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MagicaAnima(マギカアニマ)  作者: 丹下和縞
第四幕 魔族の世界
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第八十話  『アンジェの能力』

 翌日。

フラールやデープたちがまだいびきをかいて寝ている朝方にアキラは寝床から這い出た。向かう先はフラールがちらっと話していた「訓練場」である。

昨日よりは体が動くようになっているが未だ足元はおぼつかない。持ってきた魔銃剣ベラニエールを杖のように使い、体を支えて歩いていた。



「お兄さん!どこ行くの?」



不意に後ろから声をかけられた。アキラが首だけを動かして後ろを見ると、そこに居たのはアンジェだった。



「おはようアンジェ。今から訓練場に行く所なんだ」


「あー、訓練場ね。デープもフラールもまだ寝てるでしょ?あたしが連れてってあげる」



彼女の申し出には素直に甘えておいた。アンジェはアキラを両手で抱えると、背中にある薄いシルクのような羽でパタパタと飛び上がった。完全に浮く所までは行かず、あくまで重力による負担を減らす狙いだろうか。



「ほいっと。転けないように支えてあげるから自分の足で歩くこと。上に持ち上げてるから随分楽になってるでしょ?」


「ああ、楽になった。じゃあ訓練場までよろしく!」



パタパタと音をさせながら、アンジェはこの一ヶ月間を如何に楽しく過ごしたかを話した。何処の団子屋が美味しかったとか、夕焼けが綺麗に見える場所だとか、アンジェは実に楽しそうだ。



「って、話してる間に着いたよ。ここが訓練場ね」


「こんな空間があったのか」



歩いてきた経路や方角からすると、恐らくここは城の地下に当たる場所だろう。少し長めの階段を下りた先にはだだっ広い空間が広がっていた。床は石材で出来ており、所々足場や壁などがあった。



「じゃあ、あたしここで見てるから」


「ああ、ここまでありがとな」



礼を言ったアキラはベラニエールを下ろし、歩行訓練から始めたのだった。アンジェはどこから取り出したのか本を広げて読み始めてしまった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




どれくらい時間が経っただろうか。当初よりも歩けるようになった気がする。歩行訓練を始め、固まった体をほぐしたりベラニエールを振ったりしているうちに感覚が戻ってきたようである。



「もう今日は終わりにしたらどうかな?もう夕飯の時間よ」


「え、まじか!?もうそんな時間!?」



この空間には窓がない。地下なのだから当然だ。故に時間の経過が分からないでいたのだ。



「アンジェ、ご飯は?」


「食べてないよ?あたしも本に夢中だったし」



そう言うとアンジェは本をパタリと仕舞って、朝と同じようにアキラを抱えようとした。



「もう一人で歩けると思うぞ」


「転けないための保険よ」



横に立ったアンジェのそんな言葉には、無言で両手を挙げることで返事とした。


二人で朝来た道程を戻っていると、途中でフラールがキョロキョロしながら歩いていた。フラールはこちらに気づくと一直線に走ってきてそのままアキラへ飛びついた。



「アキラ、お前どこにいたのだ!余は一日中探し回って…って、汗でべっちゃべちゃではないかぁ!!」



フラールの言う通り、確かにアキラの服は汗で濡れていた。流石にべっちゃべちゃまでは濡れていないと思うのだが。



「べっちゃべちゃのクッサクサではないか!まずは風呂だ、風呂に入れ!!」


「クッサクサって…そんなに匂う?」



アキラが自分の服を匂ってみるが、自分では臭いのかどうかがわからなかった。そして視線をフラールに戻すと顔を赤くして手をバタつかせていた。



「ちがっ、違うのだぞ!余は別にクサいって意味で言ったのではなく、アキラの男臭いのがいっぱい!って言いたかったのだ!」


「なんじゃそりゃ……」


「わー!わー!とりあえず…、とりあえず風呂に向かえ!着替えは余が持ってくるから!先に行って待っておれ!覚悟しろ!!」



一頻り騒いだ後フラールはズンズンと歩いて行ってしまった。一体何なのだろうか。



「じゃあとりあえず浴場まで行くね」


「うん、頼んだ」


「ああ、あと、お兄さん」


「ん?どした?」


「明日も、訓練付き合うからね。行くときは声かけて」



「わかった」とだけ短い返事を返した所で大浴場の前へと着いた。アキラはお礼を言ってからアンジェと別れたのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ババンババンバンバン、アビバビバビバ!!」


「ババンババンバンバン、ハァー、ビーバノンノ!!」



大浴場で声高らかに歌うのはアキラとデープの二人だった。と言うのもアキラが浴場へ入った時には既にデープが入っており、結果一緒に入ることになったのだ。

フラールはデープがいるのを確認すると、アキラの着替えを置いてからぶつくさと文句を言いながら部屋に戻っていってしまった。



「いやー、なんだか陽気な気分になれる歌ぐぷね!風呂で歌う為に生まれた歌のようぐぷ!」


「そうだろー?どんどん広めてくれよな!」



「いい湯ぐぷ!ハハハン!」と歌いながら湯に浸かるデープを見て気付いたのだが、いつの間にか体から余計な肉がなくなり痩せていた。一体何があったのだろうか。



「デープさ、そんなに痩せてたっけ?」


「ぐぷ?ああ、これはアンジェのお陰ぐぷ。アンジェの組んだ綿密な肥満解消計画による、適度な運動と食事制限。これによって我が長年溜め込んだ肉が、太った醜い体が改善されたんだぐぷ。アキラさんは彼女の能力は知っているぐぷ?」


「能力?」



アンジェの能力。全く聞いたことのない話題であった。知らない旨をデープに素直に伝える。



「ぐぷぐぷ。アンジェの能力は“マナの探知”と“マナによる探知”ぐぷ。詳しく言うと、マナの流れや残留した僅かなマナも彼女にはハッキリ見えるし、マナを使って周囲の物、人、鉱石に至るまで全てのモノの状態を一瞬で把握することができるぐぷ」


「ああ!なるほどな!」



アキラの中で合点がいく事が以前あった事を思い出した。ルフニールの能力で認識阻害という魔術が使えるアキラだが、以前に唯一人アンジェにだけ見破られたことがあった。あの時、認識阻害で消していたはずのアキラの姿がアンジェにはハッキリ見えていたのだろう。



「本気を出せば我々の身体の動き、筋肉や骨の動きに至るまで全てを把握することが可能ぐぷ。つまり生き物が動く際の予備動作まですべてアンジェにはお見通しって事らしいぐぷ」


「なるほど、それでデープの体調に合わせて計画を立てることができたのか」


「そういうことらしいぐぷ。さ、そろそろ出るぐぷよ」



そんなマナの使い方もあるのかと思いつつ、デープと一緒にアキラも浴場を後にした。


ぽかぽかの体で部屋へ戻るとフラールとアンジェが先に座って待っていた。よく見ると二人とも風呂上がりのようである。



「ん?あれ…?二人とも風呂入った?」


「ええ、入ったわよ?どしたのお兄さん?」


「いや、フラールが風呂場は一つしか無いって」


「そんなことないわよ。ね、フラール?」


「ぐ、ぐぬぬぬ……」



何だよ、やっぱり女風呂あったんじゃないか…。

それよりも、恐らくアキラたちが上がるのに合わせて用意してくれたのであろう料理を冷ましてしまうのは申し訳ない。


同時にそう思ったアキラとデープが顔を見合わせて、慌ててそれぞれの座布団へと腰を下ろしたのだった。

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