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MagicaAnima(マギカアニマ)  作者: 丹下和縞
第一幕 王都ルフニエル
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第十六話  『友と呼ばれるものたち』

 とりあえず動けるようになったキールとモミジ、それからメロディを連れて昼食を摂ることになった。先程まで各所で争いが起きていたのだが、それもキールの腹の虫が鳴いてお開きとなった。



「いやぁ、しかし、なんじゃ。わしの旦那様は強いだけでなく治癒術にも精通しとるとは、わしゃあ鼻が高い」


「いや、それシンシンのおかげだし」


「そのシンシンと仲良うできとるのは他ならぬ旦那様の力じゃ。あまり自分を卑下するでないぞ」


「いや、あのな…」


「グギギ……ギリギリギリギリ…」


「メロディも歯ぎしりするなよ…」



メロディとモミジの間では今もなお火花がバチバチと散っていた。



「傍から見てると可哀想になるな」



アキラたち三人の少し後ろを歩くキールが呆れ顔で呟いた。



「まぁね!私のアキラは魅力的だから仕方ないっちゃ仕方ないね!」


「男なら二人共嫁にすればいいと、吾輩は思うのだがな」


「私…は、アキラが幸せ…なら。なんでもいい…かな?」



そのキールの横でアキラの契約精霊たちが人の姿で付いていきながら、思い思いの意見を言う。とりあえず話題を飯に切り替えようとアキラは皆に希望を聞くことにした。



「とりあえずさ、みんなは何が食べたいの?正直どんな飯があるのかわからないんだけど」



「わしは旦那様が食べたいものを食べたいかのぉ」


「あたしだってアキラが食べたいものが食べたいもんね!!」


「俺は特にはないな。強いて言うなら久しぶりにケブーブが食べたいかな」


「にーくっ!にーくっ!にーくっ!」


「吾輩は皆に合わせる」


「私も…今日はお肉食べたい…かな…」



というわけで肉を食べにいく事になりそうなのだが。気になることが一つ。



「キール、ケブーブってなんだ?」



振り返りながら聞いたアキラに、キールは驚いた顔をしてみせた。



「アキラ、お前ケブーブを知らねぇのか…人生の八割損してるぜ…?」


「まじかよ。ほとんど損してるじゃねーか。早くそのケブーブを食いに行こうぜ」



それに対してキールはフッフッフ…と不気味に笑う。



「既にケブーブの店の前だアキラ。お前は最初からケブーブの専門店街に向かっていたのだよ」


「「ナ、ナンディストー!?」」



その言葉に対して即座に反応するアキラとココルル。後ろにコテンと転げる所までしっかりシンクロしていた。



「まぁとりあえず入ろうぜ。ゆっくり話もしたいしな」



先に店の門を潜ったキールを追って、あとの六人が付いていったのだった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「肉料理でケブーブって聞いた時にちょっとは考えたけど、やっぱりケバブじゃないか!!」



七人が座る円卓横に移動式の暖炉のような物が設置され炭が燃えている。その横にこのケブーブが置かれているのだ。



「なんだアキラ、ケブーブの事知っていたのか」


「俺の世界じゃこういうのはドネルケバブって言うんだよ」



ケバブとは垂直に立てた串に味を整えた肉を刺していき、巨大な肉の塊のようにしてまわりから焼きながら削いで食べる料理だ。アキラも人生で一度食べたか食べてないかくらいの料理だが、ここルフニエル王国では人気の料理で専門店も多い。


メニュー決めはキールに任せていたのだが、その間妙に店主がウキウキしているのがわかった。

どうやら最近いいオークキングの肉が入ったから是非食べてほしいらしい。



「いや、まさかな…」


「まさかだろうな…」



アキラとキールが引きつった笑いになる。もしかしてあの時に狩ったオークキングの肉なのだろうか。

そこへ店主が現れて一言だけ添えていった。



「なんか腹に風穴開けられて倒れていたらしくてねぇ。そこから血抜きがうまくされてたみたいで肉が新鮮なんだわ!」


「「Just do it!!」」



アキラとキールの予想は的中。あの時のあいつらしい。



「じゃが旦那様よ、魔獣の中でもオークキングの肉は格別と聞くけぇの。きっと美味しいと思うぞ?」



モミジがオーク肉について補足を加える。ここまで話を聞く限り、モミジもキールと同じくなかなかにグルメなところがあるので信用していいと思う。



「まぁ、兎にも角にも飯が出ましたので。食べようか」



アキラの一言で食事が開始された。ケブーブ奉行のキールが削いでよそってくれるのを取ってフォークで刺して口に運ぶ。

ん~!オークキングのケブーブ、なかなかに美味しい!!



