第12話 ワルデンナイツと旅立ちと。
お読み頂き有り難う御座います。
第12話です。
ローラが我が家にやって来て4日が経った。
パーティーとしての連携も良い感じになって来た。
ローラもパーティーメンバーや使用人達とも打ち解けて、今ではすっかりみんなになついている。
ザック:『ふぁ~あ・・・おはようローラ。』
ローラ:『あ、おはようございます主様。』
ローラは毎朝エントランスの掃除をしている。
これはローラが希望して自発的にやっているらしい。
ザック:『でもローラ、何でそんな格好してんの?』
ローラ:『フェルテ姉様がくれたんです。・・・似合いませんかね?』
ローラが来ているのはメイド服だった。
最近フェルテにメイドの仕事を教わっているらしい。
ザック:『うん、とても可愛いよ。』
ローラ:『良かったぁ・・・。』
アン:『あっ!ローラ可愛い!』
アンがリビングに来たとたん、ローラを見て声を上げた。
ローラ:『アン様おはようございます!』
アンはローラを特に可愛がっている。
自分と同じ後衛だと言うのもあるのだが、妹が出来た感じがして嬉しい様だ。
メル:『皆さんおはようございます。』
メルも起きて来た。
フェルテがリビングに来ると、ローラを連れてジーナを手伝いに行った。
アン:『ねぇザック、結構お金も稼いだし税金払っちゃおうか?』
ザック:『そうか、早目に払っといた方が良いよな?』
何気にうちは大所帯だ。
奴隷分の税金だけでもそれなりに高くつく。
メル:『所在登録しましたから、税額は安くなってはいますけどね。払える時に払った方が良いかと。』
ザック:『じゃあ後でギルドに行くか。』
ジーナが朝食が出来たと報告に来たので食堂に集まる。
食事中にジーナがザックに話し掛けた。
ジーナ:『ザック様、今日は何処かに行かれますか?』
ザック:『後でギルドに行くけど、どうしたの?』
ジーナ:『市場に行くので御一緒させて頂こうかと。』
ザック:『なら一緒に行くか?』
ジーナ:『はい!』
朝食を終え、ジーナ達の洗い物が終わってから町に出た。
市場は帰りに寄る事にして、まずは冒険者ギルドに向かう。
ダイソン:『おや、ジーナちゃんじゃないか?』
ふと見ると、ムーランの前でダイソンがを振っていた。
ジーナ:『ダイソンさん!お久しぶりです!』
ジーナが嬉しそうに挨拶している。
ダイソン:『やぁザックさん達、ジーナちゃんを連れて歩くなんてめずらいですね。ジーナちゃんも元気そうだ。』
アン:『おはようございます。』
ザック:『ダイソンさんも元気そうですね。』
ダイソン:『あれ、そこの子はこないだの・・・。』
メル:『メルです。今はザック様のパーティーに入りまして・・・。』
ダイソン:『そうかい、それは良かった。新顔も居るみたいだね?』
ローラ:『ローラと申します。宜しくお願いします。』
ダイソン:『ザックさん、まさかみんなで一緒に暮らしてんのかい?』
ザック:『はい、すっかり大所帯になっちゃって・・・。そうだジーナ、ギルドに行ってる間ダイソンさんと話でもしてたらどうだ?』
ジーナ『えっ!良いんですか?』
アン:『そうね、そんなに長くはならないし良いんじゃない?』
ジーナ:『ありがとうございます!』
ジーナをダイソンに預け、4人はギルドに行った。
シルビア:『あら、ザックさん達おそろいで。』
ザック:『シルビアさん、おはようございます。』
シルビア:『今日はいったい・・・。』
ザック:『今日は全員分の税金を払ってしまおうと思って。』
シルビア:『あぁ、そうでしたか。畏まりました。』
『・・・。』
ギルドの奥の方から視線を感じる。
ザック(悪意のある感じでは無いな・・・だけどこれって・・。)
1人の女剣士がこちらに来て声を掛けて来た。
女剣士:『貴様が【使徒の一団】のザックか?』
ザック:『そうだけど?』
フランシア:『私は【ワルデンナイツ】のリーダーをやっているフランシアだ。最近貴様のパーティーに移りたがっているメンバーが多くてな。少し興味があった。』
ザック:『俺はメンバーを募集して無いんですが・・・。迷惑を掛けてるなら謝りますが。』
