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MagicaAnima(マギカアニマ)  作者: 丹下和縞
第三幕 全面戦争
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第四十七話 『それぞれの旅立ち』

 翌朝。旅立ちの支度を済ませた一行はシッフル王宮のとある一室に集められていた。いつもの六人にシグルドとフェルゼーを加えた八人が円状に座って最終的な打ち合わせを行っていたのだ。説明をフェルゼーが取り仕切る。



「では最終確認じゃ。まずアキラとメロディ、二人はイルシオン大森林に行けばククルルが案内してくれるだろう。そしてキール、お主にはシンニールという名の竜が付く。モミジはここで“剣聖”の指導を受けよ。最後にロイスとキク。お主らには迎えが来ておる」



フェルゼーが部屋の入口へ向けて指をちょいちょいっと動かすと見慣れない服装に身を包んだ二人が入ってきた。



「トーン・リンデットだ。ロイス、貴様の修行は俺が見る」


「リズム・リンデットでぇーす!キクさんはリズムが一緒に修行しますのでー!」



アキラの耳が確かであるなら、今この二人は苗字をリンデットと名乗った。男の方は紫色、女の子の方は水色の髪色をしており、二人共瞳の色は緑である。それに対して隣にいるメロディはトンガリ帽子の下でかなり陰険な顔をしていた。

アキラはなるべく小さな声でメロディに耳打ちをする。



「ご家族の方でしょうかね?」


「バカ兄貴と妹……確かに対抗魔術と機械に関してトーン兄さんとリズムは一流だけど…気に入らない」


「そ、そうなのか…なるほどね…」



アキラがメロディから離れると、件の人物、トーン・リンデットがアキラへ向けて言い放った。



「そこの少年、我が妹と仲が良いみたいだがまだ俺は認めてないぞ。全ては結果だ、結果を残せ」


「ええ、はぁ……」



結果を残せと言われてもなぁと内心思っていると、意外にもメロディの妹であるリズム・リンデットが助け舟を出してきた。



「リズムはメロディお姉ちゃんが好きな人ならいいと思いますねー!よろしくおねげーしますね、お義兄ちゃん!」


「う、うん…よろしく…」



きゃはー!と言いながら飛び回るリズムの様子を見ていると、メロディがぼそっと言葉を漏らした。



「ああ見えてバカ兄貴は魔術、特に術式対抗魔術に関しては右に出る者はいない。妹のリズムはミスミティオンでは有名な機械からくり技師。マナを使わない単純な機械を動かす能力は世界でも指折りだろうね」



陰険な顔のままメロディが話しているとフェルゼーが手を叩いて場をまとめた。



「久々の再会を邪魔して悪いが、そろそろ出発じゃ。旅立ちは早いほうが良いぞ」



その言葉で各々が自分の荷物を持ち直す。皆がそれぞれのすべき事へ意識を向ける。



「じゃ、俺たちは先に出るわ。定期的に、モミジと俺の“ゲート”で集まるようにしよう。報告も兼ねてな。場所はルフニエル王国最南端のラケッソっていう村でよろしく。その場合宿は手配しておくから」



先に動いたのはアキラたちだった。アキラはさっさとゲートを展開してしまうとそこへ荷物を放り込んだ。



「皆さんお元気で!」


「また会おう」


「みんな…無理しない…でね…?」



アキラより先に精霊の三人がゲートの中へと入る。そしてアキラたち二人も「じゃ!」と手を上げるとゲートの魔術でイルシオン大森林へ転移してしまった。


それを見届けたキールは大きく深呼吸をしてフェニクレインの手を取る。



「よーし、じゃあ俺たちもシノノメの国に行くとするかねぇ」


「行くですぅ!」


「気をつけてな。シッフルの事は私に任せてしっかり修行してこい。本当はカルロやヒルデも呼びたかったんだがな。イオンに至っては別れが悲しくて見送れないと言っていたぞ」


