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MagicaAnima(マギカアニマ)  作者: 丹下和縞
第三幕 全面戦争
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第四十二話 『二人の英雄(ヒーロー)』

「あの、アキラは…」


「アキラはどうなんじゃ!」



メロディとモミジがそう聞いてくるが、いい返事はできない。



「いろいろ忘れちまってるみたいだな。精霊たちの事もわからないらしい」


「師匠の状態は良くない。しばらくは安静に、という事ですよね?リーゼロッテさん」



ロイスがリーゼロッテに聞く。リーゼロッテは無表情のままで静かに答える。



「現状、アキラはデゴルベアに記憶を抜かれて食われた状態……もう戻ることはない……私のかけた防護と召喚を重ねがけした魔術で致命傷は免れてるけど……心へのダメージが大きい……だから今はなるべく安静に…」



キールとフェニクレイン、ロイス、もちろん未だアキラの顔も見れてないメロディとモミジが渋い顔をする。だが誰よりも怒りを露わにしていたのは他でもないキクだった。



「帝国の下郎どもめ……。アキラさんをあんな姿にしやがって…ぶっ殺してやりますわ…」


「落ち着けキク。今熱くなっても仕方ない」


「続けざまで申し訳ないけど、良くない知らせがあるわ。デゴルベアの事だけど、中身は人間だったわ…」



語気を荒らげるキクをロイスが落ち着かせる。そしてリーゼロッテの言葉に全員が驚いた。あの時、デゴルベアを超級魔術によって倒したリーゼロッテは、その死体を確認しに行った。すると魔獣の体が剥がれ落ち、最終的には人の姿になったと言う。もちろん中の人は絶命していた。



「心当たりがあります。帝国は人を魔獣化させる実験を密かに行っていると。私の姉も、その実験で死にました」



これはロイスの言葉だった。未だロイスの過去を知らないメンバーにとっては衝撃的な発言だったに違いない。皆が沈黙を始めると、ちょうどそこへシグルドが到着した。



「すまない、遅くなった。して、アキラ君の様子は?」


「良くないわシグルド……そして、ここシッフルにも帝国の影が伸びてる……」



シグルドはリーゼロッテを見ると少し目が鋭くなった。それにすかさずリーゼロッテが反応する。



「相変わらずね…シグルド、あなたはいつまで私が苦手なのかしら?」


「まだ何も言っておらんだろう…」



この二人も昔何かがあったのだろうか。しばし沈黙が流れる。



「まあ、帝国も今回はすぐに手を出してこないと思うわ……いつもそうだし……」


「うむ、だが軍備はしっかりしておこう。いつでも出れるようにな」



シグルドとリーゼロッテはそれだけ交わすと互いにそっぽを向いてしまった。



「とにかく、アキラ君の治療をしっかりしてやってくれ。シッフルは全面的に協力するからな」


「ありがとうございます」



メロディがペコリと頭を下げると皆が続いて頭を下げた。



「当たり前の事だ。皆、頭を上げてくれ。アキラ君がいなければもっと被害が出ていたかもしれないしな。今はしっかり休ませてあげてくれ」



シグルドはそれだけ言うと王宮テントへ帰っていった。その後は皆もぞろぞろと各々のテントへと戻っていったのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




朝、目が覚める。見慣れないテントの中で寝ていたらしい。体は痛くない。だが何かがぽっかりと空いてしまったような、そんな感覚があるだけだった。



「俺は誰なのだろう…」



自分が誰なのかすらもわからない。何者なのかもわからない。



「ここはどこなのだろう」



恐らく正解のない自問自答をしているとテントの入り口が不意に開けられた。



「うわっ、まぶしっ!」


「アキラ!お風呂に行くよ!!」


「ほれアキラ。わしらと湯浴みに行くぞ!!」



入ってきたのは桃髪に緑色の瞳をした少女と、角と尻尾を生やした黒い肌の少女。確か桃髪の少女がメロディで、もう一人の方がモミジという名前だったか。



「ええ!?お、お風呂?」


「そう!昨日入ってないでしょ!シッフルには温泉があるんだから!」


「そうじゃ、わしらと風呂に入ればいろいろと刺激になって良いじゃろ!」



二人が強引に腕を引っ張ってくる。女の子と風呂に入れと言うのだろうか。



「そ、そんな、女性とお風呂なんて入れないよ!」


「なーに言ってんのアキラ、あたしとはほぼ毎日入ってたでしょ」


「そうじゃ、わしらはもう裸の付き合…ブフッ…をしておるのじゃ…」ポタポタ…



毎日入っていたと言うのが本当かどうかはわからないがとんでもないことを言うもんだ。あとモミジさんは鼻血大丈夫だろうか。



「わ、わかったから!それよりも、君たちは僕の何だったの?いや、僕は君たちにとってどんな存在だったの?」



ずりずりと引きずられながら話すと、二人は歩みを止めてこちらを見た。振り返るタイミングがぴったりであった。


「あたしはメロディ・リンデット。いずれメロディ・シモツキとして、アキラの妻になる女よ」


「わしはモミジ・クレハじゃ。そのうちモミジ・シモツキになって、アキラの妻になる女じゃ」


「え、それってどういう……」



妻を二人娶るということだろうか、それとも二人から選ばないといけないのか…。



「どうもこうもないよ」


「その通り!まずは風呂に行くぞ!」


「ええ…あの、ちょっ…」



そしてそのまま温泉があるという場所まで連れて行かれたのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「あいつら…安静にって言ってたのに連れていきやがったか…」