フランシア:『いや、責めている訳では無いのだ。実は貴様に相談があってな・・・。何処かでゆっくり話せないだろうか?』
メル:『ザック様・・・。』
ザック:『メル、大丈夫だ。アン、ちょっと・・・。』
アン:『分かってるわ。後は任せて。』
ザック:『悪いな。フランシアさん、行きましょうか。』
フランシア:『パーティーの諸君すまない、おたくのリーダーを少し借りる。』
フランシアとザックはカフェで話す事にした。
フランシア:『悪い事をしてしまったな。確かあの娘は貴様の恋人であったか?』
ザック:『えぇ、元々彼女は俺のパートナーでしたけどね。それで相談とは?』
フランシア:『その・・・私のパーティーと・・・同盟を結んでは貰えないだろうか?』
ザック:『同盟?』
フランシア:『実は・・・私も・・・その・・・貴様の・・・。』
ザック:『ん?』
フランシア:『っ!!・・・。』
口籠ったフランシアが下を向いてしまったので覗き込むと、フランシアが真っ赤になった。
フランシア:『わっ、私も貴様のファンなのだぁ!』
ザック:(うわぁ・・・何このツンデレ・・・。素直にしてりゃ可愛いのに・・・。)
ザック:『つまり何?まさかワルデンナイツ全員が俺のファンだってのか!?』
フランシア:『・・・はい。』
ザック:『・・・で、下手に出るとうちのメンバーに舐められるから高潔なしゃべり方をした。と?』
フランシア:『・・・ひゃい・・・。』
ザック:(なんだ?これ・・・。)
ザック:『そんなの同盟じゃ無いじゃんかぁ。』
フランシア:『私だって貴様のパーティーに入りたいのだ!だがそんな事を言えば、ギルドでもそれなりに実力あるパーティーリーダーとしての面目がぁ!!』
ザック:『逆切れしてんじゃねぇよ!このツンデレがっ!ちょ~っと可愛いと思った俺が馬鹿みてぇだわ!どんだけ自分大好きだよ!!てかメンバーなんぞ募集しとらんわ!!』
フランシア:『だってぇ!!みんな私の言うこと聞いてくれないんだも~ん!!』
ザック:『だぁだっこかよ!! そんなんだからメンバーに舐められんだろうがっ!!見た目クールビューティー気取っといて中身がこれかよ!!子供か!!』
フランシア:『だってぇ~!!』
ザック:『・・・あぁ、もういいわ、悪いけど同盟は結ばない。テキトーに親衛隊でもなんでもやってろ。』
フランシア:『・・・いいの?』
ザック:『あ?』
フランシア:『しんえいたい・・・やってもいいの?』
ザック:『はぁ・・・勝手にしろ・・・。』
そう言うとザックは呆れて席を立って立ち去った。
中央広場まで行くと、ようやくアン達と合流出来た。
アン:『ザック・・・どうしたの!?凄い疲れた顔してるけど・・・。』
ザック:『アン・・・俺頑張ったよ・・・俺、凄い、頑張った・・・うっ・・・うっ・・・。』
アン:『ちょっ!ちょっと!?ザック何泣いてんよ!?どうしたの!?』
・・・・・・・・・・・・。
アン:『・・・そ、それは・・・災難だったわねぇ・・・。』
メル:『さっきの人が・・・想像出来ませんね・・・。』
ローラ:『ザック様・・・お気の毒に・・・。』
ジーナ:『ザック様~!終わりましたぁ~!』
ザック:『・・・天使だ・・・天使が見える・・。』
アン:『・・・そうとうやられてるわね・・・。』
屋敷に戻ったザック達は今後の旅について話始めたのだが・・・。
アン:『王都って最近危険なのよね?』
メル:『そうですね、私はあえて今危険を冒して王都に行く必要は無いかと思います。』
ローラ:『でも王都に行けば、良い装備も買えますよ?』
ザック:『なぁみんな、どうやら王都に行くしか無くなった様だぞ?』
ザックがそう言ってみんなにスマホを見せると、そこには【神託】の文字が・・・。
アン:『これってもしかして・・・。』
ザック:『あぁ、神様からだ。』
メル:『ザック様、それは本当なんですか!?』
神託にはこうあった。
【王都に蔓延る闇の奴隷商人と、悪しき諸行を続ける貴族達を倒しなさい。】
ローラ:『これ本当に神様からなんですねぇ
