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MagicaAnima(マギカアニマ)  作者: 丹下和縞
第四幕 魔族の世界
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閑話    『学園マギカアニマⅡ』

「何故呼ばれたか、わかっているな?」



地の底から響くような重い声色だった。ルフニエル学園の理事長室で放たれた重い言霊は一人の新任教師の耳へ脳へとずしりと届いた。



「はい、あの、もしかしてと言うか、これしか無いと思うんですが」



新任教師の言葉を片目だけを開けて聞くのはこの学園の理事長である初老の男、ルフニールである。シノノメ様式の着物を着こなし椅子に座る彼からはなんとも言えぬ威圧感を感じ取る事ができた。



「言ってみよ。アキラ・シモツキ」


「はい。コイツらの事ですよね?」



アキラ・シモツキと呼ばれた新任教師が視線を下へ落とす。それと同時にルフニールが視線を落とすと、アキラの丁度腰のあたりに両側からしがみつく少女らがいた。



「せんせぇ~、ケッコンまだですかぁ~」


「早うわしと祝言を!」



右腰に張り付いているのが桃髪に緑の瞳が特徴的な少女、メロディ・リンデット。そして左腰に張り付いているのが特徴的な角・翼・尾を有した竜人族の少女、モミジ・クレハだ。



「何とかならないのかと生徒から苦情が来ているぞ」


「いえ、私としても何とかしたい所なんですが…」



重苦しい空気から一変、ルフニールは椅子にもたれ掛かってから大きなため息を吐いた。



「まぁ良い。大きく風紀を乱す事が無ければ吾輩は気にしない。生徒の幸せを汲んでやるのも教師、いや教育者だ。とりあえずは現状維持に努めるように」


「わかりました」


「わんぱくな生徒が多いクラスで苦労をかけるが、頼んだぞ」



アキラは一礼すると、腰に張り付いた二人を引きずりながら理事長室を後にした。扉がしまったのを確認した後に、胸の高さに作った拳を垂直に落とした。



ゴチンッ!


「あいたぁっ!」


「うぎゃぁっ!」


「お前らいい加減にしろよ、あれで済んで良かったが、ほとんど厳重注意みたいなものだからな」



メロディとモミジは頭にできたたんこぶを抑えながら床でゴロゴロと悶絶していた。



「いだっ、痛~い!!」


「わしの、わしの頭蓋は無事か!?」


「無事だバカモン共。もう一発喰らいたくなかったら次の授業の準備でもしてこい!」



アキラが右手で拳を作ってハァ~と息を吹きかける。するとメロディとモミジはそそくさと次の授業へと向かっていった。流石に二発目は受けたくないのだろう。



「普通にしてればいい子たちなんだけどな」


「先生!!」



一度だけ大きく深くため息を吐いた後にアキラを呼ぶ声が聞こえた。手を振りながら走ってきたのは学級委員長のロイスだった。



「先生、狂犬…いや、キールが…」


「またキールか…。で、今回もフェニー絡みか?」



アキラの受け持つクラスの問題児の一人。“狂犬”の異名を持つキール・ラグストがまた暴力事件を起こしたのだろう。



「い、いえ、その、今回は事情が複雑と言うか…。フェニクレインが関係しているのは間違いありませんが…」


「とりあえず現場に向かおう。案内してくれ、ロイス」



アキラはロイスに連れられて、キール・ラグストの元へと走ったのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




そこは校舎と校舎に挟まれた中庭部分であった。獣人族であるきキールはフェニクレインと言う中等部の女生徒を守るような形で、他の不良たち三人の前に立っていた。



「どうした、もう来ねぇのか?まだ一発ずつしか殴ってねぇぞ」



そう言って口の端を吊り上げるキール。不良たちは殴られた箇所を抑えながらそれでも尚キールに対して睨みを利かせていた。



「言うじゃねえかキールよぉ。本当に痛い目に遭いたいみたいだな」


「今現在、全く痛くも痒くもないんだがな。いや待てよ」



キールは大きな体を揺らして更に馬鹿にするような目つきで言った。



「退屈すぎて頭が痒くなってきたわ」


「この野郎!!」



キールの態度に激昂した三人が一斉に飛びかかる。キールも瞬時に身構えるがそれよりも早く動いた者たちがいた。



「はあい、そこまでぇ」


「お前たちはこれから指導室っだぜドンドーン!!」



瞬時に飛びかかった三人を組み伏せたのは防護魔術教師のシンシンと、体術教師のココルルだ。シンシンが水魔術による拘束で二人を、ココルルが腕の関節を極めて一人を地面に押さえつける形でそれぞれ制圧していたのだった。