「あ、兄貴たちはいいよ…仕事も大変だろうし。母さんにはまた俺から会いにいくよ」



シグルドの言葉にキールが答える。その後にシグルドが強くキールを抱きしめた。



「キールや…これを持ってお行き」


「ばあちゃん!何これ?」



またしばしのお別れになるキールを見送りに、祖母であるルシアが現れた。そしてルシアの手から緑色の刀身のダガーが渡される。



「護身用に持っておきなさい。お守りよ」


「わかった。ありがとう、ばあちゃん!」



ルシアからダガーを受け取るとキールは歩き出した。



「別れはいわねえ、また会えるからな」


「それでいい。またな」



大きく手を降ったシグルドに軽く手を上げて、キールとフェニクレインはシノノメの国へ向けて歩き出した。



「皆気が早いのぉ…。どれ、わしはシッフルで修行ということじゃし、一休みするかのぅ、ふぁぁあ」


「そうはいかん」



地から響くような声がモミジの背後からする。モミジは何よりもその声の主の気配に気付けなかった事に驚いた。そしてその人物はゆっくりと話し始めた。



「ミュリエルだ。シッフルでは“剣聖”と呼ばれている。まぁ…、言葉の意味はわからんがな。今日からお前の稽古を付けてやる」


「なんじゃと……」



モミジには聞き覚えがあった。獣人族の剣士“剣聖ミュリエル”の伝説。だが殆どが眉唾物であるとモミジ自身思っていたのだが。フェルゼーが少しだけミュリエルについて話した。



「ミュリエルはあまり山から降りて来んからのぅ。まぁ、その辺の話はおいおい聞くと良いぞ」


「そう言うことだ。行くぞモミジ。久々に気骨のある奴が相手でオレは嬉しいぞ」


「えあっ!?ちょっ、何処へ行くんじゃ!?」



首根っこを掴まれて引きずられながらモミジが聞く。するとミュリエルはニヤーッっと恐ろしい笑みを浮かべて答えた。



「オレの修行場だ。お前は鍛え甲斐がありそうだからな…くっくっく…」


「キェエアァーー!!」



モミジは剣聖ミュリエルの底知れない何かに恐怖して絶叫する。そしてそのままミュリエルに連れられて例の修行場とやらに連れて行かれてしまった。



「俺らもミスミティオンに行くぞ、ぐずぐずするな。リズム、アレを」


「はいなはいなー!」



トーンに言われるとリズムがカバンの中から何かの部品を取り出して組み立て始めた。数分で組み上がったソレは、ちょうど四人が乗れる程度の車輪の付いた馬車のようなものであったが。



「乗れ、このリズムの機械ならミスミティオンまで半日とかからん」



トーンに促されるまま金属製の謎の乗り物に乗り込むロイスとキク。二人が乗るや否やリズムが金属の車の操作を始める。すると金属の車はとんでもない速度で走り始めたのだった。



「な、なんですかこれは!?」



思わずキクが謎の機械の構造に付いて質問をする。それに対してリズムはきゃはー!とはしゃぎながらもきちんと説明をした。



「きゃっはー!えーっと、これはね、人間の最小の動きで最大限のエネルギーを作り出して効率よく機械を動かしてる、って感じなんだけど。リズムが動かしてるのは足だけ。でも車輪は全て動いている。リズムの小さな力でも四つの車輪全てを強く早く動かす事ができるのよ!」



キクには理解ができた。最小限の力で最大限の力を引き出す。それがどれほど難しいことであるかはよく分かっていた。



「なるほど、勉強になります」


「きゃっほー!リズムでよければなんでも教えるよー!」


「まぁ、ミスミティオンに着いてからが本番だ。今は休んでおけ」



リンデット兄妹とそのような会話を交わしながら、ロイスとキクはミスミティオン連合国家へ向けて爆走していったのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「嵐のように過ぎて行きましたな。フェルゼーさん」


「そうじゃのう、シグルドや」



この場に残ったのはフェルゼーとシグルド、そしてルシアの三人だけだった。



「大丈夫かねぇ…」


「信じよう。あやつらは強い子たちじゃ」



ルシアの心配にフェルゼーが答える。今彼らにできるのは信じることだけだ。



「さて、わしら年寄りも気張らんといかんのぉ」



フェルゼーが踵を返しながらそう言うと二人が頷く。それに対してフェルゼーも満足そうに頷いた。



「頼むぞアキラ。わしらの希望よ」



それだけ言うとフェルゼーは自分の置かれている状況を冷静に考える。シッフルにはアキラのゲートの魔術で来ていたのだが…。



「ぬぁあっ!アキラに王宮まで送ってもらうの忘れとった!!」



フェルゼーはお手本のようにその場に膝から崩れ落ちたのだった。

















「後でモミジに送ってもらったゾイ!」

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