・・・。』
ザック:『みんな、旅の準備が整ったら、明日にも出発するぞ!』
ザックはアンと商人ギルドに行き、家賃を2ヶ月分前払いした。
一応冒険者ギルドにも顔を出し、明日からしばらく旅に出る事を伝えた。
メルとローラは旅用の装備品を買いに行き、旅の身仕度を整える。
みんなが屋敷に戻り、夕食の席で明日からしばらく旅に出る事を使用人達にもに伝えた。
サリー:『それじゃあ、いつ頃お帰りになられるかは分からないのですね?』
心配そうにサリーが聞いて来る。
アン:『でも、ちゃんと帰る前には連絡するから。』
ザック:『その間は3人でこの屋敷を頼むぞ?』
サリー:『畏まりました。』
夕食の後で、みんなとルートのスケジュールを立てる。
ザック:『まずランスまでは徒歩移動になるな。』
メル:『何故ランスまで歩くんですか?』
ザック:『ランスから馬車移動になるから、それまでは魔物を討伐しながら行こうと思うんだ。少しでも金があった方が楽だろ?』
アン:『そうね、王都の宿屋も結構高いし、向こうでは討伐よりも【あの一件】に集中したいものね。』
メル:『私としても、向こうのギルドで聴き込みをする間は討伐どころでは無いですしね。』
ザック:『そうと決まれば、明日は早くに出るからみんなも早目に休んでくれ。』
風呂に入った後寝室に戻ると、出発の準備をした。
万が一の事を考えて銃のメンテナンスもしてある。
本当なら22口径の小型の銃をあと数丁欲しい所だが、こちらの世界で俺以外が装備すると面倒な事になりかねない。
サリー:『ザック様、まだ起きていらっしゃいますか?』
3人の使用人が揃ってやって来た。
ザック:『まだ起きてたよ。どうしたの?』
サリー:『ザック様が旅にお出になられる前に、お願いがありまして。』
ザック:『お願い?』
サリー:『はい、あの・・・できましたら私達を・・・ぎゅってして頂ければ・・・。』
ザック:(もう何て可愛い使用人達なんだろう・・・。)
ザック:『じゃあ順番ね。』
一人一人を愛情を込めて抱き締めた。
サリーの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
『みんな、俺はみんなの主になれて幸せだ。だから帰ったらまたぎゅってさせてくれ。』
『『『はい。』』』
そして翌朝。
ザック:『サリー、それじゃあ行って来る。』
サリー:『皆様、お帰りを御待ちしております。』
町の中を抜け、西門を通り抜けようとしたその時。
『待って下さ~い!』
誰かと思って振り向くと、何か見覚えのある顔が・・・。
ザック:『げっ!!フランシア!?』
フランシア:『ま、待って下さい!』
ザック:『何の用だよ?』
フランシア:『旅に出ると聞きまして・・・昨日の事を謝ろうかと・・・。』
ザック:『もう良いよ。昨日の事は気にして無いから。』
フランシア:『有り難う御座います。・・・それで・・・。』
ザック:『お前まさか付いて来る気じゃ無いだろうな?』
フランシア:『いいえ!行きたいのは山々ですが、そこまで図々しくはありません!』
ザック:『じゃあ何だよ?』
フランシア:『ザック殿の御屋敷を警備させては貰えないかと。』
ザック:『お前・・・ん?何で俺が屋敷に住んでる事知ってんだ!?』
フランシア:『うちのメンバーから聞きました。なんでも使用人の方々だけしか居られないとか。ならばせめて少しだけでもお役に立てればと。』
ザック:『・・・お前、俺の親衛隊やりたいって言ってたな。ならうちの執事に伝えてくれ。俺が警備を許可したってな。うちの使用人達を不安がらせたく無い。』
フランシア:『有り難う御座います!それでは警備に当たります!行ってらっしゃいませ!』
アン:『・・・本当に良いの?』
ザック:『サリー達は戦闘力があるなんて聞いて無いからな。あれでもあいつらギルドじゃ結構な腕前らしいし、サリー達に何かがあると大変だしな。』
アン:『分かったわ、じゃあいきましょ。』
色んな不安と期待を胸にザック達はアーデンを旅立って行った。
お読み頂き有り難う御座いました。