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MagicaAnima(マギカアニマ)  作者: 丹下和縞
第四幕 魔族の世界
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第八十八話 『弔いと最後のさよなら』

少し短いですが更新させてください。

 鬼族の国から外れた場所に沼地と森林が混在した湿地帯が広がっている。


ここは以前フラールに連れられて訓練を行った場所である。

元々は魔獣が多く生息しており鬼族の者も近づく事が無かった。だがアキラとフラールが訓練ついでに殆ど狩り尽くしてしまった為に今ではすっかり静かな場所となっていた。


フラールがベラニエールを介して埋葬の場所に指定したあの場所とは、湿地帯にある小高い丘の上の事である。この場所には一本だけ立っている大きな木がある。


ここはフラールのお気に入りの場所だった。鬼族の国に滞在している間、何度もここへ立ち寄り食事をとったり昼寝をしたりした。



「ここで良いんだよな、フラール?」



腕の中の少女からの返事はない。最後にアキラに向けて微笑みかけた時の顔のまま彼女は永遠の眠りへと就いている。仰向けの状態でゆっくりとその体を日の当たる地面へと横たわらせた。



「ルフニール、頼む」


『あいわかった』



アキラは静かにルフニールの力で作り出した炎を少女の体へ放った。

アキラは膝を抱えて傍らに座ると、鬼の少女が静かに灰になっていく様を長い間ずっと見つめていた。



「こっちの世界に来てからもう少しで一年か。そういえばフラールはこっちにいる間はずっと一緒だったよな」



アキラがこちらの世界に来たその日から、デープとフラールはずっと一緒だった。途中でアンジェと出会ったり霧夢が付いてくるようになったりあったが、いろいろな節目には必ずフラールの存在があった。



「お前が俺の寝袋で漏らした時には本気でゲンコツしちゃったな。あれは悪かった」



フラールとの思い出が、頭の中でぐるぐると、とぐろを巻いていた。

その一つ一つが今思えば、楽しくて、嬉しくて、かけがえがないものだった。



「俺、やっていけんのかな」


『案ずるな、貴様は余のアキラであるぞ。やれないはずがないだろう』



聞こえるはずのない声がすぐ隣から聞こえた気がして、横目で少しだけその方向を見た。

仄かに光る人間大の何かが、アキラのすぐ隣に寄り添うように座っていた。



『なんだアキラ。黄金鳥が鬼の一石を食らったような顔をしてからに』


「フラール…お前……なんで……」



そこに居たのはフラール・ニブルゲイン、その人だった。

体が透けて見えている事から実体ではなく霊体なのだろう。



『鬼はな、その体が完全に滅びるその時に自分の子や家族に鬼一族としての力を残すものなのだ。だが余には子息も家族もおらん。ならば余の力を託すのは貴様、アキラ以外にいないのだ』



「鬼一族の力……?」



困惑しているアキラにフラールはふふんと鼻を鳴らしてみせる。



『深く考えるなアキラ。余は、余が生きた証を、余が得てきた全てを貴様に渡したいのだ。もう時間がない、受け取ってくれ』



霊体のフラールの指先から光の玉が飛び出すとアキラの胸の当たりに入っていった。手で触ると仄かに温かく、体の内側から何かがこみ上げてくる感覚があった。



『弔いはこれで十分だ。余の遺灰は持っておいてくれ。鬼族の遺灰は火薬として使える、余の灰はきっと一級品に違いないから。あと、アキラが懐に入れている余の右角はいつの日かアキラを助ける武器になる。それまで大切にしてくれ、自慢の右角なのだ』


「フラール!!」


『時間切れだ。これが本当に最後の別れになる』


「フラール、俺は!!」



喉まで出てきた言葉は、フラールの突き出された手のひらで抑え込まれた。



『わかっている。こっ恥ずかしいからそれ以上は言うな。だが余は言うぞアキラ』



フラールの体がだんだんと光の粒となって消えていく。



『さよならなのだ、アキラ…、余の最愛の人……、いつでもいつまでも、見守っているのだ』



フラールの体を燃やしていた火がフッと消える。それと同時に目の前にいたはずの黒鬼の存在は、完全に夕焼けの空へと消えていった。



「ココルル、シンシン、ルフニール」


「あいさ」

「はい」

「うむ」



アキラの呼びかけに人の姿をとった精霊たちが返事をする。



「アルナムスへ向かう。デープたちが心配だ」


「わかった。アルナムスは深い所にあるから、私の力を使って」



そう言うとシンシンはいつものマスコットサイズへ戻りアキラの右肩へ飛び乗った。



「海まで一直線に向かうよ!私の背に乗って」



ココルルが人の姿でしゃがみ込んで指をちょいちょい動かしている。さあ乗れと言わんばかりに。



「いやそれだと、おんぶしてもらってるだけの男になるじゃんッ!」


「オ~ウ、うっかりうっかり。うっかりココルルでした」



ココルルはそのまま両手を地面につけると一瞬で巨大な銀色の狼になった。

そのやりとりを見ていたルフニールはアキラの頭の上に飛び乗ってたれドラゴンとなる。



『カハァ…』


「おいルフニール、お前今絶対ため息ついただろ…」


『(ブンブンブンッ)』


「まあいいわ……、じゃあアルナムスへ、最速で向かいますかね!」



アキラがココルルの背へ飛び乗るとアキラと三精霊はすぐさま風になって目的地へ向かう。


そんな彼らの様子を見て、茜色と黄金色に輝く夕焼け空が「くふふっ」と笑った。

そんな気がした。

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