第13話 旅初日と屋敷の警備と。
お読み頂き有り難う御座います。
第13話です。
アーデンを出てから5時間位は歩いただろうか?
遭遇した魔物は4体、街道の側道を歩いている割にはあまり遭遇しない。
アン:『意外と出ないものねぇ・・・。』
ザック:『この辺りは人気が少ないから出ると思ってたんだけどなぁ。』
メル:『下手に森を通ると上級が出る危険もありますからねぇ。』
ローラ:『危険が多いのは面倒ですからね。』
その時前方に怪しい人影が見えたので立ち止まった。
アーデン ザックの屋敷。
フランシア:『ごめんください!』
サリー:『どちら様でしょうか?』
フランシア:『主の留守に失礼する。我々はギルド所属の【ワルデンナイツ】の者だ。』
サリー:『どの様な御用件でしょうか?』
フランシア:『こちらの執事殿はそなたか?我々はザック殿の留守中、こちらの屋敷の警備をザック殿本人に許可して頂いた。執事殿に一声掛けてから警備をしてくれとの事だったのだが。』
サリー:『左様で御座いますか、しかしながら私共はザック様直々の御言葉が無い以上、貴女方を信用は出来ません。』
フランシア:『待って下さい!我々は確かに・・・。』
ジーナ:『あら?もしやザック様のお知り合いの方では?』
ジーナが屋敷の奥から出て来た。
サリー:『ジーナ、こちらの方を?』
ジーナ:『えぇ、ザック様がカフェでお話しておられた方です。たしかフランシアさん、でしたか?ザック様と合流した時に名前を伺ったのですが。』
フランシア:『いかにも、ワルデンナイツのリーダーをしているフランシアです。』
サリー:『そうでしたか。御無礼をお許し下さい。私共としても主不在な為、あまり部外の方を簡単には信用出来ませんもので。』
フランシア:『いや、執事殿の言う事もごもっとも。突然お邪魔したこちらの無礼をお許し頂きたい。それで警備に関してですが、我々に屋敷の外を任せて頂けないだろうか?』
サリー:『そう言う事で御座いますれば、その御言葉に甘えさせて頂きましょう。』
アーデン郊外
盗賊:『へっへっへ、結構上玉が揃ってるじゃ無ぇか。』
盗賊達は明らかに誘拐を目的としていた様だった。
ザック:『ひぃふぅみぃよぅいつむぅ、6人か。』
アン:『ホント盗賊って解りやすい所に出て来るわねぇ。』
盗賊:『そこの小僧!女共を置いてさっさと失せな!命だけは助けてやるぜ?』
アン:『はぁ、ザック、面倒だからやっちゃって?』
ザック:『え?俺がやるの?面倒いなぁ。』
アン:『たった6人じゃん、ほらチャッチャとやって行きましょ?』
盗賊:『おいこら!人の話聞いてんのか!!』
ザックは銃を出すと、無言で5人を撃ち倒した。
ザック:『で?何の話だって?』
全員で取り囲んだ。
ザック:『コイツら結構金になるから、ランスの兵士団にコイツとそいつ等の腕切って持ってくぞ?』
アン:『えぇ?こんなのと一緒に歩くの?』
ザック:『何言ってんだよ、アンだってこないだの懸賞金覚えてるだろ?』
メル:『アンさん、この盗賊は私が引っ張って行きます。』
アン:『良いの?』
メル:『こういう時はドワーフの力の見せ所ですから。』
ローラ:『うっ・・・。』
ザック:『ローラ、どうしたの?』
ローラ:『腕の輪切り見ちゃって・・・。』
ザック:『・・・とりあえず行こうか。』
その後、魔物と何度か戦い、夕方にはランス手前の小さな町【イブ】に着いた。
捕まえた盗賊はイブに駐在していた兵士団に引き渡し、結構な額の懸賞金を手に入れた。
ローラ:『イブに駐在兵が居て良かったですね。』
メル:『アンさんが連れて行くのを嫌がった理由がわかりました・・・。』
アン:『アイツ等臭いのよ・・・。』
ザック:『それでもこんだけ稼げば王都でも懐を気にしなくても良さそうだな。』
メル:『とりあえず宿屋を探しませんか?』
ローラ:『そうですね、あっ!あそこ宿屋みたいですよ?』
アーデン ザックの屋敷。