朝食と着替えを持ってきたキールがテントの中でため息をつく。



「まあ、荒療治くらいがちょうどいいかもしれないしな。二人に任せてみるか」



やれやれと思いながらも掃除とアキラが帰ってきた時の為の準備をしたのだった。






一方、シッフル国テント群から外れた場所にある温泉。



「ほら、脱がないと温泉入れないでしょ!!」


「いやいやいやいや!いろいろと常識と外れていると言うかね?」


「観念して脱がんか!ええい、まどろっこしい!」シュッ…


「え、何その手刀の構え!?気絶させる気か?気絶させる気だろ?やめてよ!」



服を脱ぐんかい脱がんのかいの死闘を繰り広げていた。



「おお、そのツッコミの冴え!やっぱりアキラはアキラなんだね!ほらあたしと一緒にあちゅいお風呂に入りましょー!」


「そうじゃそうじゃ、あちゅいあちゅいお風呂に入るんじゃ!!」


「ギャーーー!!」



結局脱がされてしまった。そしてモミジに体を持ち上げられた。なんて力だ!!



「ほれ、温泉にザバーンッ!!」ポイッ


「ぐええーー!!」ザバーンッ



アキラが温泉に放り込まれると、続いてメロディとモミジが温泉に入ってきた。



「せめて布で隠しましょうよ!!」


「ああん?聞こえねえなァ!」



そう言って体を密着させてくるメロディ。め、目のやり場に困る…。



「ほ、ほれ…わしもいろいろと、勉強してきたんじゃけぇ…」



そしてモミジも体を寄せてくる。両側から柔らかいものを押し付けられている状態である。



「ブーッ!ちょっと!これはやりすぎ!」


「アキラ」



メロディが名前を呼ぶ。ふと冷静になって女性たちを見ると、二人共真剣な目をしていた。



「アキラ、さっき私たちにとってアキラがどんな存在であったか聞いたよね」


「う、うん。聞いた」


「それを話そうと思っとるわけじゃ」



布を額に乗せたモミジがメロディに続いた。



「アキラって、人に迷惑かけられてもへらへらしちゃうお人好しでね」


「馬鹿みたいに優しい男でのぉ」


「自分のことより周りの人優先で」


「ここぞと言う時には凄い力を出す」



メロディとモミジが交互に言う。



「あたしの事が好きなくせにモミジも大切だって言うし」


「えりゃあ優柔不断でのぅ」


「いつも笑顔で」


「ときたま真剣な顔をする」


「ただ一緒にいるだけで楽しくて」


「一緒にいるだけで幸せな気持ちになれる」



二人の言葉には全く覚えがない。だがなぜだか涙が出て止まらなくなった。



「どうしようもないくらい正直で」


「どうしようもないくらい素直で」


「馬鹿で」


「お調子者じゃ」


「だけどなぜか私たちが」


「わしらの方が幸せにしてやりたくなる」



二人の顔は遠い何かを思い起こすようでもあるが、今彼女らが見ているのはアキラの顔であった。



「アキラはあたしの」


「アキラはわしの」


「「最高の英雄ヒーローよ(じゃ)」」



とめどなく流れる涙が止まる。それと同時に頭が割れるような痛みが生じた。



「うぐ…あ…痛……」


「ほえっ…!?アキラ大丈夫!?」


「なんじゃ!?どうしたアキラ!」



二人の少女に声をかけられるが、頭に入ってこなかった。頭のなかで自分の知らない出来事がとてつもない速度で巡っていった。そして。



「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



あまりの大声に二人の少女が驚く。その声には先程までの弱々しい感じは無く、むしろいつもの彼の調子であった。



「思い…出したァ!!!!」ザパァアアアアア!



拳を振り上げ、立ち上がるアキラ。抜き取られたはずのアキラの記憶はすっかり彼の頭の中に戻って来たのだった。メロディとモミジの二人は。



「あら、ご立派…」


「あ、アキラの…アキラが……ぐはぁっ!!」ブシャァァァーーー!!!



ぶらぶらさせているそれしか見ていなかった。



「アキラ復活ということでココルルも温泉でわっしょい!」


「吾輩も失礼しよう」


「今日はお祝い…だね…?」



精霊三人も出てきて結局もみくちゃになってしまった。



何はともあれアキラの記憶は、メロディとモミジの強引なやり方のおかげか事件から数時間で復活したのだった。

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