「ところで旦那様よ。旦那様は何歳になるんじゃ?」



モミジが肉をつつきながらそんな事を聞いてきた。



「そう言えばお互い年齢言ってなかったなぁ。俺は一応19歳になった所だ」


「アキラ、あたしももうすぐ19歳。ちょうどいい」


「わしゃあ今200歳手前くらいじゃが、人間でいうと19くらいじゃのぉ」


「俺も19だな。二人と同い年だ」



偶然にも皆ほぼ同い年だった。若干一名10倍生きている者もいるが…。



「じゃーみんなほぼ同い年って事で、気兼ねなく接する事ができるな」


「元よりアキラと俺たちは気兼ねなくやってきてたがな」



キールが肉を削ぎながら答える。そもそもアキラ的にはメロディもキールも友達だと思っているし、友達であるならば程度はあれど楽に接したいのが本音である。



「モミジも今朝戦ったばっかりなのにするっと入ってきたな…」


「なんじゃ!別にもう、どうこうしてやろうとは思っとらんのんじゃけぇ、ええじゃろ!わしも友達の輪に入れてくれー!」


「いやまぁ、別に敵意は感じないし俺は気にしないけど。キールはいいのか?」



ケブーブの肉を削いで自分の皿に盛っていたキールが柔らかい声で答える。



「昨日の敵は今日の友と言うだろう。今朝の敵は今の友だ。ただし、一つ頼みがあるんだが。友として聞いていただきたい」



キールは人差し指を立てて、モミジに言った。



「俺に戦いの稽古を付けてはくれんだろうか」




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




宿屋《グリフォンの巣》の裏。王都のど真ん中でありながら程よく広場のあるこの場所でキールの特訓が行われていた。



「まだまだァ!!わしに一撃当てるまで今日は終わらんぞ!!」


「うぉらァッ!!」



キールとモミジの激しい体術の稽古が行われていた。



「オラオラ!!そんなんじゃわしの旦那様には一生勝てんぞ!!」


「ええい!力の差は端から感じている!」



そんな二人のぶつかり稽古を横目にアキラとメロディもそれぞれ特訓をしていた。アキラはココルル、ルフニール、シンシンの三人と四方に向いて座って精神統一を。メロディは武器を使った練習をそれぞれ行っている。



「ところでなんでアキラはそこまで強いのかな。最初会った時は地下牢で泣きわめいてたのに」


「喚いてはいないだろ…。なんだろうな、多分元々の身体能力のポテンシャルは母親譲りなんだろうな。うちの母親、体動かす事に関してはバケモノだし。剣の扱いは見よう見まねだから…」


「えっ、そうなの…」



アキラの言葉に驚くメロディを他所に、脳裏に母親である霜月霖の姿が浮かんでいた。恐らくアキラの身体能力のなんたるかは母親の子育ての賜物であるだろう。よく食べ、よく働き、よく笑う母親であった。



「笑う時クックック…って怪しいのが残念だけどな…」



そしてもう一人、アキラの脳裏に浮かぶ人物がいた。父親である霜月八雲である。

アキラの性格や人格形成などは多くは父親に影響されたものであり、楽観的な所や友達思いなところなどは父親から受け継いだものである。



「屁したらすげーくせぇけどな…」



そう言いつつもアキラは精神統一を続ける。今アキラがやっているのは大精霊三人との心の同調である。ココルルと行った社交ダンスで心と体をシンクロさせるのはかなり強引なやり方であり、今朝マトイを発動できたのも偶然に偶然が重なったものであった。


ここでしっかり同調を行い、必要な時に必要なようにマトイを発動できるように三人と一緒に行っているのである。


そしてメロディがやっているのは武器による戦闘訓練。

現状魔術でしか攻撃手段のないメロディが、万が一マナ切れを起こした時にも戦えるようにと、アキラの考えであった。


メロディが選んだのは持ち手にグリップガードが付いた西洋風の刀剣、所謂サーベルである。刀身は騎士団の用いる物よりも短めで、刀身の流れるような曲線はシノノメ刀を思わせる。



「えい!やあ!とお!」



しかし、まだまだ修行のしがいがありそうな振り方である。



「ぐわばらっ!!」ガッシャーン!