屋敷からサリーが出て来た。
サリー:『お疲れ様です。』
フランシア:『ど、どうも!』
サリー:『宜しければ交代でお食事にされては如何でしょうか。うちのジーナがお食事を御用意しておりますので、屋敷の食堂においで下さい。』
フランシア:『お気遣い有り難う御座います。エイナ、折角なので頂きなさい。』
エイナ:『よ、宜しいのですか?』
サリー:『えぇ、ザック様もきっとこうされますでしょうし。』
エイナ:『それでは御馳走になります!』
ワルデンナイツのメンバー【エイナ】は、ザックがアーデンに来た日から密かに思いを寄せていた1人だ。
エイナが食堂に入ると、ジーナお手製の料理が並ぶ。
そこらの料理店よりも豪華な光景に思わず声を上げた。
エイナ:『こ、こ、こんな凄い料理をザック様達は食べてるんですか!?』
ジーナは満足気に口を開く。
ジーナ:『これはいつもと同じ料理ですよ。昨日ザック様が食べたメニューを作らせて頂きました。』
それを聞いてエイナは目を輝かせて料理を食べ始める。
エイナ:『い、頂きます!・・・・美味しい!?凄いっ!凄く美味しい!!』
ジーナは大満足な表情でエイナの食事を眺めていた。
イブの町。
アン:『宿屋が取れて良かったわね。』
ザック:『そうだな。でも食堂が無いから、料理店に行かなきゃ。』
アン:『ねぇ?ワー・・・やっぱ良いわ。』
ザック:『今帰ったらワルデンナイツと会う事になるしな。』
アン:『バレると面倒だしねぇ・・・。』
ローラ:『ザック様!ご飯行きましょ!』
ザック:『よし、行くか!』
丁度宿屋の向かい側に料理店が有ったのでみんなで行った。
店員:『いらっしゃい!何名様?』
ザック:『4名です。』
店員:『4名様ね、あそこのテーブル席が空いてるよ。』
ザック:『有り難う。』
アン:『結構流行ってるわね?』
メル:『どうやら酒場も一緒にやってるみたいですね』
ローラ:『お腹減りましたぁ。』
隣の席に居た女性の剣士が声を掛けて来た。
女剣士:『ちょっとアンタ達、盗賊倒した人達じゃない?』
ザック:『そうだけど?』
女剣士:『やっぱり!ねぇっ!あの盗賊女の子連れて無かった?』
アン:『むっさいオッサン6人だけだったわよ?』
女剣士:『そう・・・やっぱりハズレかぁ・・・。』
ザック:『誰か拐われたのか?』
女剣士:『うん、ちょっと・・・ね・・・。い、良いんだ、気にしないで。』
ザック:『・・・。』
アン:『ザック、良いの?』
ザック:『だってしつこく聞く訳にもいかないだろ?』
女剣士:『ところでアンタ達は何処まで行くの?』
ザック:『あぁ、王都までね。ちょっとした用事で行くんだよ。』
女剣士:『王都・・・。今は王都に行くのはお勧めしないわよ?』
ザック:『一応その理由は解ってるよ。俺達が行くのは、その件であるギルドのパーティーに話を聞きに行く為なんだ。』
女剣士:『っ!! そのパーティーってまさか・・・。』
メルが鋭い眼差しで口を開く。
メル:『私の知り合いが加入している王都ギルドのネームパーティー【クイーンズエレメント】です。』
アーデン ザックの屋敷。
フランシア:『お・・・美味しい!!あぁ、ザック殿は昨夜この料理を・・・。』
フランシアはジーナの料理を食べて妄想を膨らませて居た。
サリー:『フェルテ、あちらの方が食事をお済みになられたらアレをお出しして差し上げなさい。』
フェルテ:『あのクッキーというお菓子ですか?』
サリー:『えぇ、紅茶と一緒に出して差し上げなさい。』
フェルテ:『畏まりましたサリー様。』
イブの町 料理店内
女剣士:『・・・アンタ達・・・何者なの!?』
ザック:『俺達はアーデンギルド所属のネームパーティー【チーム・アポストロ(使徒の一団)】です。』
女剣士:『じゃあ、まさかアンタがノワールスキルホルダーのザックだって言うの!?』
ザック:『え!?俺の事知ってるの?』
