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MagicaAnima(マギカアニマ)  作者: 丹下和縞
第二幕 城塞都市ノルデンミスト
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第三十五話 『精霊たちの里帰り』

「こらー!起きんかアキラー!!」



思いっきり布団をはぐられて文字通り叩き起こされたアキラ。今日はメロディとデートをした翌日であるのだが。



「おらっ、早くっ、起きんかっ、アキラ!!」


「ぐえっ!ちょっ、殴るのやめてまじで!」



アキラを叩き起こしたのは他でもないモミジである。今日はアキラとモミジが二人でデートをする日である。



「起きた!起きたから!!」


「ほいじゃあ、はよ用意せぇ!まずは体を拭くことからじゃ!」



そう言って右手で濡れタオルをスパーンと叩くモミジ。左手はアキラの寝間着を握っている。



「ほーれ!拭き拭きするでよ、旦那様よぉー!!」


「あーーれーー!!」



一瞬で裸にされたアキラ。それを見てモミジは。



「で、ではっ、僭越ながらお体を拭かせていただきブハァ!!!」ブシャーー


「おい!体拭く前に鼻血吹いてんじゃねーよ!!」



相変わらずあまり耐性のないモミジであった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




なんとか出発の準備を終えて宿の入口を出た二人。

外で太陽の光を浴びるとやっと今日という日を実感できた。



「さて、モミジ。今日は何処に行こうか」


「全てわしが考えておる。掴まれ」



そう言って手を広げるモミジ。掴まれとはどういうことだろうか…。



「何をぼけーっとしとるんじゃ。わしに抱きつけ」


「はあ…?」



未だわけがわからず無反応でいるとしびれを切らしたモミジがアキラの後ろから抱きついてきた。



「行くぞ」


「えっ?……へねぇっ!!」



腹部を急に圧迫される。その影響で空気が一気に吐き出され、変な声が出てしまった。この竜人族、背中にある翼で飛び上がったのだ。


竜人族の中でも大きく分けて三種類の種族があるとされており、水中での生活を主とする水竜種、陸上での生活を主とする地竜種、そして空での生活を主とする翼竜種の三種である。モミジはこの中の翼竜種に該当する。


そのモミジがアキラを腕に抱いて、ノルデンミストの上空へと飛び上がったのだ。



「うわあああああああああああ!!」


「何を騒いどる、少しの辛抱じゃ!」



モミジはアキラを抱きかかえたままとんでもない速度で飛んでいったのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「どーれ着いたぞアキラ」



最初に連れてこられたのは霧深い森の入口だった。



「ここはどこだ」


「今にわかる。ほれ来たぞ」



アキラでも感じるほどの威圧感。森の奥から何か巨大なモノが歩いてくる。地鳴りと共にゆらりと現れたそれはココルルと同じような、しかしココルルよりも遥かに巨大な白い狼だった。



『おや、久しぶりじゃの。人がここに来るとはフェルゼーとヤクモ以来かの』


「フェル爺と親父を知ってるのか…!」



その巨体さよりも、そちらの驚きのほうが大きかった。



『かあさまー!!』



そうしていると、いつの間にか顕現していたココルルが狼の姿で巨狼に飛びついた。



『おお、ココルルや。元気にしていたかい』


『はいー、かあさまもお元気そうでなにより!』



そんな親子の久しぶりの会話を軽く終えた巨狼が、しかとアキラに向き合った。



『さて、少し話をしよう。“眠る大樹”まで歩きながらでいいかの?』



巨狼がアキラに語りかける。



『わしはここイルシオン大森林、通称《幻獣の森》に昔から住む大精霊古き狼のククルルだ、よろしくのう。さて、何から話せばよいかわからんが。まあフェルゼーはちょろっと寄っていっただけだからあまり話すことはないな。それよりもヤクモだ』



古き狼のククルルはふんす!と鼻息を荒くさせる。



『あやつはすぐ横のラケッソ村でとある竜人族の夫婦に拾われた。それがアキラ、お主の父親の育ての親であるヤシモとイズモだ。ヤクモは、それはそれはわんぱくでのぉ…。あろうことか、このわしの……わしの毛を毟ってわしを毛無しにした……』



プルプル震えだす巨狼。威厳はいずこへ。それよりもラケッソの村か、聞き覚えがあるな。



『話が逸れたな。まあわんぱくじゃがいい精霊術師だった。魔術は使えんかったがの。ココルルとは兄妹のように育っておったし、物の覚えも早かった…まあ何が言いたいかと言うと、ヤクモのようにはなるなよとな……』