「大事になる前に間に合ってよかった」



そして後から現れたのが新任教師であるアキラだった。シンシンとココルルは現場に走るアキラの様子を見て一緒について来ただけだったが、結局は二人が騒動を収める形となった。



「ではでは、生徒指導へと逝きましょうか」


「へっへっへ、体と脳みそに指導を叩き込んでやるぜぇ!!」



聞く所によるとシンシンとココルルによる“生徒指導”はとても有名で、今までいろいろな生徒たちがお世話になったらしい。シンシンの謎の魔術による人格矯正とココルルによる身体面の指導で、どんな札付きのワルも真っ当な人間に変えてきたと言うのだ。


泣き叫ぶ三人を他所に、シンシンたちは不良たちを校舎内へと連れて行ってしまった。南無阿弥陀仏…。



「俺も連れてけよ。殴ったのは俺だしよ」



アキラが頭を掻きながらキールの方へ向き直すと、アキラに対してそんな事を言ってきたのだった。



「いいかキール。俺はお前が理由なく暴力を振る奴には思えない。事情を聞かせてくれよ」


「良いから連れて行けよ!!」


「いや、連れて行かない。お前が相手を殴った事実よりも、お前が相手を殴る事になった状況を知る事の方が大切だと俺は思うけどなぁ。なあ、フェニクレイン?」



アキラがそう返すとキールの後ろからフェニクレインが顔を出した。彼女の腕の中には、首輪が付いていない子犬がいたのだった。



「大方その子犬をあいつらがイジメててフェニクレインが止めに入ったんだろう?キールはそれを見て不良たちの前に立った。放っておいたら子犬もフェニクレインもどうなってたか分からないしな。殴ったのは良くない、良くないが状況的に仕方ないこともある」


「俺は……」



キールが何かを言おうとしてそのまま押し黙る。アキラは尚も語りかけた。



「気にすんなキール。俺が同じ状況で同じ立場だったとしてもボコボコにしてるわ。よってお咎めなし!だが、今後暴力は控えろよ?」



そう言って手をひらひらとさせてアキラはキールに背を向けた。



「ああ、あとそれから、授業だけはちゃんと受けとけ。今やるべき事はちゃんと今やっとけ、以上!」



それだけ言い残してアキラはその場から立ち去ったのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「このように攻撃魔術の行使にはマナの組み上げと共に魔術のイメージが必要で…」



午後、アキラが攻撃魔術の授業を行っていた時のことだった。


ガラガラガラ…


教室の後ろの戸が開かれた。そこから入ってきたのは。



「おっ、キール、ちょうど今始まった所だ。空いている席に座って」



学園でも有名な“狂犬”の名を冠するキール・ラグストその人であった。久々に現れたキールに教室内の生徒たちがどよめいた。



「はい静かにー。一通り説明終えたら演習に移るからな」



キールの登場にもあっけらかんとした態度のアキラを見て、生徒たちは私語をやめて授業に聞き入った。キールも例外ではなく非常に真面目な態度でその後の授業を受けたのだった。



「アキラ先生、一体何をしたんですかねえ」


「それはココルルにもわからんですたい!」



シンシンとココルルの二人がアキラの授業の様子を離れた場所から見ながらそう言った。



「我が学園の新しい風だ。風は気の赴くままに吹くだけだ」



二人の後ろから理事長であるルフニールが現れた。二人はさして驚くこともなくその言葉に大きく頷いたのだった。



「だあっ!!モミジ!マナの出力が多すぎ!建物吹き飛ばす気かよ!?」


「なんじゃと?ならばこうか?」チュドーン!!


「んー!まだ強いッ!!でも見込みありッ!!」



当のアキラは生徒たちに対して非常に熱い授業を繰り広げる。

そんな授業の様子を見てルフニール、シンシン、ココルルの三人が笑い合った。


とある新任教師が入った事で、ここルフニエル学園に大きな変化が訪れようとしているのであった。




ドガァァァアアン!!


「あ、やっちった、てへぺろ!」


「てへぺろ!じゃないよ、校舎吹き飛んでんじゃん!?お願いだからメロディはもっとお淑やかになって?」



いろいろな不安を残しつつではあるが、この場では全てが確実に良い方向へと向かっていたのだった。

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