今からですか!?』


サリーとジーナを呼び4人でランスに行く事にした。


フェルテ:『どうやって行くんです?』


ザック:『転移魔法を使う。さぁみんな手を繋いで。』


次の瞬間、ランスの奴隷商前に転移した。


フェルテ:『え!?ここ?え?』


ジーナ:『エントランスに居たはずじゃあ・・・。』


サリー:『え!?奴隷・・・商?』


3人が驚いてるのも構わず奴隷商に入ると受付嬢が出迎える。


ザック:『フェルテ、誰なんだ?』


フェルテ:『ノエルという奴隷は居ませんか?』


受付嬢:『ノエルさんですね・・・おります。では奥の部屋へどうぞ。』


奴隷商から一通りの話をされ、ノエルが王都で先日失脚した貴族から売られた事を知った。


短期間に再度落とされた奴隷は買い手が着きにくく、低俗落ちになりやすいそうだ。


呼ばれて現れたのはエルフ属の女の子だった。


ノエル:『あれ!?皆様!?どうして!?』


サリー:『私達の主様のザック様です。貴方の行方を話したら此方まで急いで来て下さったのですよ。』


ザック:『君がノエルだね?はじめまして、ザックだ。君の事はさっきフェルテから聞いている。君が望むなら、俺の元でまた皆と働いて貰いたいんだけどどうかな?』


ノエル:『本当に私でも宜しいのでしょうか、2度も奴隷に落ちた身ですのに・・・。』


ザック:『俺は彼女達と同様に君を仲間として迎えたいと思っている。君が望むなら俺が君を買い取ってあげよう。年は幾つかな?』


ノエル:『14才です。私はメイド志望なんですが、やらせて頂けるのですか?』


ザック:『勿論だよ。来てくれるなら家族として迎え入れるつもりだ。』


ノエル:『えっ!?本当によろしいのですか!?』


ザック:『もちろんだ。君さえ良ければ、仲間として家族として迎えよう。来て貰えるかな?』


ノエル:『よ、宜しく御願いします!』


こうして新たにノエルが仲間入りした。


購入手続きを済ませて奴隷商を出るとそのまま屋敷へ転移した。



屋敷の入り口に立つとノエルは目を丸くしていた。


ザック:『此処はアーデンの北エリアにある俺の屋敷だ。これからは此処が君の家でもある。』


ノエル:『こんなに素敵な御屋敷が・・・。』


リビングに入って使用人達とパーティーメンバーを紹介する。


この屋敷の様々な事情やザックの事、パーティーの事、そしてノエルが2度目の奴隷落ちになった事の経緯を話した。


ノエル:『そんな事が有ったのですね。私は前回運良くメイドを探していた貴族に買われました。勿論性奴隷としての御奉仕も無く勤める事が叶いましたが、再度奴隷に落とされた際には絶望を余儀無くされました。』


ザック:『俺は彼女達と同様に君を扱うつもりだ。この屋敷は少し大所帯だから、丁度人手を増やしたかったしね。』


ノエル:『有り難う御座います。ザック様のお噂は以前の屋敷でも有名でした。この前の一件で、主様が失脚された時には正直恨みもしました。でもこうやってお話をさせて頂けて、主様の素晴らしさが分かった今、主様に一生を捧げる所存です。』


『まぁ後の事はサリーやフェルテ達に聞いてくれ。今まで支えた主の家とは勝手も違う筈だから。』


これで使用人が4人になった。


ザック:(そろそろホームパーティーの支度を考え無きゃならないな。)


パーティーメンバー全員にホームパーティーの話をした。


招待客はカリン・ユンシャ・エリオラのゴールドランカー、ワルデンナイツのメンバー全員、セリア・レイティアの商人ギルド2人、ダイソン・メリアのムーラン2人、兵士長のガルドと駐在騎士団長、奴隷商のセデス、クイーンズエレメントのメンバー全員だ。


当日はザックがクイーンズエレメントをワープで迎える。


さすがに女王や王女を呼ぶ訳にもいかないので、今回は見合わせる。


アン:『ちょっと凄い人数ね?庭とエントランスとリビングを使っても手狭な感じよね。』


ザック:『庭は結構広いから大丈夫じゃ無いかな?後は使用人達の頑張り次第だ。』


メル:『同盟を結んでいるとは言え、クイーンズ・エレメントに転移魔法を見せても良いのでしょうか?』


ザック:『いずれはバレる事だし問題無いだろ。俺とアンはゴールドに昇格してるし高位魔法が使えても不思議じゃ無いからな。』


日取りは各方面に話を聞いて調整する事にした。


食後に奴隷商に行った事も有って、ノエルにはジーナが夕食を作って出したそうだ。


サリー:『ザック様、有り難う御座います。』


サリーとフェルテが礼を言いに来た。


ザック:『君達の同僚の行方が分かって良かったよ。少しでも人生を楽しんで貰える様に配慮してやってくれ。』


紅茶を飲みながら3人でまったりする。


3人はそんな幸せな一時を噛み締めていた。

お読み頂き有り難う誤差いました。

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