女剣士:『知ってるもなにも、アーデンとリースで闇の奴隷商人を壊滅に追い込んだ有名人じゃない!?』
アン:『多分あの傭兵団ね・・・。貴女、もしかして王都から来たの?』
女剣士:『えぇ、アタシは妹を誘拐した奴等の足取りを追ってたんだけど、王都でアンタ達の話を聞いて協力をお願いしようとアーデンに行く途中だったのよ。まさかアンタ達が王都に行くとは思って無かったからねぇ。』
ザック:『・・・なら話は早いか・・・。失礼だけど貴女の名前は?』
シーラ:『シーラよ。アンタ達が訪ねようとしてるクイーンズエレメントのね。』
ザック:『って事はクイーンズエレメントの冒険者は数名誘拐されてるって事か?』
シーラ:『そうよ、全員で4名の冒険者が誘拐されてる。今うちのパーティーは各地域で、仲間になってくれる人達を探している所なの。』
アン:『どうする?私達だけだと入手出来る情報には限界があるわよ?』
ザック:『そうだな・・・。シーラさん、俺達は王都に行ってこの事件の総元を叩くつもりだ。俺達に協力してくれるならシーラさんの妹さんの救助に協力しても良いんだが。』
シーラ:『アンタ達貴族に喧嘩売ろうっての!?・・・良いわ、出来る事は少ないけど協力する。』
ザック:『それで誘拐されたのはいつ頃?』
シーラ:『5日前よ。』
ザック:『まずい、時間が無いな・・・。』
シーラ:『どういう事?』
ザック:『オークションで競り落とされた奴隷は10日間売れなければ低俗落ちになってしまう。そうなったら、安く買い叩かれて酷い扱いを受ける事になる。』
アン:『でもザック、直ぐにオークションに出される確証は有るの?』
ザック:『奴等の目的は金だ。恐らくその一部が王宮に支える上級貴族に流れているだろうから、出来るだけ早く見つけないと。』
シーラ:『待って!じゃあ妹はすでに転売されている危険性があるって事!?』
ザック:『その誘拐犯が貴族からの恩恵を受けているならね。』
シーラ:『そんな・・・私はどうしたら・・・。』
ザック:『とにかくオークションに行こう、悪いが皆の金も使う事になるかも知れないが。』
メル:『ザック様、まさか・・・。』
ザック:『あぁ、俺が競り落とす。その後で解放すればこっちの問題は解決するだろ?。とにかく今出来る事をやろう。』
ザック達は宿に戻ると、宿の主人から王都に最短で行ける手段を聞いた。
どうやら馬車はここイブが出発点らしい。
その足で馬車屋へ行き、交渉を始めた。
馬車屋:『王都かぁ・・・それならうちの空いてる馬車が1台有るけど操馬手が居ねぇな。期日に返してくれるってんなら貸してやっても良いけどよ?』
ザック:『期日っていつ頃ですか?』
馬車屋:『そうさなぁ、20日以内に返しに来てくれるってんなら貸してやるよ、早馬込みでだ。』
ザック:『幾らです?』
馬車屋:『12.000ジル・・・と言いたい所だが、10.000ジルに敗けてやるよ。』
ザック:『有り難う御座います。』
馬車屋:『明日は早朝に出るんだろ?馬を着けて鍵をそこの箱の中に入れといてやるから、朝になったら持って生きな。』
ザック達は宿に戻り、打ち合わせをした。
ザック:『とにかく時間が無い。明日は夜明け前に出発だ。王都に着いたら俺とアンとシーラでオークションに情報を集めに行く。メルとローラはギルドでの聴き込みを頼むぞ。馬車はメル達で停車場に預けてくれ。』
アン:『細かい事は馬車で決めましょ。シーラさんは王都の人だから地理も詳しいでしょうしね。』
メル:『恐らくこれからは、今日の様に盗賊が出るかも知れません。一応気を付けた方が良いでしょうね。』
ローラ:『面倒な時は私が攻撃魔法ぶち込みますので、そのまま突破しましょう!』
ザック:『そうか、ローラが居れば、俺の銃の出番も減るかな?』
アン:『それじゃあ明日早いからもう寝ましょ。』
そして翌朝の夜明け前に、ザック達はイブの町を旅立った。
お読み頂き有り難う御座いました。