「あー、やっぱりそういう結論になるんだ」



なんとなく納得してしまったアキラであった。先程ククルルが言っていた眠りの大樹と呼ばれる巨木へとたどり着くまでに、父親の様々なエピソードを聞かせてもらった。眠りの大樹へ着くと、そこは不思議なマナの流れを汲む、神秘的な空気の漂う場所であった。



『して、そこの竜人族の子よ。何故アキラをここへ連れてきた』



突然に呼ばれたモミジは一瞬キョトンとしたが、即座に答えた。



「え、デートついで?」


『ついでか!ついでなのか!ククルル悲しい!!』



アオーンと泣きながら器用に顔を前足で覆う。なるほどココルルの親だなと思った。



『まあよい、少しばかりであるがココルルと会えた。そしてヤクモの子にも会えたのだからな。わしはそれで満足だ』


『かあさま、また来ますね』



ココルルとククルルが抱き合う。それを見ていると何とも言えない気持ちになる。



「アキラ、どうじゃ、ここへ来る理由ができてしもうたじゃろう?」


「そうだな、ココルルもたまには故郷帰りしたいだろうし」


「そこで竜族の秘術、ゲートの魔術を教えようと思うわけじゃ」



モミジが声高らかに言い放つ。



「とりあえずここの風景は覚えたね?」


「あ、ああ、そうだな」



それを確認するとモミジは背中の翼を大きく広げた。



「そういうわけでククルルさん、わしらは失礼する!アキラにはまたここに来させるけぇ、よろしゅう頼みますじゃ」


『いつでもおいで。ククルルは歓迎するぞ』



またしてもアキラを抱えて飛び上がる。前足で器用に手を振るククルルにアキラも手を振り返すとモミジに次の場所を聞いた。



「で、次は何処に行くんだ!?」


「次はシンシンの故郷、シレーネ海域じゃ!すぐ着くけぇの」


「んん??…へねぇっ!!」



モミジの目的がわからないまま、次の目的地まで二人は飛んだのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ほい到着」


「うぷっ…おえっ…。おお、きれいな海と砂浜だなあ」



いろいろと出そうになりながらもなんとか体勢を立て直す。静かに波が押し寄せる浜には無数の貝殻が落ちており、それが太陽の光を反射してキラキラと輝いている。



「待っておればよいかのぉ?」


『うきゅ!』



モミジの問いかけにシンシンが力強く答える。何を待つのだろうか。

すると突然、シレーネ海域とよばれる海の沖の方で大きな津波が起こる。



「これ大丈夫か?」


「まあ見ておれ」



妙に落ち着いたモミジの言葉を信じてしばらく待機するも、波はどんどん大きくなる。それがだんだん浜に近づいてくるのだがモミジは動じない。



「ほれ来た」



波の中から現れたのは、巨大な人魚。シンシンによく似ているが、体や髪の色が一部違う。



『うきゅきゅう!』


「え、妹のスンスンだって?」



シンシンが妹であると言うからには妹なのだろう。当のシンシンも『うきゅ!』と言って海に飛び込んでしまった。すると、シンシンも同じくらいの大きさの巨大な人魚へと姿を変え、妹のスンスンの隣へ並んだのだった。



『全く、全然連絡をくださらないから心配しましたわよお姉さま?』


『ごめん…ね、いろいろ…あったから…』


『まっ!悪い男に捕まったんじゃないでしょうね!?』



飛びつくスンスンをシンシンが抱きとめて頭を撫でる。またしてもなんとも言えない気持ちになるアキラ。それを察知してかまたモミジがアキラに耳打ちをする。



「どうじゃ、この場所ももう印象に残ったか?」


「ああ、バッチリだけど」


「ならよい」



それだけ言うとモミジはスンスンへ話しかけた。



「スンスンよ、これからはおみゃあの姉の契約者であるアキラにゲートの魔術で度々会いに来させるけえ、それで勘弁してやってくれんか?」


『致し方ありませんわね。そういうことでしたら納得致しますわ!』



そういってシンシンから離れるスンスン。



『ごめん…ね、また来る…から』



短くシンシンがそう言うと、アキラの右肩にするっと戻ってくる。

もちろんいつものマスコットサイズで。



「では、次の場所じゃ!行くぞアキラ!」


「あっ、ちょっ…へねぇっ!!?」



高く飛び上がるモミジに抱きかかえられる。遠く海から手を振るスンスンに別れを告げて二人はまた飛んでいった。

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