「今日はここまでじゃ!明日に備えて早うに寝るんじゃなキール」



キールが稽古始まって何度目かの吹っ飛びを見せた所で夕食の時間となった。




◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ふあーぎもぢええー…」



部屋にある個別の風呂に入っておっさんみたいな言葉を漏らしているのは他でもないアキラである。ただ座ってじっとしていただけの修行だったが、それなりに疲れるものだ。お風呂がこの上なく気持ちいい。



「風呂はいいなあ…」


「ほんとにね!さっぱりするわぁ」


「あん…?」



横を見ると人の姿で風呂に入るココルルの姿があった。人の姿であれど耳と尻尾は付いたままだが。



「お前っ!何入ってきてんだよ!!」


「えー、二人が入るって言うから来たんだけどー!」



ココルルがアキラの後方を指差す。以前より大きい部屋に移った為、浴槽ももちろん大きく広くなったわけだが。



「吾輩たちも入らせてもらっているぞ」


「お…お邪魔…してます…」


「いやいやいや、だいたい展開予想できたけどね!?ってかルフニールさっき裏の広場にいた時は男だったのに、なんで今女なんだよおかしくね!?」



もちろんルフニールとシンシンが湯船に浸かっていた。

そしてアキラの鋭いツッコミの直後、部屋と風呂場を繋ぐ扉が大きく開け放たれる。



「アキラ!!あたしが背中を流したげる!!」


「はい、ここまでテンプレ」



全裸のメロディが現れ、もう浴槽はもみくちゃである。


何となく違和感がして頭を触るとアキラの頭に赤い液体が垂れている事に気付いた。



「あん…?次から次へとなんなんだ……」



天井を見ると少し隙間が空いており、そこからモミジが覗いていた。



「い、いい、い、いけませんぞ旦那様よ。いけませんぞぉ!!」だらだらだらだら……


「あー!!もうなんなの!!モミジもポンコツだったわ!!キール!!助けてくれキール!!」



必死にキールの名前を呼ぶも返事はない。



「ほら、アキラ。あたしが背中を、いや、前からいくッ!」


「ほんとにやめて、まじで!」


「あー、私もアキラの体洗うー!」


「吾輩も流そう。日頃世話になっておるからな」


「あの…私も…」


「い、いい、いけませんぞぉ!!ぶくぶくぶくぶく……」じわぁ……



いつの間にか全裸で浴槽まで侵入していたモミジが気絶して鼻血を大量に湯の中へ放つ。



「ああぁああ!もう収集つかねぇえ!キール!キィーール!!キィィィーールゥゥウ!!!」



アキラの叫び声は届かなかった。


モミジの厳しい稽古で消耗したキールは夕食後に先に風呂に入り、そのまま深い眠りへと就いてしまっている。


だが一瞬、メロディが開けっ放しだった扉の向こうでキールに動きがあった。

ベッドからむくりと上半身だけ起き上がったのだ。うっすらと目も開いている。

起きたか!?希望が見えた!!



「よかった、キール。助けてくれ!!」



だがアキラは次の瞬間絶望へと叩き落された。



「え?ケブーブ?喰う喰う……むにゃむにゃ…」



そしてそのままストンと元の寝姿に戻ってしまった。



「ああクソ!寝言かよ!使えねぇええ!!」



フェルゼーの用意した高級宿は壁が厚くかなりうるさく騒いでも周りには全く聞こえない。



「キィィィーーーーヤァァァーーーーーーアアアア!!!」



その後アキラの叫び声は一晩中続いたと言う…。

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